発端
それは突如・・・悪夢のように、忌田の元に現れた企画であった。 「忌田さあん…」
「なんか用かコピー人間」
「ううーんエクセレントな企画を考えたのですが・・・
「却下だ」
「いや…せめて聞くだけ」
「却下!!」
仕事で手一杯でにべもない忌田に向けてもう一人の声が上がった
「聞くだけ聞けよ忌田。俺も企画に参加したんだぜ?いやあ…仕事するのもたまにはいいよな。でなー・・・」
「大却下だ!!春木が関わっただけでもろくな事じゃねえのが分かる上に、健!!てめえが企画なんて絶対ェ
『人類に多大な迷惑』
をかけるに決まってる!!聞く価値すらねえ!!取り下げろ!!」
「ひでえよ忌田ン」
「そんな気色悪ィ呼び方すんな!!」
「なあいーみたぁ〜ん(ふーじこちゃーん、のイントネーションで)」
慣れ慣れしく肩をかき抱く健
「やめろっ!(赤面)駄目ったら駄目!!」
「…あー…いいうなじしてんなあ?わぉ、腰細ぇ〜♪」
「さ、さわんなっ―!!(真っ赤)セクハラやめいっ!!」
「可愛い〜いみた〜ん♪って…やべやべ。なあいいだろ忌田ぁ?俺さ、お前のために考えたんだぜ。いつも金のやり繰り大変つってるからさ。金になること。聞いてくれよ〜」
「・・・お、お前が…俺のため…に?」
何だか嬉しい忌田
「うん、テレビって最近出来たよな?あれの番組を造るんだ。でもって、その合間にCMって奴を流してそれでノガミグループ゜の宣伝するのさ。これからは情報メディアの時代だって言うだろ?」
「健…どうしたんだ?そんなまっとうな事言って」
ハムスターがパソコン操作したかの様に驚く忌田
「俺はいつも真面目だぜ?でよ、CMが最大の効果を発揮する為にはやっぱ人目を集める番組でなきゃならねえからよ、すげえ企画考えたのさ」
「ううんトレビアン」
「健…お前すげえよ…すげえ企画だ。やっぱ俺が見込んだ男なだけの事はあるよ…で何だ?」
感激で泣かんばかりの忌田は、次の健の台詞にやっぱり泣かされた
で、この企画とリポーター募集の張り紙がジュクや上野に貼りまくられた。
この後事態は急展開をみた。
レポーター募集編
で、面接会場は
どがちゃあ!!
ドバキッ
ばたむ
しばらくして個室が騒がしくなった。
ドバキッ!
ズビシッ!
そして。
ガチャ。
その瞬間、ドテ子の閃光の蹴が健に炸裂した
哲さんなんすが。
ユウたん寝起き編
「忌田さあん!!弁当です」
「木座、うちにも弁当!茶もな」「よしきた!!カメラオン!!「ノガミ」
「ぐっきりテレビ!!はじまるでー」
かくして悪夢のような番組は始まった
この番組は明るくて清潔な雀荘を目指す、ノガミグループの提供でお送りします
「さあて一人目のぐっきり玄人はージュクの一匹狼けど 最近ヘタレの影が濃いもっぱらコメンテーターな ユウさんやで♪」
「ううん…」
「お?寝言やで?」「ん…」
ユウが目を開けるとそこにはEDテーマが流れ始めた。
後日談として(テレビには放映されてません)
初回の視聴率が良かったので忌田に(しぶしぶながらではあったが)誉められご機嫌な健の前に第三夫人(笑)が沈痛そうな顔で現れた
「健…」「うす、ダホ中年!!次の企画会議やんでー、はよきー」
「おう、今行くぜドテ子」
小龍寝起き編
「なあエロ中年、次は誰いくんや?ダーリン(哲)かいな?!」
真剣に悩む企画者たち。
「とにかくリーゼントは没や!!」はい二人目決定〜。
「って訳でうちらは今」
ぱしゅうん(発砲する音)
「(小声)ちょ…マジ実弾やで」二人は船内の最深部へと潜行。途中出てきたザコは健とキックの鬼ドテ子によって蹴散らされた。
やがて
「何やら重そうな扉の部屋やな」健はカメラを置き針金を取り出した。
「鍵まで開けられるんかいな。あんたホンマ器用やな」「(答えずに)行くぜドテ子」
「(懐中電灯をつける)うわ…なんやねん、この部屋…武器だらけや」健はズラリ並んだ武器の合間にしつらえられた、就寝スペースを目ざとく見つけた。
山積みになった武器や荷物の中によもやそんな一角があるとは誰も予想だにしないだろうが、健の汎用ハニー用アンテナは鋭かった。簡易寝台の上、静かに寝入る小龍の姿があった。
「わあ、確かに美形やわ…キレイな兄さんやなあ。しかし…これで鬼畜なんか?」ここでCMです
ここまでは次世代型雀荘を目指すノガミグループの提供でお送りしました。引き続きノガミぐっきりテレビをお楽しみ下さい
剥きっ
「きゃあー!!!!」にじり寄る健から逃れるように壁ぎわに体を寄せる。以前の記憶とあいまって、何も身につけていないのが更に小龍の恐怖をあおった。
「来るな!なんでお前が…」ドテ子の満身の蹴を小龍は躱した
「師匠仕込みのうちの蹴が…」「フン、兄さんあんたの裸はな、日本全国のお茶の間に放送されたんやで」
「何?!」小龍は縄で手早くドテ子を縛り上げた
「俺の緊縛アートはどうだ?体験できるたぁ運がいい」だがその時
「く…う…健様ふっかつーっ!♪」健様縄ほどきかける。
「ちょ、変なトコ触んなや!」EDに突入〜!
さて二回目も素晴らしい視聴率を稼いだ健さま。
「さて次の企画について話す前に、健、ドテ子。言っておく事がある」
タミミミ寝起き編 「うちらは今」
タミミミの家は戦後復興期の日本にあるまじき、ゴージャスでしゃれた、かなりでかい邸宅だった。
「何やオカマ二人きりでこんなバカでかい家に住んどんのかい!」二人は屋敷内部へと侵入した。
さて二人が潜入すると
「ぴ…ピンクやっ!!」邸はピンクを基調としたやたら乙女な雰囲気で統一されていた
「壁紙もカーテンもピンク!!飾ってあるのは限定版のごっつ高いテディベア!家具はマホガニーのめちゃ高いやつに、食器はアェッジウッドやっ!!なんぼしとんねん」
「詳しいなドテ子」
「くっそー腹立つわ〜戦災孤児で飯もままならんもんもおるゆうのに!なしてこんな!吹き抜けバーベキュー用スペースとかあんねん!」
「落ち着けよドテ子、俺が日本再建しちゃるからも少し待ちな」
「エロ中年に出来んの言うたら子づくりくらいやろが。もうとっとと行くで!」
「じゃあ俺としよ…いや何でもねえよ。しかし怒ってる顔も素敵だドテ子」
「さてー何やプチギャラリーになっとる廊下すぎるとやたら広いリビング。寝室この奥かいな?」
「オカマの寝起き〜やっほー♪」
「何や気色悪いなあ…撮って大丈夫か心配やわ…」
「ノープロノープロ♪」
「ところでダホ中年、なんでこいつらと知り合いになってんや?」
「ああ昔。偶然入ったのがあいつらのバーでな。何かすげえ色眼使って言い寄られてな。結局ホテルにシケこんでよ」
「あいつら抱いてくれって?!」
「いや、あいつら二人がかりで俺を食おうとした」
「げ…まさかあんたそのまま掘られ…」
「いや。食い返した。まあ終わった後あいつら満足してたしノープロだ♪」
「もう怪談や…ツッコム気力も失せる…ああ!仕事や仕事!うわ、あいつらダブルベッドで寝るのも一緒かい!怖いわっ」
「うお〜シースルー!!ピンクのネグリヂェかよ!絵的に美女だからエロくていーぞう」
「うふぅん…健さまぁん…」
何だか悩ましそうな寝言…声は太いが
「何か言ってんで?」
中継を見てた忌田さんは脱力していた。
「何やってんだこいつら(泣)」「ああもう!とっとと起こすでダホ中年!こらオカマども!ぐっきりや、起きんかい!」
「言うとるやんけ(小声ツッコミ)」
「ひでぇじゃあん(嬉しそうに)じゃま、今度は現実でいっちょ続きやるか?」「…うちのが”いやーん”やわ、はあサイアク」
EDテーマ
ちなみにこの回の放送が終わってからしばらく、天界の電話という電話は鳴り止まなかったという
企画会議(正しくは反省会)が開かれた。
「健、ドテ子…お前ら全国放送のレポートしてる自覚、あんのか?!」二人が今回レポートすることになったのは…
「心配やわ、視聴率」お気づきとは思うが、次なるターゲットってば…卵大好き!アマミのハブ君なのでした。
「ハブのヤサみっけ」薄暗い洞窟?の中…
「な、なんかおる…」完全にホモサピエンス扱いされていないハブだった
洞窟内は温かく何だかんだいって、わりと快適である。
「いーなーここ。俺も住みたいかも」「…いるわ…」
「しかしこれじゃ寝顔見えねえな」いつのまにかこの番組は『楽しい生物』かなんかになっていたらしい
「いくで!ぐっきりー!い!?」EDでーす。
第四回企画会議
裏世界の住人の癖に教育効果を気にする人々だった
「よし、じゃあ次は第五回記念スペシャル深夜特番な」忌田の涙ながらの説得により、何とか番組は生放送でだけはなくなった
「(小声)忌田さん…もしテレビで放映出来ないような事が起こったとしても、編集出来ますから」木座の慰めに忌田は黙ってうつむくだけだった
「ナマじゃないから何やったっていいんだよな、楽しみ楽しみ」
近藤先生愛人宅深夜突撃レポート編
「さあ!やってきました第五回突撃レポート!今回は特別一時間!しかも深夜にお送りするで〜!」「さあて、突入…でも割とあっさり入れたなあ…こーゆートコって警備システムとかが完備されとるんちゃうん?」
ちなみに二人は入り口付近の観葉植物に隠れ様子をうかがっている
「何や、今日は女だけかいな?」ガラガラ
「うお!風呂場の方だ!センセかな?!うおー見にい…」健はものすごく大はしゃぎだがさすがの先生も暁実さんも、まさかこんな奴らが忍び込んでいるなんて思いもしていないので気付かない
「うおー!!やっぱバスローブだよう(大興奮)しかも濡れててなんかエッチだ」近藤は何かささやきながら、ベッドに座り暁実の肩をかき抱いた。
「わー政治家てこんな事やっとるんかい!他人のプライベートに口出すモンやないけど何かむかつくわ!あ!き、キスしとんで!?ダホ中年見たか?」
「んーえらく気のないキスだなあ。義理キスだぜありゃ。暁実ちんかわいそーに。あんな可愛い顔して乳でけえのになあ」
「ほんまか?ってか分かるもんかいな、マジかそうでないかて」
「俺ぁ色事にかけても玄人だぜ!ほら暁実ちゃんを見ろよ」
「何や嬉しそうやないな確かに」
「何だよ〜やっぱ龍龍一筋かあ?」
「は?誰や」
「いやこっちの話。暁実ちん収録終わったら俺が慰めてやるぜ♪」
「ダホが…」
先生と暁実さんの会話
「先生…もしかして私に厭きたの」「何や…トレンディードラマみたいな展開やな」
「センセてば…龍龍といる時も…まあそうなんだが、冷たいフリが上手だよな」
「フリゆーかホンマ冷たいんちゃう?うちの勘では別に女がおるで」
「ピンポーン!ドテ子鋭い!暁実ちゃんの他に芸者の愛人もいるのさ…でもそっちのが古株な上に別に本命じゃねえぜ」
「だから何でそないに詳しいねん」
「そりゃ俺が本命だからさ」
「アホ、見え見えの嘘つきなや」
「別にまんざら嘘でもねえんだがな…お?遂に暁実ちゃんが泣き始めたぞ」
「いっそ捨ててくれたらいいじゃない!私お金は好きよ。でもこんな冷たい関係続けて苦しむくらいなら贅沢しても…辛いだけ。別れたいならそう言って!私にもプライドがあるわ!」
「暁実…」
「うわあシュラバ★ラ★場やでこれ…何か…どうなんねやろ?これマジドラマかいな!」
「う〜ん暁実ちん、さすが!いー女だなあ♪本命別とはいえセンセも勿体ねえことするなあ…まあ俺が後で頂いちまおう」
「何やちったあ良心痛むんかい、あのセンセ謝ってるで。暁実は知らん振りや。まあそりゃそーやろな…あ!」
バシィ
「殴った!暁実ちんセンセ殴ったぞ!!」「…お前…」
さすがに殴られたのは腹が立ったのか先生も声を荒げた
「誰の金でこんな生活出来てると思ってるんだ」「やて」
「よーし…折角深夜でしかも生じゃねえんだから、すげえ事しよ」
「何するねん?」
「電話」
「誰にや」
「暁実ちんの疑問の”本命の”人にだよ」
そう言う健の表情は、まさに悪魔そのものだった
ジリリリリン
「あ、もしもーし。龍龍?おれ。健け…あ!切るな!切るなよ!センセの事だぜ?んふふー聞く気になったかよ。今な、センセってば愛人のおねーたんともめててよ…ん?ああ、いたよ。ずっと前から…しかも二人。ああすぐ来てくれるって?ラジャー♪場所はな…うん、うん、じゃ待ってるわ♪じゃなー♪これでよし、っと」ピポピポピポーン、激しくチャイムが鳴らされた
「誰だ?こんな時間に」
止む気配がないので近藤は立ってインターホンに出た
「近藤…!?」
「!!!?小龍…てめ…何故ここを」
「タレコミは本当だったか…さっさと開けろ。さもなきゃ鍵穴銃でブチ抜くぞ!!」
「…分かった…」
観念してドアを開けると、小龍は素早く滑り込んだ
「来てもうたな…しかも密輸プリンス…あのセンセとどないな関係なん?」
「見てりゃ分かるって…お、予想どおり不機嫌だ…しかしセンセってば女の事は内緒だったのか…ふふ」
「ホンマ嬉しそうやな」
「もっちろぉん」
突然部屋に乱入してきた美青年をみて暁実は眉をひそめた。
「誰?」
「あ、暁実…いや、これは…」
「俺は近藤の主だ」
「あ…るじ?」
近藤の顔が目にみえて蒼くなる。
「近藤、お前俺に隠してこんな所に愛人囲ってたのか」
「小龍!別に隠すつもりは!」
「ちょ…一体何なのよ!」
成り行きを見守る出歯亀二人は。
「主?あの美青年が?どういうこっちゃダホ中年?」「せん…せ…?」
呟く暁実を小龍は値踏みするように眺めた
「成る程高く売れそうな『いい女』じゃねえか」
「な…」
彼女はようやく自分がかなりあられもない格好であるのに気付き慌てて布団を被った。それを冷たく見やって小龍は近藤に詰め寄った
「だがな…お前まさか忘れた訳じゃねえだろ…お前はオレの」
「な、何…何なの?先生?その人、あからさまにカタギじゃないでしょう…」
「てめェもそうだろクソ売女」
近藤は諦めたように答えた
「忘れる訳ねえだろ俺は…」
答えかけた近藤の顔を引き寄せ小龍は口付けた
「…あ…」
さすがに絶句するドテ子と「よーしこれぞモノホンの修羅場だあっ」
やたら満足気な健だった「ちょ、ちょっとあなた…!」
怒鳴りかけて暁実はおし黙った。近藤の頬が紅潮し眼がうるんでいる。どこか淫らなその表情に、暁実は言葉を失った。
「近藤お前は俺だけの玩具だ」
「ダホ…中年、ちょいこれって…」
「うひゃほーい!!センセ、本領発揮だっ!さあ!ずんどこいけー♪」
「近藤…見せてみろ、お前がオレのものだってこと」
「…小龍…」
小龍は近藤のローブの胸元に手を入れる。
「先生!」
たまらず暁実は立ち上がった。
「女、やかましいぞ」
近藤は暁実のことを十二分に意識しつつも、小龍がもたらす快楽の波には抗えないでいた。
「…教えてやれよ、この女に。オレじゃなきゃ駄目だってこと…」
「…エロ中年。あんたまたきっついネタ仕入れたな…」
「だろだろだろ?正に深夜番組にふさわしいネタだろ?」
ちなみに本部では忌田と木座が青くなっていた
「やばいっスよ忌田さん…相手は代議士っスよ?間違いなく番組打ち切りになりますよ」
「そんだけで済みゃいいがよ…」
「やっぱぐっきりつったらここまでやらねえとな」
「知らんでぇ…マジエラい事になってんで」
手を休める<事なく責め続ける小龍を、近藤は懇願するような眼で見上げた。
「どうした?あの女に見られるのが辛いか?お前が悪いんだ、オレに隠し事なんで…」
「ち…がう、小龍…俺はお前との関係を続けるために…!」
おぼろげながら事の輪郭が暁実には見えてきた。
「先生…じゃあ私とのことーまさか全部隠れ簑だったの…ゲイだってことの」
「そいつは違うぜ。女、この先生はゲイなんて安っぽいもんじゃねえ。とびきり上等の…」
「小龍もういい!暁実すまない。俺は…お前をいい女だと思うし…飽きた訳でもない。ただ」
近藤は乾いた唇を舐めた。
「こいつでないと、駄目なんだ俺は。畜生にも劣る男さ…俺は」
暁実の眼が大きく見開かれた
「ひ…ひどい…あんまりよ…私…私」
それ以上声も出ない暁実を小龍は冷たく一瞥して言った
「てな訳だ…言っておくがこれをネタに近藤を脅そうなんて思うなよ」
そして端正な笑みを浮かべて続けた
「コンクリで埋められて海にダイブする事になるぜ」
「おい小龍…」
「オレはやると言ったらやるぜ…知ってるだろ?お前を思うままにしていいのはオレだけだ」
「…今度は展開が間違ったハードボイルドや…」
「いやあ龍龍…相変わらず独占欲強ェなあ。可哀相に暁実ちん、声も出せない程ビビってるよ」
「当たり前や…しかし…どないなんねんこの番組?マジ放映出来るんかい?」
「え?深夜ってこんなもんだろ」
本部では忌田さんとキザが弱弱しいツッコミを入れていた
「違ェよ…(泣)」
てかこれから小龍とセンセの熱〜い夜!に突入か?!」
「いっ?!ま、まじかいな!」
「わーい!緊縛プレーイ!!小龍あの様子じゃ、SMで目もあてらんねえくらいグチャグチャになんまでやるぜ♪」
「緊縛ぅ?!しかも代議士…ちょい!これ24禁どころ違うで!人倫にもとるやろ!!」
ちなみに本部
「エッSMっ?!どどどどうしまって、忌田さん?!だ大丈夫すか!?意識が…ない!?わ〜っ!!(泣)」再び現場
「でも暁実ちんかあいそーだなあ〜俺が出てって抱きしめてあげたい。でもってそのまま…」「小龍…一つだけ教えてくれねえか」
硬直する愛人(女)の前で愛人(男)に愛撫されながら先生は言った
「何だ?」
「この場所知ったのはタレコミだって言ったよな…一体どこからのタレコミだ」
「…そりゃ…」
言い掛けて小龍は何だか嫌な予感がした
「ぐっきりぃー!!(やたら明るく)」×2
「…畜生…ハメられたあっ!!」
嫌な予感が的中し絶叫する小龍
「…カメラ…!?」
小さく、しかし絶望的に呟く近藤
「いえーいセンセ小龍そして暁実ちん!!全国放送だぜっ!!」
「いや…そやけど今回は生ちゃうからちゃんとヤバいシーンは編集…」
「小龍…頼みがある…」
「…何だ近藤…」
「コンクリで固めてダイブさせてくれねえか『こいつ等』」
「こ、コンクリ?!ざけんなや議員センセ!あんたそこの愛人の扱いといい、何や情ってもんが欠落しとんのちゃうか?」
「…暁実に関しては本当に悪かったと思ってるが…お前らについては…人の私生活を覗き見た上放送?…いくら運がない俺とは言えあんまりだ!!同情の余地なんか一切ねえよっ!!」
「オレもてめえらにゃ借りがある。近藤の望みどおりコンクリで…」
「ドテ子下がってろ♪ほお、言ったな…出来んのかよ?小龍にセンセ。この俺を沈められんのか、え?」
健は口元に笑みをたたえつつも目だけは笑っていなかった。
「…くっ」
威圧感に押され、たじろぐ近藤と小龍。
「かばってもろといて何やけどタチ悪い男やなあ、あんた」
辺りに漂うインモラルと威圧感など種種モロモロについに耐えかねた暁実は大声で泣き始めた
「ふえええん…恐いよう…いやだよう…」
「暁実…そんな子供みたいに泣くんじゃない」
思わずフォローする先生と
「ンな女ほっとけよ」
冷たい小龍
「泣くなよ暁実ちん…どうせ泣くなら俺の腕の中で…どぐわっ…痛」
「ええ加減にせいっ…なんや収集つかへんからこれで今日は終わりますぅ(関西弁アクセント)じゃ師匠、後はよろしゅう」
本部
「よろしゅうじゃねえよ関西娘…ンなもん放映出来るわきゃねえだろ…忌田さん…もう何もかも捨ててオレとランデブーしましょうよ」そして数日後、一応編集作業は終わったが
「忌田さん…帝王の野郎が駄々こねやがるから何とか放映できないかやってみましたが…放映してやべェ部分にぱぺぽ音入れて顔モザイク入れたらもうほとんど何も分かりませんぜ」
「…健はどうしたあの野郎…」
「さあ…あれから姿見えませんが…いいじゃないスかあんな奴…」
「忌田ー!!聞いてくれよ」
「聞きたくねえ(泣)」
「あれからさ、暁実ちんの勤めてる筈のクラブ入り浸って指名しようと待ってたけど暁実ちん来ねえんだよ…しかも今日になって辞めたって…どうしたんだろな」
「人生が厭になったんだろ…俺と一緒でな」
ガタ
「暁実ならクニ帰って嫁に行ったぜ」
「先生!?嬉しいな、俺に会いに来たのか?」
「げ…近藤議員が…」×2
「ああ、会いに来たぜ…健…てめ、代議士相手にあんな真似しやがってタダで済むと思うなよ」
「ところで暁実ちんとは別れたのかよ」
「たりめーだ!!…向うもまあ、あんま水商売には向いてない女だったからな。クニ帰るって言うから、結婚相手紹介して結婚費用全額負担して手ェ切った」
「ほー…まあお水は大変な仕事だからな、幸せになって欲しいよな」
「で、次はてめえだ。こんな番組もてめェの組織もブッ潰してやる!!圧力のかけ方はいくらでもあるんだぜ」
「ちょ…この番組終わらせるのは構わねえが」
「構うよー」
「(無視)ノガミにまで手を出すのは止めてくれ!!」
今回は本気で気の毒な忌田に、やっぱり(ある程度は自業自得とはいえ)不運な近藤先生は言った
「こんな番組企画したてめェ自身を恨むんだな」
「違う!!企画は忌田さんじゃねえ」
木座の説得?も、ものすごくお怒りの(当たり前)先生には通用しない
「そんな…」
打ち萎れる忌田を見て(全ての元凶の)健は言った
「センセ…本気か?」
「決まってる…」
言い掛けて彼は、健の全身から放たれる殺気に気押され口籠もった
「そうか…じゃ俺も容赦しねえぜ」
びりっ、健は近藤のシャツを引き裂いた
「な…」ばたむ
「…いいんですか?忌田さん…あれって逆切れ」
「もういいよ…どうでも(泣)」
タタタ
「ししょー?番組どうなったんや?そしてエロ中年は?」ドタンバタン
「何や中騒がしいな?」倒れた忌田さんの病名は過労と心労でした
「師匠…」
「忌田さん」
なにはともあれゆっくり休んで下さい、との医者の忠告
「師匠…もうあのバホ中年に心配かけさせへんから」
「たりめーだ、てめーも帝王も!!忌田さんとオレがどれ程心配したか分かってんのか」
「うちは何もしてへんやん」
「してるわっ!!」
「…う…」
「気付きましたか?」
「…健は…?」
「あのクソ帝王はまだ『話し合い』中です」
「一体何、話あっとんねん」
「想像させるな!」
ばたむっ、病室のドアが開き、思いっきり『事後』な着くずし方で健が飛び込んできた
「忌田!?生きてるか!!」
「健…話は…」
「ああ快く許してくれたぜ、むしろ『もう許してくれ』とまで言わせたから大丈夫だ」
「…そうか…(あの先生もエラいのと知り合っちまったな…気の毒に)」
「おい!!忌田さんが倒れてから大分たったぜ?今まで何してんだよこの野郎」
「そう言うなよ、忌田が倒れたって聞いたからはやくケリつけようと頑張ったんだぜ?お陰でリキ入りすぎちまった…あ、しばらくあの部屋に入るなよ」
「あんたあのセンセに何したんや」
「忌田、お前がいねえと困るんだ…はやく良くなってくれよ」
「健…」
「ちなみにお前が療養中にゃ春木に代わりやらせるから。ついでにお前に心配かけねえように、しばらく地方企画でノガミやジュクから離れて番組やるから!!もうクレームは入らねえよ(真摯に)」
「健…一応(お前なりに)ちゃんと考えて…」
「ああ、忌田…今気づいたよ…」
「健、分かってくれ…」
「浴衣に点滴、ベッドってすっげくそそるな!!素敵ぃ、い〜みたぁ〜ん♪」
「…なっ!?」
「病人に何をする!!」×2
ズビシ!!(キザのパンチはすかった)
「く…お…」
ちなみにその夜ようやく部屋から出てきた先生は忌田さんの病室に来て言いました
「もうお前等に手出しはしねえよ…だからもう二度と俺に関わらないでくれ、頼むから」
「…うちの健が大変迷惑かけました…言っても聞かないんで諦めて下さい」
「もう諦めてるよ…(泣)今回は本当ひでえ目に会った…小龍には殴られるは、健にゃ危うく息の根止められかけるわ…」
「ああ…うん…ホントすいません」
「ところで忌田?あんた有能みたいだな、よけりゃうちで働かないか?」
「…有り難い話なんだが…あいつを野放しにすると何しでかすかわからねえから、ここには俺がいないと…」
「…そうか…頑張れよ…体にだけは気をつけな」
「先生こそ」
「はは(空虚な笑い)もうそれは望んでねえよ…」
発箱根温泉芸者地獄編
「うっわーい電車乗るぞ電車ぁ!」健は遠足に行くガキみたくはしゃぎまくっていた。
「ダホ中年静かにせんかい!こっちが恥ずかしいわ!」
「うーん優雅な温泉旅行とはエクセレント♪」
「旅行じゃねえ撮影だ!!てっ…てめえら機材もてよ!!っち…何でオレがお…重っ!」
「ああ旅にはロマンスがつきもんだよなあ。ドテ子いっちょ俺とラブってみるか♪(口説きモード)いい思いさせてやるぜ?」
「なにヌカすねんっ!うちの相手はダーリンだけやっ!寄るな!!」
「それでこそオトし甲斐があるぜ」
「どーなる〜ぅ♪波乱のよか〜ん♪…」
「くそう、忌田さんにつきっきりでお世話しまくりたいのにああ…俺の愛届いてるかな」
届いてないよ。かくして箱根への珍道中が始まった。
「温泉旅館♪芸者だ、やったなあ。すげえぜここ芸者たくさんいるよ」
「何か…確かに豪華やな、予算足りるんかい?」
「大丈夫!!俺が博打で稼ぐ!!何でもここの裏名物は『客は金を賭け、芸者は体を賭ける』芸者麻雀だぜ?芸者はタダでやり放題」
「そりゃ予算ちゃうやろ」
(ちょっといいな)
「木座?ここのは素人ばっかだから”お前でも”勝てるぜ?」
「無論わたしも♪」
「うわあ…よく考えりゃここのスタッフ玄人だらけや…どうか十八禁展開になりませんように」
「妬かなくてもドテ子?俺はいつでも…
ぐお」
「しつこいわ」
「とりあえず!部屋二室取ったかんな♪一室はキザと春木」
「うげえ!!ちょ…待てよ!」
「ん〜ソーバッド♪」
「もう一室は俺とドテ…ぐふぉっ」
「冗談もたいがいにせえ!!うちは一人で一室使うから野郎三人仲良う寝さらせ!!」
「えー萎え萎え〜!この二人だと萌えないー」
「萌えられてたまるか畜生!ますます最悪だっ、春木に加えクソ帝王!?嫌だー!(泣)」
健様突然走り去る。でもって戻ってくると
「部屋一室追加した!俺芸者のお姉たんとしっぽりする♪」
「プラスもう一室何とかなりませんか〜♪」
「もう満室だってよ」
「結局俺と複製人間だけ合部屋?!信じらんねえ!!悪夢だ!くっそう、相手が忌田さんだったら!!(泣)」
「企画会議はじゃ俺の部屋でな♪」
ちなみに企画会議が始まる時間
「おいクソ帝王、会議に来てやったぞとっとと開けろ」
がんがん
「まあ少し待てよ」
「ん?なんかおねーさんの…なんやヤらしい声が」
「畜生いきなりヤりまくりかよ性獣め」
「ふう…何やら一人二人…私の絶対音感によると三人いますな」
「さ…三人…こんな夕方からかいな…ようやるわ」
ばたばたばた。芸者の姉さん方が出てくる
「…ホンマ…これセクハラやで」
「入るぜ帝王…うわ…服着ろ服!!」
ばたばた
「よし、着たから来いよ…別に違う意味で来てもいいぜ?」
「うち…なんやもう帰りたなって来たわ」
「さーて。俺の仕入れたネタによると、ここ箱根で有名な玄人に赤池って兄さんがいるらしいのな。ちなみにこれ隠し撮り写真」
「わあ、けっこー細身で渋系男前やないの」
「だろー?この眼つきと腰つき…うっまそうだなあ♪(じゅるり)」
「心なしか何かヘタレの同類の懐かしい感じがするような…何でだろ…」
「このセニョールに突撃♪する訳ですね〜♪家はチェック済みなので〜すかぁ?」
「おうよ!ぬかりはねーぜっ!うぷぷ、赤池センセ待ってろよっ♪♪」
「じゃ、明日決行やな。んーじゃあまあ、明日に備えて温泉つかってこよか」
「おお!一緒に入ろうぜ♪」
「誰がやねん!」
「んもードテ子ってば俺の裸すげえ見たがってるくせにぃ♪えっちーぃ♪」
「…もう付き合ってられんわ」
さて温泉では結局…野郎三人が一緒に入るゆー悪夢な事態で終わった…健の非常な不愉快を残して
「…これ罰ゲームかよー」
「そりゃこっちの台詞だ」
「では温泉交響曲を♪」
「いらねえ…あーあ…ドテ子の生乳見たかったな…なんで温泉レポートなのにレポーターの突撃入浴リポートがねえんだ…あっ!!なら俺の入浴シーン映しゃあいいか」
「映すなぁ!!」
「絶対ェ視聴率上がるぜ」
「さって!温泉入ったしよ、恒例の夜這いターイム♪だよなっ!」
「てめ、さっきヤってたろ。てかさきに飯だろが」
「あ、そっか。ま食うのはどっちもおんなじだけど芸者のねーさんたちとお座敷で宴会だあっ!!」
「あんたらやかましで。あーえ〜湯やった〜!」
「うお!湯あがりっ!浴衣!!ドテ子…(両肩に手を乗せて)色っぺえぜ…ほんといい乳してんな…
ぐうぁ…」
「あーあダーリンと来たかったわ、ホンマこんなセクハラ中年らなんかとじゃなくて」
「湯上がり哲か…それはそれでいいなあ…桃色の肌の哲をもっと赤く染めて…
ごうっ」
「あんたまさかダーリンも狙っとるんちゃうやろな」
健はさすがに二度げりを食らって声も出なかった。
芸者控室
「ちょっとー今日のお座敷のお客さん見た?」
「すっごいフェロモン系の危ない男と気色悪い音楽家と顔はいいけどヘタレなにおいのする優男とソバカスの女の子でしょ?どーゆー団体かしら」
「さあ…テレビカメラ持ってたけどギョーカイ人にしちゃなんか違うし」
「そういや特番が三人分申し込まれてたけど…」
「うっそー!?あのフェロモン兄さんにならわざと負けたぁい」
大丈夫です。本気で行っても絶対負けますから
そう、あの人すごいのよー」
「えー?もう試食済みぃ?」
一方その頃
「赤池先生、お疲れさまでした!」
「今日は出番がなかったな…」
「また明日お迎えにあがりますので」
「ああ…」
ブロロロ…車が去って自宅(アパートだったりする)の戸を開けようとすると。
「な、何だこれは!」
扉一面にきったねえ殴りがきが
萌萌VV赤池ちんの家!!ここ!!
