忌田の大事な予定帳を焦がしちゃった…
ある日
「健!健はいるか?!」
寝起きの健様。
「何だ忌田ぁ?どーかしたか?」
つかつかと健に歩み寄ると、忌田は突然ハイキックをかました。辛うじて避けた健だが何が何だか分からない。ただ忌田はものすごく怒っていた。
「何そんな怒ってんだ?何かあったのか?」
「自分の胸に聞いてみろ!!お前の面ぁしばらく見たかねえ!!」
そう言うと忌田は早足で天界を出ていった。
「帝王…てめえ何したんだ?!忌田さんが仕事以外であんな怒ってんの…初めてだぞ!」
「わかんねえ。ユウたんとかと浮気しても、そんな怒ったことなかったし…。別にコアなプレイした訳でもねえし…どーしたんだ一体?」
健は色々思い返してみた
「あ」
「何しやがったんだ」
「昨日タバコ蒸しながら昼寝しちまってよ」
「寝煙草かよアブねえなあ」
「ふと気付いたら忌田の予定帳を半分焦がしてた」
「それだよ畜生、忌田さんなてめえと違って計画的な人だから予定帳にゃ重要な件がびっしり書き込んであンだよ!!それ焦がされたらそりゃ怒るさ」
「そっか。俺使った事ねえから分からなかった」
「さっさと謝って来い」
「おう」
健と木座の推理は半分は当たっていた。
確かに忌田が怒ったのは予定帳を半分焦がされた事だったが、それは予定が分からなくなった為でなく、そこにひそかに挟んであった初恋の人の写真の為だったのだ
「おーい忌田ぁ」
無視。
「悪かったよ、手帳燃やしちまってさあ」
「…」
「予定分かんなくなっちまったか?」
「そんなことじゃねえ…!」
「お詫びに俺脱ぐ…よっと」
「止めなさい!!…もういい!」
「なあ」
「何なんだ!?」
「まだ怒ってんのか…手帳ん中何か大事なもんでも入ってたのか?」
「別に何も…」
「ブラフ、だな。わかった。今日一日一個だけ何でも言うこと聞いてやるよ」
「な…?」
「何でも言ってみろよ」
「じゃあ…真面目に仕事しろ」
「えーつまんない、ぶーぶー」
「何でも言う事聞くんだろが!!」
「…仕方ねーなー」
「まず髭をちゃんと剃って、そうだ髪を堅気くさくする為にも床屋行け!!次にスーツはネクタイ締めて第一ボタンまでしっかり止めろ!!」
「何だよーそれじゃ俺リーマンみてーじゃん」
「うちは一応企業なんだよ!!」
そしてしぶしぶ床屋へ行った健様。
一時間後。
「ちぇ〜俺のげーじつ的な髭と髪が〜」
ぶつくさ言いながら天界に戻った。
「帰ったぜえ?」
「…本当にちゃんと…」
振り返り絶句する忌田。
「忌田さぁん、お茶…え?誰?」
「…健…」
「ええっ帝王?!嘘ぉ!!」
髭を剃って髪を整えた健は、何だかすごく正統派男前だった。やっぱり目はエロかったが。
「…やれば出来る奴だと思ってたよ俺ぁ(泣)」
「ん?惚れ直したか?じゃあやろーぜ♪」
「腰を触るな!!やっぱり中身はおんなじだよな…(泣)ほら!次はスーツだ、タイと揃い!ちゃんと着ろよ」
「えー何か地味だな。タイどう絞めるんだったっけ?」
「もうそこに直れ!!着せてやっから」
で、着せ替えられた健様は…
「総帥…」
キザが思わずそう漏らすほどの威厳と品位を備えていた。
「首締まる〜、いっそ裸がいい〜」
喋ると台無しだったけど。
忌田さんは「馬子にも衣裳」という言葉の真の意味を噛み締めた
「健…じゃあ仕事をさっそく…」
言い掛けて忌田はやめた。漢字もロクに書けないこいつに何をさせたら良いやら…見た目がいいだけなんじゃジゴロくらいしか無理。
「…健ごめん無茶だったよ俺が…(泣)とりあえず漢字から始めような!また帰ったら教えるから」
「ん?どっか行くのか?」
「ああ」
「忌田さん、またあの青びょうたんの接待ですか?別の奴にやらせれば…何ならオレが!」
「いや、あれとのコネにうちの命運がかかってる。失敗は許されねえ。俺が行く」
「へえ…」
「?健?」
