木座神改造計画…目指せ!!脱ヘタレ
木座は決心した。
こんな、帝王や最愛の忌田さんや、しまいにゃドテ子にまでヘタレ扱いされる自分とサヨナラしようと。
外見中身共に鍛えて超木座神(スーパーキザガミ)を目指そうと。
思い立ったら即行動、まず木座は美観からいじくる事にした
「自慢じゃないがオレは顔には自信がある!」
自慢ですそれ。
「最近ぐっきりでADやってからこっち…カジュアルすぎんのがいけねーんだ」
木座神は実に単純にそう考えオーダーメイドでスーツを新調。
「お客様大変お似合いです…」
健の影響で思わずわーい、とか言いかけてキザは蒼くなった。
「あぶねえ、あぶねえ…」
ルックスには自信があったものの、小心者な彼はまず女性の反応を確かめることにした。
彼が向かったのは趣味のいい、ジャズの流れるバー。
「むっちゃガイドブックでチェックしまくって選んだんだ…行くぞ!!」
緊張しながらキザはドアを開けた。
実は物凄く緊張していたが、表面冷静さを装い
「マスター、ブラッディマリーを頼む」
とかカッコよさげに頼んでみる
「畏まりました」
綺麗なお姉さんでもいないかなと密かに店内を見回すと、いたよいたいた、すげえ美人!!…だが男と喋っている。ツレかと思ったが向うの野郎もナンパらしい。しかもどっかで見た事あるような…
(あ、あいつは…むっつりの代議士先生。うわあ、どーしよ…向こうオレよかすげえ金もってるし…。それに見た感じ何か口説き慣れしてるよ…)
だってスケベだから。
キザがためらってると、先生の方が気付いてしまったようだ。
さすがに気まずそうだったが、何用か近付いてきた。
「お前は健のトコの木座神…だったな」
「はっ…はい…」
思わず敬語になる木座
「俺の方見てたみたいたが…何か用か?」
「いや…その…」
先生がナンパしようとしていたお姉ちゃんをオレもナンパしたいんです…とは言えず口籠もる木座
「…まさかお前もあの女狙ってたのか?」
「ええ!?何で分かるんスか?」
「顔に書いてあるよ。だからお前ヘタレなんだよ。カマかけたに決まってるだろ」
「…ひでえ(泣)」
だが先生は物分かりが何故かよかった
「譲ってやろうか」
「…マジで?」
「頑張ってきな」
先生はキザの肩を叩いて去っていった。
つー訳で頑張る木座。早速お姉さんに近づくと
「あら?先生はどうなすったの?」
「ああ先生なら急用が出来たとかで貴女によろしくって…」
お姉さんは木座を見回した
「先生の秘書さん?」
どうやら高そうなスーツで誤解されたらしい
「ああ…」
実はヘタレ玄人です、とも言いづらいんでそういう事にする
「いい男ね、一緒に飲まない?」
木座は必死で平静さを装ったが内心では狂喜した
(やっぱオレってばいい男なんだよな?!誰がみてもそうだよね?!)
内心大ハシャギだったが、平静を装いキザはお姉さんとの会話に集中する。
「…この店にはよく来るの?」
「(は、初めてっすよ)た…たまに…ね。いい雰囲気のお店ですね」
「私も好きなの。どうにもやりきれない時…よくここに来るのよ」
「それは…貴女みたいな綺麗な方が悩み事ですか?良ければ話して貰えませんか?(爽やかかつ親身な笑顔で)」
「優しいのね、フフ」
(お、オレちゃんと会話してるよー?!すごいよ、オレぇ!(泣)
お姉さんは表情を曇らせた
「私ね…フラれたばかりなの」
「フラれた?貴女みたいな綺麗な人が?」
「君といると疲れる…って言われてそれっきり。ねえ、私ってそんなに疲れる女かしら?」
「(どうしよう無茶積極的だ…あ、もう大分飲んでるのか。なら平気か)まさか(包容力のある大人の笑顔で)貴女みたいな素敵な女性をフッたその男が馬鹿なんですよ」
ちなみに飲ませたのは先生ですから
「私をフッたのは女なんだけど?」
(何い!?)