「俺が負かした奴の嫌がらせか?…うっ、油性マジックで書いてある。シンナー切らしてるし、くそ…明日にするか」「はあこのお刺身のおいしいこと。極楽極楽…」
そしてドテ子が美味しい海鮮料理に舌鼓を打っている横では野郎三匹が特番に挑んでいた
「ロンだ…さあこれで五人目だな」
「いやあん、負けちゃったあぁん」
「交響曲皇帝…」
「うげ気色悪ィ…しかもハコりそう最悪…」
「うらっポンだ!!オレだって玄人なんだぜ」
「はしくれだけどな」
「うるせえ帝王!!」
三人はなんだかんだ言ってめちゃ強く、女将さんは大ピンチだった
「ここは…代打ちを頼むしかないね。頼りないけど仕方ない…」
そっと席をたった女将の背中を健は微笑しながら見送っていた。
「ちょっと休憩だ」
健に既に負けてしまった芸者、春木とキザに負けそうな芸者は一息ついた。
「健様、でしたわね、今夜はよろしう」
「皆まとめてとことん愛しちゃうぜ♪」
「やーん」
「くそ、もうちょっとなのに…」
「勝ちは見えてま〜す♪焦るなかれ〜!しかしいいのですか〜?忌田さんがいるのに浮気してもぉ〜?」
「うっ…だっ…てオレも寂しいんだようっ!!何か愛が空まわりしててっ!!」
だよね淋しいよね木座も、仕方ないよ…とは健は言わなかった
「やーい浮気してやがる、忌田に言ってやろうっ」
「人の事言えた義理かっ!芸者ハレムつくりやがって」
「俺はいいんだよ、だって今更だし別に隠すつもりもねえからな」
「くそう…居直りかよ、タチ悪イ」
「はー、ここ料理美味いわあ(一人別世界)」
「俺も上手いぜ?味見し…ぐあっ
…クソ、今からこの人数相手にしなきゃならんのに…使えなくなったらどうすんだ」
「そーよ!!」
芸者達の後押しを受けて健はものすごく強気だった。
と、その時
「とりあえず出来るかぎりお金は用意しますから」
「引き受けましょう」
障子を開け女将に続き入ってきたのは
「あ!」
「お前は写真の!!」
驚く一堂の中、一人満面の笑みを浮かべた健は
「待ってたぜ♪赤池ちん♪実物も素敵だ」
「えーっ!!撮影前に会ってもうてええんかい!」
「あんた…誰だ?俺知ってたかい?」
不思議そうな赤池センセ
「まあ…一見さんですけどね、麻雀は強いから箱根一の玄人の先生でしたらどこかで…」
やたら慣慣れしい態度の健を赤池は非常に気色悪く思ったようだった
「赤池ちん」
「まあいい、スーツの兄さん俺が代打だ。文句はねェな?」
「ねェよ…であんた今『代打』って言ったよな?代打ってったら芸者の代打だよな!?」
嬉しそうに念押しする健
「あ?ああ…?そりゃ…」
その質問の意図を計りかねたものの、とりあえず頷く赤池に健は言った
「よし、じゃあ芸者麻雀ルール継続だ!!俺は金を賭け、赤池ちんは『体』を賭ける!!それじゃ始めるぜっ!!」
しばしの沈黙の後、芸者達は黄色い悲鳴を上げ、赤池は目が点になり、木座と春木は、またかよーこいつも懲りねえなと思った。
赤池先生は何だか全然見覚えがないのに妙なこと言ってくる健様が何だか怖かった。
「あ〜赤池ちんて髪サラサラだ〜♪(さわわ)」
「どひぃ?!な、なにをするっ!?」
「うわやっぱ腰細ぇ〜!」
「お…まえっ!一体何のつもりだっ(泣)てか何なんだよ」
「怒った顔も可愛いな。よし行くぜ特番!赤池ちんのバージンげっとだっ!!バージンだよな?違うくてもいいけど」
「女将!何だよこいつ(泣)頭おかしいよ。何で俺セクハラされるのっ!!」
「まあ先生勝てば問題ないでしょう。しかしわたしも長年客商売やってるけど、こんなお客初めてだわ…」
さて勝負は(赤池先生がものすごく嫌がるのを無理矢理に)始まった
「うら、リーチだ」
そして全力で飛ばしまく健に赤池センセは自慢のギリ技を使う暇すらなく思いっきり追い詰められていった
「あーあ、こらあの人負け決定やな」
「ケタが違いまくりだからあー♪」
「やっぱヘタレだ」
「そんな嬉しいんかい?ヘタレ仲間が」
「ヘタレ言うな!!」
さすがに事態に慣れたドテ子と慣れまくっている二人
「はあ、しかしあの赤池センセが負けてもうたら明日の取材はどないなんねん」
「まさにオリジナリティ!!夜明けの二人スペシャルに」
「なるんだろな…放映できんのか?」
「まあクレームは誰もつけへんやろ」
赤池先生はものすごく追い詰められていた。何せ、負けたらピーだ。そんな事になったら色んな意味で恥ずかしくてもう箱根には住めない。なのに目の前の頭がおかしい男は強すぎる!!しかも背後で芸者連中が自分が負けた時の事を妄想して盛り上がっている
(最悪だ…こっこれマジやばい!!どうすれば…負けたらやっぱこの明らかに頭おかしい野郎に俺は…嫌だ!生まれてこのかた、男に食われる事態なんて考えたこともねえ!ここ、怖い!!)
「赤池ちん、どした?だいじょぶだって〜とりあえず優しくしてやるからよ。俺うまいから大丈夫♪天国イカセてやんぜ…(ニヤ)」
きゃー♪どよめく芸者さんたち。そして放心状態の赤池せんせに、とどめの一言。
「ロン♪大三元〜!」
「ひっひぇああ〜」
「さーて今夜はおっ楽しみっだぜ♪」
「やっぱ負けてもうたか…想像通りやわ」
「よし、じゃ夜明けの二人スペシャルに切り替えるか」
「ううんエクセレント♪じゃあ今回の効果音は…」
淡々と作業を進める三人
「でもお客さぁん?私達はどうなるのぉん?」芸者の姉さん方のお誘いに健は答えた
「だよな…よし、じゃ先着順だから赤池ちんは最後な」
「ええっ!?」
「そんなに悲しがらなくてもしっかり可愛がってやるからさぁ」
「私たちも、よ?」
「はは、全員腰立たねえようにしてやるから心配すんなって…おい木座、春木、しっかり見張っとけよ、逃がしたら給料ナシだからな。じゃまた後でな赤池ちん」
そして後には茫然自失した赤池が残された
そして健様が芸者さんたちと楽しく激しい夜を送っている頃。
死刑囚のような顔の赤池先生をキザたちは気の毒そうに見守っていた。
「まあ、人生色々あるぜ…そう気落とすなよ…」
しかしそんな言葉でなぐさめられよう筈もない。赤池ちんはさめざめと泣き始めた。
「ギリ師やったり…そりゃチマチマ悪いことはやってきたかも知れないが、あんまりにあんまりだ(泣)ううう…なしてあんな野郎に釜掘られるハメに…」
「あいつにひどい目に遭わされてんのはお前だけじゃねえ、オレもしょっちゅうだ」
「何だかお前俺と同じ匂いがする気が…」
「俺もだよ」
ヘタレ玄人同士の友情が芽生えつつあった。
「しっかし…あんだけの人数みんな腰たたんようにするのは大変ちゃうか?」
「花の乙女の割にエゲツない…健さまなら平気でしょう」
「確かに下半身も大型爆撃機みたいやしな」
「うーんパワフルな…しかも燃料切れになる事のない高性能♪」
「何で神さんはあんな性格の男にあんな博打能力と下半身与えたんやろな」
「それが運命じゃじゃじゃじゃーん」
「お前ら!そんなにオレを精神的に追い詰めたいのか!!(泣)俺…あんたらになんかしたか!?」
「いや別に…ただの純粋な好奇心や。男と男てそんなエエもんなんか?」
「俺が知るか…(泣)」
「じゃ分からされたら教えてな。勉強になるさかい」
「赤池ちん、待たせたな♪」
そして運命が戸を叩いた。着乱れた浴衣がすっげえエロチックな健様。フェロモン全開状態で妖しい笑みを赤池先生に向ける。
「うわ…もう妖怪のたぐいやで」
「さあっ赤池ちん…どうした?怖いかよ」
(当たり前だー!)
ヘタレでノーマルな先生は恐ろしすぎて声も出ない。
「大丈夫だよハニー♪優しくリードしちゃる♪さあ素敵な夜の始まりだ〜!」
「元気でな…」
「たっ、助け…(泣)」
バタム。
「帝王に効く魔よけの札ってないんだろーか…」
「ナッスィング!でせうね♪魔王があの子を連れていくぅ〜♪」
「明日もきっついの来るで…うちもう寝るわ。じゃお休み」
「で、まあ関西娘も寝た事だし…オレ等も(どさくさにまぎれて勝った)芸者の姉さんと」
「エキサイティング♪な夜を」
ぐっ!!ヘタレと複製人間は互いに健闘を祈りあった。
で赤池センセが連れていかれた部屋は、思いっきり事後の臭いがしていて、しかも布団がくしゃくしゃに
「…」
もう何言っていいんだかも分からない先生と
「今日はホント豪勢な夜だよな…赤池ちん?あんたがメインディッシュだから全身全霊でもって行くぜ」
「…(頼むからせめて早く終わってくれますように)」
「さっておっ始めるか赤池ちん」
「…なあ、一つ聞いていいか…」
「なんだ?マイラバー♪」
「あんた、何だってあんなに強すぎんだ麻雀。外の二人も玄人だろうが、お前桁外れじゃねーか」
「だって。俺上野のドサ健だもん」
「どどっ、ドサ健?!!マジかよ!俺、なんて相手とっ!てかまさかドサ健がこんなっ…(ヘンタイなんて)」
「いー男とは思わなかったって?♪そーだろ、そーだろ。じゃあ、ま、力抜けよ♪」
「…ひ…!」
「ああ一つ聞いておきてえんだが赤池ちんは、どんなプレイが好みだ?普通?騎乗位?座って?SMじゃねえとヤとか、コスプレしてえとか、俺にしてほしいとか、イメクラ好きとか注文がありゃ聞くぜ?いや全部やりてェてんなら頑張るけどよ、今晩中に全部ヤるのは無理だから延長で…」
「勘弁してくれよ(泣)」
さて、壁を隔てた隣では
「どう?聞こえる?」
「しっ…いま体位がどうとか…」
「なんかワクワクするわね?」
「あ千明ちゃん、あなたも聞かない?あの赤池って人がね、今…」
「姉さんたち、そ、それほんと…?」
事情を聞いても何か信じられない千明さん。
「本当よ!ほら聞いてごらんなさい」
「…じゃま、初めてならノーマルからいくか♪」
「ゆゆ、許してくれ!金ならローンで一生かけても(泣)」
「俺が欲しいのはお前だよ、ハニー♪」
「ノーッ!!(裏声)」
ガバチョ
「はっ始まったわよ千明ちゃん!!きゃー♪」
「(黒シャツさん、何か私の前に地獄があるわ…)あの…お姉さんたち、私明日の準備があるから…じゃあ…」
「聞いてけばいいのに。あ!何か部屋きしんでるっ」
「くっ…重い…」
細身の赤池先生は、多分筋肉質で比重が重いであろう健にのしかかられ呻いた
「重い?…んな事言われたのは初めてだな。。まああ上の奴のが普通重いもんさ。キスミーー」
気にせずのしかかりながらオッサン臭い発言をする健に、赤池センセは某県議会議員を思い出した。
赤池先生は理解した。
県議会委員にやられる芸者の気持ちを。
そして誓った。
二度とゲーマンの代打ちはやりません。ついでに芸者さん始めお水の方がたにはもっと優しくします、バーで酒ん中に埃入ってても、もう文句なんて言いません…!
しかしそんな健気な彼の思いも帝王には通じる筈もなかった。
「ちょ…何すんだ!」
「いや脱がないと始まんねーじゃん♪わあ本当細ぇ…おまけに色白だーわーい♪」
健様赤池ちんの胸に顔うずめる。
「勘任しとくなはれ!(泣)」
あまりの事に京都弁になる先生だった。
「う…お願いどす…ほんまに堪忍しておくれやす…体だけはほんまに…他にはなんでもするさかい…うち…うち…綺麗な体で嫁に行きたいんや…」
さめざめと泣きながら京都弁でかき口説く赤池。
彼は健のハレム?の他の面々と異なり、本気でノーマルなのであった(何で京都弁かって…実は都人なのかも)
何だかいつもは、無理矢理始めてもすぐにノリノリになる人ばかりなので健も勝手が違ったらしく手を止める
「…んなに泣かれたら…」
何だか自分が、嫁入りの決まった町娘を手込めにしようとしている悪代官な気がしてきた健は一気に萎えた
「赤池ちん、悪かったよ。だから泣くなよ?な?」
「…俺は…俺は…ひっく、うわあん!!(泣)」
「んー弱ったなあ…(さすさす)もう何もしねーからさ、落ち着けよ。(初めてユウたんやった時みてえだなあ)」
怯えて声も出ない赤池
「ほんと…か?」
「だってさ悦んでくれそーにねーもん。ブー!」
「そんなの無理だよ…!」
「ちぇ〜つまんねえな。夜はまだまた…お!なあ赤池ちん!」
びくぅ
「どうせだからよ、これから行かねえ?」
「は?」
「夜這い♪ぷぷっドテ子待ってろよ♪」
「夜這い?」
「まさか女も初めてじゃあねーだろ、てかモテるだろ?だからヨバイかけようぜ」
小学校中退の健の接続詞『だから』の使い方はおかしかったが、赤池はツッコむどころではなかった
「いや…でも俺は…」
さっきもう女性には優しくしようと誓ったから…と言い掛けた所にトドメ
「しないんなら俺と朝までブッ通しな」
「行きます…行きましょう(泣)」
「さーてドテ子の部屋はここだな。鍵開けるぜ♪(ガチャガチャ)」
「あの…これは立派な犯罪…」
「夜這いは日本の素敵な文化だっ」
「もうー知らん(泣)」
「よし開いた!ドテ子ぉ♪どんなカッコで寝てるんかなあ♪」
(もうかえりたい)
ギギィ
「ドーテ子ぉ。お、寝てんな…よおしカメラカメラ…おし、バッチリ映る」
「おい兄さん…カメラって…」
「言ってなかったか?俺ら『ノガミぐっきりテレビ』のスタッフなのさ」
「何…あの傍迷惑な馬鹿番組の!?そういやこのお下げどっかで…てか、ノガミのドサ健当人がカメラだったのか(なんて暇な)おい…じゃまさか今からこのお下げ娘をリポート…」
「おう、ホントは赤池ちんのリポートの予定だったんだがな」
「良かった…俺でなくて本当に良かった(泣)」
「じゃ今回のゲストリポーターの挨拶いけ!!」
「え?…赤池です、よろしく」
かくしてぐっきりの魔の手はリポーターにまで襲い掛かったのであった
「ええっと…今日は番組レポーターの…」
「ドテ子を特別レポートだ!ひゃっほう♪ん、起きてねえよな…よしよし」
「女性のね、寝込みを男二人でってのはいかがなものかと…」
「なーにドテ子は口ではああ言っても本当は俺にメロリンラブなんだって!了解したも同じだ」
「ち、違うと思うが」
健はモチ聞いてない。
「さあドテ子の寝顔っ♪お、フトンからはみ出したお下げがほどけかけ〜」
「…い、今寝返りうちました…う」
「かっわえ〜!!萌え!おい赤池ちんどーよ!なあ?!何とか言えよっ」
「どうしよ…普通に可愛…いやいや!!俺はロリコンじゃな…」
「オトコなら萌えて当たり前のソバカスお下げ娘!しかも寝顔っ!可愛いだろ?!」
「…はい」
寝返りを打ったので浴衣からちらと生肌が見える
「よおし!!ポロリを狙うぞ」
「布団でそりゃ無理だと思うがな、兄さん」
「ふふ…俺を何だと思ってやがる、玄人だぜ?奇跡を起こすのが仕事だ」
「まさか…」
「運は力で手繰り寄せる!!行くぜっ!!」
健さま、今からしようとしてる事は痴漢行為です
「よーし行くぜ、ドテ子の生…」
「ん…」
「わわ、まさか起き…?!」
「ダーリン…」
「寝ごとだよ。うお!!胸の谷間がくっきりと!やっぱいい乳してんなっおい♪もうたまんねえ!」
「(さ、最近の娘は発育がいいな…って)駄目だー!!ちょ、未成年にっ!」
「もう…ダーリン、つれないなあ…」
「ななっ?夢でもみてるのか?」
「ちょっと…うちのことどない思うてるんよ」
「哲の夢か、まあいーや♪ドテ子、お前の愛する人はここにいるぜぇ!」
健は赤池にカメラを渡し、鼻眼鏡をつけて変装した上でドテ子を抱き寄せた。
「ほんま…?うちの事…愛してる?」
「もちろんさドテ子(声色)」
ドテ子はにっこり笑った
「ほんま…?」
「ああ本当だ」
「うち…嬉しい…」
ドテ子は嬉しそうだし、健も満足そうだが、はた目から見ると鼻眼鏡の健は馬鹿みたいだった
「てか…もう我慢出来ねえ…行くぞ」
「ちょ…そりゃ不味い…馬鹿!!十八禁にする気か!!ビデオじゃねえんだぞ。てかそもそもそりゃ強姦…」
「うるせえ俺はやる!!いいよなドテ子」
「うん…」
何だか少し恥ずかしそうなドテ子に健の理性は吹き飛んだ
「いいって言ってる!!」
「よくねえ!!」
赤池の制止を撥ね付けドテ子に襲い掛かろうとする健
がばっ…
あやうしドテ子の貞操!!だが…
「臭っ」
ドテ子は跳ね起きた
「男臭!!…ダーリンやない!!ダーリンは石鹸の香がするんやっ!!」
ばっちり覚醒したドテ子に赤池はカメラを向けつつ
「え…と…ぐっきり?」
「な、なんやてー?!」
「ドテ子ぉ、キスしようぜキス!ぶふぉっ」
しつこく迫る健にキックでなくパンチをかます。
「いい夢みとったのに!あんたとダーリンやったら似ても似つかんわ!獣じみた不精鬚エロ中年!!何すんねや、嫌らしい!!最悪やな!」
続いて蹴りの乱れ打ち。
終わった頃には健様は床にうずくまりしばらく動けないでいたが
「無差別…ぐ、ぐっきり突撃リポートミッションコンプ♪うう、マジやばいかも…次からもちゃんと使えるかな…」
ちゃんとシメました。さすが帝王。めでたしめでたし
ちなみに病室で録画を見ていた忌田さんと、先生は 魚津魑魅魍魎坊主怪奇編 「(声を押さえて)みなさんは…怪奇現象、というものを信じはりますか?信じる方も信じはらへん方もいる思いますが…ここ、魚津では…そんな恐ろしい現象が確かに存在するのです」 ばばん!!
「…あのアホ…(泣)」
「…何度も言うが、どうしてこの番組終わらせねえんだ?」
「さり気に、健の馬鹿がうちの総帥だからな…最終決定権は奴が持ってんだ…(泣)あいつが飽きるまで続くんだよ」
「あんた…組織造り根本から間違ったんだな」
「いいんだ…いいんだよ俺は…近代化の為なら何だって…」
そもそもこの番組が近代化に何か役立ってんのか?そんな疑問が浮かんだ先生だが、大人なので言わなかった
「今回は…いつもと趣向の変わった『ぐっきり』をお送りしたい思います」
ナレーター(ちなみに春木こと銀河万丈ボイスで)
“この魚津では、レートを上げようとする玄人には二つの運命が用意されている。
一つは留置場行き、そしてもう一つは…
神かくし
…当番組ではこの謎に迫る為、番組スタッフの鼻眼鏡君を玄人に変装させ賭場で博打を打たせてみた”
賭場。スタッフの鼻眼鏡くん事、健は…
「うりゃロン!」
「くそ〜鼻眼鏡野郎、も一回!も一回だ」
「なあどーせだからよ、レート上げねえ?」
ざわっ
「兄さんそういう事ならヨソで打ってくれ」
「(きやがったな)何だ、やっぱ噂はホントだったな♪レート上げる玄人は留置所行きか…あるいは」
「そこの若い方!」
「出た出た♪」
「そなた玄人じゃな、ついてきなされ」
「いわんこっちゃない」
突然店先に現れた託鉢僧に従い鼻眼鏡くんは店の外に出た。
「何か用か?ぼーさんよ」
(ふむ、なかなか引き締まったいい躰しとるわい、鼻眼鏡で顔がよく分からんのが口惜しいがどうも艶っぽいいい眼しとるようじゃ)
「お主、業が深いのう、み仏の慈悲にすがりこれを絶つ必要があるぞよ…わしの寺までついてきなされ」
「なーんかさっきからよ、エロい視線感じるんだが気のせいかなあ♪」
「お…お主の罪深さがそんな幻覚を呼ぶのじゃ」
「ま。いーや面白そーだからいくぜっ」
「現れました!!ぬらりひょんです!!妖怪ぬらりひょんです!!」
「おい一応アレ人間だろがよ」
「うるさいわAD」
今回はカメラは木座
“さて現れた妖怪に連れ去られたスタッフを我々も追跡してみたいと思う”
「だからありゃヤツが勝手に付いてったんだろが」
「さ、みなさん、追跡します」
ドテ子と春木ダッシュ!!
「ちょ…てめえら…オレはカメラ持ってんだ!!!」
「うちか弱い乙女やし」
「私はか弱いアーティスト♪」
「オレだってか弱いよ!!」
そして一同は六時間ひたすら歩きまくり、古寺へ到着した。
一行が山寺に着くのと時は前後するが、坊主に連れられてきた鼻眼鏡もとい健は、金剛上人及びおつきの二人と雀卓をはさみ対峙していた。
「なあ勝負すんなら、一つ聞きてーんだが負けても金払うつもりねえっつったらどうする?」
「その時はこの寺で向こう三年みっちり働いてもらうぞよ」
「…働くって何だ?炊事や掃除は出来ねえぜ俺ぁ」
「他にも出来る肉体労働はあるじゃろ、フォフォ」
「坊さんてなあ好きもんだなあ」
「さあ始めるぞい…しかし」
何という存在感と気迫、気配がするなんてもんじゃない。場が健の存在感で満ちている。
(け、気配が強すぎて細かな気配がわからん!)