「面白そうだな、連れてけよ♪」
忌田は本気で嫌だったが着いて行くと聞かないので仕方なく連れて行く事にした
「いいか?料亭に行っても食うな、喋るな、黙ってニコニコしてるんだ!!くれぐれもそれ以外の事すんなよ!?」
「はーい勿論(守る気ねえよ)」
そして料亭につき約束の時間。警察署長がやってきた。
「久しぶりだな忌田君…ん?そっちは?」
「当社の新しい社員でして…(ほら頭下げる)」
「…う〜ん、あんまうまそーじゃね…むぐっ」
「?何だね?」
「いえ、こちらのことで。(あほかー!何妙な品定めを(泣)」
「いや初めて会ったらまずうまそーかまずそうか見るもんじゃんか?」
「違がががー!!(泣)」
「どうしたんだね、今日はやたらハイじゃないか君?」
「いえ…どちらかと言うとすごいローです…(泣)」
「じゃあ『新入社員』くん、黙って話を聞いてなさい」
忌田はもう健を無視する事にしたらしい。警察署長と何やら難しい話を始めた。
とりあえず暇なのでむしゃむしゃお行儀悪く飯を食う健
「ところで忌田くん…君のトコの新入社員は箸もまともに使えんのかね」
「はあ…」
「ふふん、まあ所詮は筋者上がりの会社だからな。どうにも低俗でいかんな」
つみれを摘み署長に箸で投げつける健。
「…いつっ?!」
(おわあああー!!)
「…あ悪い♪うまく箸使えねーから俺」
「…君の所はっ社員にどーゆー教育をっ!」
「し、失礼しました!こらぁ(もう頼むよ(泣)」
「(わーいいい気味)署長さ〜ん?かあいいだろ俺の上司ぃ?(ムシャムシャ)」
忌田はもうはやくこの場を去りたかったがそうもいかない
「もう、新入社員君は鍋でも食べてなさい」
「オホン…で献金の話なんだが…」
(ちっこんな奴に何で忌田頭下げてんだよ)
そりゃ警察署長だからです
「はあ勿論…」
ケースを開け中身を取り出す忌田。中には札束が山と入っていた…
「なあ、くれてやるんだったら、その金でタンスの一つでも…むぐっ」
署長無茶お怒りの様子。
「す…すいません、この男有能なのですが…戦争中に頭やられて…」
「ひでえ言い様♪なあ署長さーん、ここでボソボソ話しててもつまんねーよ。可愛い子いっぱいいる店知ってんだが行かね?」
「新入社員くーん?!(泣)」
「可愛い娘?そりゃ本当かね?」
署長は食指を動かした
「(やっぱスケベだこいつ、しかもムッツリ)いやあ、英雄色を好むってゆーけど(近藤に意味と用法を教えてもらった)署長もお好きですなあ」
「はっはっはっ…ホントに美人ぞろいなんだろうな?」
「もちろん♪」
「じゃさっそく行こうかね」
「あの…署長?(小声)おい健?お前…」
「だいじぶだいじぶ、嘘はついてねえよ」
健が連れていった先は
「ああら、お初ですわ、わたしタミイでぇす」
「ミミイでぇす」
「確かに美人だ」
「だろだろ!?」
「(小声だが肺腑から絞りだすような声で)健ー!!」
ここはタミミミのお店。確にみな美人ぞろいだった。ただし、例外なく男だったが。
「なかなか…いい娘を揃えてるね」
「光栄ですわ、ふふ」
「今日が俺の命日かもしんない…(泣)」
「さあパーッといこうぜえ!!なあしょちょーさんどの娘が好みぃ?」
署長は答えた。
「やっぱあのタミミミとか言うここのママが」
「やだなしょちょー、乳デカイのが好きなんだろーこのスケベ!!(ばしいっ)」
「(小声だが切羽つまった声で)けーんー(泣)」
「センセと言いインテリってムッツリが多いよな」
「は?何か言ったか」
「タミミミ、ごっ指名〜♪」
「はあい♪」×2
タミミミを横にはべらせながら署長は上機嫌だった。
「ほんと…いい胸してるな…」
「いやぁん署長さんのえっちぃ」
「…もう帰りたい…(泣)」
健はハーレム状態(全部オカマ)で言った。
「な?しょちょーさん、いい店だろ?」
「まあ、なかなかだね…(嬉)時にここはテイクアウトは?」