勿論、先生が譲ってくれたのは彼女が訳アリだったからに決まってます
(れ、れずびあんの方!)
キザは泣きたくなったが我慢した。
結局彼はおねーさんの愚痴にとことん付き合うはめに。
「ありがとう、貴方本当にいい人ね、貴方が女の子なら良かったのに。じゃあまたね」
「ええ…ハハハ…」
疲れ果ててキザは店を出た。
「ああ…まさかズーレーだったなんて(泣)けど…女にしか興味ない人にいい男って言わせるオレってすごいよね?ね?!」
そう考えなきゃやりきれなかった。
「とにかく!オレがいい男って事は立証された!後は中身…!」
木座が男の中身について呟きながら歩いていると
「協力してやろうか」
「へ?」
振り向くと鬼畜プリンスがいた
「いや…結構です」
関わるとロクな目に合わないのは身に染みて知っていた木座だが
「男の中身…そりゃ度胸だ」
という発言についつい耳を傾けてしまった
「考えてもみろ。健健といい黒シャツといい、すげェ度胸してるだろ?」
「確かに」
「小心者だからヘタレ扱いされるのさ」
「やっぱそーなのかな…」
確かに思い当たる節はたくさんある
「だろ?だから肝さえ鍛えりゃいいのさ」
プリンスは勧誘に成功したキャッチセールス員のような笑顔で木座を勧誘した
「オレが鍛えてやるさ、無論タダでな」
緑の貴公子の笑顔がドス黒くなる。ヤバいと感じた木座は必死で断り、しまいには泣きながら丁重にお断りしたが、聞き入れられる筈もなくプリンスの船にまで引きずられていった。
「この前は途中までしかやってなかったしな…今日は完璧に開発…」
「主旨違いますぅっ!!(泣)」
「何?生粋のエムには大概の事には耐えられるぞ?」
「なりたくねー(泣)」
泣きながら許しを乞う木座に同情した…訳ではなさそうだが
「まあ、お前は近藤みたく調教しがいはなさそうだからこれは勘弁してやろう」
「ありがとうございます(嬉泣)」
「その代わり別の度胸をつけてやる。名付けて『天運がありゃ弾幕ン中入っても平気だ』訓練だ」
嫌という間も与えられず木座は壁ぎわに縛り付けられた
「あの…何を…」
小龍はリボルバーに弾を手際良く装填すると
「こうだ」
と木座の頭のすぐ上に弾をブチ込んだ
「え…えええ!?」
「なあに、オレは射撃は巧いんだ。オレの弾は当たらねえよ」
そーゆー問題じゃない!!と絶叫したくても声が出ない木座に小龍は止めの一言を言った
「だから射撃の下手な部下どもも呼んでやろう。なあに、寿命が残ってりゃ当りゃしねえよ。オレは戦車隊に追い詰められても生きて…」
木座はその時、一生ヘタレでいいと思ったが遅かった
何か手付きのおぼつかない新入りの部下たちの一斉射撃を受け木座神は脱魂状態だった。
だが新入りくんたちが頑張ったのか、木座神のヘタレ運が発動したのか奇跡的に弾は当たらなかった。
「もうオレ帰るう!!(泣)」
「まだ始まったばかりだ。お次は海ん中で鎖抜けをやってもらおうか。たっのしいぞーハハハ(すげえ爽やか極まりなく)」
「…忌田さん最期に貴方の笑顔が見たかった…(泣)」
「お頭…いじめはこの位にしときやしょうぜ?」
「ん?オレがいじめなんてチンケなモンするかよ(しごく大真面目に)」
「じゃこれは何だってんだよ(泣)」
「拷問だ(さらっと爽やかに)おい、鎖抜けの準備するぞ」
小龍が去った隙を見計らい、髭の副頭は縄を解いて逃がしてくれた
「もうお頭に捕まンじゃねえぜ」
「ありがとう(嬉)本当にありがとう!!アナタこそ男の中の男だよ(泣)」