だが勝負は始まってしまった。
そしてちょうどその時一行が山寺に到着した。
一行は六時間ずっと走りづめだったのでバテまくっていた
「はひー…うち、かよわい関西娘やからこないな運動耐えられへんわ」
「私もか弱いアーティスト…ですからぁん…」
「て…てめえら…俺なんかテレビカメラ…付きだぞ…はあ…死ぬ…」
「体力ないな、ヘタレの癖に」
「関係ねぇだろ!!」
「は…なんてアホな会話しとる場合やないわ!!あー、あー、お茶の間のみなさん御覧ください!!山寺に辿り着きました」
“道無き道を何と六時間…陸の孤島とも言える山の中に古寺が。例の妖怪は果たしてここに生息しているのか?そしてスタッフの命運は…”
「潜入リポート開始や…さあ人里離れた山寺に何がひそんでるんでしょーか、うちもゾクゾクしてきました。戸の隙間から明かりが漏れてます!カメラとっととこんかい!」
「行くよ!人使い荒いな!ヘタレは大事にしやがれ」
「あ…いました!おりましたよ鼻眼鏡!その前にはヌラリヒョンとその下僕?やたらマッチョな禿げが二人!闇に浮かぶご本尊の前で雀卓を囲んでるで?これはホラーや!おっそろしい〜!!まだ鼻眼鏡くんは無事なもよう、しかしどーなるこれから!?」
全国放送されているとも知らず金剛上人と鼻眼鏡は麻雀をしていた
「け…気配がせんくらい大した事じゃないわい…今までこうやって文無しで打った輩は皆儂等に負けてここで修業の身になっておる!」
「へえ?の割にゃ人気がねえのかどうしてだい?」
「みんな極楽往生したわい…そしてお主もそうなるのじゃ!!」
「生憎だがよ、どっちかってーと俺はアーメンの方の育ちの上に間違いなく死んだら地獄行きの口だからよ(ニイッ)」
健は殺気まみれで笑った
「く…喝!!そんな玄人の業を払う為に負かしてやるわい、そして往生せい」
「生憎だがあんた等三人にマワされたいなんて思わねえし…ましてや食いたくもねえからよ…さっさと地獄に送り返してやんぜ妖怪ども!!」
「何や…今日のバホ中年…やたらかぁっこエエなあ」
「…さぁすがエンペラー」
「く…くやしいが確かに今のヤツは男前だ…てか」
そして三人は声を合わせた
「いつもああだったらなあ」
「おお。鼻眼鏡とぬらりひょんの勝負が始まりました!何か妖怪トリオは九字切ってんで!すごい濃い麻雀やな!鼻眼鏡くんは不敵にも全く動じてない!はあー博打打ってる時はごっつい男前やのになあ、あれで言い寄られたらちょっとクラッときてまうかも…しかしそれにしても妖怪どもの形相のすごいこと恐ろしい!あれで今までどれくらいの玄人が犠牲になってきたんやろ。見当もつきません!鼻眼鏡くんには是非彼らの供養のためにも頑張ってもらわなあきません!」
九字を切って相手を威嚇する怪奇トリオに対しても健は全く平常心だった
「それリーチじゃ」
三人同時リーチ…だが健の気配は微塵も乱れない
「へえ?それがどうしたい?」
恐怖など微塵もなく危険まみれに見える牌を切る健
「…と…通しじゃ…ひ…三対一…しかも三人同時リーチじゃから振込む可能性がほとんどじゃと言うに…なんでこやつは微塵のためらいも無く牌を切れるんじゃ…」
「おい妖怪ども…てめえら、真の博打って奴を知らねえな!?博打ってのはな、てめえらみてえに勝ちを確定させて打つもんじゃねえ…」
ダン!!
「ロン、四暗刻…」
「ひい役満…この状況で…」
「博打ってのは、負けたら地獄行きだからこそ博打なのさ…」
「どないしょ…カッコ良すぎてレポートでけへんわ」
「上人、ハコりそうです、どうすれば…」
「うろたえるでない!しかし何という打ち筋…修羅か羅刹か…!」
「おい早く切れよ坊主ども」
「くう…安牌が…何じゃこの威圧感は!」
「皆さん見てはりますか?!ぬらりひょんの動きが鈍なってきました!かなり精神的ダメージを受けているもよう。鼻眼鏡くんが更に追い撃ちをかけます!」
「リーチだ」
「どひいっ!!!」×3
「おい手が止まってるぜ、この橋…渡れんのか?え?!」
上人が恐怖に満ちた表情で牌を切ると同時に鼻眼鏡は牌を倒した。
「ロン」
「なっなにい!!!??」
「俺の勝ち、だな」
かっこよすぎる健様!だけどやっぱり鼻眼鏡なんす。
「やったで!!ハコや!!すごい!!最高や!!今までダホ中年とかエロとか言っててすまんかった!!めっちゃ素敵、むしろ抱かれたいわあ」
興奮の余り訳の分からない事を口走るドテ子…ちなみにその台詞はしっかり全国放映されてます
「ひひ…分かった…こないだの黒シャツの坊主に身をやつされたのが御仏なら、ヌシは地獄の羅刹じゃな!!」
「は?俺は只の博打打ちだぜ」
「はは…儂を地獄に…落しに来たな…ひひひ…」
「まあいいや。妖怪退治完了だな、この金は除霊料としてもらっとくぜ」
今度こそ完っ璧に完膚なきまでに発狂した上人の笑い声をを背に健は寺を出た
「ようお前等?どうだちゃんと撮れたか?」
「ええカンペキっス帝王」
つい敬語になる木座
「見たか?ドテ子、玄人の俺をよ。シビれたろ?」
健は鼻眼鏡を外し不敵に微笑む。
「あんた…ほんまにあのエロ中年やんな…?すごい…ええ男にみえる…」
健はドテ子の顎をしゃくった。
「間違いなく俺さ、抱かれたくなったろ。え?(二…)」
「あ…」
健の眼差しから目を離すことができないドテ子。健は満足そうにその顔を引き寄せた。
「あんたならうち…うち…」
恋する乙女の潤んだ瞳で健を見上げるドテ子
「ドテ子…」
あやうし!!ドテ子の唇!!しかし…
「何してやがるっ!!」
辺りをつんざく絶叫がマイクから鳴り響いた
「どあっ」
乙女な雰囲気が粉々に砕け散る中マイクは更に叫んだ
「ドテ子よく見ろ!!そいつはお前の嫌いな男臭いエロ中年だ!!下半身・行動ともにヤンチャな性獣だあっ!!」
もちろん?…この声の主はお父さん?の忌田だった
「忌田?」
「ああっ忌田さん治ったんですかあ?!(泣)」
「病院の先生に頼みこんで今日退院した…ドテ子!保護者代理として、俺にはお前を健から守る義務があるんだ!自分の体を大事にしろ!その性獣の辞書にモラルという文字はないんだぞ!」
「師匠…ここまで拡声器もってまさか歩いてきたんか?…うちのために」
「娘のようなお前を健の犠牲にする訳にゃいかねえからな」
「…うち、もう目ェ醒め…」
「こうなりゃ力ずくっ♪ドーテ子ぉ!!!」
「鬼畜!死にさらせっ!!」
ズビシャーン
「お…ぐ…」
「これで…ほんまの悪魔祓い終了や…」
男前に微笑むドテ子の勇姿が眩しい一堂だった。
「かくして忌田さんも復活した事だ。ノガミに帰るか」
「確かにな。お前等野放しにしてる方がよっぽど体に悪い」
「…俺…お前の事心配してこの企画立てたのにー。もうノガミに戻ンのかよ」
「分かった…じゃあ後もう少しだけ地方巡りな」
病み上がりの忌田は何だか少しだけ優しかった
ちなみにこの回の放送で謎スタッフ鼻眼鏡くんの人気はうなぎのぼりになり、ノガミにはたくさんのプレゼントが届けられたという
「次の企画だが」
「なあなあ、俺船乗りてえ!!雪国で色白のおねーちゃんとしっぽりしてえ!」
「それはてめえの希望で企画とは言わねえよ」
「な、北海道いこうぜ。確か力石似の男前(ポン中)の故郷なんだよ」
「怪奇ぐっきりの続きかい。死神の寝起きか?」
「滅多に見れないぜ?(てか船旅っていいなあ♪誰でも船室に連れ込んでやりたい放題♪たっまんねえなあ)」
帝王の邪悪な思惑と強引な押しで一行は函館への船旅に出ることになった。
青函連絡船五流玄人見修羅編
青函連絡船。嵐のため本日大荒れ
「健、一応動いちゃいるみてえだがこりゃ嵐が収まるまで待った方が…」
「平気だ、乗るぜ…大人五枚な」
「おいおい…沈んだらどうすんだ」
「俺が乗ってるのに沈むわきゃねえよ」
何だかみんな妙に納得したので乗る事にした。
そして連絡船といえば勿論!!彼らがいた…赤シャツとダチン!!である(笑)
「あの船室で打ってるやつら、超ヘボいけど玄人だな♪木座神、ヘタレ頂上対決してみちゃどうだ?」
「ばか野郎!いくら俺でも負けるか!あんなよちよち歩きの玄人どもに!」
「ふん…赤シャツくんが何か気になるなあ行ってみよ♪」
無造作に三等客室に分け入る健。
と、そこで赤シャツに親父が声をかけていた。
「やあ今日も快調だね坊や哲は!」
「なにぃぃ?!」
健以外のメンバーは叫ばずにはいられなかった。
「ヤだなあ…だから違うって言ってんだろオッサン…(あんたのせいでお花畑でおばあちゃんに会ったんだぜ)」
だがオッサンは動じない
「いやあ相変わらず…憎い!その謙虚さが憎い!」
「誰がダーリンやねん!あの赤シャツ!むしろリーゼントに近いやんか」
「どうせブラフで騙った手前引っ込みつかなくなったんだろ」
さすがの忌田でも顛末は読めなかった
「ううん…健さま?私が退治しましょうか♪」
だが楽しそうに赤シャツとダチンを眺めていた健は笑って言った
「いや…俺が打つ」
「おい健、いい年して弱いモンいじめかよ」
「それが玄人だろ?」
「その顔…またロクでもない事思い付きやがったな」
ヤレヤレといった表情の忌田を尻目に健はさっそく声をかけた
「や?あんたが有名な『坊や哲』さんだって?一局打たねえか」
後でこの赤シャツとダチンは思ったのだった
“あん時に津軽海峡にダイブしときゃ良かった”
と
「よっし。んじゃあ打つぜ兄さんたち♪」
「兄貴…どうします?」
「とりあえず適当に茶ぁ濁して早めに切り上げるか…」
そして勝負は始まった。
「兄貴…この無精髭。見た目ユルくてそんな強そうじゃないっすよ?」
「早いとこ潰しちまおうぜ」
「はい」
この時。健の玄人の殺気が膨らみつつあるのに二人は気付いてはいなかった。
「地獄の…釜が開いたぜ…」
二人の運命を暗示するかのように、船の外は大シケになっていた。
ごごごごご
大型戦闘機、離陸
「い…一撃ぃっ!?」
一瞬でハコにされ絶叫する二人
「あ兄貴おかしいっスよ…この不精髭おかしいっス。人としておかしいくらい強いっスよ」
「だよなあ?俺も途中から…なんだ?…『玄人の殺気』ってヤツを感じ始めて…」
じゃらじゃら
「次行くぜ」
「た、タンマ…ちょっとタンマ…俺少し便所に…」
「オレも腹が…」
見え見えの逃亡策だが健は笑って見逃してくれた…かに見えた。
だが実は。健は便所にこそ真の恐怖を潜ませてあったのである
便所にいって二人はこれ見よがしに貼り出されたばかでけえ紙を目にすることになった。
そこに書かれていたのは。
赤シャツくんたちえ。こんやオレのせんしつにこい。くるなら負けてやる。こなかったら哲のにせもんてバラしてつがるかいきょーにダイブだぞ♪てーおーないすがいドサ健
二人はまたまた叫んだ
「『ドサ健!?やばいっスよ兄貴…ドサ健ったら、悪名高い最凶の玄人スよ、俺らが逆立ちしたって勝てる相手じゃないスよ」
「分かってるでも…」
外は嵐の海、飛び込んだらどのみち即死確定
「無理だよ逃げられないよ(泣)」
二人は抱き合って泣くしかなかった。
ちなみに健は。
「まさか健…あいつら食うつもりじゃねえだろな」
「あんま旨そうじゃねえからなあ…」
「じゃあ何するつもりだよ」
「ちょっとびびらせてやるだけだよ、ブフー」
「十分ビビってるぞ?今でも」
「あいつらコンビ打ちなんだよなあ…よし!!あいつらの絆とゆーもんを確かめてみてやろう。忌田お前も協力しろよ」
「何でだよ…てか気の毒にあの二人(泣)」
タチの悪い糞ガキ中年は約束通り巧妙に負けてやった。例のオッサンがまたまた大絶賛してくれたが、二人の表情は死神に見入られたようだった
そして
がちゃ
「来たぜ」
二人が船室に入るとそこには、帝王の他になんだか恐そうなダンディーがいた(もち忌田)
「おう来たな…もし来なかったらそれはそれで面白かったんだけどな(ニヤリ)」
健は軽いジャブのつもりだったが二人はそんだけで十分震え上がった
「お…オレと兄貴に何の…用だ…」
震えながらも毅然と言うダチン君に健はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべながら答えた。
「お前ら哲の名を騙って打ってたよなあ?」
「あれは…その横にいた親父が勘違い…」
「理由はどうでもいいさ。哲はな。今俺と対等に打ち合える唯一の玄人、ライバルだ。加えて俺の大っ切な身内(第二夫人)でもある。その哲の名をてめえらは汚しやがった…」
「えっ…坊や哲って上野の帝王ファミリー(笑)の一人だったのか?!」
「おい。てめえらは俺達の世界じゃ決して許されねえ事をしちまったんだぜ」
言いながら忌田は健のタチの悪いお遊びに付き合わされている赤シャツとダチンにいたく同情した。だが二人はただただ健と忌田の言葉に恐れおののき、震えながら小さくなって抱き合っていた。
「そ…そんな事言われたって…」
半泣きな赤シャツに健は大型戦闘機バージョンのまま言い放った
「玄人の掟を汚しちまったてめえらだ、指の二三本どころかタマ取られる覚悟は出来てんだろうな?」
そしてしっかり抱き合う二人に続けた
「だがよ、てめえらも玄人なら覚悟ってもんがあんだろ」
「覚悟?(涙声)」
「てめえだけが生き残る覚悟ってヤツさ…コンビ打ちとはいえ賭場にある人間関係は主人か奴隷か敵だけ…二人で博打打ち合えよ、勝った方だけ生かしといてやるぜ、自分が助かりたきゃ相手を蹴落すんだな」
「そんな…」
「とっとと始めろよ?ほら卓台は用意してあんだろーが」
「うっ…」
震える手で二人は健、忌田とともに勝負を始めた。
「兄貴何で…こんなことにぃ」
「俺が聞きたいよ(泣)くそ…俺かお前かどっちか?信じらんねえ」
「信じなくても絶対勝負が終れば一人消えるんだぜ?」
(お前らほんっとにエライ奴と同じ船に乗り合わせたな(泣)すまん…物騒な外見しててよ…)
「勝負はてめえらのどっちか先にハコった方が負けだ。ちなみに負けた奴ァ嵐の津軽海峡にダイブしてもらう、いいな?」
いいも悪いも彼らに選択権はないのだ
「…リーチのみ…千点…」
その後はひたすら点棒が動かないショボい勝負になった。彼らがハンチクだという事もあるが、互いに自分もダイブしたくないし、相手もダイブさせたくない。このまま決着をつけず函館に船が着いてうやむやになれば…二人のそんな淡い期待をもちろん健は(もちろん忌田も)気付いていた
「おい」
「は…はい…」
「まさか勝負付けしたくねえなんて言わねえだろな?」
「そ…そんな滅相な…」
「よし。じゃあこの局からワンツーのウマ付けるぜ。こっちのが早く勝負つくからな」
「そ…そんな…」
青ざめた二人の手はみるからにブルブル震えており、びびりまくっているのがわかる。
(ブフーすっげえびびってやんの!たーのしい♪)
(いじめ過ぎだ健…死にそうな面してるぞ、こいつら)
「う…(やべえテンパりそう…駄目だ、兄貴が!)く…」
「どーした?いい手がきたみてえだなあ?」
「いっ、いやいやいや!!!」
ダチンくんの目の前に、まさに修羅道があった。
(どど…どうしよ…満貫だよ…アガったら兄貴がトブ…ここは一つアガリ放棄で…)
「ちなみに」
「ひ…何ですか?」
「アガリ放棄なんてナメた真似しやがったら…分かってるよな?」
楽しそうな健と比べ、ダチン君の顔はこれ以上ないってくらい血の気がひいていた
「あ…兄貴…オレ…オレ…」
恐怖で声も出ないダチンの姿に赤シャツは全てを理解した
「ダチン…」
同じく泣きそうな赤シャツだったが、一旦下を向き、そして勢い良く顔を上げて叫んだ
「アガれ!!ダチン!!俺の屍を越えて生き延びろ!!」
「あ…兄貴!…い、嫌だ!オレは嫌っすよ!兄貴を見殺しになんて出来ねおよ」
「お前何を言って…」
「おい!頼む!!どうせなら兄貴と二人して死なしてくれ!!」
「へえ…」
意外な展開に健は立ち上がり不思議そうに二人の顔をまじまじとのぞきこんだ。
「(こいつら何て強い絆で結ばれてやがる)…健、もうこの辺にしといちゃどうだ?」
健は笑みを浮かべたまま牌を倒し
「ロン、四暗刻…これで二人ともハコだな」
「おい健…まさか」
「てめえら仲良しみてえだからな、望みどおり二人で心中させてやるよ。表出な」
健の声にも二人にはもう恐れの色はなかった
「馬鹿だな…おとなしくロンすりゃ良かったのによ」
「何言ってんスか、水臭いっスよ兄貴…死ぬ時は一緒っス」
「ダチン…」
「兄貴…」
何だか桃園結義のような麗しすぎる光景に忌田は不覚にも目頭が熱くなった
「ダチン…生まれ変わってもまたコンビでいこうな…」
「勿論すよ兄貴!あんた以外の誰と組みますか…」
「う…(泣)」
「健!」
もういいだろ!と忌田がいいかけた時。
満面の笑みで健はプラカードを掲げた。
「ぐっきりー♪」
「…え??!」×2ショックでまたおばあちゃんと会ってきた赤シャツ君が正気に帰ったのは船が港に着いて大分してからのことだったそうな。
ちょっと息抜きババ抜き編「あー楽しかった♪」
めちゃめちゃ満足気に健様は部屋でくつろいでいた。
「しかし今回のは悪趣味だったぜ…まあいつものことなんだが」
「しかしあいつらヘタレやけど、どこぞのダホと違うて命かけてもお互い思い遣る態度は見上げたもんやったなあ」
「ん〜麗しきゆうっじょう♪」
「ところで向こうに着くまで暇っすね」
「んなこたないぜ木座神」
にやり、と健は不敵に笑った。また嫌な予感がよぎる…。
「また博打かよ、俺はもう…」
「只のババ抜きだって」
そう言って健はトランプ゜を取り出した
「なんか楽しそうやな、うちババ抜きは強いで」
まあババ抜き位ならと納得した一同に健はトランプを切りながら言った
「そン代わり罰ゲーム付きな♪負けたらそン度に自分の恥ずかしい過去を一個づつ告白する事。ちなみに嘘喋ってもすぐ見破るかんな」
「よしんじゃあ始めるぜ!」
トランプ遊びのババヌキ…その単純な遊びでさえ、むしろ単純だからこそか。健は野生の嗅覚でうまくババをかわし続けた。
そして一人目の犠牲者が。
「うっげ…」
「はい木座神ちんぼつ♪まあ恥だらけの人生だから、ネタには事かかねーだろ」
「しっ失礼だなっ!てめっ!」
「さっ、話せ♪」
「う…畜生…オレには恥なんて…」
「じゃあ初恋話ー略してこいばなー」
「うっ…お…オレの初恋は小学校の時…同じクラスのけーこちゃんにだった…」
「ひゅーひゅー!!ちなみに可愛かった?」
「ああ…でもって優しくて…でも好きと言えなくて…」
いい年して真っ赤になる木座
「席が隣だからまあ一緒に教科書見たり、喋ったり…それなりに仲良くしてたらある日…彼女が言った
「『木座神君…大事なお話があるの…校舎の裏に来て』」
「告白だあっ!!まさにスクールライフだな♪」
「ほう、でもって告白されたんかいな(目を輝かせて)」
「されたよ…『隣のクラスの田中君が好き』だってな…(泣)」
「なんや伝言係頼まれたんかい…で?」
「笑顔で引き受けて伝えたら…両思いだった…」
何だか恥ずかしいというより甘酸っぱくて切ない話だった
そして第二回戦
「うりゃっ、よしババ回避♪」
「ノー♪アンビりーバボー!」
「げ、春木だ…」
「誰も聞きたくなかったが春木は話し始めてしまった。
「あれはスイートでビターな青春の思い出…私の兄がまだ存命だった頃…私は音楽家の兄を真似て、タキスィード!というものを着てみたくて仕方なかったのでーす…折も折、兄の控え室にそれらしきものがたたんであったのです!誰もいないのを確認し私はその服を身に付けました、とオーマイガッ!」
「なんだってんだ」
「それはタキスィードではなく!バニガ衣装だったのです!追い撃ちをかけるように、楽屋にファンに囲まれた兄が…」
ドバキッ!!
「気色悪い恥喋りなや!!」
一堂一気に脱力した。
「春木のバニガなんて俺でも萌ねえ」
さしもの健もげんなりする
「お前でも良識はあったんだな」
「でも忌田、お前のバニガなら…」
どばき、鋭い回蹴を後頭部に食らう健
「…じゃあユウたんや哲でもいい…」
「ダーリンのバニガはええなあ…」
「だろ?」
「こらドテ子、こんな奴と価値観を共用するな!!」
「こんな奴って言われた…まあいいさ、次!!」
さて次の犠牲者は「忌田だあっ(嬉)よし…お題は女の話、な」
「おっ、女の話?!」
「おいまさか全然ない、とか言うなよ?」
忌田はひどく話しづらそうだったが、観念(するしかなく)て語り出した。
「…俺がまだある組で世話になってた時の話だ…。…毎日何かと忙しくて、飯食う時間にも事欠いてた。だから飯抜くか、食っても大抵立ち食いそんなトコだった。けどな、まあ筋者が…特に俺みてえなすぐそれと分かる面じゃあ、当たり前だがどこの店も歓迎はしてくれねえよな。なるたけ早く飯かきこんで店出るのが普通になってた。で、まあその時もいきつけの店に食いにいって、とっとと出ようとしたんだが…番台の向こうから呼び止められた。出てきたのは二十そこそこの娘で。あんまり飯かっこんで食うのは体に悪いから止めろ、ってんだ。黙ってたら。気使ってくれてるんだろう、けどあんたも大事な客だゆっくりしていけ、と抜かす。温かい言葉だった…それ以来俺は少しだけ長く店にいるようになった。時々番台の向こうで微笑んでる娘と目があって妙に気恥ずかしかったのを覚えてる」
「で?その子とはヤッたのかよ?!」
ドバキ(ばい、ドテ子)
「馬鹿…。しばらくその娘の姿がみえなかったもんで尋ねてみたら、出戻りで…また別の亭主に嫁いでいったらしかった。馬鹿みてえに切なかったな…さっ!もう終りだ!!(めちゃ赤面)」
「師匠あんた…リリカルやっ」
「…可愛すぎ!!てか食わせれっ♪…ごふぉっ」
次の犠牲者はドテ子だった
「うわ最悪…」
「はーつーこい!!初恋の話ー!!さあ恥ずかしい話をしろいっ!」
「変質者か」
「しゃあない…じゃあ話すわ…うちがまだ小さかった頃…そいつに一目惚れしてん」
「おおー…ちなみにいつの話?」
「五つかそこらやったな…ものすごく会いたくて毎日通ったでその店に…中には入れンかったけどな」
「早熟だな」
「長い手足がものすご素敵でな…うち貧乏やったから他じゃ会えへんかってん」
「ベリスウィート♪でどうなったんですか?」
「どもなれへんよ、あんまり毎日行くからお母ンに『あんた恥ずかしいからもうやめ』言われて、それでしまいや」
「別に切ないが恥ずかしくねえじゃん」
「でも初恋の相手が蟹やで!?うち、かに道楽の蟹に恋しとってん」
「かに道楽の蟹…」
何だか確かに恥ずかしい初恋だった
さてそして一行がおばかなことをやってる間に船は函館の港に着いた。
「よっしゃ!死神君を探すぞっ!」
「生きてるんだろうか…」
「死んでたら浮遊霊の寝起きを直撃!♪とりあえずは可愛いおにーたんかおねーたんいねえかなあ♪…賭場行こうぜ賭場。死神探しによ」
「お前が打ちたいだけじゃねェだろな帝王」
「(聞いてない)お?牌ホンビキ推奨店だってよ…うーす、どっか空いてないか…」
入ると店は異様な雰囲気に包まれていた
「金が足りねェなら娘売って金つくれ!!」
「修羅場やな…」
怒鳴っているのは民族衣裳を着た男、隅では店の娘らしい美少女が震えていた
「フクロウの奴…オヒキの女、ラバに持ち逃げされたらしいな」
「ああ前よりいっそう荒れてるしな」
ひそひそ噂話が起こっている
「おい健、店変えた方が…」
「すげえ好み」
「はあ!?」
嬉しそうに健は騒動の中心へ歩み寄った
「おい兄さん♪」
声をかけられて梟は殺気だった目で振り返った。
「うわ漆黒のウェービーへアに黒目がちの瞳!めっっっちゃ可愛くないか?え、おい!!」
かなり興奮気味の健様に忌さんと木座神はげんなりした。
「おい、今取り込み中だ。邪魔するとブッ殺すぞ」
「うわあ〜♪怒った顔がすっげえそそるぅ!さっきそこら辺のやつらが言ってたけど、フクロウってのか?かーわい〜い。じゃ、フクちゃんな。決定!!」
「フザケやがって!うぜえんだよ!!死ね!」
梟の右アッパーをかろうじてかわしつつ健はにやりと笑った。
「あ、俺はドサ健。健ちゃんでいーぜ♪」
「ドサ健だと?!」
梟の表情が変わった。
「ノガミのドサ健…モノホンか?」
「偽物に会ったこたねェから知らねーがモノホンだぜ…なんてこた言うより打った方が確実だな」
その台詞に梟の目が獲物を狙うようにキラと光った
「また始まってもうたな…」
「博打打ちは博打打ちを呼ぶんだ」
「あんたヘタレの癖にカッコつけなや」
「たく健の野郎…」
「まさにギャンブルジャーニーですな」
「ほんまや、実はこれぐっきりの収録やのうて旅打編ちゃうか」
そうかも(笑)
ともかく梟と健のやりとりを聞き助かるかもと思ったのは店の主人
「お願いです、私たちを助けて下さい」
「あ?フクちゃん、そういや娘売れって言ってたな」
「博打に負けたら地獄に墜ちるもんさ」
「だな(笑)気が合うな」
「んな事言わんと助けたりいな」
「別に俺正義の味方じゃねえもん。じゃあな…ドテ子ぉ!!お前が抱かせてくれるんだったらここの奴のために打ってもいいぜ♪てかお前のバニガ見てえな、おい!」
「何ぬかす!嫌らしい、何でうちが!」
「ふーん。なら別に俺ただフクちゃんと打つだけだし♪」
「たちわっるう〜」
「お願いします!私ども家族を!娘を!どうぞ救ってください!」
賭場の主人は必死だがヤンチャくれギャンブラーはもち、聞く耳もたない。
「帝王!たまには人の役にたてよ!!」
「だって俺勝ったらフクちゃん頂くんだもーん」
(この男どーにかしてくれ)
誰もがそう思ったその時!!。
「お願いです、バニガなら私が!!」
賭場の娘が叫んだ
「それだけじゃなく何されたって文句言いませんからこの店を助けて下さい!!」
「…健気な美少女や…」
「ほんとにな…人の心持ってんなら助けようと思うよな」
ドテ子と木座の嫌味。しかし確かに美少女だったので健も少し気持ちが動いた
「うーん…乳はあんまないけど別品だな…」
「おいドサ健!?何か今までの話を総合すると、オレは負けたらここの権利書と娘売り飛ばすのを諦めなきゃなんねえのかよ」
「それと俺とエッチな」
「なっ…」
フクロウは絶句した
「何か慣れっこになっちまったけど、負けて野郎に釜掘られる博打ってのは間違ってるよな」
「ほんまや、てかエロ中年の存在そのものがまちがっとるわ」
梟はさすがに博打打ちなので非常識な賭けにはなれていた
「よぉし…呑んでやる!!」
「マジ!?」
嬉しそうな健に梟は応えた
「但し…それ相応のもんは賭けろ!!」
「えーっと…じゃあ俺が釜掘られてやろうか?」
「いるかぁっっっ!!!」
「えー俺の受け絶品なのにぃ」
「もういい、野郎に釜掘られるなんざ俺にゃ死ぬも同然…てめえが負けたらタマもらうぜ」
「いーぜ(あっさり)」
「大した自信だな」
「だってよ、俺はドサ健だぜ!?相手が誰だろうと必ず勝つさ」
口元に笑みを浮かべつつも玄人の表情になる健。
「ふん、まあいいさ。胴は俺だ、いいな」
「構わねえよ」
「入ります!」
勝負が始まった。
「師匠、あのダホ中年また無茶しよんで?止めんでええの」
「止めたって聞くか」
忌田は諦めたような表情で苦笑した
「あの…す…すみません…何だか…私たちの為に命賭けの勝負なんて…」
美少女がおずおずと近寄る
「別にあのエロ中年は自分の下半身の為やから気にせんでええよ。それよりあんた、あの長髪が勝ったら女郎、うちのバホ中年が勝ったらバニガの上になんやいかがわしい事存分にされてまうで」
「…それは…諦めます…この店が無事なら…」
「かーっ!!乙女だ…オレの前に乙女がいる!!なあお嬢さん、この木座神の名にかけて貴女の貞操は守ってやるから安心してくれ!!」
「何の当てにもならん保障やな」
しかし美少女は世間知らずなのか、見た目はかっこいい木座神が白馬の王子さまに見えてしまったらしい…真っ赤になって涙声で答えた
「木座神さん…」
「うわ…なんや少女漫画なシーンが…」
「ほっとけドテ子」
そのそっけない台詞に木座はもしかして忌田が少し嫉妬したのかと妄想したがあくまで妄想だった。何故なら忌田の注意は全て健に向けられていたからだ
「…なあ師匠…確かにバホ中年は強いけどな、殺しても死なへんやろけどな…もし万が一負け…」
さすがに負けたら死ぬ勝負、健の事が心配になるドテ子に忌田は答えた
「負けねえよ…あいつは負けねえさ、絶対な」
それは確信に満ちた台詞だった
「俺は一に張る、」
「じゃあ俺は二だ」
健の言葉に一瞬梟の表情が蔭った。それを健様が見逃す筈がない。
「おい」
「なんだ」
「今一瞬乙女な表情してたぜ、何考えてた?」
「な、何も考えてねえ」
まさかラバさんのことをちょっと思い出してたなんて言える訳がなかった(笑)
だがこの一瞬の隙が勝負では致命的になることがある。
ニヤリ、帝王はほくそ笑んだ。
「気になる奴でもいんのか?」
「ばっ…違うつってんだろ!俺は…ただ…」
透き通ったラバの眼差しを思い出し、梟は少し赤くなった。
「うわ図星っぽい!てか萌えっ?!!何て切な気な顔だよ…フクちゃん、抱かせろっ」
せっかくシリアスな雰囲気になったのに…忌田は命がかかってる状況で男にセクハラする健は、大物であって馬鹿じゃないんだ…と必死に自分に言い聞かせていた
「折角心配したったのに…ダホ」
二人の勝負は命がけの真剣勝負なのだがどこかコミカル…
しかし場の流れは健に傾いたようだった。もしかしたらこれも彼の策略だったのかもしれない
「…ところで木座神さん…お店の権利は分かるんですが、あの健さんという肩は梟さんと何するつもりなんですか」
今更な事を聞かれ木座は返事に困った
「や、奴はあの男をがもう賭場荒しが出来ないくらい、完璧にノしちまうつもりなのさ…」
まあ野郎に釜掘られたらトラウマんなってしばらく表歩けませんよね。死にたくなるかもね。
一方健と梟の勝負は、心理戦?を制した健が梟を押していた。タネ銭が切れそうな梟に健は余裕の笑みをブチかまし言った
「お前、強いな…だが流れは俺に来た。この勝負もらったぜ」
「…くうっ…負けるかよ、てめえみたいなフザケた野郎にっ!!」
梟はラバの涼やかで透明な瞳を思いだし何だか胸が熱くなった。
彼との勝負なら命とられたって釜掘られるような事はなかった…別に彼になら掘られたって良かったけど。
なのに目の前にいるやたら男臭いケダモノに自分は…
(畜生…ラバにもっぺん会って梟の絵を貰うまでオレは…オレは…)
「行くぜぇっ!!」
ラバへの愛?が彼の底力を呼び覚ました
玄人のすさまじい殺気を感じ健はほう、と呟いた。
「(ラバ…みててくれ)俺は勝つ!」
「来な」
「一に有り金全部だ!」
「同じく二だ」果たして結果は?!
