脱衣麻雀
それは、冬のある寒い日のこと。
ユウが常日頃から疑問に思っていた事を聞いてしまった事から始まった悲劇である
「哲、おめぇ冬なのにまさかその黒シャツんなか何も着てねぇのか?」
「そうだよ(あっさり)」
「そうか(って事はつまり…ぬがしやすい!!)」
「どうしたんだユウさん?」
「哲、たまには趣向の変わった麻雀打たねえか?」
「いいけど……」
「じゃあ『個室』で打つぜ!!」
ユウは考えた。
(俺は哲に敵やしねぇが、ツキによっちゃ黒シャツとズボンと…下着の分、三回くらいはアガれる!!三回だ!!三回勝ちゃいいんだ…そしたら哲のやつを…剥ける!!!)
そしてユウは負けた時の為にありったけ服を着込んだ(玄人は卑怯なもんです)
だが
「おー哲さん?麻雀するならオレも混ぜて下さいよ」
(邪魔なオヒキ)ダンチ登場。しかも
「ああいいよ」
哲はあっさり混ぜてしまった。ユウさんピンチ!!さて面子は三人、しかしダンチがいるとこいつが一番弱いので、こいつが(見たくもないのに)全裸になって終わりそうな気がする。つまらん…そう思っていると
突然
リーマン崩れ風の男が現れた
「久しぶりだな」
「ドサ健!?」
ほんとはこいつなんぞ混ぜたくなかったのだが、哲が再戦する気満々だった為、いつぞやのドサ健戦メンバーでの脱マーになってしまった
(違う!!哲、そいつはお前と闘いたいんじゃねえ、お前をぬがしたいんだ)
とよっぽど叫ぼうとしたユウだったが、自分も動機は一緒なので言えなかった
「ただ脱マーしたって面白くねえ、ノガミ式でやらせてもらうぜ」
「ノガミ式?」
「負けたヤツが脱ぐのは一緒だが、勝ったヤツは酒を茶碗一杯呑むんだ」
「それじゃ何回かアガったら酔っ払うじゃねえか」
「それが狙いさ(にやり)勝った奴は酔いが回って弱くなる、弱ェ奴へのハンデだ」
ユウは釈然としなかったが、健に押し切られて勝負は始まった
さて勝負は予想通り、爆走するドサ健に哲がどこまで食い下がるか……という展開と行くかと思いきや、健は哲を狙撃ちするも哲の万全の守備に阻まれ?哲の一人勝ち。つまり酒をのまされるのは哲ばっか
(ヤベぇハメられた!!)
ユウが気付いたのは哲の酒が大分と廻ってからだった
「う…目が回る…」
哲の白い肌が紅く(そしてなまめかしく)染まっていく。暑さのあまりいつもよりはだけた黒シャツから覗く肌も桃色に…
(畜生ドサ健の野郎!!最初からこのつもりだったか)
健を見れば上半身半裸のフェロモン全開状態。哲を酔っ払わせた後で全裸にしてついでに美味しく頂こうってハラだろう…とユウは読んだ
「(クソ、全裸は俺も考えたが、酔わせて全裸を狙う程俺は外道じゃねえ、哲を守らなきゃいけねえ)畜生卑怯だぞ」
「卑怯じゃねえ玄人が何処にいるってんだ」
健は全く動じない。こうなったら(頼りにはならないが)ダンチしかいない
「おいダンチ、お前も着込んでるクチだよな?全裸にならない程度に健にフリ込め!!奴は強過ぎるが、酔わせてスキをつくるんだ」
何巡かして
ダンチが靴下と下着とネクタイという変態チックな格好になった時。
ガタッ
「哲?」
「き、気分が…悪ぃ」
「大丈夫か?!ダンチ、手伝え!」
ふらつく哲を抱えユウは便所へ向かう。それを見ながら健は
「逃げるなよ?(ニヤリ)」
と不敵に笑った。
「待って…ろ」
ほてった顔で、なお眼だけは酔っていない哲は答えた。
相手はドサ健である!!
玄人中の玄人である!!!!
哲がどんな状態でも手なんか抜いてくれない!!
つーか、哲が健気であればある程もえ(萌か燃か好きな字を入れよう)ちゃうに違いない!!!!
てか、ただの脱衣麻雀でそんな玄人魂を絞り出さなくても…そんな哲が好きなんだが。
煩悶しつつもユウは終に奥の手を出した。
「哲、おめえ言われたんだろ。房州さんに」
「え」
「『頭柔らかくしな、勝つための欲は捨てろ』って」
哲はうなだれた。
「ユウさん…オレ間違ってた」
「分かってくれ…なな?!哲!」
突然哲也はシャツを脱ぎ始めた。
「脱がされるのにビクビクするのは止めだ。むしろ脱いで打つ!」
(分かってねえー!!)