小龍の手から何とか逃げ延びた木座神は、ヘトヘトになって上野公園のベンチに腰かけていた。
「はあ…死ぬかと思った(泣)度胸つく前にあれじゃ殺されるよ…」
そこに意外な人物がとおりかかった。
「木座神?」
「お前は…ユウジ…」
別に会って嬉しい人物ではなかったのだが、小龍に会ったすぐ後なので彼が天使に見えた木座はとりあえず事の次第を打ち明けた
「ああ…ヘタレ脱出ね…」
無理だろ、という表情のユウ
「てめえだってヘタレの癖に」
怒るかと思いきやユウは
「確かにな…」
と何だか悲しそうな顔で黙ってしまったので、木座は何だか罪悪感を感じた
「おいそんなヘコむなよ…別にオレは…」
「確に玄人としての生き方に徹し切れない上…健にゃ釜掘られるわ、哲にまで萌えられるわ…考えりゃ情けねえ限りだな、俺あ…」
「(どうしよ、まじ落ち込んでるみてえだ…)なあ帝王の奴が節操ねえのは今に始まったことじゃねーしよ…タチ悪ぃがあいつあ玄人としちゃ最強だよ。坊や哲もな…。あいつらと比べりゃ皆ヘタレ玄人だろがよ」
「…」
ユウは又また俯いた
「俺…花巻帰ろうかな…どうせ役者にゃなれねえし…玄人としてもハンチクだしな…」
とても落ち込んでいるユウに木座は強い口調で言った
「てめえ…玄人やってて今更正道に立ち返れるとでも思ったのかよ!?」
「…え?」
「帝王はンな甘くねえぞ。花巻まで追っ掛けてくるに決まってる!!」
「う…確かに…」
「そしたらお前、『あそこの息子は東京から“男”こさえて戻ってきた』なんて言われて花巻にすらいれなくなるさ!!」
黙り込むユウに木座は熱っぽく語った
「逃げるなよ、戦え!!今自分のおかれた状況で精一杯生きるんだ!!」
「木座…」
ユウは笑顔で言った
「今まで…お前を只のヘタレだと思ったけど…違ったんだな」
「ユウジ…」
「お前はすげえ奴だよ…まさに」
「に?」
「超ヘタレだ」
爽やかに微笑むユウに、今更何も言えない複雑な気持ちの木座だった
爽やかな笑顔で立ち去ったユウと別れ、木座神は上野をさまよっていた。
「超ヘタレって…何なんだよ(泣)とどのつまりヘタレじゃんかよ!うわあん(泣)」
とそこへ。
「あら木座ちゃん」
「おめかししてるのね、フフ…」
「どわあ!オカマどもっ…」
「深刻な顔しちゃって…ダーリンの複製人間と喧嘩かしら」
「ダーリンじゃねえ!オレは忌田さん一筋だっ…くそ、こいつらまでコケにしやがる(泣)」
泣きたくなった木座だが一応タミミミにも聞いてみた
「オレって…どこがヘタレだと思う?」
「全部ですわ」
キッツイ返答
「…じゃあ一番ヘタレなのは?」
「そうですわね、やっぱり博打が弱いトコかしら。健さまや坊やに負けてるならともかく、ダンチにコケにされてるようじゃねえ…」
キツイが真実だった
「くそ…強くなってやる!!」
木座は走った
「やい帝王!!」
賭場をブラブラしてた健に木座神は声をかけた。
「ん?なんだまたストーキングか?スーツ着て…そんなに抱かれてえのー?」
「違う!!あほ!!くう…不本意だがこいつは最強だもんな…オレをそこらの玄人に負けねえくらい、強くしてくれ!!頼む!」
「無理。」
「もうちょっとトーク伸ばせよ?!」
木座のツッコミに健は気が乗らなさそうに返した
「だってお前ヘタレだもん。強くなんて一生ムリムリ、そもそも玄人名乗ってる事自体おかしいんだ」
萌えない相手にはむちゃくちゃ冷たい帝王
「くう…こうなったら仕方ない(土下座して)頼む!!どんな事でもするから!!」