「…え…」
見物人がざわついた。
「…二!」
「フクちゃんゲットだな」
「馬鹿、な…俺がツナ外す筈が!」
にやり、と笑いながら健は椅子の後ろに向けて一瞬手のひらの中を示した。
「あ!忌田さんあいつ!」
「すり替えやがった…あんだけの中、一体どうやって…」
「さすが帝王♪敵にまわしたくありませんねーえ♪」
「…どうやってすり替えやがった…」
「さっすが気付いたか。それは企業秘密さ」
「し…信じられんわ…どないしてん?魔術みたいや」
「こうやってみるとすげえ奴なんだけどな(泣)」
涙ぐむ忌田の横で美少女とヘタレ王子はラブロマンスを演じていた
「さあて(嬉)じゃまずは店の権利書とそっちの美少女のバージン頂くぜ」
「ババ、バージン!?てめえ許さねえぞ!」
叫ぶ木座神に
「だって約束だもーん」
と返答する健。
「てめえっ!!この娘を抱くならオレをやれっ!!(泣)」
「き、木座神さん!(泣)」
「だからいらねーってば」
「メイド服でも婦警でも何でもやるからっ!!この乙女だけは!!(泣)」
「萎え萎え〜っ!んじゃま夜はフクちゃんとやらなきゃいけねーし♪善は急げだ、俺すげえうまいから大丈夫だぜ」
「最悪な色惚け中年や…でもほんま何とかならんかな、同じ可憐な美少女として同情するわ」
「…はい…約束ですからお好きに…」
「しゃあないな…おいダホ中年!うちが代りに」
「ヤらせてくれんの?」
「バニガしたる!!」
ドテ子は男前に叫ぶと後ろの美少女に言った
「あんた…今回は助けたる、だから強く生きるんやで」
「ドテ子さん…」
美少女は頬をぽっと赤らめた
「ううん♪ユリですな」
「ドテ子…お父さんは保護者としてどうすりゃいいんだ(泣)」
バニガの格好の美少女二人(店の主人の娘もドテ子とペアなんで結構ノリノリで参加)をはべらせて、ご満悦の健様。その奥で油汗を流す梟の姿があった。
「フクちゃん、賭博師に二言はないよな♪今夜は大サービスすっから」
「…ああ」
生気のない声で梟は答えた。
(ラバ…オレもうきれいな体じゃお前に会えないな…どうせヤられるんだったらお前に…あの目に見つめられながら抱かれたかった)
何だかすげえ乙女な梟に健様は大いに食欲をそそられた。
「オレの乙女が…バニガに…」
何だか切なそうな木座を一同は無視した。
てか眼前のウェービーヘアの賭博師の運命に興味津々だったのだ
「はい健様お酒を」
「うらダホ中年!ツマミや!」
美少女二人にかしづかれ大満足な健
「乳はドテ子に負けるけどいい腰してんなネーチャン(触り)」
「え…(赤面)」
「てめ帝王…乙女の清らかな腰に!!」
「(無視)博打うんぬんは抜きにしても俺いい男だろ?一晩のロマンスしようぜ」
「やめんかいエロ中年!!困っとるやんけ」
「まぁた嫉妬しちゃってかーいーな(玄人の目付きになって梟に)だがよ、実はあんたを一番食いたいんだぜ?」
「…負けたからには地獄堕ち…覚悟の上での博打だ!!何でもされてやるよ!!」
「心配しなくても天国見せてやるよ…で?どこでやる?やっぱ景気よく高級ホテルで激しくいっちゃう?フクちゃん」
「そんなの性にあわねえ」
てかもうシチュエーションとかはどーだっていい梟だった。
「んーじゃあ旅館でも探すか♪木座神手配しろよ」
「何だってオレが!!」
「うちらも泊まんねんからええとこ探しや!」
いつもながらの展開に溜め息が出る忌田さんだった。
さて店の主人に涙ながらに感謝され、ついでに娘に熱い眼差しで
「また来て下さいねドテ子さん」
と言われ、意気揚揚と(健だけは)一行は紹介してもらった旅館に赴いた。
何だか心を閉ざしてしまい無表情な梟とまったく無頓着な健
受付
「部屋用意してくれ…あ、一部屋はめちゃ防音効く部屋な」
そう言って健は邪悪に笑った
「健、玄人とはいえ多分…経験ないだろうからくれぐっれも無茶すんなよ!!(泣)」
こうなったら健に懇願するしかない忌田さん。
「わあってるって♪甘くて熱ーい夜にしてやるよ、フクちゃん」
「…」
「じゃ解散な♪」
「忌田さん俺同室でいーっすよ」
「ヘタレ、何か目が怪しいで。師匠危ないから入れたらあかんで」
「なっ何もしねーよ?!(ね、寝姿を見倒すだけだ!)」
「じゃあまた私と♪」
「嫌だっ!」
部屋にて
「さて…フクちゃん?いきなりやる?それとも風呂入ってからにする?発展版として風呂でやるってのも…」
「…好きにしろよ」
「じゃ全部試してもいいぜ」
そう言いつつ健は長いウェービーヘアから覗く憂いのある顔を眺めた。
猛禽類の目にはさっきまでの鋭さはない
「とりあえず脱がしてえし、まずここでやるか」
長い髪を指で掻き上げ、健は梟の顔を引き寄せた。
そしてその目に不安の色を見てとった
「今までさんざ人んちの娘売りとばさせたんだろ?その痛み一遍てめえで感じてみろよ」
「言われなくてもそうするしかねえ」
「分かってるじゃねえか、その顔いいぜ」
健は梟の唇を指先でなぞった。梟は勝ち気だが、不安を隠し切れない表情で健を見上げた。
嗜虐的な目でそれに答えると、健は手を梟の胸元に伸ばし、服を脱がせにかかった。
首筋に健の指先が触れた時思わず梟は小さくびく、と反応した。
「お?実はかなりエロいんじゃないか?」
「違…う!」
目をそらす梟だったが、いつのまにか大きくはだけられた胸元に、健の指が入るとさすがに平静ではいられなくなった。
「…く…!」
幾分紅潮した顔で梟は下に敷かれたシーツを握りしめた。
「引き締まったいい躰してるな…むしろ華奢なんじゃないか?」
「馬鹿…野郎!」
「照れるなよ、いい眺めだ」
頬に手を添え健は切長の瞳を細め梟に微笑みかけた。
眉をひそめ色をなくす梟に健は深く口付けた。
「ん…んん…!」
切な気に梟は悶えた。
口付けを交す間も健は梟の衣服を器用に解いていった。
そして口付けを受けながら梟はラバの事を思っていた。何故こんな時にこんな所で彼を思い出すか自分でも不思議だった
「…誰の事を考えてんだ?」
心を読まれた気がして梟は驚いた
「さっきからずっとだ…俺に抱かれながらも考えちまうってこたァよっぽど惚れてんだな」
「…違う…」
「博打に負けて俺のモンになったんだ、教えるよな?そいつの事」
健の追及から逃れる術はないと悟り、梟は答えた
「昔…オレを追い詰めたことのある玄人がお前の他に、もう一人だけいた…それを思い出しただけだ!」
「ほう、フクちゃんを?強えんだなそいつ」
「べらぼうにな…」
「で、そいつがフクちゃんの惚れた奴、と」
「ちっ違っ…!!」
「…もし」
「?!」
「もし今こうして、フクちゃん抱いてんのが俺じゃなくて…そいつだったらどうだ?」
「なっ…奴は、こんな下衆なこと絶対しねえ!!」
「だからもしも、つってんだよ…なあ?」
(ラバ、が…?!)
思わず顔を真っ赤にしてしまい慌てて顔をそむける梟。
「お、同じだ!今みたいに早くことが済むのを願うだけだっ!(ラバは…そして碧は互いに好き合ってる、二人にゃもう俺は…無用だ)」
「ブラフだな」
「何?!」
「抱かれたいんだろ、そいつには。愛してるって言ってほしいんだろ?…」
「…!」
ラバの瞳を広い背を思い出す。手に入れられようはずもない、あの透き通った瞳は。
梟は悲痛な表情で、熱のこもった唇で小さく呟いた。
「ラ…バ…」
「ラバ?それがそいつの名か?」
梟は答えなかった
「俺に抱かれるって思うのが嫌なら目ェ瞑っててもいいぜ?」
「?」
「そいつの事考えてろよ、そいつに抱かれてるって思えばいい」
目をつぶって、胸に這わされた愛撫に身を任せる梟。しばらくの沈黙の後、彼は目を開け言った
そして他のメンバーの部屋にものすごく意外な人物が現れた
「ひひ…久しぶりだな」
「印南!?」
驚く忌田と木座
「何でここに…」
「そりゃこっちの台詞だ。俺が勝負しようと思った博打打ちを健が先に沈めちまったってンじゃねえか」
「…梟の事か?」
「牌ホンビキなら俺のガンがありゃ負けやしねえからな」
「確かにな」
「で?健はどうした」
「あいつはな…」
「お前が探してる、当の本人とお楽しみだ…」
「なに、本当かよキザちゃん」
そして健と梟は。
「俺は…あいつ、ラバと打ち合って、ギリギリで勝った。賭けてたのは玄人生命…賭けの代償にカタギになった奴に、オレは餞別に女をくれてやった…」
「女?」
「おヒキに使ってた。眼牌が出来たからな、多分奴らはうまくやってる」
「…女までくれてやるたぁよっぽど惚れこんでたんだな」
「オレのおヒキでいるより、そうする方が幸せだったんだ…あいつにとっても」
「なんだその娘にも惚れてたのか、じゃなおさら辛えだろが…別に呼んでもいいぜ、俺のこと…ラバって」
「馬鹿野郎…ラバは深く澄んだ摩周湖みてえな目をしてた…お前とは全く似てねえよ」
「…残念だな」
「もういいだろ?はやくやっちまえよ!!」
「代わりになれねえなら…」
ドテ子たち
「…うお、何や死神かい」
「?誰だ嬢ちゃん」
「ドテ子ってんだ。おいドテ子、こいつは哲の昔なじみの玄人の印南だ」
「ダーリンの?…ダーリン…ホンマうさんくさい知り合いばっかおるなあ」
「ダーリンて哲っちゃんの事かい?まさか哲っちゃんのレコか」
「いややわあ(ばしっ)そんな分かり切った事きかんといてな」
「…哲っちゃん…両刀だったのか……人は変わるもんなんだな」
「リリカルは夢…風の前の塵に同じく儚ぇもんさ」
「本当っすね」
先ほどの賭場のあの娘を思い出して木座神は切なくなった。
そして
「そいつの代わりになれねえなら…この俺をたっぷり体に覚えさせてやるよ。二度と忘れらんねえくらい」
梟の顔がひきつる。
「哭いてくれよ?梟?」
健は梟にのしかかった。
「そういや印南、健と会ってどうすんだ?」
「折角だから博打打とうと思ったのさ…ひひ、だが野郎とお楽しみ中じゃあな…なんであいつ、いっつもキワ者系ばっか犯りたがんだ?」
「俺に聞くな!!むしろ俺が聞きてえよ」
「…人事だと思ってっとアブねえよ印南。あんたも十っ分キワ者だからよ」
木座がこっそり忠告した
「まあ暇やし麻雀でもせえへん?金は賭けんと」
一同特に反対はなかったので、受付に卓と牌を借りにいくと、丁度若い夫婦がチェックインしていた
「桜庭さまご夫妻ですね?」
「ああ」
「碧、疲れたろう。大丈夫か」
「平気よ」
「久しぶりの函館だな、ここも変わったな…あいつは梟はどうしてるんだろな」
その会話を聞いていた一堂は思わず叫んだ。
「ふっ、梟?!」
男は驚いて顔を上げた。
「…あんたたち…知ってるのか梟を!」
「え…」
ツレが博打で負かして食おうとしてる、とは言いづらすぎる!!口ごもる一行になおも男は尋ねた。
「知ってるなら教えてくれ!奴はどこにいるんだ?」
「えっと…てかあんた誰や?」
「俺は…奴の…元…」
「元彼かいな?」
うっかり叫んだドテ子を不審気に見やりラバは返した
「あいつは男だぜ?」
「知っとるわい!!そやなくて…」
何だか話をややこしくしようとするドテ子を制し忌田は続きを促した
「元…敵だ…生憎だがあいつに博打に負けちまって、今じゃ敵にすらなれねえが…」
宙を見つめるその澄んだ眼差しには一点の曇りもなかった
「(小声)師匠…どないしょ?この兄さんバリノンケや…事の顛末なんか話したら…」
「(小声)話すなよ!?」
「で…ふく…」
「え…と(碧さんに)…なんやキャンバスみたいなもん持ってはるけど…絵描きさんなん?」
「ええ主人が。といっても絵じゃ生活出来ませんけど…この絵は特別なんです」
「この絵は約束なんだ、梟との。あいつに気に入ってもらえるといいんだが」
澄んだ瞳でそういうラバにかける言葉が見付からない一行。
「で、梟はどこにいる?」
健様の寝室です。
「く…」
「声あげてもいいからな、俺のはすげえから出さずにいる方が無理だろうけどな」
(ラバ…俺は…)
梟は己の漆黒の髪にうずもれながら、眼をうるませた。
あからさまに困惑した一同に不審を感じたラバは詰め寄った
「梟に何かあったのか?答えろ」
「(小声)忌田さん…もう隠すの無理っスよ」
「(小声)しかしあんな事言ってみろ…どんな騒ぎになる事やら」
困った一同を見て碧が言った
「あなた…少しこの人達とお話したいのだけれど」
「碧?」
困惑したラバだったが碧には弱い彼、頷いてしまった
物陰
「…さて、私には本当の事教えて欲しいのだけど…梟の事…」
「いや…」
「あなた方…ノガミぐっきりテレビの方でしょう?」
「何で知ってるんや」
「うち…貧乏だから娯楽がなくて…あの人が絵を描いてる時は邪魔出来ないからひたすら定食屋でテレビを見てるの」
「美人なのに何だか哀しい時間潰しだな(泣)」
「それが梟と何か関係があるのか」
「いえね、番組のカメラマンて正体隠してるけど、実はドサ健でしょう?」
ぎくう!!
忌田は必死でとりつくろったが碧は手を緩めなかった
「そして梟ってあの手のタイプに好かれるのよ!!」
「姉ちゃん大したガンだなあ、ひひ」
「元ガン牌使いだから」
碧は確かに強く?なっていた(笑)
確にあんたの言うとおり、梟は…うちの健に賭けで負けて…その」
「そう…いいようにしゃぶられてるわけね」
「こっ、このねーさん大人しい顔して遠慮カシャクないなぁ!!」
「ひひ、止める気だったらやめとけよ。奴も玄人、敗けの代償は払わなきゃなんねーこたぁ十分分かってんだろ。むしろ同情して止めさせれば、それこそ自殺しかねねえぜ?」
「分かってるわ、あの人も酷いことをやってきたし…自業自得かも知れない」
「…あの質の悪いヤンチャくれは、どうにも止められねえんだ…」
「梟はクソ外道で服のセンスもおかしくて、ついでに頭弱かったわ。けど可愛い所もあったのよ」
「一つ聞きたいねんけどあんた梟のなんやねん?」
「元オヒキ兼保護者よ」
「保護者?」
「梟って博打は強いんだけど意外と隙だらけ(男相手には)だったから私が守ってあげないとあぶなっかしくて…」
「じゃあ今の旦那はなんやねん」
「でもあの人はあの人で芸術家気質で思い込んだら他が見えなくなるからそれもあぶなっかしくて…天秤にかけてみた末に将来性に賭けたの!!」
「博打打ちだな姉ちゃん」
同じ眼使いとしてその目の確かさに感心する印南
「ありがとう…もう竹の目は覚えられないけど人見る目はあるわ、だから夫は絶対一流の画家にしてみせる!!けど…やっぱり梟の事も心配してたの。無茶な博打して陰間茶屋にでも売られてやしないかって」
「…まあ一晩したらちゃんて返すから…健が駄々こねても返すから…健はもう誰にも止めらんねえ、梟には気の毒だが一晩耐えてもらうしか…」
「同じ屋根の下にうちの人…ラバがいるとしったらどう思うかしら…因果なものね」
「元敵いうてたな」
「ええ、確にそうよ。けど梟はラバにそれ以上の感情をもってた、はず…」
「…え?」
「多分梟はラバに惚れてたわ。片想いだったけど」
「うっわあ〜!!きっつぅ!」
「あんたええんかい?元彼と現旦那のプラトニックラヴなんて状況」
「でもうちの人は完全ノンケだから」
「みてえだな…だがまあ梟を心配してるのは間違いねえんだろ?」
「そう…」
「あ?ちなみにその絵はなんやねん」
「フクロウよ梟がうちの主人の絵を気に入って頼んだものなの…二人の約束の絵よ」
「それ渡すのにアンタの旦那、梟探してたんかい」
「ええ。でも渡せる状況では…」
そして当の梟たちは…盛り上がっていた、極片方だけは
「は…は…はぁ…」
「何だかんだ言って盛り上がってんじゃねえか」
長い髪が白いシーツの上でくねる。肌に何度も押し当てられた口付けの跡が赤く肌を彩る。獲物の喉を咬み裂かんばかりに健はその喉元に歯を立て、軽く…しかしはっきりとした跡をつけて言った
「じゃあそろそろホンバンいかせてもらうぜ…初めてだから気合い入れてほぐしてやったが…もう俺が我慢ならねえ」
きら、
と光る残忍な色に梟は我知らず身を振りほどこうとしたが無駄だった
「た…たすけて…ラバぁ…」
その願いは、確かに届いた
「…ふく…ろう?」
芸術家という奴は常人にはない勘を持っているのです(笑)
突然一行を横切って走り出そうとするラバ
「あなた、どうなさったの?」
「この旅館のどこかに、梟がいる!今奴が俺を呼んだ気が!」
澄んだ鋭い瞳でラバは言った。
「ひひ、元玄人とおヒキの夫婦…さすがだな」
「カタギになりきれてねえな…」
「どこなんだ、梟!?」
「あなた落ち着いて。梟がここにいる筈ないわ」
「いや、俺の勘に狂いはない。奴の身に何かとんでもないことが…」
(こいつら怖い…)
限りなくカタギに近い玄人、木座神は二人の冴えすぎた勘を目のあたりにしてそう思った。
確かに凄まじい洞察力だ…だがこのままだと、健に無理矢理されている梟の姿を元彼?が発見してしまうという何とも非人道的な事になる…てかこの男は将来を嘱望された画家らしいし、貴重な外貨獲得手段を荒廃した日本にもたらす為にも、ショックで絵筆が握れないような事態は免れたい。忌田は考えて指示を出した
「木座、印南、ついでに春木!!行くぜ!!」
「は、はい忌田さん!!…どこへ?」
「決まってる!!健の部屋だ!!奴を梟から引き剥がす。ドテ子、ここでその男をひきとめておけ、なんとしても!」
「まかしときっ!碧さん、フォロー頼むで!」
「勿論。テレビでみてるとおり、頼もしいわドテ子さん」
「じゃあ行くぞ!」
「はいー!!忌田さんっ!」
一方健様と梟。
「よっぽど好きなんだな、ラバってやつが…だが色事にかけちゃ俺のがうめえよ」
「ラ…バ…(泣)いやぁ…あぁ…」
「すぐ気持よくしてやるよ、初め少し痛ぇかもしんねえが…しかし泣き顔も素敵だぜ?」
あわや、という時。
ガララッ
「やめなさい!!!」
「ん?忌田?お。何だ死神くんか!?ああ悪いな今取り込んでるから、明日ヤろ…」
「健!もうその男を離せ!!」
「ホンバンはこれからだぜ、絶対やだっっ!!」
「もうそいつは十分イタブラれてプライドもぼろぼろだ。もういいだろう!」
「こんなボルテージ上がりまくってんだ、無理無理!」
「相変わらずどーしよーもねえな、ひひ」
「…やっぱ無理っすよ忌田さん…」
じっと考えこんだ後、決心して忌田は言った。
「代わりに…俺を抱け」
「ホントかよ?ううん…どうしよっかな悩む健」
「いいから早く決めろ」
「でもまだツッ込んでねえし」
「いいから梟から離れろ」
木座は梟を健から引き剥がした
「…」
本来なら木座なんぞには足元にも及ばない玄人の梟だが、何だか女の子のように涙を浮かべている姿は何だか可憐で乙女だったので木座はものすごく同情した
「ほら、涙を拭いて」
無言で頷き梟は涙を拭いた
「まあ…忌田が自分から相手してくれってんならいいや」
健はようやく納得した
「じゃあ善は急げ♪いーみたぁ〜ん♪」
「ばか、まず風呂だ!」
「忌田いつもそうだなー」
一方
「立てる、か?」
気遣う木座神に、無言でうなずき梟は立ち上がり服をまとい始めた。
「…災難だったな…気の毒に」
「…玄人だから…仕方ない」
「玄人だって人間だ!それにあんたすげえ乙女じゃねえか!!好きでもない奴に抱かれて、怖くて当たり前だ。オレはへたれだが、片想い恋愛じゃ一流だから無理矢理っとのは許せねえんだ」
「…お前も?」
「なんか微妙な友情がうまれそうだな、ひひ」
「梟…実はこの旅館にラバがいる…」
「何?」
「あんたに約束の絵を渡す為にわざわざ訪ねて来てんだ」
「しかもだな…ひひ、あんたの"危機"を直感で感じて捜し回ろうとしてんだぜ」
「何だって…?」
梟は先程のラバへの救いの言葉を思い出した
「通じたのか…ラバ…」
「何なに?フクちゃんの元彼来てんの?すげえいい男なんだってな?俺も会い…」
「やめんか!!」
一同に怒鳴られる健を尻目に梟は服を直して非常階段の方へと向かった
「会わないのかよ」
木座の言葉に梟は振り向かず答えた
「会えるかよ…こん情けねえ俺が…」
そして二三歩歩き、続けた
「絵はまだ貰えねえ…いずれ"玄人としての生き方"を完遂出来たら…そん時貰うさ…」
「そりゃ死なねえと無理だろ」
印南の言葉に梟は答えず、暗がりの中に消えた
「なんか今のフクちゃんの後ろ姿すげえソソったよな?やっぱ最後までヤっときゃ…」
あくまで懲りない"最強の玄人"だった
(ラバが…オレの為に絵を…?オレを探し回って?)