「どひいー!!(泣)そりゃやばいよー?!」
忌田は泣きながら止めようとしたが無理だった
「もちOKですわ」
「しかもわたくしとミミちゃん二人とも」
「忌田くん、こんなサービスいい店どーして早く教えてくれなかったんだ」
「ええ…すみません(泣)」
「いやあ新入社員君、君の事は悪いようにはしないからな、はっはっは」
「ははは(にやにや)」
そして一しきり騒いだ後署長とタミミミはホテルに向かった。
「けーん!(泣)このままじゃ署長が奴らに食われ…」
「いいじゃん♪滅多に出来ない体験だぜ?双子のオカマに…うぷぷ」
「あほー!(泣)これまでの努力が…水泡に!!ちくしょう、何とか止めねえと…!!」
忌田は色々考えたが、いい策は浮かばなかった。てか呼び戻すのは簡単だがそしたら今までのあらいざらいをブチまけなきゃいけなくなり折角警察と築いてきた関係が粉々に
「タミミミに食われちまった奴を脅してゆー事聞かせりゃいーじゃん。安上がりだぜ?」
見た目は貴公子?なのにいつもより畜生な健。絶体絶命の忌田はふとある人物に思い至った
「ん?どーした忌田ぁ?」
そしていずこともなく忌田は走り去った。
忌田の走り去った先は
「あんた…健の保護者の忌田…だったな」
議員宿所だった
「近藤先生!!」
がばあっ
いきなり土下座する忌田
「な…何だ!?何が起こった?」
困惑する近藤に忌田は土下座のまま言った
「あんたの力を貸してくれ!!他に堅気にカオ効きそうな奴を知らねえんだ!!」
「まあ…体起こせよ。…また健が何かしやがったんだろ?」
「そうなんだ(泣)」
「…まあ同病相哀れむってヤツさ。俺に出来る事ならやるぜ」
何故か忌田に優しい彼は事情を聞くと苦笑した
「健に接待の仕事させるなんて火薬庫で花火するよなモンだろ?まあ…警察署長なら何とかしてやるさ」
「恩に着ます(泣)しかしどうやって…」
「ああ。あいつも政界進出狙ってやがるからな…」
にやけ面でホテルに入る署長。これからの天国のような時間を思いウハウハだった。
しかし。
「お客様にお電話です」
「私に?」
いぶかりながら電話に出る署長。
しばらく強気な口調で話していたが、段々顔色が変わっていった。
タミミミは後ろで署長の会話を聞いていた
「はい、はい…ええ滅相もないです。はい勿論…」
「(小声)いやあねえお役人て。電話でぺこぺこするんだから」
「そう言っちゃ駄目よミミちゃん?所詮サラリーマンなんだから」
「はい…その…近藤先生のお陰でして…はい今すぐ…」
「近藤センセ?ってもしかしてあの丸眼鏡の」
「美味しそう、な代議士センセよね?」
「何かあったのかしらぁ」
署長はひたすら低身低頭すると電話を切った
「すまんが…急用が…」
「ええーそんなぁ」
「駄目よミミちゃん…うふふ、署長さんもお忙しいものね。でも又いらしてね(ちゅっ)」
「勿論だとも」
二人は署長を見送り電話をかけた
「健さま?どーやら妨害が入ったよーですわ」
「妨害?へえ…」
「もう少しであの青びょうたんイカせられたのになあ?」
「うふふ…でもあんまり美味しくなさそうだったし…やっぱり健様が…いやあん♪」
「また美味しく食うか食われるかしてやっからよ」
「本当ですの?そう…健様あの代議士先生が…」
タミミミの報告を聞いて電話を切ると、健は伸びをしてネクタイを外した。
「どうも窮屈でいけねえ。しかし先生か…ふん?」
健は近藤宅に一足先に向かった。
一方近藤は忌田からの依頼…てか懇願を聞き、例の署長に政界進出についての詳しい話をしてやるつもりだった…別に本気ではないが役人というものは肩書きに弱いのだ。
有難そうに聞くに違いない…
どんどん
「誰だ?」
「俺さ♪」
その声を聞き近藤は嫌な予感がした
「おい…健、俺はこれから…」
ドアを開けた近藤はしばし絶句した。
「健…か…」
