忌母さんの家出
天界
賭場から返ってきた健
「おーい忌田ぁ…いねえのか。ん?何だあこれ?」
机の上に書き置き。
ちょっと色々疲れました。しばらく留守にします。探さないで下さい。
「い…みた…?」
大変だ!
仕事と育児に疲れ果てた?!忌母さんの行方やいずこ?!
ユウのヤサ
「ユウたーん!!大変なんだ!忌田が…」
「…知ってるよ」
「ん?」
「二、三日前に手紙が来てな。お前のことくれぐれも宜しく頼むってよ。お前の当面の食費と迷惑料も一緒に送ってきた…」
「どうしよう…ユウたん…」
「本気みてえだな。こりゃ下手に刺激すると逆に一生帰ってこないぜ。待つしかねえよ、しばらくしたらちゃんと戻ってくるだろうから…しかし相当参ってたんだなあ。そりゃそうだろなあ…」
「…俺は嫌だぜ、待つのは性に合わねえ!絶対探し出す!」
「少しは休ませてやれよ…」
「休ませてやるさ、俺の腕ん中で」
「おい、健行くなって!こら!ああ…行っちまいやがった…毎日あれの世話すんだからそりゃ疲れるよ…(泣)」
その頃、忌母さんは意外な場所にいた。
「すまねえ…突然押し掛けてちまって…」
「いや、こっちは助かっているが…しかし何でまた急に?」
母さん、変態代議士さんとこでお仕事してました
「…ちょっとな…。そう、先生明日の予定だが…ダムの視察これは…」
「ん…ああ。(何でカタギじゃないんだろうこの男…)」
仕事してないと死んじゃう、そんな人種なんすね。
「あ!」
「どうした?」
「あいつの夕飯の準備…あ。いや…何でも…(恥)」
「これも一種の職業病か…」
さて帝王がユウのヤサから出ると
「く…クソ帝王〜(泣)」
「木座、てめえずっと忌田つけてたんだろ?あいつの足取り分かるか?」
「それが…昨日尾行してる途中…忌田さんがハンカチ落として…それに気をとられてる間に…」
「つくづく使えねえヘタレだな。まあお前の手は借りねえよ」
「うう…でもどーすんだよう」
「俺の勘を舐めんなよ。それに…」
「シシ…久しぶりだな」
「異星の人!もとい信!」
「えれえ言い草だな、ヘタレ玄人。ともかく、健。アテはついたぜ」
「やっぱセンセとこだったか?」
「ああ。でも今日の午後からの足取りがつかめねえ」
「分かった。これが報酬だ」
「またいつでも呼びな、シシ」
「…変態議員とこに?」
「…キザ、行くぞ」
「え?!ど、議員先生んとこか?」
「違う。…おっさんとこだ」
「ええ?きょ、教会?!」
上野は神保さんとこの教会。
「ご馳走様でした」
「はいお粗末様」
夕食後、流しに集まる子供たち。
「すっごくおいしかったー!」
「おじちゃん、ありがとう」
「…礼は神さんにいいな…ほら歯磨くの忘れちゃいけませんよ」
「はーい!」
炊事場から出てく子供たちを見送る忌田。入れ替わりに神保さんが入ってきた。
「…あの子らの夕食を作ってもらった上に後片付けまで…本当に感謝のきわみじゃよ」
「いや、こっちこそ押し掛けちまって迷惑だったろう…面目ない」
「何を言わっしゃる。しかしよう働きなさるな」
「いつもやってる事だから…」
…何やっぱりオフクロしてました。
「あんたにはいっつも迷惑かけちてるからな。これくらいはやらせてくれ」
「…有りがたい事じゃが…そう…お主には健がいつも世話になっとると思うんじゃが、あれは最近どうしとるかの?」
「…ああ…健は…」
バタム。
「おっさん、俺はこの通り超セクシーおっとこ前♪でよろしくやってるぜ」
「うわああん!!忌田さあん探したんすよ!!」
「健…木座神…どうやってお前らここを?」
「愛の波動♪ひでえぜ忌田!何で黙っていっちまったんだよう!!」
「もうオレたちの事嫌いになっちまったんすか(泣)?」
しばらく忌田は呆然としていたが
「…なわけないだろう」
苦笑しながら言った。
「じゃ何でだよ」
恨みがましく言う健に、溜め息混じりに忌さんは答えた。
「分かった…すまなかったよ…いきなり出てきて…。でもお前らに愛想尽かした訳でも何でもねえんだ。ただ…」
「ただ?」
「もしお前らがいなくなっちまった時には、俺はどうすんのかって不安になってな…」
「忌田さん!オレはあなたの影ですよ?!」
「(ちょっとヤだ)…で、そん時いきなり惚けたりしねえようにさ…少しでも慣らしとこうと思って…」
「忌田さん!んな事ある訳…へぶっ!」
木座神を押し退け健は忌田に抱きついた。
「健…」
「また捨てられたのかと思った」
「そんな訳…」
「…俺はオフクロは捨てねえ!する必要もねえ心配すんじゃねえ!すげえ寂しかったんだぞ!!」
「…ああ…悪かった…よ」
「もう帰ってくるよな?」
「もちろんだ…(涙)」
健は満面の笑みで続けた。
「腹へっちまった♪何か作ってくれよ」
「はいはい」
「健…よいオフクロさんを見付けたの…(泣)」
こうして騒ぎは治まった…が更に健(及び木座神)のガキ化が進んだのは言うまでもない。
お母さんがちょっといないくらいで大騒ぎする彼の名はドサ健。最強の玄人にして、たぶん間違いなく三十代半ばです