梟は階段の踊り場で肘を抱え、泣きそうな顔で微笑んだ。
(ラバ…ありがとよ)
そして梟は静かに外の闇へと帰っていった。
「梟…可愛い乙女な玄人だった…」
余韻にひたる木座神だったがすぐに今そこにある危機に気付いた。
「はっ!い、忌田さんがっ帝王の犠牲に?!」
「二人なら風呂つかりにいったぜ?ひひ」
「下にいるドテ子さんたちにぃ、うまく言っておいて欲しいとのお言葉で〜す♪」
「うおお帝王!何人乙女を犠牲にっ!!」
野郎だけどな。
がばあ
「梟!?」
すごい勢いでラバがドアを開けた
「…あんたらか…梟は…?」
どうやら女性二人の制止を振り切って旅館中捜し回っているらしい
「危機一髪だったなキザちゃん」
「確かにな」
ラバは部屋中見回し、誰もいないのを確認すると去って行った
一行がロビーに戻ると
「どないや?大丈夫やったか」
「止めきれなくて…」
「ああ…なんとか…その代わり忌田さんが…(泣)」
「師匠…なんてすごいお人や…うち、師匠の崇高な犠牲は忘れへん…」
「すいません、うちの主人、思い込んだら止まらない人で」
「ある意味ー健様と似てますね♪」
「でも外道じゃありませんし、身持ちは固いですから(きっぱり)」
「ひひひ、じゃああんたの旦那あの調子で捜し回ってんのかよ?変質者扱いされてねえか」
確かに勝手に乱入するのはねえ…と言いたいトコだが、彼のあまりの真摯で澄んだ瞳のおかげで誰も訴えたりしなかったらしく、しばらくしてラバはしょんぼりして戻ってきた
「いなかった…俺の直感はなんだったんだ…」
「あなた…」
実は彼の読みはカンペキだったのだが…
しょげかえっていたラバだったが、しばらくして顔を上げ印南の顔を眺め始めた。
「兄さん、ひひ、どうした?」
「あんた…何て生々しい素敵な死相が出てるんだ…よければ絵のモデルになってくれないか?タイトルは…『下駄の死神』!」
「ひひ、別にいいけどよ?」
余談だが、後にこの絵がラバの画壇デビューへの道を開くこととなる。
「畜生、どうすりゃあの帝王から乙女を守れるんだ!」そして
「なあ忌田また痩せたんじゃねえ?」
「誰のせいだよ…」
「ああこのうなじ…たまんねえよ…」
「ちょ、触るんじゃ…(赤面)」
「俺とお前の仲じゃんかよ照れるなよ♪ま、そこがいいんだけどな♪」
「ほら、もういいから早くしろよ」
布団に座る忌田に健は意外な答えを返した
「今日は…いつもと違うふうにしようか」
「は?」
訝しがる忌田に健は答えた
「エッチ無しな」
「はあ!?」
なんだ?したいのかよ、なら俺はずんどこ…」
「いやいやいや!せんでいい!ってか…いつもと違う風に、ってどうするんだ?」
何か更に怖い気がしてしまう忌田さん。と、健は忌田の肩を抱き寄せた。
(やっぱりやる気か…?!)
だが意外にも健はそれ以上何もしない
「…健?」
「お前は俺に惚れこんでるよな?」
「な、何を…」
「俺とこうしててどうだ?」
「どうって…」
「だから照れるなよ、なあ?」
赤くなってうつむきながら忌田は答えた。
「…う…嬉しいさ、すごく」
「こうしてるだけでもか?」
「あ、ああ。お前が側にいてくれれば俺は」
「キスしてえてか抱かれてえとか、思わないのか?」
「そんなに…思わねえよ」
「ふうん、そんなもんか」
「…健。俺は玄人じゃない。お前に与えられるものはねえ。けど、今ん所お前は俺を捨てずにいる。何故…だ?ずっと聞きたかったが怖くて聞けなかった…お前俺のことを、その、どう思ってんだ?」
「勿論愛してるさ、他になんか理由あんの?」
「違う…俺が聞きてえのはンなおざなりな回答じゃねえ」
「これはおざなりな回答なのかよ」
「…俺がお前に近付いたのは…麻雀の近代化の為だった…俺は玄人じゃねえし、博才もねえ…だが俺には目的の為に強い…いや最強の玄人が必要だった…」
「それが俺だったんだろ」
「ああ…お前を利用しようとしただけだ」
「知ってるさ…俺は最強の玄人だ。誰であろうと俺に勝てる奴なんていやしねえ。だが社会ん中じゃクズもクズ、鼻つまみもんさ。そんな俺にビジネスの話を持ちかける奴がいるとすりゃあ、利用価値があるから…それ以外に理由がある筈がねえ」
「…」
「けど賭場の近代化、日本再建ってなぁなかなか面白ぇでっけえ博打だ。だから俺は乗った。それに…」
「?」
「利用されっぱなしにゃならねえ絶対の自信が俺にゃあった」
「そうだな、お前を…ドサ健をうまく操れると踏んだ俺が甘かった…この有り様だものな」
「それにナシ持ちかけたお前にも興味があった」
「俺に?」
「そうお前にだ、忌田」
健は続けた
「お前が何でこの道に足突っ込んだのかは知らねえよ…だが…極道の癖にお前は純粋だった」
「純粋?」
鼻で笑おうとした忌田だが、巧くいかなかった
「近代化でシステムを作り上げればもう負けねえ。一生儲け続けられる…そう俺にナシつけた癖にお前は金が目的じゃあなかった」
「ンな訳ねえだろ俺ァ…」
「その証拠にお前、まともに自分で使ってる金がほとんどねえだろ?全部事業に投資しちまってる」
「それは…」
「そこに興味持った…俺も博打は金儲け目的で始めたが、そのうち博打自体が生きる目的になった…本末転倒ってんだろうが…似てるよな、俺とお前。違うか?」
「考えたこともなかった…何せ正反対だからな、俺とお前は…」
「いや似てるさ。お前は近代化に賭けてた。何もかも…てめえの全てを犠牲にしてでも、純粋にそれを生き甲斐として危ねえ橋も渡ってきてた…それが気になった」
「買いかぶりだ」
「…初めてお前と麻雀打った時、お前無駄がなくてよ、すげえきれいな打ち筋してた。それが何か気の毒でいとおしくなった」
「…裏街道に生きてる奴に純粋も何もあるかよ」
「あるさ。だから今もこうして俺といるんだろ」
確かにそうかもしれない。近代化を目的としながらも、健の人としての魅力にあらがえなくなった自分…それは…
「ただハンチクなだけじゃねえか」
「ンな事言ったら俺だってそうさ。俺は博打に、勝負の世界に生きてる…食うか食われるかのな。そんな俺が賭場の近代化なんて手堅いもんの片棒担いでんだ。おかしいぜ、なあ?こうなったのも、お前が持ちかけたヤマだったからさ。他の奴なら多分ケッてた」
「…じゃあ痛み分けか」
「痛み分け?何だ、お前俺と会って後悔してんの?」
「そんな訳ねえだろ」
「俺もさ。お前のことすげえ愛しくってよ…恐ろしいほど頭切れるくせして、何か不器用なお前がな」
俺にはお前みてえな博打のチカラも馬鹿みてえな存在感もねえんだ。頭働かすしかねえだけだ」
「馬鹿とか言いやがったな?」
「分かった訂正する…お前は何だかんだいってアタマは切れるさ、ただ…」
「ただ?」
「それをロクな事に使わねえだけだ」
「やっぱりひでえ言われようだな。俺は博打打ちの本性に忠実なだけさ…明日があるか分からねえから今を楽しむ…博打打ちのな」
「明日か…明日が俺は、たまらなく怖え時がある…明日になったら何もかも変わっちまってんじゃねえかって…。だから仕事に没頭する。そうすりゃ少なくともそん時だけは不安を感じずに済む…」
「気まぎらわせんだったら他にもやり方はいくらでもあんだろ?」
「駄目なんだよ…お前みてぇに融通がきかねえんだ、馬鹿は俺の方だな…」
吐き捨てるように言う忌田を、強く抱き締めて健は言った。
「今を楽しめよ、もっと。俺とこうしてんのは嬉しいんだろ?」
「…ああ…けど」
「いつ離れるかわからねえから不安か?今、ここに俺がいるのを感じろよ。俺に集中しろ」
「…健…」
そのまま押し伏せられるかと思っ>た忌田だったが案に相違して健は何もしなかった
「何もしねえってのは本当だったんだな…何だか気味悪ィよ」
「そんなに抱いて欲しいのかよ」
悪戯っぽく笑う健に忌田は微笑んだ
「いつもこうしてろよ…そしたら俺も安心出来る」
さて、その他の面々は部屋で、遊びに来た碧さんも交え楽しく麻雀に興じていた。
ちなみに夫の方は部屋の隅で勝負中の印南をひたすら写生している
「なあラバさん?あんたは麻雀やらへんの?」
「俺は博打から足洗った…二度と打たねえよ」
「別に金かけてへんのに…そや」
ドテ子の目がきらりと輝いた
「碧さん、いっちょ賭けへんか?あんたとこの旦那はん…何やものすごノン気で冗談通じへん御仁みたいやけど、一人ずつネタ披露すんねん。一回も笑うてもらえへんだら、うちらの負け。家に娯楽ないゆーとったからうちらの活躍いつでもみれるように、おテレビ様プレゼントや!」
「まあ…素敵。じゃあ主人が笑ったら?」
「番組の美術企画してもうて、広告絵を無料で描いてもらう!どないや?」
碧が頷いたのでドテ子はさっそく作戦タイムに入った
ごにょごにょ
「え…あの梟の元カレを笑わせる?(チラッと見て)…無理だろ」
「大丈夫やヘタレ玄人、あんたには期待してへんから…ふう、こんな時あのバホ中年がおらんのは痛いな。存在自体がオカシイから戦力になる筈やのに」
「ヤツの行動がオカシイのは認めるがよ、それ笑えるような神経が普通でないヤツも滅多といねえぜ。ひひ」
「そっか…うちの小気味いい関西漫才もあの朴念仁兄さんにゃ理解でけへんやろしな」
「私にお任せ下さい♪」
「なんやコピー人間かいな。あんたにも期待してへんから…」
「秘策があります」
「秘策?」
「私がコピー人間なのをお忘れですね?なんで(ごにょごにょ)」
「…それはイケるかもしれんな…よし、あんたはトリや!!それまで座を暖めたるさかいあんじょうキバりや。よし、一番行け!!」
「?碧…何が始まるんだ」
「折角お会いしたんだしって事で、この方たちが親睦会みたいなのをして下さるみたいよ(にっこり)」
「ほう…」
うまい事ラバさんも言い包められ、博打は始まった
じゃ一番木座神唄います!!
「好きだったのよ〜あなた〜胸の奥でずっとーもうすぐもうすぐ私あなたを振りむかぁせぇるうっ!!!♪(泣)(泣)」
「何か怨念めいたものを感じるんだが…」
「大丈夫よ、あなた。ただストーキングが趣味なだけの、いい方みたいだから」
ズバキッ!!
「あんた場ぁおどろおどろしくしてどないすんねん!もう次!!」
「ひひ、俺いくぜ…」
二番印南善一、瞬間芸死神スマイル!!
披露さい世辰�
がら
「いやっほーう♪みんないるな!?」
「げ…」
何とかラバを隠そうとしたドテ子と碧だったが遅かった
「お?さっきの目の綺麗なにーさんだ♪やったあ」
そして猛然と近付き抱きつくと…キスした
固まるラバに更にからみつく健。
「なあなあ兄さん名前なんてーの?ごふっ」
「な…んつーことをすんねん!!!この腐れダホ中年!!この兄さんはカタギな上にバリバリノン気なんや!」
「あなた…!あなた…!ダメだわ意識がとんでる…」
「あーあーやっちまったな、ひひ」
「えー!?意識トんじまったらヤっても面白くねーじゃん…ところでネーチャンも美人だな、俺としっぽり…」
「きゃあっ!!」
「やめんか健!!」
お母さんの怒号が飛んだ
「師匠…」
「ちぇ、結局ヤれねえのかよ、ぶーぶー」
ガキのように駄々をこねる健に碧は言った
「貴方がドサ健さんよね?ほんとにほんとよね?偽物だったりしないわよね」
「碧さんそれは言わない約束やで(肩に手)」
「ところであんた達誰なんだ」
「梟の元彼と元彼女や」
「うわお!じゃあフクちゃんが乙女に片想いしてたのがこの男前のにいちゃんで、元彼女で兼おヒキがそっちのねーちゃんか♪確にどっちも美味そう」
「健、手出すなよ?頼むからおとなしくしてろよ?(泣)」
「俺は自由人だもーん♪したい時にやるー♪ひゃっほーい。あのなあフクちゃん可愛かったんだぜえ?」
「ほんま難儀なお子やで…」
「まあ…玄人なんてこんなもんよね」
良かった、堅気になってと言いたげな口調で碧は言った
「なんか冷たい言い方だな?」
「何でもいいけど主人を目覚めさせないでね。ショックで絵筆が握れなくなったら困るから」
「…駄目と言われたらやりたくなんのが人情だよなー」
「やめいバホ中年!!」
「いや。起こす。起こして犯る!!今日はタマってんだ!!俺は起こす!!」
がばあ
ラバが突然目覚めてしまった。
「お♪起きたな、さあ俺と…」
「なあ、碧」
「ど、どうなさったのあなた?」
「ロシアじゃ…」
「は?」
「髭の生えた女性がいるらしいが、目の前にいるこれも女なのか?」
「この、とんでもおとぼけアーティストが!!(泣)梟が浮かばれねえよ」
貴方…実は目の前にいるのは伝説の玄人ドサ健なのよ、とはとても言えない碧
「お?女だったらヤってくれんの?」
「しかも何か声もすごく重低音なんだが…」
「ラバさん…とりあえず逃げた方がいいぜ」
木座の忠告もなんのその、健はラバに抱きついた
「逃がさねえよ」
「ちょ…主人から離れてよ!!」
「すげえ綺麗な目してるな兄さん、なるほどなあ〜フクちゃんも抱かれたがる訳だよ〜!本当…素敵だぜ?いいガタイしてるしな…」
「主人を離して!!」
「お、ねーさん♪何だ俺とやりたい?なら3Pいっとく?」
「碧!」
「あっあなたっ!どう…」
「3Pとはなんだ?」
「…」
「あんた家庭つくる気あるんやよな?!な?!」
「健!いい加減にしなさい!!(泣)頼むよもう…」
健に抱きつかれながらも意外と冷静なラバ
「そういやこの番組用の絵を描くんだったよな?」
「そうなのかよ、あんた仕事何だ?」
「抱きつきながら言いなや。この人は画家やねん」
「へえ…」
「碧の話では番組にはドサ健が出てるらしいから絵もそれっぽく…」
「ドサ健は俺だぜ」
抱きついた不精髭が何か珍奇な事を言い出したのをラバは不審そうに眺めた
「は?かわいそうに碧、どうもこの女性頭が…」
「あなた…」
「むしろ普通におかしいのはラバさん、あんたの方やで…」
「上野の帝王ドサ健ってのは俺のこった♪打ったら分かるぜ♪やってみっか?」
「俺は二度と博打はしねえ」
「ちぇ、つまんねー。けど、その潔さ…何か哲にも似てるぜ…ますます食いたくなったな」
タイを解こうとする健を引き矧がしてラバはいった。
「髭のお嬢さん、悪いが俺には妻もいる。あんたの気持ちには応えられない」
「帝王のザレ事にこんな真剣に応じる奴初めてだ…」
「忌田…どうしよう」
「それは俺の台詞だ(泣)」
「何か今までにない展開で…俺…俺…本気で惚れそう」
「やめてくれー!!」
みんなが絶叫した、ラバ以外
「でもいっぺん片想いってしてみたかったんだよな…」
「碧さん!これ以上このダホを旦那と一緒にしとくとヤバいで!!」
「でもあまりにがっちり抱きついてて…」
「よし、隙つくんで。碧さんええか?あの中年碧さんも気になっとるみたいやから。あのな…」
「…分かったわ、恥ずかしいけど夫のため。やってみるわ。ドサ健(仮)さん…ちょっとこっち見て」
さすが美人?誘惑もお手のモノだった
「お…なんだかスカートからチラチラするのはもしかして(嬉)」
「ふふふ、来てくれないの?」
「行く行く、めっちゃ行く」
かくしてラバを離れた隙を狙い、ドテ子はラバを後ろへ突き飛ばし、碧へ今度は抱きつこうとする健に
「ドテ子関西ド根性きいっっくうっ!!」
「がはあっ!」
すごい蹴を下半身に叩き込んだ
「もう大丈夫やラバさん」
「貴方…大丈夫?妊娠させられてたりしない?」
「何言ってるんだ碧、俺は男だぜ」
「師匠…とりあえずこのエロ中年廊下に蹴りだしてええ?」
「一応うちの総帥だ。しばらく動けねえだろうからほっとけ」
ぴくぴく、あまりの痛みに動けない健を見てラバは言った
「女でも下半身蹴られると痛いものなのか?」
「(爽やかに無視して)さ何の絵を描いてもらおか」
「そうねドテ子さん」
「少し構想を練らせてもらいたいんだ。先に部屋に戻らせてもらうが…」
「もう遅いしここにいると危険が…じゃあ皆さん失礼します」
「ラバさん碧さん、また明日なーもう遅いし。うちも寝るわ。お休みー」
「ぐ…お…今回はまじヤバいかも…」
「ちょっとはおとなしくしとけ、ってことだよ。よし、もうあの夫婦は行ったな…」
「ひひ、でけえガキの面倒大変だな。しばらく打てそうにねえな?その分じゃ」
夫婦とドテ子が去った後、野郎部屋では
「じゃあ俺らも休むとするか」
「はい忌田さん」
「では私も♪」
「ひひ、明日が楽しみだな…あの絵描き、どんな絵をかんがえつくんだろな」
「…なあ、俺はどこで寝るんだ。布団足りねえぞ」
「お前は向うの部屋だ」
「…俺だけハミ子?」
「そうだ!!孤独に耐えられる最強の玄人だろ?」
「さみしいよー(じたばた)」健は目一杯駄々をこねたが、今日はあんまりハシャギすぎたのでお母さんは許してくれなかった
「いいもん…美人の仲居さんとしっぽりするから」
翌日。健がいないのでみんな熟睡出来た朝。ラバさんが目の下に隈をつくって現れた
「出来たぜ」
「…まさか徹夜で…そこまでしなくても…」
「インスピレーションが浮かんじまってな…描かずにはいられなかった…」
ラバは言って絵を取り出した
「こ、これは!おお何とシュールな♪一見抽象画ですがメンバーの特徴をうまく捉えてますねえ♪そしてこの真ん中にいる女性…?ですよね〜♪」
「そうだ。名付けて髭乙女と愉快な仲間たち!!」
「…」
「忌田さん、泣かないで!泣かないで下さいー!!」
「ありがとうよ、ほんとうに有難う」
そう泣きながら繰り返す忌田にラバは
「泣く程喜んで貰えて…なんだか申し訳ないな」
「いや…少し違う…」
「折角あんた達と出会えたのに残念だが、もう帰らなきゃならないんだ」
「そうなん?」
「滞在費があまりなくて…」
「そうか。オレ達も会えて嬉しかったよ」
「立派な画家になってな」
「そんだけのガンがありゃ間違いねえさ」
「アーティストの私が保障します」
みんなから温かい言葉を受け、ラバは少し微笑んだ
「ありがとう…がんばるよ」
「色々あったけど楽しかったわ」
「じゃあな…ドサ健と会えなかったのが少し心残りだったな」
「…」
一同は苦笑いをした
別れの後、着乱れた浴衣姿の健がやって来た
「お?あの夫婦は?」
「帰ったよ」
「何!?」
「とりあえず北海道まで来たんだ地方編は終わり。またノガミに帰って番組は通常に戻すぞ」
「えー?折角楽しかったのに」
「まあ確かにあんまりハジケけすぎたしなあ」
「戻ろ戻ろ」
「そういや浴衣からから覗くキスマークは…」
「そりゃ仲居さん達としっぽり…」
「しっかりヤっとるやないか!!」
さあっ!!戻ってまいりました!懐かしの上野っ!!というわけで今回はただ今上野スペシャル!とゆーことでっ、なななんとっ!うちのダーリンあの坊や哲の寝起きをレポートしたいと思いますうっ!よっしゃあああっ!!!♪」
「いやっほーい!!哲ってば結構こーゆーとこ隙だらけだかんな。楽しみだぜ♪(じゅるり)」
「ふっふっふっダーリン待っててな、うちが優しくリードしたるさかい…」
「うおドテ子超攻めモード!!俺も負けてらんねえ、待ってろ哲ぅ♪ん、今泊まってんのは…」
「ここ。旅館前原や。さあいくでぇぇ!!!ちなみに時間は午前十時。正しい玄人なら熟睡しとる時間や」
「ううー、この番組始めた時から全国の美少年好きのお兄さんお姉さんはさぞや期待しまくってたでしょう!!はい、では行くぜドテ子」
「おうよ!!」
侵入
「いきなりやけど…汚い部屋やな」
「雀卓の上にゃ積み込みの練習でもしたのか牌が散らかしっぱなし」
「それに食いっぱなしの丼に」
「欠けた茶わん。酒でも呑んだのか」
「ダーリンの美麗なイメージに合わへんわ」
「まああんま片付けとか得意そうなタイプじゃなさそだしな…それより寝顔!」
「おおそうや…はよカメラカメラ…」
「布団に潜ってやがる。めくるぜ、そりゃ!」
「…か…可愛い!!可愛すぎる」
「哲ぅ!!」
当然のように襲い掛かろうとする健をこりゃまた当然のように蹴り飛ばしドテ子は言った
「全国の美少年マニアの視聴者の皆様、御覧ください!!この天使のような寝顔!!雀聖と呼ばれた男のモンとは思えません!!…てかホンマ旨そうや(じゅるり)」
「ずるいドテ子、俺もー」
「ちょっと待ち…布団の下の方にあるの、ダーリンの黒シャツやんな…?え、じゃもしかして…(布団少しめくる)ちょ、ダーリン上は裸や!うわ!うわ〜!!…」
「俺もっ俺もっ!!うほっ、哲色白っ!!ついでにめちゃ華奢だよっ♪腰ほっせえ〜もう、ヤル…ぐうぉっ!!」
「だ、ダーリン何て無防備なんや…ほんま可愛い…額にかかった前髪、長うて色っぽいな…この腰の細さ…ダーリンもう誘ってんのか!!」
「落ち着けよドテ子ぉ、ってあれ?何か俺いつもと立場逆じゃ〜ん♪」
「もう我慢でけへん、うちはやるで」
「…いっつも俺がやろうとしてて何だけど…これって全国放送なのにいいのか?」
「いいねん!!やりたい時が食い時や!!こんな無防備なダーリンは今だけや!!据え膳食わぬは女の恥やで!!」
「…なんか俺の言いたい台詞全部言われた…」
「とりあえずダーリンの無垢な唇を…くくくく(邪悪な笑い)」
「えー…リポーターが鬼畜モードに入った為カメラマンの俺がリポートします」
「さ…頂きます」
「うう…ん…」
「何や?」
「房州さん、また發牌どっかに隠して…」
「寝言か。師匠の房州の夢みてんのか?」
「あ…ダメ…房州さん」
「なっ、ダーリンまさか夢ん中で襲われ?!何か顔紅いしっ!!」
「そんなトコに…」
「何だそーゆー関係だったのか?やっぱり」
「…師匠って立場を利用して!羨ましい!もとい!汚いで!!」
「いいよ……じっくりしてやるよ、身体検査…」
「は?!」×2
「恥ずかしがらないで…大丈夫…ふふ、可愛い房州さん」
「だ、ダーリン攻めぇ?!」
「ひでえ…てかシツコイけどこれ全国放送…」
「うーん…ダーリンの無垢なイメージを守る為にもはよ起こした方がええな」
「だな。故人の名誉の為にも」
「じゃ…せーの…ぐっきりー!!」
「う…ん」
目を開けてしばらくしても、ぼんやりしてる哲。
「…ドテ子…?」
「ダーリン、ぐっきりや!分かるか?まだ半分寝とるな…」
「じゃ、キスしても…ぐふぉっ!」
「…房州さんは…?もうちょっとで…」
「それ以上ゆーたらあかーん!!や、やばいんでここらで終りますぅ!皆さん、ご機嫌よう!!都合悪いことは全部忘れて下さいな!んじゃ!」
「…もしかして新しい攻めダチ誕生?」
番組後、どっかの賭場にて
「健…」
「おおユウたん」
「とうとう東京に戻ってきやがったな…番組見たぜ」
「どうだ?哲スペシャルだぜ、嬉しい…」
「嬉しい訳あるかい!!俺の…俺の哲を…汚しやがって!!」
「攻め哲の事か?でも俺が言うのも何だが今回俺は特に何にも…」
「畜生てめェのせいだ!!何もかもてめェのせいだ!!お前なんかだいっ嫌いだあっ!!(泣きながら走り去る)」
「ユウたん…何か疲れてんのかな」
人は信じたくない事実を目先に突き付けられると頭の中で自己正当化を行い事実を否認するという。
ちなみに天界では
「ドテ子…今回は何ですか!?お父さんは…お父さんはお前をあんな子に育てた覚えはありませんよ(泣)」
「だって師匠…ダーリンがあんまり美味そうやったからつい…」
二人でこってりと絞られる健様とドテ子
「あんなものを早朝、御家庭のお茶の間に流しくさって!ちょっとは反省なさい!!」
「今回は俺何もしてねえぜ?」
「てめえはいつもじゃねーか帝王!この機会に反省しやがれ!」
「でも師匠視聴率はよかったで?」
「確かに、この番組はノガミグループの資金繰りのために始めた…だが視聴率だけが全てか?!報道に携わるものとしての自覚と責任感をもて!」
何だか極道なのにカタギよりまっとうな事いってます。
「分かった、反省するさかい…。で、次の企画はどないするんや?」
「次の企画はもう決まってる」
忌田は重々しく言った
「教会で労働奉仕だ」
「何!?神保のオッサンのトコか?」
「そうだ。お前ら二人、一日ボランティア労働して神に身を捧げ罪を清めて来い。カメラマンには木座神をつける」
「えー!?ヤだよ俺ぇ…」
「嫌じゃないっ!!もう話はつけてある、さっさと行け」
お掃除タイム
「ふんふふん♪この位なら楽勝や」
「懐っかしいな…」
「何がや」
「いや昔。キリストさんの首踏み台にした事があってよ。うっかりヘシ折っちまった時の補修の跡がまだついてる」
「あんた昔から罰当りやってんな」
「ンでマリアさんのスリーサイズ計ってオッサンに殴られた事もあったな」
「…ホンマ…しゃあないな」
「だって意外とグラマーでいいオッパイしてるじゃんか」
「何でもええからはよ手ェ動かしいや」
「俺掃除出来ないもぉん♪」
「何やて?床掃くくらい出きるやろが?!」
「帝王は掃除なんてしないもーん」
「帝王もクソもあるかい。ほら、箒もって!」
