秋のバカップル模様
「せんせー!」
満面の笑みで飛びついてこようとするわんこ帝王に、近藤祥二は冷たく言った。
「やらねえ」
「先生最近つめた過ぎ!!ひでえよ、あんなに愛しあいまくった俺たちなのに」
「誰が誰とだ…とっとと帰れ」
「またまたそんな冷てーコト言うー…そんなんだから龍龍もさみしがってんだぜ?」
「(ぴく)小龍が…?おい健てめえまさか小龍を…」
「食ってねえよ。だって何か忙しそーだったから」
「…?」
「何か呟きながら海ん中ジャブジャブ入ってってた。魚でもとっ捕まえるのかなあ?」
「や、ヤベエー!!!小龍〜!!(泣)」
近藤は慌ててダッシュした。ついでにくっついていく帝王。
小龍の密輸船の中に駈込むと、毛布にくるまった小龍が恨めしそうな顔で振り返った
「…何しにきたんだ?」
「小龍…何を馬鹿な事を」
「馬鹿…フフ、馬鹿さ。どうせオレは大馬鹿だよ…(涙声で)奴隷に愛想尽かされるのも当然だ…なんで…なんで…うっ…うっ…あんな死神が」
どうやら、最近、印南と仲良くしているのに嫉妬しての所業らしい。
「違うんだ!!あいつはただの友達だよ!!そりゃ…大切な友達には違いないが…寝た事ねえし!!」
「あいつだけじゃねえ!!健だってそうだろ?まさかあいつと寝てないなんて言わねえよな?」
「…健なんて…ただの犬畜生だよ!!健わんこだ。まっとうに嫉妬なんかするなよ!!相手ケダモノなんだから!!」
「あ、俺、犬って言われてる…なにさなにさー!!(ぶーぶー)」
うねさい帝王を無視して、小龍をなだめにかかる近藤。
「とにかく…小龍、俺の主人はお前だけなんだから…」
「…」
近藤の説得に、しばらく涙目で近藤を見つめていた小龍だったが、しばらくしてこう言った。
「じゃあ、ワンと言え」
「…は?…」
「お前はオレの奴隷だろ?なら、ご主人様のオレの命令どおり、犬になれと言ってるんだ。」
「わーい先生おそろい〜♪」
しばらく沈黙した後、近藤は言った
「わん…」
「…」
「満足か?」
近藤の問いに無言の小龍。
「お前の為になら犬でもなんでもなるよ。だからもうそんな馬鹿な事しないでくれ」
「…近藤(泣)きっとだぞ!!お前はオレの奴隷だぞ!?(抱きつき)」
「(優しく抱き締めて)ああ…もちろんさ」
どっちが主人だかわからないが、まあ微笑ましい状況の中、一人情緒を解さない帝王はムラムラした。
「泣いてる龍龍も何だかやさしーセンセも萌え!!もう食う♪」
「お頭に触るんじゃない、この犬っころ!!(はがい締め)」
「なんだよーブー!お前この前も俺殴った髭のおっさん…」
「頭に手出しはさせやせんぜ。先生!あんたもあんまりでさあ。どれだけお頭が落ち込んでたか…」
「…すまねえ」
「すまんで済んだら世の中万万歳でさ!!お頭がどんだけセンセの事好きか知って…」
「知ってるよ」
「じゃあなんで…」
副頭の問いに、近藤は疲れた笑みを浮かべた。
「疲れたんだ」
「オレにか!?」
「お前に振り回される自分にさ」
近藤は続けた。
「お前に愛される快感と罪悪感、どちらもが強すぎて…もう…俺は自分が分からなくなっちまって…」
「近藤…」
「また二人の世界だな。愛し合ってんのに何でそう深刻になんだろな?」
「あんたにゃ一生理解できやせんよ(泣)」
「ブー!なにさ、みんなして俺を無視しまくってさ。俺、こんなにかーいー帝王なのにー!!暇!!髭のおっさん遊ぼうぜ♪」
「おたく…いくつでやすか?…」
「快感…じゃあオレといるのは不快じゃないんだな?」
「ああ。不快なのは自分だけさ」
「ならなんであんな死神といるんだ!?」
「死神くん、そんなにエッチうまいの?」