「…しゃーねーなー…じゃ、テストだ」
「はい!!?」
「そこにいる玄人と体賭ける勝負して、勝ったら俺に献上しろ。出来たら教えてやる」
健が示した先には…はい、トビちゃんがいました
「ちなみにサマなしな。使ったら即死刑。そら行け」
「ええ!?」
とりあえず木座神はトビに声をかけた。
「に…兄さん打ってもらえないか?」
ヘタレから脱出したい一心で言ってはみたが
「ん?いいぜ」
サマなしで勝てる自信は全くなかった。
「何だ…緊張してんのかい?」
サマなしで勝てと健は言った。
「…無理だ、そんなの」
ふと横をみれば健が見張っている。
(…くそう…一体どうすりゃ(泣)
木座は置かれた状況を整理してみた。
帝王にバレずにサマを使う…無理。
サマなしで勝つ…無理
(唯一の救いは、こいつただのギリ師だからヒラに持ち込んだら何とかなるかも)
だが、ギリ師がギリ技を使わない訳がない…悩んだ末に木座はブラフぶっこいてみる事にした
「兄さん(大物っぽく悠然と)オレにサマは通用しないぜ?何故なら…オレは上野のドサ健に直に手ほどき受けてんだ、サマ使えば即、兄さん…死ぬぜ?」
「な…」
(いっちまったよ?!言っちまったよオレー!!全部ブラフなわけじゃねーけどさ。うわあもう引けねえ(泣)
けどドサ健の名前はトビをかなりビビらせたようだった。
「な…に?ドサ健の?ぶ、ブラフこいてんじゃねーよ。どうせ顔も知らねえんだろうが」
「(嫌ってくらい知ってるよ!)ふん…信用してねえな。いいだろう証拠見せてやる!」
木座はこないだ暇をもてあましていた健に無理強いされた“八秒積み込み”を実践した
(忌田さんが…忌田さんが着替えをしてるんだ…)
とりあえず心に呪文を念じ
「行くぜ!!」
かちゃがちゃ
…微妙に八秒以上かかった気がするが、相手の目は段々恐怖を帯びてきた。最初のブラフが効いてるらしい
「(よかった、こいつも割とヘタレだよ)どうだ?オレの手捌きを?勿論積込みだけじゃなくガンも確かだぜ?(うちの帝王の師匠は)だからてめえのサマなんざ(多分分かんねえよ)」
いろいろ本音が言葉の端々に滲んだが、幸いビビった相手には伝わらなかったらしい
(レベルの低い争いだなあ)
横で見ていた健は思った。
ホントは木座なんかに任せず自分で勝のが一番早いのだが、トビちゃんみたいな弱い玄人は、相手が弱いと分からないと勝負してくれないのだ。だから木座に任せた訳だが
(だがこりゃひょっとするとイケるかもな)
木座神のヘタレ脱出への意気込みとブラフに押されて、トビは冷や汗を流しながら牌を積んだ。
「(びびってる…?!もしかして)兄さん早く引きな」
ちょっと追討ちとかかけてみるとトビの手元がブルブル震えてるのが分かった。
(いける…かも…?忌田さん、オレ漢になります!そして貴方を迎えに行きます!!…工事現場まで)
何巡かして
「ロン!とんだな、兄さん」
木座神は叫んだ。
スーツの上着を脱ぎ真剣な顔の木座神は見た目だけなら男前だった。
(嘘みてえ。マジ勝ちやがった。一ミリも期待してなかったのに)
だが勝ったんならそれでいいし、あのトビちゃんとかいう黒系美形が自分のモノになると思うと健はワクワクだった
(なんだかエッチな目ェしてるし、ヘタレだけど可愛いよな。あの赤いシャツ脱がせて…うふふ、もうこの場で食ってやりてえ)
だが健の期待と裏腹に、事態は妙な方向に向ってしまった
トビに勝ってしまった木座神。
(まじかよ…勝った!勝ったぞオレ!)