「なあ前聞いたんだがよ、こいつの柄にやべえ薬塗ってよ、穴つっこんでトンじまうプレイが…
ぐうぉっ!!」
魔女ですか。
「罰あたりが!しゃんとしい!でもって端からちゃんと掃く!!ほら、こうや」
「痛くてちゃんと立てねえよ…」
結局お掃除はドテ子が一人で終え健は邪魔しただけだった
「おお…ご苦労ご苦労。さて次は今日の食費を稼ぎに…」
「はいはい、俺それ得意!!賭場に行くんだよな。ここのガキどもに博打のイロハからカッキリ叩き込んで…」
「バカモン。今日は心を清めに来たんじゃろが!!」
「ぶー自分だって博打で金稼いで俺たち養ってたじゃん。何で稼いだって構わねえだろ?」
「そのツケがこの目じゃ…まあお前にいまさら何を言っても仕方ないじゃろが、今日は屑拾いじゃ」
「あんなん全然儲かんねえじゃん」
「そこの帝王!!番組のコンセプト無視すんな。言われた通りまっとうに働け!!」
「そやで」
そこで渋々ながら健は神保さんに付いて屑拾いに出掛けた
「おいガキども。女と野郎ってどうやってヤり分けるか知ってっか?」
「クソ帝王!!未来ある純真な子供たちにンな事教えてんじゃねえ」
「どうせいつかいる知識じゃねえか」
「フツーはいらねえんだよっ!!」
「これオヌシら。口より先に手を動かさんかい!!」
「めんどくさーい」
「健兄ちゃんて…なんだかおれらよりガキみたい」
とりあえず孤児院の子供たちと神保さんの尽力のお陰でなんとかその日の食事代を屑拾いから得る事が出来た。
そして夕食
「では食前の祈りを。天にまします我らが父よ、今日の恵みを感謝します。アーメン」
食事をしながら健は釈然としない顔でいた
「どないしたんや?」
「いや昔っから気に食わねえんだがよ、あの食前の祈りってやつァ」
「何でや?」
「てめえで飯代稼いでんのに何で神さんなんかに感謝しなきゃならねえんだろってな。神さんが俺たちに何かしてくれたのかよ」
「健。父なる神にそのような暴言を吐くものでない。昔からお前はそうじゃの、かわっとらん」
「おっさんになら感謝するがよ。別に神さん俺たちに何もしてくれねえぜ?俺達ゃ結局てめえ一人の力でしのがなきゃなんねえんだ」
「…ダホ中年、あんたに博才くれたんも神さんやないかい。感謝しいや」
「博才…なあ?」
やっぱり釈然としない健を見て神保は溜め息をついた。
食事が終わった後、健は神保の部屋に呼び出された。
「何だよおっさん、話って」
「まあかけんか」
「おう…椅子にかけた健に神保さんは言った
「告悔せい」
「告悔?」
「ああ…今まで犯した罪を告白し、神に救いを得るのじゃ」
「俺は救いなんていらねえよ。大体許しを請わなきゃならねえ覚えもねえ…罪なんて犯してねえさ」
「…じゃあの。おとといくらいの一日の生活を言うてみい」
「おととい?…明るくなるまで博打打って(賭博は犯罪です)勝ちまくったら因縁つけて来た馬鹿達がいてよ(悪口はいけません)血反吐吐くまで殴り倒して(傷害罪です)天界戻ったら忌田が来てて『その怪我はどうした』とか心配するのが可愛くて押し倒して(そりゃソドミイです)で腹減ったから定食屋行ったら乳と尻のでけえ女給が新しく入ってていい女だなとか思ってケツ触って腹一杯食って(色欲を起こすのも姦淫です、てか痴漢です。しかも飽食だし)食い終わってする事ねえからごろごろして(怠惰も罪です)賭場が開いた時間になったから行ったらユウたんが哲と仲良く打っててさ、とっても可愛かったから後ろから抱きついてキスしたら哲がキレてよ…」
「…もうよいわい。七つの大罪ほとんど万遍無く犯しおってからに…」
「まあ特になんて事ない一日だったな」
「…健よ」
「何だ?」
「オヌシはもしかして、儂に与えられた神の試練なのやもしれぬな。もう何も言うまい。お前をこんな風に育てあげてしまったのも儂の罪じゃ。お主の罪この身に受けよう。主よ、残る人生を贖罪の日々に費やすことを誓います…」
物陰から覗き見してたキザは泣きながら飛び出した。
「このファッキン帝王!!お前こんな素晴らしい人にまで、どこまで迷惑かけくさる!てめえ最低だっ!!」
「ヘタレに言われてもなあ」
「お若いの…暴言はよくないの、気持は有りがたいがお主自身の罪を増やしてはならん」
「何で帝王の周りにゃこんな献身的な人ばっかなんだよ!!(泣)帝王のくせに!!」
「帝王だからだもーん」
「健。育ての親として一応言っておくが、罪を重ねて地獄に墜ちた魂には永遠の苦患があるだけなんじゃぞ」
「天国にゃ博打も酒も別品も…ついでに美味そうな野郎もいねえんだろ?別に行きたくねえよ」
神保さんはため息を大きくつくと木座に言った
「お若い人…けしてこんな道に深入りしてはならんぞ」
その時木座は本気で堅気になろうかと思った
「明日も早いお若いの、そして健も。もう休むがよいぞ…」
「ん。こんな時間じゃまだ全然眠かねーが…ここいても仕方ねえしな。じゃな、おっさん」
ばたむ。
「くそ、なんて奴だ…」
「昔からああじゃよ」
「あ、あの神父さん…」
「何じゃ?」
「お、俺懺悔したい事が…その…ストーキングって罪重いんすかね?(泣)」
「…すとーきんぐ…とな?それは又…一体誰を…」
「オレ…好きな人がいるんですよ。いや、高望みだって分かってるから両思いになりたいとかじゃないんです…ただ…その人、とあるものすごく始末の悪い男に惚れてて…いっつもそいつに振り回されてひどい目に合わされて…オレ…それに耐えられないンすよ。だから…」
「追い掛けてしまうんじゃな」
「はい…心配でたまらなくてつい…」
「人はの、お若いの。愛故に罪を犯してしまう事もある…お前さんの気持ちに罪はない、だがその行動は罪深いもんじゃ」
「やっぱりですか(泣)」
「神に懺悔せい。そしてその好きな人をお救い下さるよう祈るのじゃ、さすれば神もきっとその始末の悪い男とやらから救って下さる…」
「いやそれは多分絶対無理です(泣)。もうオレどうしていいか(泣)」
「今日は泣きなされ。そして明日からはちゃんとまっすぐに、前を見て歩んでゆくのじゃぞ」
「しっ、神父さんっ!!うわああん…(泣)」
でもストーカーは止められない木座だった
で、部屋に戻った健様は
「そうだ!何か足りねーと思ってたら!この教会シスターがいねえんだ!ああ〜シスターってばいいよなあ…ドテ子あのかっこしてくんねーかな」
もうどうしようもなかった。
翌日。起床は四時です(教会だし)
「ふああ…すげえ眠い…オッサン?玄人は今から寝る時間だぜ?」
「四の五の言わずに朝の礼拝じゃ。それが終わったら屑拾いをしてから朝食。子供らを学校に送り出すまで休みなどないわい」
「ひゃー神父さんてホンマ大変な仕事やな。目ェ回るわ」
礼拝中。ドテ子は居眠りしては何度も起こされ、健は教会の屋根に上ろうとするのを必死に木座神に止められていた。
「お前らやる気あんのか!(泣)」
そして前日のように屑拾いを邪魔しまくり、何とか一心地ついた。
昼。二人はくたびれ果てていた
「はあしんど…こんなん毎日やっとったら身が保たへん」
「ハードな生活だな…玄人やってて良かった」
「まだ仕事はあるぞ」
「もう勘弁してえな神父さん」
「いや…実は今日は授業参観の日でな。儂も行ってやりたいんじゃが小学校は二つある。で片方に行ってやって欲しいんじゃ」
「それは楽しそうやな…どないしてんバホ中年?」
「小学校にゃ嫌な思い出があってな…あんま顔出したくねえんだ」
「…あんたにもトラウマがあんねんな」
「そうか。無理にとは言わんよ。確かに担任の先生は新任の美人じゃが、無理は…」
「俺授業参観行きたいー♪」
「あんたのトラウマてその程度やねんな」
「はい、みんな今日はみんなのお母さん方(と不審者)が来ておられます。しっかりお勉強しましょうね」
「りょうこちん。手とり足とりおせーて♪がふぉっ」
「ええ加減にせえや!!また注目されとるし…置いてきたらよかった、このダホ」
亮子先生気おされるが、教師としての使命感から授業を続ける。
「え…と、じゃあ今日は前の続きで。平安時代の終りくらいからですね。保元の乱、平治の乱覚えてますか?」
「ドテ子、今先生なんつったんだ?ゲーハー正義の乱?」
「小さい時の勉強てほんま大事やな(しみじみ)」
木村亮子先生は懇切丁寧に平清盛から源頼朝の話を説明したが、健にはまるでフンプンカンプンだった
「…(子供の教科書を後ろから覗き込む)たたかい…とじとう?…おいドテ子、さっぱり分かんねえぞ」
「あんた漢字も読めへんのか」
「おう」
「はあ…うちも勉強は嫌いやったけど、何で勉強せないかんかはよう分かったわ。こんな人間をつくらんようにする為やねんな…あのな…」
ドテ子はドロドロに噛み砕いて日本の歴史を説明してやったが返事は
「ンな事知っててなんか役にたつのか?何の役にも立たねえぞ」
だった
「(ぷちいっ)アホウ!!学校は博打打ちになるような人間にならん為に行くトコやろが」
ちなみにこの二人の会話は思いっきり授業を妨害しています
「先生ごめんなさい…健兄ちゃんとドテ子姉ちゃんが迷惑かけて…」
「…いいのよ。あなたが謝る事じゃないわ」
良く出来た神保さんトコのお子さんと良く出来た先生と、駄目な保護者達だった
そして授業が終わって保護者懇談。
「神保さんの所の子供ら…先生どないですやろ?」
「みんなお友達のことを思い遣れる、本当にいい子たちです。勉強の方も真面目に取り組んでくれてますし」
「せんせえ〜歳いくつ?てか今晩俺と…がふぉっ」
「神保さんとこの他の子らはまっとうに育っとるゆうのに!何であんただけそんなやねん!!」
「俺ってガキん頃からずば抜けてたんだよ」
「ずば抜けてタチ悪いわっ!いまでもっ!!」
(この人達と知り合いで…あの子達が心配だわ。すごくいい子たちなだけに…)
「先生むしろこのヤンチャ中年にきつう言ったってや!」
「いえそんな…孤児院出身で苦労なさったでしょうに、ご立派に社会で活躍していらっしゃる御方ですのに」
「玄人やで…しかも最悪な」
「いいじゃねえか、自分で稼いでるんだしよ」
「始末悪いわ」
「…え…」
「ほらみい、先生困ってるやないか」
玄人…一言呟いて亮子先生は顔を伏せた。
「…どないしてん先生?この中年早いとこ引っ込めた方がよさそーやな。先生もいい加減疲れたやろ」
「ブー!俺もっと話すー!でもってしっぽり…のはっ!!」
「いえ、先生何でもあらしませんよって。じゃあ今日はこの辺で…神保さんには子供らは賢うしとった言うときますよって」
「待ってください!」
亮子先生は立ち上がった。
「どうしたんだりょーこちん?俺に惚れたのか?なら恥ずかしがらずに言ってくれよ。いくらでも好意にゃ答えるからさ…」
「やかましわ」
「違うんです…ただ…」
「何だ?」
「…私も…孤児院育ちで…そこで一緒に育った初恋の人が玄人になったんです…」
「ええっ!?」×2
「その人は…才能もないのに…博打に生きると言い出して…孤児院を飛び出して音信不通です。私は子供たちに貧しくてもまっとうに育って欲しいと思って教師になったんですが…なんだか貴方を見るとその人を思い出してしまって…いえ…つまらない話をしてしまってごめんなさい」
「人に歴史ありやな」
「じゃあ今日は俺のこと、そいつだと思って甘い夜を…ふぬがっ」
「無理とおりこして不可能なこといいな。先生あんたは立派な人やで!こんなどーしよーもない男をこれ以上増やさんためにも、頑張ってな」
「ありがとうございます…今日そちらの方を見て改めて教育がいかに大切なものか、身に染みて感じました…出来る限りのことをさせて頂きます」
「教師の鑑やで」
「何か俺無茶苦茶な扱いのような気がする〜ブー!」
「ありがとうございます健さん。貴方のおかげでどんな辛い事があっても耐えていけそうです」
「うんうん。こんなどないしようもない人間にならんようにしないかん思たら教育者としてリキ入るよな」
「ひでえ言われ方じゃないか?」
「ええねん!!」
健は釈然としなかったが木村先生は満足そうだった。
外が騒がしい。三人が見ると教会の子がいじめられていた
「お前…あのゴミ拾いの神父のトコの子なんだろ!?だからあんな駄目な無精髭(健の事らしい)が授業参観に来るんだ…やーいやーい」
「…ほら…やっぱいじめられとんで!?それにしても子供いじめるこたないやん…ダホ中年に文句言や済む事やがな…あんたら…」
言い掛けたドテ子を健が制した
「孤児はいじめられんのが宿命なんだよ。そしてこれから先、助けてくれる奴は都合よく現れちゃくんねえんだ、結局てめえの身はてめえ自身で守るしかねえんだよ。亮子ちんも手出すな」
「けど私は教…!」
「やーい屑拾い!ゴミ臭ぇよ」
「…」神保さんたちのお子たちはしばらくじっと耐えていたが
「屑拾いは大切な仕事なんだ!神父さんに教えてもらった事は全部そうだよ。掃除も、ご飯作るのもおれたち自分たちだけで出来るさ。自分の仕事もちゃんと出来ない奴らに言われたかないよ!」
子供たちは毅然とした態度で言い張り、いじめていた子供たちはそれに気おされて去って行った
「あの子たち…(泣)」
「神保さん、あんたん所の子はほんま立派に育ってんで…ここのダホ一人除いて」
先生は涙ぐんで言った
「健さんドテ子さん…私やっぱり教師という仕事を選んで良かったです…」
「色んなガキがいるんだ…庇やいいってモンじゃねえさ。てめえで生き抜くチカラを身につけんのが教育って奴なんだろ?」
「珍しくマトモな事言うたな」
「だからよ(先生の腰に手を回す)俺みたくてめえ自身で生き抜いた男を知るのも勉強になると思うぜ?」
「あの…ご好意は有難いのですが…」
「好意ちゃうわ」
「私、ちゃんと夫がいますから」
「何!?先生既婚者やったんかい」
「はい」
「わーい人妻だあっ…がふあ!!」
「そうなんや…仕事と家庭の両立は大変やろけど頑張ってな」
「はい…ところで大丈夫なんですが健さん」
「平気や、いつもの事やし」
「…平気じゃねえよ」
保護者懇談も無事?に終り、教会へ戻ったドテ子たちは神保さんに報告。
「神保さん…あんたん所のお子たちはそこらのガキと比べもんにならんくらい、立派にまっとうに育っとんで」
「そうか…そうか…」
事の経緯をきき涙ぐむ神保。
「担任の亮子ちんすげえ可愛かったぜー♪食いたかったなあ」
「何でこんなんが育ったんかが謎やわ。神さんの悪ふざけやとしか思えん」
「神がなされた事…何らかの意味があるのじゃろう」
ほんと何でなんっしょ。こうして二人の教会奉仕は終わったのだった。めでたしめでたし
ちなみにこの回は感動ドキュメントとして放映され、お茶の間の皆様の涙腺を大いに刺激したという。
忌田さんも珍しく満足したその後
「ドテ子次の企画な」
「何で小声やねん」
「忌田にゃナイショだからさ(嬉)」
「まさか…遂に…」
「そう!!忌田の寝起き編発動だあっ!!あいつの秘密の私生活を全部暴露してやるのさ」
こうしてドテ子にすら見捨てられた二人はそれでも忌田の家に向った
上野郊外
今回のレポーター木座神。
「こ、今回はノガミグループのNO,2忌田さんの寝起きに突撃!ここがそのお家でっす!」
「ん?このアパートか?何かえらくちんまりしてんな〜」
「上野の帝王の参謀がだぜ?こんな町外れの!木造アパートに住んでんだ!!涙なくして語れるか!(泣)うああ(泣)」
「また押し掛けてやろうっと♪さて…入るか…うぷぷ、無防備な忌田もいいなあ」
「ど…どんなかっこで寝てるのかな…うわあ帝王オレドキドキする!」
「まあお前にもつまみ食いさせてやっから♪」
中継を見てたドテ子
「こいつら犬畜生にも劣るわ…」
さて畜生どもはアパートに突撃した
がちゃ…がらーん
「すげえ…ほとんど何にも家具がねえ」
「まあ寝に帰るだけだからなあ」
「それにしてもノガミの財政一人で切り盛りしてる人の部屋にしちゃあんまりだ…何の為に仕事してんだろ忌田さん」
「ハンガーにゃスーツが何着か。タンスもねえのか…そのくらい買やいいのによ」
「…家具といや卓袱台だけだ(泣)忌田さん…」
「ちぇ、色気ねーなー。エロ本の一冊でもありゃ楽しいのに」
「んなもん忌田さんが読むか!」
「お…けどミカン箱改造して本入れてあんぜ♪ん?何だこりゃ」
「マクロ経済学?市場システム理論?!社会学に法学…」
「全っ然分かんねー。何だ『育児としつけ』ってのがあんぜ」
「多分お前用だよ(泣)」
「何か面白いもんはねーのかよ…おっとこりゃ何だ」
「奥の方、大事そうに風呂敷に包んでしまってある…忌田さんの秘密の宝も…うわあ!うわああ!!(嬉)」
「開けるぜ!!♪…ん。豚の貯金箱?」
「はい?!」
「あ!これもしかして…」
「何か分かるのか?」
「こないだ忌田を(無理矢理)連れて縁日行った時な、すっげえ射撃やりたくなって撃ちまくってよ…で戦利品の一つの、この豚忌田にくれてやったんだった」
「…こんなしょぼいしかもクソ帝王のよこしたもんを、すっげえ大事に…どこまで乙女なんだあっ(泣)と…いう訳でお茶の間の皆様今更ですがハンカチのご用意はよろしいでしょうか?もう涙で前が見えない事と思います…ノガミの近代化を目指す為に自分の身を省みず、粉骨砕身する忌田さんの姿は我々に大切なものを思い出させてくれる筈です。そして彼の為に祈って下さい…疫病神から一日も早く解放されるように(泣)」
「(聞いてない)はやく忌田の寝顔見ようぜ(嬉)」
「人の話聞けよ(といいつつ嬉しそう)忌田さぁん」
けして広くない部屋の隅にぺったぺたに使い古された…もしかしたら古道具屋から買って来たのかもしれないセンベイ布団が敷かれていた
せんべい布団に歩み寄る二人。
「ああん。壁側向いてるぅ(泣)」
「浴衣で寝てんのか♪しかしうなじはよく見える。きれえだなっ♪いえーい触っちゃおかな」
「お触り禁止だっ!!けどきれいだ…フフフ」
「わあストーカーの目してやがる♪お。寝返りうった!うはっ♪寝顔かーわいい!!すっげ無防備っ、たまんねえなっ!!」
「まだ髪セットしてねー。忌田さん可愛すぎ!け、血圧やばいオレ!」
「もう食わいでか!!忌田ぁ〜ん!!」
「やややめろっ!」
「う…ん…健、の声?」
「やばばっ起きちゃう!」
「忌田俺はここだぜぇ♪」
まだ夢うつつの忌さん
「夢を見てるのか俺は…?」
「ああ夢だ夢♪夢だからはにかむ必要なっしんぐだぜ♪」
「健…俺は…」
忌田は目は閉じたまま口を開いた
「夢だから本音言うぜ…俺は…」
忌田は目を閉じたままなんだか微笑んで言った
「麻雀の近代化の為に人生捧げて来た…だから別に私生活がどんなだろうが不満に思う気はねえよ。てめェの夢に生きてんだからな」
「忌田さん…実は起きてた…」
「だがな…俺はたまに思うんだよ。俺は自分の夢と健、お前とどっちかを選ばなきゃならなくなったらどうするンだろうってな…」
「忌田…」
「お前が麻雀の近代化を捨てて一人の玄人に戻るなんて言ったら…俺はどうするんだろうな。他の奴引き込んで計画を続けるのか、それとも…。どんな馬鹿やったって構やしねえよ。だから俺にそんな辛い選択だけはさせんなよ…寝言だから言うけどな」
「忌田…そいつぁ分かんねえ」
「なっ…帝王てめえっ!!」
「俺の本性はあくまで玄人だからな、明日自分がどうしてるか…何考えてるかなんて分かりゃしねえよ」
「そういうと思ったぜ…辛ぇな、惚れた弱味ってやつか…本当夢ん中までせちがれえ」
目を閉じたまま切なく微笑む忌田。
「い、忌田さん…(泣)」
「帝王…てめえなあ!!折角夢の中なんだ。もっと優しい言葉かけてやれよ」
「所詮夢だろ…俺の知ってる忌田は、辛い現実見て夢に逃げるよな生温ィ男じゃねえよ」
「買いかぶりだ…」
忌田は目をつぶったまま静かに微笑んだ
「忌田さん…すいません!!せっかくお休み中なのに押し掛けちまって…しかもクソ帝王付き…どうか気の済むまで怒って…」
「忌田命令だ」
「帝王…てめえまだ…」
「今日は休みだ。天界に出てきやがったら叩きだすからな」
「健…」
「お前が倒れたらウチは回らねえんだ。休むのも仕事のうちだぜ?…そして明日からまた死ぬ気で働け」
「ああ…お前が総帥だ…命令にゃ逆らわねえよ」
そう答えた忌田の瞳には何だか光るものがあったように見えた
そして二人が静かに外に出ると
「ええとこあるやないか、ダホ中年」
「ドテ子」
「師匠がやっぱ心配なって張ってたんや」
「ふん…?」
「なんだ帝王…」
「総帥命令って便利な。今度三日三晩ぶっとおしでヤリまく…ぐほっ!」
「折角見直したのに…」
「こんな奴だよこいつは(泣)」
かくして忌田さん編無事終了。
次の企画会議忌田さんは以上の理由によりお休み
「はいはいはーい!!今回は真面目にしすぎたからストレスたまりまくってまーす!!」
はしゃぐ帝王
「あんた…人に迷惑かけへんとストレス溜まるんかい…難儀な奴や」
「まあ忌田さんへの対応は今回は素晴らしかったから許してやろうさ関西娘」
「じゃあ、あんたがストレス解消できそうなターゲットやな…誰にしょ…ダーリンはあかんで」
「…帝王のストレス解消できそうなってあたりで、もう忌田さんがいる企画会議じゃ話せねえ内容になりそうだな」
「じゃあな…」
かくして史上最悪の企画は動き出した。いつものようにユウのヤサを訪れる健。
「何だ…今日は賭場じゃなかったのかよ」
「…」
「まあいい、おいどうせまた腹減ってんだろ。飯食うか?」
「いや、いらねえ」
予想外の健の返答に戸惑うユウ。
(動揺してるしてる。うぷぷぷ)
「そうかよ…何かさっきから黙りこんで気味わりいな。どうか…したのか?」
「別に」
いつもとは別人のようにそっけない健の態度にユウはひどく不安になった。
「健、今日のお前おかしいぞ?いや、いつもが変なのか?ともかく何か言いたいことがあるなら言えよ」
「じゃあ言わしてもらう。ユウジ…別れようぜ。それを言いに来たんだ」
その言葉は驚く程穏やかに発せられた
「…な…に…」
状況が分からずに呟くユウ
「そんだけだ、じゃあな…」
そっけなく立ち去りかける健
「おい…今度は何の冗談だ?」
「冗談?」
健は冷たく笑った
「それこそ冗談だぜ」
「何でいきなり…」
信じられないと言いたげな口調のユウに健は叩きつけた
「飽きたんだよ」
「…役者やなあのダホ中年…役者志望のユウさんがコロっと騙されとるわ」
「クソ帝王の奴はこーゆー人の迷惑になる話になるとリキ出すんだよ」
「おい!じゃ、じゃあ…こないだのあの言葉は…ブラフだったのか…?!捨てるな、って…野垂れ死ぬまで抱いてやるからって…おい!健!!」
悲壮感を増すユウの声に
「忘れたな」
すげなく健はそう応えた。
「か、勝手なことぬかしやがって…!」
「俺ぁ玄人だ、人間の屑だからな。じゃあな俺は行くぜ」
「ま待てよ!!」
「…うっとおしいぜ。消えろ」
「!!!」
ユウは呆然と立ち尽した。
で外
「なあなあ俺の演技どうだ?
「最悪や」
「巧妙すぎて最悪だ…一瞬本気で騙されそうになったぜ」
「ま、本気出しゃこんなもんよ」
「あんた…博打のチカラといい、その才能マトモに使うたらさぞや人類に貢献出来るやろにな」
「俺のチカラだから俺が好きに使うもーん♪お?ユウたんが外に出た出た」
「あからさまに虚脱状態やな…」
「気の毒に」
「きっと哲に慰めてもらうつもりだぜ?さ追跡だあ!!」
ユウはおぼつかない足取りで賭場に向かった。
「ユウさん!…どうしたの?」
「哲…」
陰で見守る三人。
「ぷぷっ、やっぱなー」
「ユウさんめちゃへこんどるみたいやで」
「気の毒に、こんなクソ帝王のエグ企画のせいで…」
そして
「ユウさん大丈夫かい?顔色がよくないよ」
「ああ、ちょっと具合が悪いだけだ…しばらくお前の側にいていいか?」
「もちろんだよ、けど…医者に見せた方が」
「いやこうしてお前といるのが一番だ」
「…なあ、健と何かあったのかい?」
「…」
「どうしてそこで健が出てくるんだ」
「…前もそうだったから…」
「あいつとは…切れた」
「え!?」
驚く哲にユウは自嘲気味に答えた
「前…言ったよな。お前が一番だが健も忘れらんないって」
「ンな事言ったんかい」
「二股かよ…最悪だ」
「だってユウたんが俺の事捨てるなんて言ったもーん♪だから今回は復讐さ」
「あんた一遍みんなから捨てられてみたらええねん」
「うん…」
「あいつが俺を捨てたんだ…だからもうあいつの事は心配しなくていい…」
ユウは又自嘲した
「すまねえ…勝手な事ばっか」
「いや、嬉しいよユウさん…ようやく俺だけのユウさんになってくれたんだな」
「哲…」
二人は熱く見つめあった
「ほれ見ィ、あんたもういらんで」
「だな」
「ふふふ…ちゃんと手は打ってあるさ」
哲さん!