「こーゆーのも似合うだろ?」
健は素早く部屋の中にすべりこんだ。
「おい!」
「これから署長が来んだろ?」
「…お前仮にも総帥なら…あれを邪険に扱えない忌田の立場も分かって…」
「だって俺、あの署長気にいらねーし、とことんいびりてえ♪」
「質の悪い男だな、本当に…」
近藤は下手に組織勤めなんかしてこんな上司にブチ当る羽目にならなくて本当に良かったと心の底から思った
「…でお前どうする気なんだ?もう止めたって聞かねえだろうから事実だけ言うが、お前があの署長に何かしやがったら忌田の今までの苦労は水の泡だ。お前が馬鹿みてえにフラフラ遊んでられんのも忌田のお陰だろ?」
「俺にそんな抜かりがあっかよ…」
健は邪悪に微笑んだ
「無論バレねえようにやるさ」
「どうやって…」
ピンポーン
「おい来たぞ、とりあえず隠れろ」
「いいっていいって」
「知らねえぞ…」
近藤はドアを開け署長を迎え入れた
「これはこれは近藤先生におかれましては…」
言い掛けて健に目を止める
「君は…」
健はにヤりと笑うと署長の目を意識しながら近藤に抱きついた。
「近ちゃ〜ん♪」
「?!健何を?!」
「き…君近藤先生とはどういう…?!」
唖然とする署長。
「ん?ああしょちょーさん♪うん、近ちゃんたあ尋小以来の超ラブラブ大親友♪」
「なっ…まさかっ!近藤先生これは…」
(おい健お前なあ…)
(いーじゃん俺たち深〜い肉体関係でつながれてるし。大差ねーよ♪それともその事バラされたい?)
「(最悪な男だ…)ああ…そうだ。健、いつまでたってもお前のヤンチャは直らねえな…」
「近ちゃんも昔っからむっつりだよな♪」
署長の顔がどんどん青ざめていった。
「な…近藤先生とお知り合い…」
そんな馬鹿な、一人は代議士。対してこいつは筋者系アングラ企業の新入社員、知り合いな筈がない…そう言い掛けて署長は思い直した。
そういやこの代議士は元は闇煙草で財を築いてから政界に現れたというし、そういう世界の知り合いがいてもおかしくない。つまり…
「さ、左様でしたか。そうとは知らず先日は失礼をば…」
すぐさま腰が低くなる署長。
だが健はこーゆー小役人根性が大嫌いだった
「なあなあしょちょーさん、なに頭下げてんだよ♪俺ぁ『箸もロクに使えない』『所詮は筋者あがりの会社』の一社員なんだぜ?」
「…あ、い、いえあれは…(泣)」
「(ニヤニヤ)まあ気楽にいこうぜ♪ははっ♪(ばしぃ!)」
「は…はははは…(あうう…泣)」
「…こいつに関わったが最後…ただじゃすまねーな…」
しみじみとそう思う近藤だった。
健の嫌がらせ(脅し)はなおも続く。
「あのさあ、しょちょーさん?」
「はっ…はい、何か?」
「一つあんたに言いてえことがあってよ…」
(はひいっ!!)
「な…何でしょうか一体…」
怯える署長に健は言った
「俺の上司♪の忌田…さんにいっつもあんな態度で当ってンのかよ」
「は…はあ…」
「言っとくけどよ、忌田さんはホントならあんたなんぞにエラソーな口効かれる人じゃねえんだぜ?」
「は、はい…以後気を付けます」
「それとよ」
「まだあるんですか!?」
「あー…何か面白ェ事ねーかな。こうして近ちゃんもいることだし何か面白いことやってくんねーかなあ?しょちょーさん?(ニヤり)」
「は、はいい??!!」
「え?嫌なの?」
「う…い、いえそんな事は…」
「じゃ屋上バンジーやってみよっか♪た〜のしーぜえ?」
「ひいいい!!!(泣)」
「その後松浦あ●と田●邦衛の物真似な♪」
難易度高めだ…近藤は胸の奥でつっ込んだ。
さんざ健にオモチャにされまくった挙句
今後忌田さんには一切偉そうにしません
という念書をとられた署長は泣きながら帰っていった
「可哀相な事すんなよ」
「どこが可哀相なんだよ」
「堅気になったらみんなあんなモンなんだよ」
「へえ…俺玄人になってよかった」