だが今更ユウはどうする事も出来ず、哲はそのまま上半身肌脱ぎで卓に姿を現した
「いくぜ健」
すると健はあからさまに……がっかりした表情で呟いた
「はずかしがって嫌がる哲から無理矢理黒シャツ剥ぎ取りたかったのに」
(この外道め)
だが、健が予想を外した事で場の流れは哲に向いた
「チッ俺とした事が…まあいい」
「哲は諦めたか?」
「ああ、哲は諦めた…」
「よし、じゃあとっとと負けて帰れ」
これで一安心。そう思った瞬間、健は妙な事を言い出した
「お前にする」
「…はあ?」
「なんかお前は食いごたえありそうだしな」
「ち……オイーっ?」
「どうしたんだユウさん?」
(以上のヤバい会話は清純派?の哲さんには理解出来てません)
「…一つ聞いていいか?」
「何だ男前?」
「お前に…ストライクゾーンはあるのか?」
「考えたことねえな、思い立ったが食いドキ、だろ」
(こ、こんなヤツに食われたくねえっ!ってか俺は受けキャラじゃねえよっ!!)
「本当いいガタイしてんなあ、それならかなり何なプレイでも壊れそうにねぇなぁ」
じっとりとからみつく健の視線にユウはつい手元を狂わせた
「それロンだ」
「や、やっちまった」
「よし、これで後はズボンと下着だけだな」
しかもうっかり振り込んでしまった為、ユウの場の風は完全に逆風となり、遮るもののない上半身にそれは殊更染みまくった
(やべえ…哲が食われるのは勘弁だが、オレが食われるのも勘弁だ。健ユウなんてそんな間違ったカップリングは許されねえ!!腐女子どもが許しても俺が却下だ!!)
何故か裏同人業界に詳しいユウだった
「どうでもいいから早く引けよ」
「くそ、こんな時に限ってクズ手かよ…ツキ逃したのは俺だが…」
「いいねえその面、誘ってんのか?」
一室ははっきり言ってかなりアヤシイムードむんむんだった。ビジュアル系?玄人三人が全員半裸の状態なのだ。
その時ユウははたと思いついた。
「ダンチ!!俺の顔を殴れ。原型がなくなるくらい」
「えっ?嫌っすよ」
「うるせえ俺のて…(貞操といいかけて止める)人生がかかってんだ!!四の五の言わずに殴れ!!手ェ抜くと殺すぞ」
「殴っても殺されそうじゃねえっスか(ボソ)」
「一つ言っとくがよ、ユウジ」
「?!…なんだドサ健」
「俺ぁ顔よりも体で選ぶタイプだ」
(ガーン!!!)
「焦ってるな、だがまあ元々坊やが目当てだったんだ。妥協してやらんこともないぜ?俺が指定するヤツらの前で俺とキスするんならカラダで払わせるのは勘弁してやる。」
「はあっ?!!」
状況が理解できないユウに止めをさすように健は牌を倒した
「ロン。ダブル役満だ!さあ全部脱いで俺と寝るか?どうする。選べ」
無茶を要求するドサ健に、ユウは(自分も悪いと思いつつ)逆ギレしてみた
「おい!!そもそもこれは脱マーだろうが!?脱ぐには脱ぐが、どーしててめェと寝たり、キスしたりしなきゃならねえんだよ!!」
健はしれっとした顔で答えた
「玄人は勝った奴が正義だからだよ」
「理由になるか!!」
「俺がする。俺が勝ったからには俺が正義だ…それとも何か?第三の選択として玄人やめるか?負けの代償払えねえヤツに玄人の資格なんてねえぞ」
「ユウさん…」
哲が見ている。玄人として負けの代償をはらわねばならない(らしい)。
さりげにみんな騙されている事にユウも哲も気付いていなかった(脱衣なんだから脱いだら代償になるのにね)
「チッ…好きにしろ(泣)」
もうすぐだ」
歩きながら健は爽やかに笑った。当然?キスを選択したユウと、そして立会い人として選ばれたのが一人は哲也。残る一人のいるという所へ今一行は向かっている。皆終始無言だった。
「着いたぜ」
一堂示された方をみるとそこは遊園地建設予定地。何故か怒号が聞こえる。
「トロトロしてんじゃねえ!」
バキッ!