賭場に入ってきたのはお久しぶりのダンチ。
「何か上野の玄人どもがジュクの賭場を荒らしてて…!」
「上野の?分かった、行くぜダンチ」
「はい!」
「ユウさんすまねえ…オレ行かなきゃ。すぐ帰ってくるよ」
「いや。ジュクにゃお前が必要だ。俺のことは構わず行ってこい」
「うん…じゃあまた。ユウさん」
「ああ」
ユウはしばらくして独り寂しく賭場を後にした。
「しばらく哲は玄人にかかりきりだ。その間ユウたんは嫌でも独り寝…堪えるぜこれは♪ブフー」
「もう何もよういわんわ」
「こいつ早く野垂れ死ぬ方が世の中のためなんじゃ…」
健に捨てられ哲に振られたユウはバー葵に向ったが生憎(勿論健の差し金で)満席だった。
バーのママは生気のないユウの顔を見て本気で心配そうだったが、ユウは寂しげな笑みを浮かべ
「なんでもねえよ」
と場を去った
「かーっ!あの背中たまらん…襲いてえ」
「こんなダホ中年に見入られたのが運の尽きやな」
「ユウジ、本気で同情するぜ」
「あら?この方向はヤサやないで」
「…てかこの先にあるのは…大人の遊び場、赤線地帯!!」
「女買う気か!?」
「まあユウさん男前やからあっちの姉さんにもモテるやろーけど」
「よっぽど…辛いんだな…何か泣けてきた(泣)ってかてめえくそ帝王何とか言えよ!」
「あーいい表情♪俺すげえ惚れられてるよ!!やめらんねえなこれ。うぐっ!」
「…足すべったわ、堪忍な」
「ユウジやっぱ女買いにいくつもりか?ん?立ち止まったぞ」
美人のネーチャンだ。ありゃ立ちんぼだな」
「立ちんぼてなんや」
「路上で客引きしてる女の事さ」
「何か喋ってるな…多分」
「兄さん男前ね?安くしとくわよ、だ。唇がそう動いてる」
「あんた読唇術まで出来んねんな」
「通し破りは賭場で鍛えたからな」
「でユウジが答えてんぜ」
「いや…やめとくよ」
「おにーさんちょっとどこ行くの?私と…」
「…悪いな商売の邪魔しちまって…俺が馬鹿だった」
「…え?」
「ん、ユウさん帰ってくで」
「うわあせ、背中が切なあい♪早く抱きしめてえな」
「…自殺でもしそうな面だぜ…大丈夫かなあいつ(泣)」
ユウは町外れの高架の上に身をもたせかけた
「ホンマ…飛び込まへんやろな?」
「もしそうなったらてめえのせいだ帝王」
「いざとなったらちゃんと止めるさ」
ユウはじっと下を通り過ぎる電車を見つめていた。
そして唇が微かに動いたのを健は見逃さなかった
け…ん…
唇は確かにそう動いた
打ちひしがれた様子でユウは虚ろな目を宙に泳がせていた。
(…こないだまで俺が願ってたことじゃねえか、なのに…)
身が裂かれるようだった。あの男の鮮烈な影は、どうあっても心から消えはしない…。
健、
もう一度その名を口ずさみ、
ユウは静かに泣いた。
「やっぱ俺にベタ惚れだあ!!(嬉)」
「な、まじ泣いてる…ユウさんそこまでこのダホ中年を…!?」
「この企画やっぱタチ悪すぎるぞ!!(泣)」
「もう最後のツメいくぜ!!」
健は駆け出したい衝動を押さえゆっくりとだがユウが存在に気付くように歩きだした
「…健…?」
ユウは慌てて涙を拭った
「なんだユウジかよ」
そっけない振りを装い足早に過ぎようとする健をユウは無理に引き止めた
「待ってくれ!!」
「何か用かよ?」
「用がある…」
「俺にはねえよ」
腕を邪険に振り払おうとする健に縋りつきユウは言った
「頼む…行かないでくれ…」
健は冷たい目で一瞥した
「やだね」
「頼む…何でもする…何でもするから…行かないで…」
涙声になるユウ
「頼むから…捨てねえでくれよ…」
涙を浮かべた顔で健を見上げるユウに健はもう我慢出来なくなった
「…言うたな」
「言ったな」
「行くで…行きたないけど」
「ああ」
健はユウを抱き締めた
「…健…」
嬉しげに見上げたユウは、健の顔に悪戯が成功した糞ガキの表情を認めた…そして
「ぐっきりいー!!」
さすがに玄人(しかも前もひっかかったし)彼はすぐに全てを理解した
「ユウたーん♪実は…」
全てをブチまけかけた健の顔にユウは渾身の一撃を叩き込んだ
…なんだか骨が砕けるような音がした。
ちぢみあがるドテ子と木座の目の前で彼は撲殺するかと思われる程すさまじい勢いで健を殴り付け続け、そして無言で立ち去った
ぐっきり翌日
ユウのヤサに菓子折りをもって忌母さんが泣きながら謝りにいったという。
そして健様は
「あはは♪ユウたん派手にやってくれたなあ」
「うっわ、ハリウッドの特殊メイクばりにボコボコや…」
「ざまみやがれ!」
「さあて…次はどんな企画いこっかな♪」
「全っ然こりとらん…」
「お…そーだ!俺としたことが一番のおっとこまえを忘れてたぜ」
「誰だよ?」
「俺♪」
「はあっ?!」
「予告なしでいつ撮りに来てもいいぜえ♪俺の寝姿見てトンじまうなよ」
「はあ…気が重いわ」
「あの野郎、野性の勘がすげえからな…どうやって行ったものやら」
「てか撮りたないわ」
二人がため息をついていると丁度健がユウを見付けてちょっかいかけたトコだった
「ユウたーん♪」
無視
「ユウたんてば♪」
無視
「ユウたんっ!!(抱きつく)」
うるさげに振り払う
「さすがにお怒りやな」
「もうユウたんてばまだ怒ってるのかよ?大人気ねえなあ」
「(やっぱり無視して)おう哲」
「ユウさん…しかも何で健が…切れたんじゃないのかよ」
「(冷たく)切れたよ」
「ひでえなユウたん。俺らすげえ愛し合ってんじゃん」
「しかも健の顔ボコボコ…」
「ンな事より哲、打ちに行こうぜ?」
「ほらこれはユウたんが俺のお茶目な悪戯に怒って…」
「お茶目なちゃうわ」
「いやあいつン中では悪戯レベルなんだろ」
「あからさまに人の愛情を踏みにじって悪戯かい!」
「最悪だな。てか何度か帝王の一日を張ってみたが…何かあいつの生活そのものが放送禁止領域なんだよな(泣)」
「まあ玄人であんだけ下半身ヤンチャやったらなあ」
「いっつも女か野郎と寝てて…ほとんど独りで寝てた事ねえんだよ(泣)ゴロゴロしてる時近付いたら絶対起きるし」
「…うーん、どないしたら…」
二人は悩みながら天界へと戻った
「どうした?」
「あ、師匠。実はな…」
「なに?!健の寝起き…?!ま、またえげつない企画を…しかしそれは確に難しい」
「どうしましょう忌田さぁん(泣)」
「…これもノガミのためだ…策を練ってみる…」
忌田は暫し悩んだ末に戸棚から何やらカプセル錠剤を取り出した
「何ですか?それ」
「睡眠薬だ…普通人なら昏睡から覚めねえくらいの劇薬だ」
「それってつまり…あのダホに」
「そうだ。奴にゃ普通の薬は効かねえからな」
「それはいいですがどうやって呑ませんですか?奴はケダモノですから嗅覚すごいですよ」
誰もそんなもの呑ませて大丈夫なのか?という心配はしなかった
「それが問題なんだな…俺が口移し…」
「いやいやいやあっ!!そんなん絶対いやっ!!ユウジにやらせましょう!!」
って訳でユウたんのヤサ。
殺気まみれな彼に話をもちかけると意外とあっさり承諾してくれた
「ええの?」
「その代わり、奴が外歩けねえくらい恥ずかしい番組にしろよ!?」
「あいつに羞恥心なんて感情があるとは思えねえが…約束する」
「よし…俺の演技を見せてやる」
「なんや男前やな」
賭場
「ユウたーん?そろそろ機嫌直してくれよー俺が悪かったからさあ」
「(少し同情したような目で)…健…」
「ユウたんが俺好きなように俺もユウたんの事大好きなんだ、な?知ってるだろ?」
「…本当に…」
「ん?」
「もう捨てるなんて言わねえな?」
「もちろんさ」
「(少しはにかんだ様な笑みで)その言葉が聞きたかったんだ…健…」
「ユウたん…じゃさっそくしっぽりー…」
「…ああ…いいぜ…ただ今日はお前のヤサに連れてってくれよ…俺のヤサは…こないだお前に冷たくされた思いが蘇って嫌なんだ」
「ユウたんてば可愛いなあ!!もう冷たくしねえって言ってんのに♪」
ルンルンな健はさっそくユウを天界の小汚い自室に連れていきのしかかった
「あ…健…キスして…」
むちゃくちゃ濃厚なキスの最中、確かに健の喉がゴクリと動いた…そして…ガクリ
「健?…」
ユウは小さく呟き、次いで頬をはたき、最後には起き上がると腹に蹴を入れ動かないのを確かめ言った
「ミッションコンプだ」
「すごえ演技だ」
「うっかり本気で仲直りしやがったのかと思った」
「ユウさん悪女や…ミネフジコみたいや…」
「何でもいいから約束は守れよ?部屋の隅から隅まで暴きだしてとことんまで恥ずかしい番組にしてやるぜ!!」
ユウさんは意外と根に持つタイプだった
寝室をひっくり返して、健の恥ずかしいブツを探す一同。
「何かあったか?木座神」
「ユウジ…こういっちゃなんだが帝王の寝室?だぜ。恥ずかしくないモンの方が少ねえよ」
「酒と…グラサイに怪し気な薬…ほんまロクなもん置いとらん」
「…一応総帥だからな。部屋暴くのは気がひけるが…」
ユウはその時机の引き出しの奥にあるものを発見した。
「ん?こりゃ何だ」
「うっわ、汚い字やなあ。手紙…か?ユウさん読んでみてや」
きったない殴り書きのように見えた黄ばんだ紙にはこうあった
「ほんとうわ、おまえと分かれたくなかったんだ。でもおれは、おれはおまえがいると弱くなっちまう。だからわかれた。でもおまえがキライなわけじゃない。だから…後は空白だ」
「それってもしかして…」
いいかけてドテ子は口籠もった
「…ここはカットな」
ユウは言った
「人の心を穿り返すもんじゃねえよ」
「ユウジ…お前ホントいい奴だな」
木座が感動したように言う
「あいつと同類になりたくないだけだ」
「ユウさんそんなんやからあのダホ中年に取り付かれてんで」
忌田はそっと手紙を机の中に戻した
「さ…他に何か…」
言い掛けて部屋の隅にあるティッシュの山に目をやる
「…なんや…黄色いねんけど」
「もしや…アレの後始末のティッシュ…」
「汚ねっ!!ちゃんと捨てろよ!!」
「よしこーゆーのはキチンと放送してやれ」
ユウは寝ている健の上にティッシュを積み上げた
バサバサ〜。
ティッシュに埋もれる健様。だが薬が効いて起きる気配はない。
更に
「うっ!!」
「どないしてん?ヘタレ」
「何か…ヤバい写真が束で…これやってる時のやつか?!」
「やばい!それはやばすぎるでっ!!てか相手が気の毒や」
「…ってこれ俺だよ?!(泣)!!(泣)もお没収っっ!!(涙)」
「ユウジ…(肩に手)俺もさ…(泣)後で焼こうな…」
「ななっ何て教育上悪い部屋なんだよー!」
「えー…ここで一応、部屋の配置を説明しますわ。場所は天界の中の和室八畳間、広いっちゃあ広いけどノガミの帝王の住まいにしちゃ質素です…何でなん?師匠」
「デカい屋敷建てたところで無駄だろ?ほとんど飛び回ってんだから」
「分かり易い回答ありがとです。しかし所狭しとゴミだらけ!!多分いっぺんも片付けした事ないに違いありません。家具は雀卓と万年床、押し入れはまだ未探索なんで後のお楽しみで。…ところで漢字読めへん癖に机がありますが?」
「勉強するって言いやがんだよ…」
「…えっえええ?!!」
「…学歴ないのは全く気にしちゃいねえようだが…何でもエロ文学を読むっていきまいて…まあ時々漢字教えたりな…」
「辞書のエロ単語にばっか線引いてるタイプやろか…まあ、ともかく。禁断の押し入れ…いってみまひょか!」
「オレ開けたくねえなあ(泣)」
「俺がやる!」
やたらやる気まんまんのユウは勢いよく押し入れの戸を開いた。
「うっ…うわあああぁぁ!!!!…カメラズームだ!!」
ユウは叫んだ
「何や何や…ぐえ…」
「これって…大人のオモチャって奴か…」
「なんか前小龍トコで見た拷問道具まで交じってるし…」
「しかも押し入れいっぱいにつっこんであるで…ひいふうみい」
「(ユウ、マイクひったくる)お茶の間の皆様、御覧ください!!これがノガミのドサ健の野郎の部屋です!!どうっしようもないゴミ野郎ですっ!!」
「ユウジ…あの一応うちの総帥なんだ、あんま…」
「しかし本当…飲む打つ買うをそのまま具現化したような地獄みてえな部屋だぜ」
「なあこれモザイクかけやんなやばいやろ」
「さて奴のゲスっぷりも視聴者の方々にはよくお分かり頂けたと思う!仕上げにかかるぜ」
「ユウジ…お前怒らすと人間変わるな…」
一行はスピスピ気持良さそうに寝てる健に近付く。
「あーよう寝とる…けど寝顔は意外とええ男やな」
「黙ってるか、博打打つかしてたら…男前なんだよ(泣)うちの健は」
「だが部屋がこれじゃあなあ…」
「全くもって。よし、ずんどこ行くぞ。健?ママが言ってたぞ…お前みたいなのと付き合ってたのは人生の汚点だって!!」
寝ながら顔をしかめる健。
「うう〜ん、まゆみぃひでえよお…」
「ついでに忌田はお前の総帥がこれじゃ世間様に顔向けできない、つって睡眠薬あおって今意識不明植物状態だ」
「ゆ、ユウジ!事実捏造すんな!?」
「まじかよ…忌田ぁ…」
「そしてお前との縁をきっぱり断ち切るため俺ユウと哲は新天地へ駆け落ちだっ!!」
「…ユウたん、哲…寂しいよ〜」
「友達も彼氏彼女もいねえ!!つまり上野公園のハトよりてめえは孤独だ!!」
「…」
かばっ
「うぐわ?!」
「何…こんな早く目覚める訳ねえぞ」
驚愕するみんなを尻目に健は忌田に抱きついた
「忌田ー、良かった起きててくれたんだな?」
「…ああ」
「なんかすげえ嫌な夢見てさ。俺の回りに誰もいねえの…」
「ざまあみろだ」
冷たく呟いたユウに気付き健はユウにも抱きついた
「ユウたーん!!哲と駈け落ちなんかしねえでくれよー、俺も混ぜてくれ…ごふ」
「あんた孤独に耐えられるん違うんかい?」
「耐えられっけどヤなんだよ、ドテ子♪」
健はドテ子にも抱きつき、蹴をくらった
「やっぱ永遠に寝てればよかったのに」
「あ木座お前はいらねえよ別に」
キザは何だかすげえショックだった
「…しかし何で俺寝てたんだ?たしかユウたんとキスしてそっから…」
「これや!!ぐっきりー!!」
「うわお。じゃ、あれユウたんとキスしてる時…」
「ああ。飲ませたんだ、超強力な睡眠薬をな」
「うわ〜騙したんだ、ユウたんってば悪女♪それも萌えだ。けど…」
ギラリ。
健の目が光った。ユウと忌田に猛然と飛びかかり二人を押し倒す健
「俺に寂しい思いさせた責任とってもらうぜ。しばらくは離さないかんな」
玄人の目の健は二人を組み敷きながら健は不敵に笑った。
「ふざけるなっ!てめえが俺ハメたからじゃねーか!」
「ダホ中年!!このっ…」
「健…大丈夫だ。離れやしねえよ」
「忌田…」
「寂しかったんなら、俺にもそんな思いさせてくれるなよ」
「…」
健の手が緩んだその隙に
「ドテ子ハイキック!!」
「ぐはあ…!!」
「ああ今回は疲れたわ…」
「本当にな」
番組放映後。次の企画会議
「さて前回今回と俺はとことんひでえ目にあったからな…次の標的は俺が決める」
今回企画会議にユウさんが参加していた
「まあ…仕方ないな。聞いてやれ健」
「いいぜユウたん、で誰だ?」
「俺の恨み重なる奴だ…徹底的に恥ずかしい番組にしろ」
「誰やねん」
「春木だ!!」
萎え〜
皆してそう思った。
「コピー人間の寝起きレポートして…何が楽しいねん…」
「視聴率は無理だな…(泣)」
「木座神にも増して萎え萎え〜♪」
「しっ失敬なっ!こっちから願い下げだ!」
やる気のない人々の中で一人雪辱戦に燃えるユウ。
「泣かせてやる…」
「ユウたん結構陰険だな♪」
かくして企画は動きだした
午前六時上野のとあるマンション。
「えー来たくなかったけど来てまいました、ここが全力疾走の萎えキャラ春木文彦こと面白コピー人間のおうち。腹立つことにええトコ住んどります」
「まあ芸能プロダクション社長だしなあ」
「ではエレベーターで上へ…まだ焼け野原が残るトコもあるゆうに、エレベーターがついとるあたり金持ちやな?タミミミといい春木といい、なんで総帥のあんたや師匠より金持ちやねん?」
「俺だって金持ちだぜ?ただ宵越しの銭は持たねえ主義なのさ」
「江戸っ子やな…じゃあたまにはユウさんや師匠にプレゼントでもしたりや」
「いっつもしてるぜー?ラブドラッグとか大人のオモチャとかエッチな下着とか♪なのに二人とも全然喜ばねェんだ」
「黙れ健」
「…ユウさん実はまだお怒りやな」
「ぶーユウたんのいぢわる…」
「ついた…ここだな、入るぜ」
ぎいい
「高級マンションや…皆様御覧ください!壁紙からして庶民とは違います!!しかも玄関マット…フランス製です!!」
「芸能プロってもーかんだな(しみじみ)」
「あんたが総帥やろが」
「忌田に任せてるしー」
「中入るぜ?」
「やっぱ洋間やね。しかもリビングにグランドピアノが…防音対策大丈夫やねんやろか」
「お♪すげえモンが落ちてる(ぴら)」
「ブラジャー!?」
「まさかっ!女優志望の女の子をここで毒牙に?!」
「他人事じゃねえ!糞コピー野郎!!腕ぶっこ抜いてやるっ!!」
「おいしい生活してんなあ…♪」
「うわ…リビング過ぎるとバーカウンターと、デュークボックスのある個室!この奥が寝室でしょーか。しっかし腹立つわぁ〜!何や、また下着みたいなん落ちてる…いやいや脱がせながら引っ張ってきたんか?わからんな」
「ともかく…この中寝室っぽいぜ?きれーな姐ちゃんいたらいいなっ♪」
「では突入します〜」
「くおら春木…ぐはあっ!!」
「ぎいやああっ!!」
「…うわ…俺でも萎えるよ…」
寝室では春木が下着をとっかえひっかえしていた…ちなみに女物
「アンビリーバボー!!」
「そりゃこっちの台詞やがな!!うわ…目ェ腐る…」
「な…何の真似か説明しやがれ!!」
「ごめんユウたん…俺聞きたくねえよ…」
「芸能プロデュース社長たるもの♪女優や乙女の気持ちにも精通せねばん♪」
「…で、形からって訳かい。おぞましずぎるわ!!」
「しかし見られると何だかエキサイティング!♪」
「ハズかしがらせるとかのレベルじゃねーな、ユウたん」
「お前何でこんなの部下にしたんだよ!!こらっ!(バキッ)」
「へぶっ。ユウーたん、これってとばっちり〜!」
「コピー人間!朝っぱらから茶の間の皆さんにエグいもん見せてからに!反省せえ!!」
バキッ
「何故私が…ホワイ?!」
「まあ…自分ちで何してようが他人は文句言えないと思うが…」
木座神のフォローも焼け石に水。
最悪な後味を残し春木の寝起き編は終わった。
ちなみにやはりこの時も、天界の電話という電話はしばらく鳴りっぱなしだったという
「何だか最近…ぐっきり開始時の新鮮な驚きがねえなァ…」
「そりゃしゃあないわ。ほとんどの人はもう取材してもうたし…後は禁断の人しかおらへんよ」
「禁断の?へえ…ンなもんいたのかよ」
「あー?そんな事言うてええねんな?じゃあ次の企画進めてまうでー」
「ああ♪」
で撮影日
「ドテ子、で今日は誰の撮影なんだ?」
「聞いて驚け、ママさんや」
「なっ…ま、まゆみ?!」
何だかいつもの勢いがなくなって怖じけづいてる様子の健。
「どないしてんダホ中年」
「撮るん…だよな?まゆみの寝起き…」
「そのためにここに来たんやないの」
やおらドテ子の後ろに回り込む健。
「ちょい、何やのん?」
「さ、先行ってくれよ」
「何か帝王が変だ…」
そう変と恋の字は似てるのですよ。
まゆみさんの部屋は平凡なアパートの四階だった
「入るでダホ中年…だから何で隠れるねん」
「だって…」
「お、おい調子狂うじゃねえか。しっかりしろ帝王!!」
何だかいつもと違ってしおらしい健様。
「だってもクソもあるかい!!ちゃんとカメラ映すねんで…うら、突撃!!」
部屋の中
「はーい『哲也』のミステリアスビューティー、ママさんのお部屋です。非常に綺麗に片付けとりますが、あんま趣味伺えるモンはあらしません」
「あいつ…昔からこうだったな」
「あんま面白ないんで洗面所と浴室リポート…ああっ!!」
「どうしたドテ子?」
「歯ブラシが二本あるで!!どーせーや、ママさん男がいますっ!!」
「まゆみ…」
「そらごっつう大人の女で…あんだけ美人やねんから男出来てておかしないわな」
「…まゆみに…男が…」
「ぬあ?!帝王が何だか切ない目してるぅ!!?ま、まじかよっ!」
「ママさんの男て一体どないな奴なんや…よし、寝室の方へゴーや!!こらカメラちゃんと着いてきい!!」
「…行きたくねえよぉ」
「ダホ!突撃レポートや!ここで引き下がって帰れるかい!行くでっ!!」
「…」
「さあ、こちらが寝室になりますー。じゃ、開けるで…」
ギイイ…。
寝室では、確かにベッドに二人が寝ていた
「…やっぱりや」
何だか満足そうなドテ子と切なそうな健
「帝王てめ…自分はあんだけ当たるを幸い食いまくっといて元カノに男がいる位でなんだよ」
「…だって…」
何だか捨て犬のような目でベッドを睨む健にドテ子は止めの一言を発した
「なんや…男にしては肩細いし。もしかして女違うか?」
「ま、まゆみ…俺の知らないうちに女に走ってたのか…?」
「ママさん…えらいこっちゃで…」
「い、いいのか?!放映して(泣)」
「うわあ〜ドテ子ぉ〜俺どうすりゃいいんだぁ?!」
「からみつきなや!うっとおしいっ!!」
「うわ〜ん、まゆみぃ。ひでーよぉ、あんまりだぜ〜」
「てめえが言うんじゃねえっ!!まあ…きっつい事実だけどよ…」
「ええい!ままよ!ここまできたからにはレポートすんでぇ!!ほら、カメラ!!ベッドズームや!」
「ドテ子の鬼ぃ〜(泣)」
「行くでぐっきりや!!ママさんお早う」
まゆみさんはネグリジェ姿で体を起こした
「あら…私にも遂に来たのね」
「冷静やなママさん」
「ま…まゆみ…隣で寝てる女は誰だよう!?まさかお前のレコ…」
何だか泣きそうな顔の健にまゆみは静かに微笑んで言った
「そうだとしたらどうなの?」
「ど…どうって…ひでえよまゆみ!!」
「貴方に言われる筋合いはないわ(きっぱり)そもそももう私たち他人だもの」
「う…うわーん!!まゆみの馬鹿あっ!!俺の気持ち知ってるくせに!!」
健は泣きながら(笑)耐え切れずに逃亡した
「すご…あのダホ中年を泣かした…ホンマごっついわ」
「ママさん横に寝てるのはじゃ、やっぱり?」
「フ、私は女の子に興味はないわよ。この子は私が昔勉めてたバーの後輩。男に捨てられたらしくて…昨日ここにきて、一晩中私の腕ん中で泣いてたわ…」
「帝王の奴早とちりやがって…」
「ええ薬や。えー…お茶の間のみなさんに何か一言ありましたら、どぞ」
「そうね…朝からお見苦しいモノをお見せしてごめんなさいね」
「ンな事全くないっス。むしろすっげえ目の保養になりましたっ!」
「ホンマや」
「…この番組を御覧のよい子のみんな…悪い子もそうだけど、決して女の子を泣かせたりしちゃ駄目よ」
「はーい」
「ついでにタチの悪い博打打になったり、下半身ヤンチャな中年になったりして『人に迷惑をかける』生き方はしちゃいけないわ『絶対』ね」
「え…と…教育番組のようなシメを有難うございました」
「すんません…オレ、人に迷惑かけてます(泣)」
「クソ中年よりマシやて」
「慰めになってねえ!!」
で泣きながら去った健は
「ふああ朝だ…さてそろそろ寝るかな…」
がちゃあ!!
