忌田氏の恋愛を 邪魔 応援しよう話

天界にて。
「何かええ匂いすんなあ…何や?」
ドテ子が調理場を覗きこむと
「あ、師匠。何か作ってるん?」
「ああ明日のな、健の昼飯の仕込みだ」
「はあ?!あのダホ中年のっ?!」
「む…こんな時間か。ちょっと出てくる」
「あ…行ってもうた。何つー多忙なお人や…」
「全くだよっ!!(泣)くそ帝王になんてビーフジャーキーでももったいないのに」
「どっから湧いてでてん!ヘタレ!!」
「何だ何だ、お♪これ俺が頼んでたビーフシチューか?いやっほーい」
「またウザいのが湧いて出た、あんたっ師匠に迷惑かけすぎやっ!おかげで師匠自分の時間全然ないやんか!」
「そーだ。いつも仕事かてめえの世話かどっちかだよ」
「ん〜俺としても可愛い忌田にはもっと遊んでもらいてえなあ、女でもつくって」
お、女っ?!
「そーゆー事ならオレに任せろ!!忌田さんの好みならバッチリだあ!!」
「さすがストーカーや、で?師匠の好みのタイプって…」
「こいつ(と健を指差す)の反対!!」
「…何で?」
「考えてもみろ!!このクソ帝王は大人気ないヤンチャ中年で下半身に節操なくて存在が迷惑そのものだぜっ?こんな奴が忌田さんの好みのタイプである筈がねえ!!つまりこいつの反対…身持ちが固くて大人の魅力を漂わせた安心感のある身持ちの固い美人こそが忌田さんにはふさわしいんだよ!!」
「あんた…一応ダホの部下やろ?そこまで言ってええんかい?」
「ああ、俺こいつの事まるきり眼中にねえから平気さ」
微妙にへこんだ木座神だったが忌田さんのことを思いすぐ立ち直った。

「よし、こんなくそ帝王に引きずりまわされてちゃ気の毒すぎる!素敵な恋をプレゼントするぜ!」
「うちも賛成やけど…問題は師匠見た目バリバリ極道やからな…(ってか極道なんすが)見た目で怖じ気付かん肝の座った人やないとあかんな」
「うぷぷ恋する忌田か…楽しいなあ♪」
「てめえくれぐれも妙なちょっかいだすなよ!…」
「善は急げやな、さっそく探しにいくで!」
こうしてまたまた本人無視の彼女探しは始まった

忌田さんの彼女となるべき女性を求めた一同だったがそう簡単に見つかるモンでもない
「おらへん…よなやっぱ」
疲労こんばいした皆の前にユウ登場
「…何してんだ?」
「師匠の彼女を探しとんねん」
「何!?なんでお前ら忌田の女の存在知ってるんだ!?」
驚くユウに一同の方が驚いた
「何?忌田さん…女がいるのか」
ユウはしまったという表情になり立ち去ろうとしたが
「ユっウたーん!?」
「違う…俺は何も知らな…」
「とりあえずそこの路地裏でナシつけようぜ」

ユウを路地裏に引きずり込むと、三人はユウを取り囲んだ
「い…いや違う…俺もちらっと話してるの見ただけで、付き合ってるかどうかは…」
「いつ?どこで見てんや?!早よ吐きやユウさん!」
「…忌田に気の毒なことしちまったかな…(泣)」
「俺総帥だしい♪部下のこたあちゃんと知っとかねーとな」
「オレだって!上司のことは!」
「う…しゃーねえ…(泣)いや、こないだジュクの料亭前でよ…忌田が女と喋ってんの見掛けてよ…」
「どんな人や?ってか仕事の話やったん違うか?」
「落ち着いた感じの…美人だったぜ。仕事かな、とは俺も考えたが…何か雰囲気が違ってたな。二人とも何か楽しそうだったぜ」
「忌田の奴スミに置けねーな♪」
「いよぉし!偵察だっ」
「だからやめたれよ!!(泣)」

さっそく料亭。
そんな格好では…とシブる女将を無理に健が口説き落とし潜入成功
「ちなみにいくつくらいだったんだ?」
「三十路…半ばかな。落ち着いた感じの女だった」
「ほら!!オレの読みは正しかったぜ?」
はしゃぐ木座を無視して
「そっか…仲居かなんかかな?」
「年増の美人か。師匠も隅におけんわ」
「まだ女と決まった訳じゃねえだろ?」
「でもユウたんだって女だと思ったンだろ?」
「すいませーん、ここで働いてる三十路半ばくらいの美人さんてどの人ですか?」
「…?そんな者はおりませんが」
「ユウさん?」
「いや!でも和服だったし!そんな振る舞いも雑じゃなかったから…!俺はてっきり」
「…逢い引きに使われてただけだったのか?ここ」
「…すんませーん。じゃあこちらにいかにも筋者のグラサンスーツで細身の人って来はります?」
「いえ…お客様にそのような方は…あれ?でも、もしかしてあの…」
「ん?ねーちゃん何か思い当たることあんの?」
「お客さま…ええ、確かにいつも警察の方の接待にお使い下さる方が…確かにお顔は少し…なんですが銀行の支店長かなにかをなさっている方とばかり思っておりました。物腰も丁寧ですし」
「…ホンマやな。確かに礼儀はよう出来てはるよなどっかの誰かとは違って」
「でその人は女性を連れて来たりは…」
「はいはい。お連れでしたよ…ただ…何だかお妾さんのような雰囲気の方で…」
妾!?
「わっ…妾?!俺の俺の忌田さんに限ってそんなことは」 「ヒュー♪やるなあ忌田♪可愛いだけじゃなかったか。今度紹介させよう」
「ちょい。まだ決まった訳違う。ちなみに接待する日て大体決まってますん?」
「あ…いえ…そういう立ち入った事にはお答えでき…」
「そこをさ♪頼むよ姉さん…あんたなかなか魅力的だぜ?サシで話してえな…」
そう言って健様は彼女を無理やり連れて奥の部屋に消えていった。