健の言葉を黙殺して続ける近藤。
「あいつは天使みてえにあったかい奴だから…さ。一緒にいると俺でも綺麗になれそうなんだよ」
「ポン中の死神に清らかさで劣るセンセも大変ですね」
「…誰も構ってくんねーなら…いーもん!!(副頭に抱きつく)このオッサンと遊ぶから」
「俺は…どこまで堕ちちまっても…みじめな事になっちまっても…玄人の生き方に憧れちまうんだ。汚え凌ぎ方だとしても、勝負の世界は純粋で自由だから…」
「だからあの死神なのか?!近藤!」
「おっさんさあ、やっぱ龍龍に掘られてんの?」
「な訳ないでやしょう…本当に頭大丈夫でやすかい…?…って!!」
「いい胸筋だなあ♪ワイルドでなかなかせくしーじゃあん」
「…あんた…まさか…」
「うん。食っていい?」
「いい訳ない!」
「なんで?」
「あ…あんたアタマおかしいでしょ!?こんなオヤジに…」
「だって俺ないすばでー好き♪しかもなんか忌田と同じ臭いすっし♪」
「は?…そりゃ副頭と参謀じゃそりゃ似てもきやすよ…もう離してくだせえ!!(泣)」
「やだも〜ん♪んー、何つーかこう抱きつきたくなるトコが似てるなあ♪にしても本当いい筋肉だな♪そういや髭キャラ初めてだなあ」
「いい加減にしてくだせえよ!!(泣泣)」
「おーかあいい、かあいい♪イケるイケる♪」
なんて健さまが上機嫌でいると
ばしゅう!!ばしゅう!!
「(絶品の反射神経でよけながら)何で撃つんだよ、龍龍?」
「うちの副頭に何しやがる!!」
「いーじゃん!!龍龍にはセンセがいるじゃん!!俺はだからこのオッサンとしっぽりすんだよ。な?」
「しやせんよ!!」
「なんでさ…(不満げ)」
「あっしはクニに女房もガキもいるんですぜ」
「いてもいーじゃん。俺気にしないから。浮気でいーからさ(抱きつき)」
「離せ!!健健!!」
「やだもーん。あ?さてはまた嫉妬してんな?」
「違う!そいつはオレの大事な部下だ!手出すんじゃねえ!!」
「部下いっぱいいるじゃん龍龍〜ん。だからこのおっさんもーらい♪(ますます抱きつく)」
「あっしは物じゃありやせんよう!(泣)」
「この獣め…何抱きついてやがる…っ!!そいつに抱きついていーのはオレだけだ!!」
「…小龍…お前…」
(健のこと言えない、ダダっコじゃねえか)
…と近藤は腹んなかで思った。
でさんざもめた末に
「じゃセンセちょーだい」
「やらん!!」
「龍龍ばっか独り占めずるいー!!」
「お前には忌田がいるだろう?」
「ユウジもいるしな」
「たんないたんない!!もっとほしー!!」
「小龍…もうこの生物はほっとこう。犬だから人語はどうせ通じねえよ」
「センセも龍龍の犬のくせにー!!(ぶーぶー)」
「…忌田やユウジって人も大変でやすね、こんな生物を毎日…」
「愛しあってるしい♪」
「とにかく小龍…これからもお前が、俺の唯一の主人だ。愛してる…」
「ブラフだったら生皮剥いで、その血…最後の一滴まですすってやるぜ?」
「かまわないさ」
「…だから健健」
「なになにー?♪」
「てめえは邪魔だ!!失せろ!」
「嫌。」
「…お頭今電話してきやした。じきお袋さんが迎えにきやす」
「ご苦労」
て訳でワンコのお母さん、お迎えに来たんだってさ。ダダッコの世話って大変だね。
しかしこれからしばらく。副頭も奴につきまとわれたという…
「奴のストライクゾーンがどんどん広がってるな」
「なんとかなりやせんかね、お頭」
「出来るならオレがしてる」
多分、一年くらい前の駄文。
もううちの帝王はなんでもいいようです、食えるなら。まあ帝王当人は
「ちがうもんー!!俺、グルメなわんこだもーん!!」
と反論するでしょうが