「ユウたーん(泣きながらユウを押し倒す)」
「な…健!?何なんだ…俺は今から寝る…」
「ひでえんだよまゆみってば(服を脱がしながら)俺の気持ちを知ってて、お…女の子と同棲してんだ(泣)ひでえだろ?(のしかかる)」
「ちょ…離れろ…ママさんが…いや、何にしてもお前がどーこー言えた義理かよ、離せ離せってば」
「慰めてくれるまで離さねえ」
ちなみに健は昼までユウに無理矢理慰めさせた挙げ句、天界に行って忌田さんにも同じ事を強要した為、事の真実を知ったのは夜中になってからだったという…
まゆみさん、何とかしてやってよあんたの元彼
「はーよかったあ、まゆみまだ独り身だったんだ」
「時間の問題やで」
「忌田ドテ子がいじめる〜!!」
「…分かったから落ち着け…。ところで次の企画だが…」
「ほとんどやりつくしましたよ。もうネタが…」
「いや!あるにはあんで?!何が起こるか…予想もつかんけど」
「そんな危険な取材なのか?誰なんだ…一体」
「…信や」
「なっ…!!」
「ええーあいつ夜に脱皮して本体どっか行ってるんじゃねえ?」
「地球外生命体かい!」
「死角だった…」
「けど気になるなあ♪よし決っ定〜」
「でも信の家って知ってるんか?さあ…宇宙に住んでるモンとばかり思ってたからな」
「よし追跡や」
さっそく一同は信の店を張る事にしました。が…
「…何時まで営業しとんねんここは」
「まあカラス金借りにくるような奴だから夜のが客は多いだろうさ」
「しかも人生終わりそうな顔した奴か人生終わった奴かしか客がいねえな」
「まあな…」
「えーただ今午前二時…お、ようやく店がしまりました!!帰って行きます!自宅はどこなんでしょう?もしかして円盤?異空間に逃げられては我々も手の施しようがありません!!」
「何だ?どんどん町から遠ざかるぞ?」
「やっぱ母星からお迎えくんだよ」
「何や空き地ん中入っていったで…遠くに見えるのは防空壕の跡でしょーか?!なっ、そん中に降りてったで!!」
「地底人だったのか?」
「お、追ってみましょう!!」
防空壕の中はかつてのローマ帝国に迫害されたキリシタンのカタコンベのような地下家屋になっていた
「めちゃ…広いです」
「すげえ迷宮みてえだ」
「しっ、声が響く…見失ったら二度と見つからないかもしれねえぞ」
「追跡します!!」
かくして一同はひたすら走った
「すげえ!!何か壁面の穴に銃に刀、弾薬と爆弾?みてえなもんがぎっしり置いてある…」
「防空壕跡じゃ捜査の手もまわんねえしな。何か憧れんな♪こーゆーの。俺もつくるかな」
「喋ってる場合違う!見失うでボサッとしてなや。えー薄暗い照明に土の臭い…まだ戦争の臭いが立ち込めています!秘密結社の集会とか普通に出来そうです!しかしこんだけの武器弾薬何に使うんかな?」
「分からねえぞ、アカか何かで労働者革命目指してるかもしんねえし」
「金貸しがかいな」
「資本主義の最たるモンじゃねえか」
「じゃ右の人とか」
「関係なさそうやな…まさか趣味やろか」
「おお…ミリタリマニアか!!」
「趣味かい。まあ金貸しやから脅しのネタには十分やな」
「絶対こいつからは金借りないぞ」
「いいなあ…このチャカかっちょいい〜♪俺も欲しいなあ」
「馬鹿にもたせたら一番危ないんや!!やめとき!」
「んん?向こうに扉がみえんぞ?あ…信の奴入ってくぜ!」
「よっしゃ!うちらも行くで!!」
中に入るとそこには超巨大な脳みそがあった。なんだか巨大な硝子容器に入りポコポコいっている
「…うち…こーゆーの前映画で見たで」
「オレも見た。確か外宇宙から侵略してきた宇宙人の親玉なんだよな、これ」
「お茶の間の皆様!!大変な事実が発覚してまいました!!やっぱ見た目とおり信は宇宙人やったのです!!しかも地球を侵略しに来てたんです…大変や…報道に携わるモンとして人類の為に…」
「何だか楽しそうな展開だな♪」
「楽しんでる場合と違うわ!!」
がちゃ
「おいお前ら人ンちで何してやがる」
「ぎゃー!!洗脳されるうっ!!」
「人を何だと思ってんだ、てめえら不法侵入だぜ、シシ」
「ってかてめえこの脳味噌は?!あと地球征服しに仲間がやってくんのはいつなんだ?!」
「おーこの脳め目ン玉までついてる♪信すげえなこれ」
「だろう?シシ。731の奴らが研究用に残したもんだ。捕虜の脳をいじくってな…軍事機密やら情報を引き出そうとしてたらしい。あと洗脳もな。その実験記録と一緒に、こいつはGHQからむしりとるのに今だ役立ってくれてるわけさ」
「やっぱ悪魔だっ。オレもう帰るう!!(泣)」
「宇宙人よか恐ろしい奴っちゃ…」
「えー皆様に大変残念なお知らせがあります。このぐっきりはノガミやジュクのみなさんに多大なる迷惑…じゃなくて娯楽を提供いたして来ましたが、遂にネタ切れの為
今回が最終回
ゆう事になりました」
「だから♪今日は最終回スペシャル!!天下の坊や哲をゲットします!!もちろん生放送!!アポ無しだぜ!!」
「…誰がやて?」
「無論俺」
「何い!?聞いてないで」
「だってこの番組終っちまったら面白くないもーん、だから最後はいい思いしてやる!!」
「お、おい。くれぐれも放送禁止になるようなことは…」
「よしいっくぜ〜♪哲ってばずっとお預けくわせるんだもんな」
「タチわる…」
「ドテ子お前にもおすそわけしてやんぜ♪」
「あ、悪魔の囁きや…でもこの番組もこれが最後…。ごめん師匠!今日一日ドテ子は悪い子になりますぅ!!」
「いっちゃえいっちゃえ♪」
「こいつらこんなん言ってます…どーしたらいいんすか…忌田さぁん(泣)」
ノリノリの健とドテ子は何と真っ正面から雀荘に乗り込んだ
(但し健は鼻眼鏡、ドテ子はぐるぐる眼鏡付きで)
「坊や哲!!」
「うちらは関西からやって来たコンビ打、鼻眼鏡とぐるぐる眼鏡や!!」
「是非相手してもらうぜ、サシウマはてめえ自身でな」
あからさまにバレバレな変装の上カメラを回しているのは木座なのだが哲は全く気付いていなかった
「…勝負か…いいぜ面白え」
無茶シリアスな哲はある意味めちゃ滑稽だった
「よし行くぜ、ダンチ!」
「いつでもオッケーっすよ!」
「ふふ、坊や哲覚悟しいや…泣かせたる!」
「いえーい!!俺も♪」
「こいつら…業が深すぎる!帝王のみならず関西娘までもが…ちくしょー帝王のせいだ全部!!(泣)」
かくして勝負は始まった
がなんせこないだ勝てなかったモンが修業もせずに勝てる筈ないし。しかもドテ子もついてます
「ダブル役満だ」
健は(不純な動機から)絶好調だった
「いくら最終回だから番組の恥はかき捨てとはいえあんまりだ(泣)何とか助けてやりてえが…オレが代打ち?…無理、ぜってえ無理」
しかし木座はふと思いついて験なおしに便所に行ったダンチにコンタクトをとった
「おい…オレが壁役になってやる」
「ん?お前確か木座神…何でここにいんだ?上野の使いっパが」
「使いっパいうな!!訳あって…そのてめーらの対戦相手に恨みがあんだ!だから味方してやろっつってんだよ!」
「オレはいいが哲さんが何ていうか…」
「これも奴のためなんだよ!!ほらさっさと行くぞ!」
そうして雀卓に戻るダンチと再びカメラを構えるキザ。その気配を背中で感じつつ健はにやりとほくそ笑んだ。
木座は今回カメラマンなので当然健の>牌は全部見る事が出来る。しかも健は木座に背を向けているのでどんな通しをしても分からない…筈
(よし九索だな)
こうして突如振込まなくなったダンチ
「くはあ…何でアガれへんねん」
「まあまあ落ち着けよドテ子」
ジリジリ点差を詰められているのに健は余裕しゃくしゃくだった…そして
「よおし…これは通しだろ!?」
木座の指示通りの牌を自信満々に捨てたダンチに健はロンを宣言した
「何だとお!?」×2
「…何であんたが驚くねん?ヘタレ」
「あ…いや…」
驚いて健の手牌をみると先程とはまるで様がわりしていた。
「ま…さか?!ツバメか?!ありえねえ、哲の前でだぜ…」
「よし、次で終局だぜ。フフ…」
「哲さん…」
「こいつ、ドサ健なみに強え…」
いえ本人ですから。
益々絶好調の健。ツバメにギリ技まで縦横無尽に駆使する健にはもう通しすら無駄だった
「全国のみなさん…神は死にました」
木座はもう視聴者の皆様に訴えるしかなかったが…そこへ救いの神が現れた
「健…それにドテ子!?なんで哲と打ってるんだ?」
「ドサ健?」
哲は不思議そうに呟いた
「ユウさん、こいつら関西からきたコンビ打ちだぜ、確にドサ健と打ち筋は似てるけど…」
「いや本人だよ!!このどっからみてもカタギじゃないスーツ男ってば健しかいねーよ!!」
「そういやちょっと似てるかな…?健とドテ子に…」
「そのものじゃん?!」
「やばいで…ダホ中年」
「心配するな♪」
健はユウに顔を向け言った。
「やあ男前初めまして…」
言いながら健は目で語った
(それ以上言ったらしばらく天界に拉致監禁して、寝る間もねえくらいにいろいろしちまうぜ)
「う…」
絶句するユウに哲は言った
「今回の勝負には『オレそのもの』がかかってんだ」
「な…何い!?健…」
「だから違うって」
ユウは悩んだ。だが身の安全より哲の貞操の方が大事だ
「哲、こいつぁドサ健だ。その証拠に!」
ガバアッ。
ユウはシャツを脱いだ。
「おほっ、ユウたんの半裸っ!!ゆっうた〜ん♪」
抱きつく健からユウは鼻眼鏡をむしりとった。
「ど、ドサ健?!」
「ダホ中年が!」
「分かったか哲?!」
「何て…巧妙に化けてやがったんだ…さすがだ…」
「…」
だがもう誰も哲の天ボケにはツッコまなかった
「まさかドサ健がこんな馬鹿な化け方してるなんて…」
ダンチが気付かなかったのはある意味健への畏敬からであったらしい
「…気付かれてもうたでダホ中年」
「でももう遅いさ、ツモ!!これでハコだぜ?お前は俺のもんさ哲?」
「ふざけんな!!こんな馬鹿な勝負…」
「(玄人の目で)俺の勝ちに間違いはねえだろ?哲、玄人なら負け分は払うよな」
「ああ異存ねえ」
「哲!!」
「ようし。じゃ決まりい♪じゃ、いくか哲。場所は天界でいいかあ?」
「ああ…その前に一時間ほど時間くれ…色々考えてえんだ。オレは逃げねえから」
「いいぜ、じゃ待ってるぜマイラバー」
「…哲…」
「哲さん…」
意気揚揚と健とドテ子が引き上げた後
「哲さん正気ですか?お婿に行けなくされちまうんスよ?」
「哲…俺が奴を何とかする…だから行くな」
二人の必死の説得に哲は首を振るばかりだった
「負けて痛ェ目見るのが博打だ…」
何だか男前な哲を木座は涙ながらに撮り続けた
「全国のみなさん…これが真の玄人の姿です…」
「おいてめえ!!さっきから何哲さん撮ってんだよ」
「オレはこれからドサ健の奴に…けど、ユウさん」
「な、何だ?!哲…」
「例えどんな事になってもオレの心は…あんただけのもんだから。帰ってきたらまた今までと同じように迎えてくれるかい?」
「て…つ…当たり前じゃねえか!!」
「良かったそれ聞いて安心したよ」
哲は少し哀し気に微笑んだ。
「哲さぁん俺たちコンビも永久に不滅っすよ〜」
ダンチの言葉は残念ながらユウと二人きりの世界にいる哲の耳には届かなかった。
「じゃ…オレ行くよ」
「哲!(泣)」
「玄人として…けじめをつけてくる」
天界では健とドテ子が哲を待っていた
「ようやく哲のバージンがゲット出来るぜ嬉しいな」
「うちもダーリンの初物をゲット出来るで嬉しな」
二人の鬼畜だったがそこで見解の相違が起こった
「哲の初物はとうに俺が頂いてるぜ?」
「何い!?どーゆー事やねん」
「てかお初も二回目も俺(正しく言うと俺の体)が貰ってんだ」
「う…そんな…恐れおののくダーリンに『優しくしたんで』と囁きたかったのに…」
ドテ子はがっくりと肩を落とした。哲が入って来たのはまさにその時だった
「約束どおり来たぜ」
悲愴な決意を固めた哲の姿に、二人は萌えまくり。
「待ってたぜマイラバー」
「ようやっとうちのもんに…ダーリン可愛がったるさかいな」
二匹の獣を前にしても哲は男前だった。
「どこでするんだ?」
「付いてこいよ」
二人は哲を二階へと誘った。
哲が去った後の雀荘で。木座はダンチとユウに詰問されていた
「こりゃ一体どーゆー事だ!!」
「オレも被害者だ!!」
「だいたいてめえらの番組は人騒がせすぎんだよ!!今回は何だ!?」
「さ…最終回スペシャルで…坊やの唇や体を奪おうって企画…」
どぐあっ!!
ユウの拳が木座に叩きつけられた
「てめえらどこまで人の心を弄べば気が済むんだ!!」
「いやだからオレじゃねえって…」
「行くぜダンチ!!哲を助ける!!」
「いえっさー」
「…いやでもぐっきりだから多分最後まではやらない…」
木座の言葉も二人には耳に入らなかった
天界二階では健とドテ子がもはや狂戦士と化した目付きでめっちゃ哲を眺めていた。
「さーて待ちに待った瞬間だぜ♪」
「この日をどんなに待ち詫びたことか…」
「早くしろよ」
「じゃ遠慮なく」
健の手が哲の黒シャツに伸びた時。
ガーン…
でかい鉄球で天界の壁がぶち抜かれた。
三人の目が一斉に壁へ向けられる
そこには大型の鉄球車に乗ったユウとダンチ、そしてボコにされてカメラを構える木座がいた
「哲さあん!!ぐっきりっスよ!!」
ダンチは言いながら看板を掲げた
「え?」
「哲…これは『ぐっきりテレビ』ってェ番組の収録だ!!」
「ちょ…これは『ノガミ』ぐっきりテレビやで?なんでジュクの玄人のユウさんやリーゼントが…」
「よく見ろ!最終回スペシャルで今回だけ『ジュク』ぐっきりテレビだ」
確かに看板にはそう書いてあった
かくしてノガミぐっきり、最終回だけジュクぐっきりは派手な演出?で幕を閉じた。
ちなみに番組の収益の大部分を天界の修理にあてざるを得なくなったため、ノガミグループ自体の利益は微々たるものであったという。
(字幕で)あなたは雀荘についてどんなイメージを持っていますか?
「(可愛いがアホそうなOLが)えー?なんだかぁ、玄人とかいう人がいて恐そうな感じですゥ」
「(さわやかアイフル系お姉さんが)でもノガミグループの雀荘なら安心です。清潔な店内、明るい照明、お客さまもみんなスーツを着たサラリーマンばかり(隅の方にドサ健)」
「えー、でも麻雀分かンないですゥ」
「それも大丈夫。専門家がしっかり指導、すぐにマスター出来ます。チップ制だからお金のトラブルもありません」
「うわあ窒アれなら私も行きたぁい♪」
雀荘から新世代を。ノガミグループ
「(テレビを眺めながら)うわあ…今更やけどなんてうさんくさいCMやろか」
番外企画・四月バカ編真夜中の新宿。
男は不審そうに女を眺めていた
「まゆみ…お前が俺を呼び出すなんてな…」
女は少し笑った
「…大事な話てのは…何だ?」
女はうつむき呟く様に言った
「今更…そう思ってくれてもいいわ」
何が、問い掛けた男に女は言った
「やりなおしたいの」
「え…」
絶句する男に女は言った
「明日…この場所この時間にここで待ってて。そして返事を聞かせてね」
そして足早に立ち去った
「まゆみ…」
男はそれだけ口にし、黙り込んだ
早朝の天界。
いつになく深刻な顔をして帰ってきた健をいぶかしみ忌田は声をかけた。
「健…何かあったのか?」
「ん…」
無言で健は指輪を眺める。
「なあ…俺さ」
「どうした?」
「素っ裸で新宿まで駆けずりまわりたい気分なんだけど…」
「何があったか知らねえが…やめろ!!それだけは!」
忌田さんの必死の抗議も何だか上の空の健
「どうしたんだ?違うぞ…いつものお前と」
「…なあ忌田、やっぱ女って結婚したり子供生んだりして安定欲しいと思うモンなのかな…確かにあいつももう若くねえけど」
「おい…まさか女に子供出来たって言われたのか!?どこの女だ?ホントにお前の子か?…いや、お前くらい節操ねえと違うっつっても説得力無いな…」
「違う…まだ出来てねえよ」
「はあ、そりゃあ良かった…じゃ何の話だよ」
「まゆみとさ…」
訝しげに顔をしかめる忌田に健は続けた
「やり直そうかな…て…よ」
そして忌田の顔を見上げた
忌田は、返答に詰ったようにじっと健の顔を見たが、しばらくして言った
「そいつあ…願ってもないチャンスだが…しかし」
「何だ?」
「何で今、なんだろうな?それが気になると言えばそうだが…」
「もし、まゆみが本気で俺とやり直そうと思ってんなら…俺は…」
「…健!」
健の肩に両手を置いて忌田は微笑んだ。
「よかったな…」
「忌田…」
「向こうから言ってくれたのか?」
「…うん…」
「ずっと後悔してたんだろ、別れた事。それにお前がちゃんと恋愛したら一体どれだけの人間が救われるか…!(泣)」
「何か副作用のひでえ劇薬みてえな扱いだな…」
「…今日はお祝いだな、赤飯炊こうな」
「…何か信じらんねえ…夢じゃねえよな」
そして忌田さんがいそいそと炊いてくれた赤飯をもそもそと食いながら
「でも…そしたらお前に飯つくってもらう事もねえんだな」
「なんだ…まゆみさんは料理出来ねえのか」
「いや上手だよ」
「じゃあ作って貰えよ」
などと言っていると木座登場
「な…なんで赤飯なんスか?」
「木座…俺、結婚して幸せな家庭を築くかも」
「何ぃ!?」
木座は自分の住む世界が実はマトリクス世界である事に気付いたアンダーソン君の様に驚愕した
「忌田さん!こいつついに脳味噌最後まで腐れ落ちちまったみたいすよ!!」
「木座神…健の話、どうやら本当らしい…今日はお祝いだ」
「な…な…ありえねえ!オレは信じない!帝王が家庭もつなんて!ファンタジーだそんなの!!指輪だよ畜生!」
「…俺あ…まゆみ幸せにする…」
「ほげあ?!ちょ…マジなのかよっ、だとしたら世の中すげえ平和に?!」
「…ほら、奮発して鯛のお頭つきだ」
「ん?けど…だったら忌田さん!赤飯炊いてる場合じゃないでしょう!だって…忌田さんはクソ帝王の事…」
「別に健は総帥辞める訳じゃねえんだ…毎日来る、よな?」
「…勿論さ。オフクロ、じゃねえ…忌田お前を一人にゃしねえよ」
「気を遣うな、馬鹿…」
「色々間違いすぎー!!(泣)」
何だかまっとうに将来の家庭計画を立てる健に忌田は親身になってアドバイスした。
そして
「ともかく、今まで色んな関係がある奴等にゃきちんとケリをつけてこい。それがケジメだ」
「分かった…」
素直に席を立ち出ていく健を忌田は黙って見送った
「おかしいっスよ忌田さん!!絶対騙されてますよ!!」
木座の指摘は実は思いっきり確かだったのだが、忌田は哀しそうに
「これでいいんだ」
と呟くばかりだった
とりあえずユウのヤサを訪れた健。
「ん…健?何だ仏頂面して」
「あのさあユウたん…俺、身固めることにした」
「…俺含めた、てめえの言うハレムメンバーと籍入れるとかか?勘弁し…」
「いや…まゆみと、だよ」
「え…ええええ??!!」
ユウは死ぬ程驚いたが健の説明を聞き、哀しいが優しい瞳になって言った
「おめでとう」
「ユウたん…すまねえ。前…ずっと離さねえつったのによ」
「いやいい。お前がこんなまっとうな決心が出来た事に驚いたがよ…ママを幸せにしろよ」
「勿論だ」
「良かったな、これで世界も平和になるし、お前もマトモに幸せになれる」
ユウは優しく健の肩に手を置いた
「また…来るからよ」
ユウを抱き締めながら健は言った。
「浮気して…ママを不幸にすんじゃねえよ」
「…酒呑みに来るなら構わないだろ?」
「勿論だ…健」
「愛してるぜ、ユウたん…」
「ああ、幸せになれよ…」
健はひたすらいろんな所に別れを告げに回った。
そして…
「何か用か」
小龍といちゃついていた近藤の所へも
「おうセンセ…俺、結婚すんだけど」
「血痕!?」
あまりに意外な単語を聞いて誤変換する近藤
「ついに直接人殺したのか!?」
「は?いや、結婚…」
健の話を聞き、小龍は吐き捨てる様に言った
「てめえがそんなつまらん男とは思わなかったぜ」
「別れてからもよ、ずっと忘れらんなくってよ。まゆみのこたぁ…だから、今度こそ…」
「…おかしい!!マトモな事言ってるお前はお前じゃないぞ!健!」
「また何か企んでやがるな貴様」
「違ぇよ…」
指輪を眺める健の様子には、少なくとも嘘や冗談の気配はうかがえなかった。
「…本当、なのか?健」
「ああ。あいつから…言ってきたんだヨリ戻そうって…。さすがの俺でも読めなかったな…」
「その女何でまた唐突に?しかし、もうお前がオレと近藤の仲を邪魔しねえのは…有りがたい限りだがな」
「もう抱いちゃもらえねえのか」
「近藤!!」
だがセンセは割と本気だったらしい
「お前の人格は最悪だと思うが、お前のセックスはたまらない程いいからな」
「オレがいるだろうが!!」
「たまには違うモンがいいんだ…どんな美味いモンでもそればっかじゃ厭きるだろ?」
鬼畜なセンセに健は
「ああ…もうこれきりだ」
とあっさり告げた
「そうか…まあそれなら仕方ねえさ。結婚おめでとう。幸せになれよ」
「チッ、ま、好きなようにしろよ」
いろんな人間から、色々に驚かれ、そして祝福され
健は、彼には珍しく少し疲れて橋げたにもたれかかり、一人ごちた
「…俺が結婚、か」
常人から見たらしっちゃかめっちゃかな生き方してきただけに感慨深い。
「まゆみと…家庭もって…もうハレムのラバーたちとは手切って…もう無茶は出来ねえんだよな」
橋の上に佇んで物思いにふける彼は、いつになく男前だった。
「健…」
振り向かずとも分かる声の主
「哲か」
「ユウさんから聞いたよ」
「ああ」
沈黙が流れる。
先に口を開いたのは健だった
「何か言いてえんだろ」
哲は顔を伏せた
「正直戸惑ってる…お前がもうユウさんを所有しないのは嬉しいよ。だけど…お前程の玄人が…安定を選ぶなんて…」
「…俺は…」
「もう、博打はしねえのか?だとしたらオレとの決着はどうなる!?」
「…俺は形は変わろうが賭けは続ける…。玄人やめて生きてくのに、俺に何が出来ると思う?」
「…」
「博打以外俺は知らねえしやった事もねえ。おまけに尋常小学校中退…そんな俺がまゆみのを幸せにすることが出来んのか…」
「健、おめえ」
「分の悪い…ばかでけえ賭けだぜ、全く。お前とはもう一度勝負したかった、だがよ」
「分かったよ。お前そこまでママの事を…正直驚いた」
哲は続けた
「正直いつもの冗談だと思ったが…本気だったんだな。ママを…不幸にゃするなよ」
「勿論さ。じゃユウたんはお前に任せるよ」
「ああ、ユウさんはオレが幸せにする!!」
哲はやたら男前に断言すると
「じゃあな」
と立ち去った。
そしてそれと入れ替わるように現れたのは
「クソ帝王!!」
「キザ…」
「お前どこまで忌田さんを不幸にすんだ!」
「…」
「くやしいけど…忌田さんはお前にベタ惚れなんだよ!全人生お前に賭けてるっ、なのによ…」
「結婚してもあいつが相棒でオフクロであることに変わりはねえよ」
「そんな事じゃねえ!!お前は結局まゆみさんを選んだんだ!それがどんなに…くそ」
「…ならお前、少しでも奴を幸せにしてやれ。ヘタレにゃ無理かな?」
「っ…言われなくてもそのつもりだ!…う…(泣)」
「何泣いてやがる」
「嬉し泣きだよ…てめえがいなくなりゃ、せいせいするぜ…クソ…帝王…うわあああ!!(泣)」
「…またちょくちょくいびりにいってやらあ」
「い…いつでも来やがれ(泣)」
木座神が去り、健はようやく一人になった
「これで全部か…」
これっきり…
これで今までの自分の清算が終わった。
後は…そう、これからの方が大変だ。
一からすべてを始めねばならない
「…覚悟の上だ」
それでもいい
…あの時の、
あの薄い戸一枚で区切られただけなのに、余りに遠く隔たってしまった彼女との距離を縮められるなら…
健は、珍しく躊躇する自分が可笑しくて、少し笑った
「行くか…」
健は煙草を踏み消し、約束の場所へと向った
約束の場所。
まだまゆみは来ていないようだ。
「…」
まだ信じられない。
またあいつとやり直せる…。
だが同時に失ったものも大きいことは確だ。
「がらにもねえ…」
後悔はしていない。だが寂しくないと言えば嘘だ。
その時、健の視界を影がよぎった。
「まゆみ…」
健の呟きに彼女は微笑んだ
「ほんとに来てくれたのね」
「ああ…」
健は言って、そっと彼女の髪に触れた。
俯くまゆみ
「健…」
感慨ぶかげに名を呼ぶ彼女を健はそっと抱き締めた
「ようやく…お前をこの手に取り戻せた」
彼女は黙ってされるがままになっていたが、何かの物音に目を向けた。
つられて健も視線を向ける
「ドテ子?」
ドテ子は小悪魔くさく笑って何かを掲げた
「ぐっきりー♪」
「…まゆ…?」
「フ…」
「えっらい綺麗に騙されたなあ?ダホ中年!」
「…おい…まゆみ…これって…」
「分かるでしょう?」
「お、俺たち昔みてえにヨリ戻して…それで…二人で…そうだろ?!まゆみぃ?!」
健様珍しく必死。
しかしそんな彼に残酷な女神は言った。
「フ…バーカ」
「…!!!…なっ…(泣)」
健はものすごく深く理解した。
今までオモチャにしてきた人達の辛さを
「ひ…ひでえよまゆみ!!俺がお前に一体なにしたって…」
「って、いっつも師匠やユウさんに言われとるやろ?」
「自業自得よ」
やたら冷たい女神さま
「…それじゃ丸きり冗談…」
「当然よ」
「俺とやり直す気は」
「一人で生まれて一人で死ぬんでしょ?」
「う…うわあああんっ!!まゆみのばかあっ!!」
帝王は大泣きしながら、ダッシュでその場を立ち去った。
「うわあボロ泣きしとったで…」
「いい薬よ」
「…ママさん、めちゃめちゃクールやな…でもって何か楽しそうや」
「フフそう見える?」
「…うん。怖いくらいや」
一方健。
「まゆみのばかあ!うわああんっ!!いいもん!いいもん!!ハレムに戻るだけだもん!(泣泣)」
で帝王はハレムの面々に泣き付きにいったが…
「ユウさん…健はもうママ一筋なんだ。だから」
「ああ、そうだな。これでふっきれた。あいつがまっとうに幸せになってくれるならそれが一番だ」
「だから…オレたちも幸せになろうぜ」
「哲…」
「ユウさん…」
さすがにあんだけカッコよく別れを告げた手前、口は挟めない
「いいもん…他にもいっぱいいるもんね」
議員宿舎
「センセ…って、ん?」
ギシギシ。
ベッドのきしむ音。
「小龍…もっ…と!」
「フン、健健の奴がもう抱いてくれなくて…寂しいんじゃねえのか?」
「確に、あいつは巧かったからな…けど俺はお前がいてくれれば…小龍。お前が身を固めるなんて言い出したら、俺は生きていても…仕方ないからな」
「そんなことある筈がなかろう。近藤お前が最高の玩具だ。」
「小龍…愛してる…」
「オレは何があってもてめえら手放さねえ」
「ちぇ、こっちもラブラブかよう!(泣)」
泣きながら夜を彷徨う健。
これが
これこそが真の孤独だ
…そう思いながらも彼には最後のよすががあった
「忌田がいる!!」
オフクロだけは俺一筋だから<すげえ暖かく迎えてくれる筈…
「忌田さん!!オレがついてますから!!」
天界では、木座の一世一代の男を振り絞った告白の真っ最中だった
「…木座の癖に生意気な」
自分で励ましておきながら、健は沸き起こる嫉妬で一杯だった
熱弁を奮うキザに、忌田は寂しげに微笑んで言った。
「ありがとよ…けどあいつにとっちゃ一番の幸せだろう。子はいつか親から巣だってくもんだからな」
…もう完璧お子様扱いされている健。
「あの…寂しかったら…その、お、オレの胸に…!!」
「でもまだ手のかかるのが一匹残ってるからな」
「え?」
「お前だ、キザ。お前が一人前になるまで手はぬけねえよ」
「忌田さあん(泣)わあああん!」
ガバ
「…おいおい胸貸すのは俺の方か?仕方ねえ奴だな…」
忌田さんの胸で泣きじゃくるキザをみて、たまらず健は天界に乱入した。
「健?」
と二人が反応する暇もあらばこそ
木座を忌田からひっぺがすと
「忌田ぁ(泣)」
とおかんの胸へ飛び込んだ
「健…一体どうしたんだ」
「そうだよクソ帝王。てめえはまゆみさんのトコに行ったんじゃ…」
「まゆみが…まゆみが…ぐっきり…(泣)ひでえよう」
泣きながら語る健。
その説明は支離滅裂だったが、さすがお母さん。忌田は全てを理解した
「確かにそりゃあんまりだ」
「だろ?」
「今までお前がやってきた事を考えたら自業自得だ」
「そーだそーだ」
頷く木座に一撃入れて黙らせると、健は不満そうに黙った
黙る健に静かにに忌田は言った。
「ひでえと思ったろ?」
無言でうなずく健
「辛かったろ?」
コク。
「いつもお前が人にやってることがそれだぞ?」
「…」
「これを辛いと思ったんなら、これからは皆への嫌がらせは慎めよ?」
また黙ってうなずくと、健は立ち上がり二階に向かった。
「健…」
「クソ帝王…かなりへこんだみたいすね」
「今回は堪えたみたいだな。これでちょっとは大人しくなってくれりゃいいが…」
(でも何か嬉しそうだ、忌田さん…よかった)
そして翌日。
二階から下りてきたヤンチャ中年は忌田に言った
「忌田、俺すげえ反省した」
「そうか」
「もう、俺のハレムの奴等にひでえ事しない」
「そうかそうか(まだハレムとか言ってるのが気になるが大分反省したみてえだな)」
「みんなに淋しい思いさせない」
「うんうん」
「だから今からみんなのトコ行って…」
「今までの所業をあやまるのか」
「すげえ親密に抱きまくってくる!!」
「分かってねえっ!!」
まあそれからはお察しのとおりいつも通り。
先生ん所に電話したりユウんとこに迫り来る危機をキザが知らせにいったりしたが…無駄でちた。
いつもより激しく親密にハレムの面々を愛する帝王。
昨日の泣き面はどこへやら、上機嫌で言う。
「やっぱ俺は身固めらんないよな♪みんなのダーリンドサ健だもんな♪」
一同まゆみさんを少し恨んだという。
そして、そんな騒ぎとは無縁のまゆみさんのバー
「なあママ、あのダホまた下半身ヤンチャしとるみたいやで」
「懲りないわね。いつまでも子供なんだから」
「なあ…でもママ。あのダホ、本気で…ママ相手には本気で身ィ固めようしてんで?勿体のぅない?」
「何が?」
「マトモにしとったらカッコええやん。それに一途やし」
「フ…(謎めいた微笑を浮かべ)そうね…」
ばたん
「あら、いらっしゃい…」
「ダホ中年!?」
「(つかつかと歩み寄る)まゆみ…」
「何?腹いせに殴りにでも来た訳?」
「ちょお!そないな事ウチがさせへんからな!…」
「俺は…」
「?」
「諦めねえからな」
「…ダホ中年…」
「フフ…駄々ッ子みたいな台詞ね」
そしてまゆみが差し出したストレートを
ぐい
と空けると無言で金をカウンターに置き、立ち去った
「…なんや…カッコええやん。なあママ?やっぱ…」
「やり直さないわ」
「…地球の平和の為でもかいな?」
「私、献身的な女じゃないもの」
「はあ…これやからオトコとオンナってのは」
ドテ子子はため息をついて入口を見た。
そしてまゆみは…彼女にしか見えないどこかの光景をじっと眺めていたという