「くう…タネ切れだ…殴れよ」
しおらしくなるトビちゃんが、木座神は何だかすごく哀れになった。
(殴る代わりに…献上すりゃいいんだよな。帝王の奴に…でもそうすりゃこいつは奴にいいように…)
しばらく黙っていた後、木座神は言った。
「支払いは次でいい。それよかお前…ものすげえタチ悪い獣に狙われてんぞ!!」
「…え?!」
「ジュクの葵ってバーに行け!あそこなら奴も手え出せねえ!」
「え…?けど…」
「いいから行け!!帝王の思い通りにゃさせねえ!それがヘタレ脱出の第一歩だ!!」
その台詞を吐いた木座神は崇高な程男らしかった
「ああ…すまねえ…」
立ち去るトビと入れ違うようにやって来る健
「どういうつもりだ?」
相変わらずの玄人の殺気にも、今日の木座は怯まなかった
「あんたが聞いた通りだ…もうあんたの言いなりにゃならねえ…殴りたきゃ殴れよ」
だが意外な事に健は笑った
「はっはっは、男らしいじゃねえか」
そして至極あっさり引き下がった…ように見えたが勿論ンな訳なかった
(ヘタレがナマ言ってやがる…)
健は決めた。
賭場の人間関係をもっぺん叩き込んでやろうと
「おい木座神」
「な、何だ帝王…」
「てめえ俺に教えを乞いてえんだな」
「…あ、ああ…」
「いいぜ来な」
賭場を後にすると健は目だって裏ぶれた街の一角にまで木座神をつれてきた。
狭い路地に入ると一件の雀荘があった。
「ここで鍛えてやんよ」
「(ゴク…)こんな所あるのも知らなかったぜ?」
「だろうなあ。だってよ、ここは…」
健は扉を開けた。
「負けたら即売り飛ばされちまうからな」
「…え?」
普段の彼ならビビるトコだったが今日の彼はヘタレ脱出の為に燃えていた為、平気だった
「やってやろうじゃねーか」
「ちなみに一局精算な」
「へへ…どうせ文なしで打って来いとか言うんだろ?…今のオレはツキが上がってる…どんと来いだ」
木座の台詞に健は笑い、自分のポケットから金を出した
「ほら、受け取れよ。俺の全財産だ」
「…え?」
「行くぜ」
オレが文無しじゃなくて何で帝王が文無しなんだ?そんな疑問に健は答えず中に入る
「ああ…ドサ健か」
あからさまに十人は人を殺していそうなマスターが声をかける
「うちのルールは知ってるな?例えあんたでも、文無しになりゃ即…」
「ああ、腹裂いて内臓売られるか、直腸が擦り切れるまでクソどもに釜掘られるか、だろ?」
「お…おい…」
状況は把握できないがどうしようもなくヤバい場
「そこ…空いてるぜ」
マスターが示した先には、人の道を五回は踏み外していそうなお兄さんが二人、卓についていた
「おお、丁度良かったな、木座?おーい兄さんたち?俺とこいつ入るぜ」
「ええ!?」
驚愕する木座
「ば…馬鹿言うなよ。オレはともかくてめえ文無しだろが!?」
「ああ」
「しかも負けたら…」
「さっき聞いたろ?」
「更に…あんた、序々に力出てくるタイプじゃねーか!!」
「まあ大型爆撃機だからな」
「…負けたらどーすんだよ!!?」
ほとんど悲鳴のように叫ぶ木座に健は答えた
「だからお前にとっちゃチャンスだろ?」
「は…?」
「俺を一局負かせばそれで済む。俺は二度と忌田に手ェ出せなくなる。しかもお前には金があるんだ、しばらく負けられるぜ?」
我知らず冷や汗が流れてくる木座に健は笑って言った
「俺を再起不能にする
んだ、これが俺の博打の授業さ。出来りゃ誰もお前をヘタレなんて言わねえよ」
声も出せなくなった木座に健はすさまじい殺気を滲ませながら言い放った
「これこそが博打だろ?」
(どうしよう…)
木座神は死にそうなくらいびびりまくった。