「あのダホ…」
「やっぱりその手使うか(泣)」

しばらーくして。
「分かったぞ!明後日来るって!」
「とりあえず服着てから言え」

当日。料亭前に張り込む怪しい奴ら
「何で俺まで」
「だって顔知っとるのユウさんだけやもん」
「おい来た…例の警察署長だ」
「忌田もいるが…ネーチャンがいねえな」
「違う…影になってるが…あの女だ!」
「和服や…割と普通の顔やな」
「いやうなじが綺麗だぜ」
「い…忌田さんのうなじの方が綺麗だ(泣)くっそ〜忌田さん、あんな青びょうたんに微笑まなくていいから!むしろオレに!!」
「署長が何かえらい女気にしとるな…」
「ふん?でもおねーさんは何だか作り笑いっぽいぜ?しかししっとりしたいい女♪食いてえな」
「ばか野郎!!」
「あ、中入っていった!追うで!!」

in天井裏。ちなみに四人もいるとぎゅうぎゅうです
「狭…」
「何で俺まで…」
「よし読唇術いくぜ…何だか献金がどうとか言う話してる…で忌田がアタッシュケースの札束見せて…署長がそれはそれとしてそろそろ…とか言ってネーチャンをエロそうな目で見てるぜ」
「芸者さんか何かやろか」
「いやあ…お水っぽかねえぜ…人妻でもなさげだが…ネーチャン、忌田を見て困ったように笑ってるぜ」
「な?確かに忌田と訳ありげだろ?」
「分かった!!師匠のエエ人をあの署長が狙っとんねんや!!」
「女を近代化の犠牲に?」
「口慎めユウジ!忌田さんに限って…そんな…そんな…」
「…何とも言えんわ」
「ん…署長が立ち上がったぞ?ねーちゃんに近付く…ねーちゃんは忌田の後ろに隠れたぞ!どーなんだっ?♪」
「あいつの事は信用してたかったが仕方ねえ、男として俺はあの姐さんを助ける」
「どないしてやユウさん?」
「これだ!秘儀雀牌投げ!」

どぶし、

哲にでも習ったのか牌は正確に署長の後頭部を直撃した。
驚く忌田と姐さんの前にユウは男前に登場した
「大丈夫か姐さん…」
「ユウジ…てめ一体どっから?てか何でここに」 「忌田ァ!!見損なったぞてめえ!!女を食い物にしやがるとは!!」
「何だかユウさんがやたら男前や」
「面白いからしばらく見てよっと」
「食いもの?何のことだ?!」
「とぼけんな!そっちの姐さんはお前のいい人なんだろ!?その人差し出して、警察に取り入るつもりだったんじゃねえのか?!」
「……は?!ユウジ…お前何てことを…!す、すまねえ先生…」
赤くなってお姐さんに謝りつつ忌田は続けた。
「この人はな、俺の…料理の先生だ!」
「はい??!!」
屋根裏の連中も思わず叫んだ。
「…どういうことだ?忌田…」
「見られたからには…仕方あるまい。こちらは俺の料理の手ほどきをして下すった神谷先生だ」
頭を下げる先生にお辞儀を返しつつユウは答える。
「しかし、な、なんで署長の接待にお前の先生が?」
「…ここは先生のご親戚にあたる方の店なんだよ。先日ここで偶然お会いして…分かったんだが」
「お、俺が見たのはそん時の…」
「俺はそん時そこでノビてる、あれの接待中だったんだが。運悪く先生の姿を見られちまって…」
「青びょうたんが気に入っちまったのか、先生を」
「…先生も親戚の店だ。座敷に顔出して欲しいと言われりゃ否とはいえねえ…だから」
お姉さんは顔を上げ言った。
「何度となく忌田さんにはかばって頂きました。苦しいお立場ですのに…本当感謝しております」
「いや先生を巻きこんじまったのは俺に非がある、感謝なんてそんな…」
「ひゅー♪忌田おっとこまえ♪」
屋根裏から何かワラワラ降ってきた。

「なっ、健っっ?!」
「すまん…早とちりだったぜ忌田…」
「ユウたん珍しく読み外したなあ♪」

結局、神谷先生は穏やかに一同に微笑んでお帰りになり、署長には
「隕石が降って来たんです」
と大学の研究室を動員して大がかりな嘘をついてもらい何とか誤魔化した。で
「でも忌田ぁ?それはそれとしてお前あの神谷先生の事好きだろ」
健の冷やかしの言葉に、忌田は軽く微笑んで答えた
「まあ…俺が堅気だったら、な」


忌田氏をひやかそう話…彼には和服のしっとりした女性が似合います。