「まさかもう一人は」
「ん?健?それからてめえは…ユウジ!」
ユウの天敵忌ちゃんでした。
驚く忌田(とユウさんと哲)に健は言った
「おい忌田、今日も仕事ご苦労だな」
「それに坊や哲も…健?これは一体何の真似だ?」
「ああ紹介するぜ、ノガミにジュクを併合する為に俺の『愛人』にする事にしたユウと哲だ」
「おっ…あ…愛人」×2(忌田とユウです。坊やは状況が良く分かってないので驚きません)
「健てめェ……哲ならうすうす思ってたが、なんでユウまで!?てめェはどこまでマニアなんだ」
ユウは仇敵の忌田の方がまっとうな感性をしている事になんかほっとしたが
「誰が愛人だっ!!」
という抗議(ツッコミ)は忘れなかった。
「おいおいつれない事言うなよ、ユウジ。上へ下への激しい肉弾戦を繰り広げたのはつい昨晩じゃねえか」
「…そうなのかユウさん?」
哲の素ボケにはつっこまず、ユウは健に一撃拳を入れようとしたがかわされた
「ははは、哲はベットでも淫乱で受け身だが、てめえはいつも積極的でステキだぜ、ユウジ」
ユウは健のセクハラに対し、玄人やめてでも殴り倒してやろうかと思ったが、忌田の変化に気付き止まった。
健たちから眼をそらしうつむき拳を震わす忌田。
(こいつ…まさか泣…?!)
それを見て健は満足気に微笑む。そして哲也も又驚きを隠せないでいた。
「ユウさんまさか…妹さんを又こいつらに」
「ぜんぜん違ががー!!」
完全に勘違いした、痛々し気な哲の視線の方がむしろ痛い!
健様これにまた大満足。つまりユウにとってめさ嫌な環境が出来る。
忌ちゃんを嫉妬させれる。
坊やの悲愴で怒りをこらえた素敵な顔がみれる。
全て健にオイシイ状況だった。
健は至福の表情でユウに言った
「まさにパラダイスだろ?」
「てめえだけ!!にな」
「(小声で)忌田は仕事で忙しくて構えないし、坊やはこーゆー状況でねえと萌えねえし、やっぱ嫉妬されねえと駄目だな、俺」
ユウは自分はアテ馬だったらしいと判断、なら長居は無用
「じゃ満足したろ?俺はけェるぜ」
哲を連れて帰りかけたユウだが健に引き止められた
「待て」
「何だ?」
「てめェがいると忌田とはマンネリにならない適度な緊張が生まれるし、坊やとお前と俺の三角関係ゆー『美味しい』状況が出来る。やっぱお前もここにいろ、それなりに可愛がってやるから」
「いるか!!」
「とりあえず何も失わねぇ賭けはねぇんだ、もらうぜてめえの唇(ニヤリ)」
「やめろっ、マジ止めろー!!」
「坊や、忌田よく見とけよ?」
健は逃げようとするユウを乱暴に引き寄せた
「行くぜ」
「やめ…ん…!」
「!!!」
哲と忌田が見守る?中。
30秒経過。
1分経過。
1分30秒…
「長ぇよっ!!」
ついに耐えかねた忌田がツッコんだまさにその時。
パシャ!
物影からフラッシュが。
「ごめん兄ちゃん、あたし夢の為には鬼にもなるんよ」
ユウの妹、早智子だった
ユウは無理矢理健を引き剥がして妹に詰め寄った
「早智子お前…」
「ノガミの帝王の爛れた関係!!大スクープ決定!!相手が兄ちゃんなんがアレだけど、なんかそっちの人達も『肉体関係』があるんよね?」
「てめぇはユウジの妹…何の真似だ?」
忌田の抗議に
「あたし、女優になる為にレッスン受ける金がいるんよ、でも兄ちゃんには頼れんから、自分で稼ぐ。その為にスキャンダルを女性紙に売ってるんよ」
「ほー、健気なもんだな」
「違うだろ健!!えーい、春木に言って無料でデビューさせてやるから余計な事するな」
「あのオッサンはキモいからもういい」
「早智子ー(泣)」
「この金もってけ!オーディションでも何でも受けやがれ!!」
「ひい、ふう、みい…毎度。大丈夫。現像ん時帝王と兄ちゃん以外は消しといてもらうから」
「あくまで売る気か…末恐ろしい小娘だな」
「早智子ぉ(泣)」
「これで公式カップルだな、ユウたん?」
もう声も出ないユウ。
「…ユウさん、買い戻す金要るんだろ?タネまわそうか」
脱衣麻雀は二度としない、そう心に誓うユウだった。
終