(お別れ…ですね忌田さん…(泣)結局オレ一人空回りの人生…恋物語でした)
「おい早く引けよ木座神」
いつもと何ら変わらず余裕しゃくしゃくの健。
「(けど…こいつのがヤバいんだよな、いくらドサ健とは言え万一一回負けりゃあ…もう…。そうなりゃオレが殺したようなもんだよ…どうすりゃ…)
蒼くなって呟く木座神を健はニヤニヤしながら見つめていた。
また木座にとって恐ろしい事にこいつらもかなり強い玄人だった
が
(うわ…すげえ美味しい配牌)
だがツキってる木座にきているのはびっくりするほどいい牌。
しかも他の二人の捨て牌をみる限りそいつらもなかなかいい牌が来ているようだ…つまり、屑牌は帝王一人に集まっている
(おいおい…マジ死ぬぞこいつ…)
別に帝王に恨みこそあれ恩なんてこれっぽっちもないが、自分のせいで死ぬのは気分が悪い…
(ゆ…譲ってやろうかな…)
弱気になる木座。だが健はそんな木座を眺めてニヤリと笑うと、木座のド本命を切って来た
「ひ…ひいい!!オレ…」
「どうした?」
命がかかった牌にも関わらず、健には一ミリの恐怖もないように見えた…
(こ…こいつ恐怖心ってもんがねえのか?!)
「おいどうなんだ?通るのか?通らねえのか?!」
(こいつが死んだら…忌田さん悲しむ、よな…。てか殉死とかあの人なら考え…!!そっ、そんなのダメだっ。何でこいつはこんな…危険な橋ばっか渡りたがんだよ!!)
「くそ…と…通しだ…通るよ」
木座はそう言ってロン牌を見逃した。今の出で上がってしまえば、自分はこいつを破滅させる事が出来る…出来たのだが
「オレにゃ無理だよ…」
力なく呟く木座に
「だからてめえはヘタレなんだよ。ツモ、国士無双だ」
と言った。
そう、勝負の場に勝負以外を持ち込む奴は負けるのだ。
健が死のうが、忌田が悲しもうが勝つ事だけを考える…それが強い玄人。だから
(だからオレはヘタレなんだ。でも…ンな畜生になれねえよ)
それでツキを逃した木座は、ポケットに溢れていた札束はほとんどすっからかんになったが、何とか屠殺は免れた。
「結局…とことんヘタレな、お前。折角わざわざフリこんでやったのに、俺殺す度胸もねえんだしよ」
「…。いいさ…人間辞めてまで玄人極めようたあ思わねえよ!」
「俺が人間じゃねえみたいな言い草だな」
「そうじゃねーかよ」
「ま、玄人なんて人間の屑だからな。人間止める覚悟くらいねえと強くなんてなれるかよ。だからてめえはハンチクのヘタレなんだ」
「…だな…だがもう…それでいいかもな」
「ん?何でだ」
「あんたみたくなりたくねえからだよ」
「ハハッ」
健は明るく笑った。
「とことんショボい生き方してえみたいだな」
「…ああ。どうせなら…」
「ん?」
「ヘタレ極めてやる!!てめえの逆いってやらあ!」
「ふーん?それで?」
「オレは…あくまで乙女の味方だっ!!世の乙女のために全力で尽す!!」
「木座神…」
健は木座神の肩に手を置いた。
「…な?」
「いい乙女みつけたら献上しろよ」
「するかボケ帝王っ!!」
翌日。
天界の看板の横に
『大日本乙女を保護する会本部』
という小さな手書きの看板が掲げられたという
トビちゃんがうちらのリレー小説初出です。いやあ、管理人ども、どうしても彼に萌えられなかったんですよ。でも、これで味をしめてトビちゃんで同人話書きました。トビちゃんはやっぱ可愛いです。だから帝王も食指を動かしたんでしょう
ちなみに、健様の鬼畜麻雀講座は割りとお気に入りですが…キザがあれでアガったらどうする気だったんでしょうね?まあトンズラも凄腕の玄人の特技でしょうが