そして健が天界に帰ると。
「帰ったぜえ♪忌田あんな署長にゃ二度と頭下げなくて…ん?」
机につっぷして忌田は憔悴しきっていた。
「…健…もう二度とお前にゃマトモになれたぁいわねえよ…(泣)写真燃やされるし胃痛えし…今日は厄日だ(泣)」
「…顔色悪いな?」
「もう…帰…る(フラフラ)」
「おいだいじょぶか?」
忌田はあまり大丈夫ではなかった
ぐら
「おい…」
「いや、少し眩暈がしただけだ、平気だよ」
「平気な筈があるかよ。いいから寝てろ」
「健…」
「ちょ…何だよ帝王!!忌田さんがお疲れなのも元はと言えばてめえのせいだろが」
健は忌田に無言で肩を貸して部屋に連れていき、寝床に寝かせつけた。
「…情けねえな…」
「情けなくなんてないです、全部帝王が悪いんすよ!(泣)」
「…すまねえ忌田…」
「…ハハ、もう慣れてる…」
心配そうに顔を覗きこむ健に
「おめえがあんまり優しいと…気味が悪いな」
と忌田は笑った。
「おい忌田。その…すまねえな俺、役立たずで。俺ァ学がねえから博打しか出来ねえんだ。だからお前に迷惑ばっか…」
珍しく気味が悪いくらい殊勝な健
「おいおいやめろよ…今までずっとこうだったじゃねえか。何をいまさら」
「健、やっぱり芯からの玄人のお前に…こんなセコい仕事させようとした俺が浅はかだった…気にするな、カタギじゃおさまらねえ…そんなお前だから俺ぁ組んだんだからな」
「…」
「全部覚悟の上で俺が選んだ道だ…だから、そんな顔すんな」
「き…聞いちゃいらんねえよう(泣)」
涙にくれて木座神は部屋を出た。
「…忌田」
そっと健は忌田をかき抱いた。
「苦労かけるなあ…だがよ俺とこのままいたらもっと苦労するぜ」
「覚悟の上だ」
「なあ忌田…結局よ、あの予定帳の中には何が入ってたんだ?」
忌田は笑って答えた
「写真だよ」
「写真?」
「ああ…。初めて好きになった人のな…大の男が、後生大事に持ち歩くもんじゃねえよな」
「そうは思わねえよ…」
健は左手の指輪を示した。
「俺もおんなじさ」
「…お互いバカ、だな」
「…そりゃ怒るのも無理ねえや…代わりに、俺のあそこの毛入れるか?」
「遠慮しとく…」
「そう?なあ、あのさ我が儘ついでに言っていいか?」
「なんだ…?」
「今…俺の他に好きな奴がいるなら教えてくれよ」
「なんだよ気色悪ィ、年ごろの娘じゃあるまいし」
「いるのか」
忌田は苦笑した
「いる訳ねえだろ。仕事が恋人の日々だよ」
「つまり一番は俺だな?」
「…ああ、そうだな、お前が一番だよ…健?」
ゆっくりキスすると健は明るく微笑んだ。
「…なにを…(恥)」
「好きだぜ忌田♪」
「…っ…」
「一緒にいんだから俺の写真はいらねーよな、これからも頼むぜ♪」
「…ああ…(泣)」
「泣くなよ?なあ?」
何だかラブラブな二人だった。可哀想なんはキザだけです。
翌日、忌田の机の上に新しい予定帳がおいてあった
「…健の奴…」
苦笑しながら手に取る
「妙な気きかせやがって…」
だがうれしい気持ちを噛み締めながら開くと写真が挟んであった…
「…!!」
忌田はダッシュで健の所へ向うと
「おう忌田、予定…」
「このどあほう!!」
飛蹴りを食らわした…躱されたが
「な…何怒ってんだよ」
「何なんだこの写真は!!」
「え?こないだの夜の写真じゃん。俺らが愛し合ってんの、それ見りゃいちもくりょーぜん、だろ?ほらこれイッた瞬間の顔ってば可愛いったらない…どごふぉっ!」
「この性獣っ!!しばらく顔もみたくねえ!!(泣怒)」
「おい、待てよ忌田ぁ」
振りだしに戻りまちた。
健様のあのカッコは、どう考えてもスーツとはいえカタギにはみえません。じゃあ髪切って、髭剃ったら…ああなる訳です。でも、人間中身が伴わないと駄目駄目ですね
ちなみにタイトルは「パパの大切なクラリネットを壊しちゃった」のパクりなんですが…言わなきゃ気付きませんね