ドテ子の失恋

天界にて、いつものように忌田氏が仕事をし、木座がとりあえず存在し、健がその邪魔をしている時だった

ばたん!!

「お、ドテ子♪」
いきなり、ドテ子が駆け込んできた
「なあ、師匠。うち聞きたい事あるんやけど」
「なに何?俺はお前の事すげえ愛してっぜ?なんなら今から証拠を(ズボンのチャックを下ろしかける)ぐはうっ!!」
「あんたやかましわっ!うちは師匠に聞いとんねん!」
「くうっ…今本気で蹴り潰すつもりだったろ。そしたら忌田が悲しむんだぜ…」
「安心しろ。そうなっても俺はお前を愛してるから遠慮なく蹴り潰されろ」
「やて」
「いや嫌!!ユウたんやセンセも泣くし」
「やったら黙っとき!!」
「で何だ?話って」
「なあ…うちって魅力ない?」
「…え?」
「あるある絶ッ対ェある!!乳とか腰とかケツとかそそりまくる!!…ぐふっ」
「…どうしたんだ?」
「あのな、うちダーリンの事大好きやのにダーリンてばうちの事全然構てくれへんねん。ユウさんばっかや」
「心配するな、お前は可愛いよ」
「師匠…」
「そーそーだから俺としっぽり」
「黙れ健」
「そやな、うち可愛いよな、だって絶世の美女やんな!!」
「おい関西娘、忌田さんはそこまで…」
「うちがんばる!!今日こそダーリンをゲットする…そうと決まれば善は急げや」
彼女は一人合点すると、去ってしまった

「…ああ…行っちまった」
「よし、追い掛けよう♪」

で告白したドテ子だが
「ごめん(あっさり)」
「え…あの…うち、別に二股でもかまへんよ」
「オレが好きなのはユウさんだから(きっぱり)」
「…どうしても…あかんの?」
「ああ」
「…」

覗き見をしていた三人
「…ドテ子が泣いた!?」
「あ…走り去った」
「とりあえず哲ンとこ行くぞ」

「お前ら…」
哲は、ノガミの面々を見て、ちょっと驚いた
「哲、ドテ子振ったな」
「ああ」
「なあ哲…こんな事言うのもなんだが、もう少し言い方がなかったのか?」
「ねえよ。だってオレが好きなのはユウさんなんだ。変な期待させる方が残酷じゃねえか」
「だな♪じゃ俺がドテ子口説いてもいいんだな」
「そりゃあいつの勝手だ」
「てかクソ帝王今までだって口説いてたじゃねえか」
「よし、傷ついたドテ子を俺の腕ン中で慰めてやろ♪ひゃほーい」

で、いつものようにドテ子を口説きにいった帝王と、慰めにいった二人。
「ドテ子ー♪そんな落ち込むなよ。俺が慰めてやるからさ…ごふう」
「ドテ子、その…人生そういう事もあるからあんまり気を落とさずに…」
「…したる」
「え!?」
「うち…うちアンチやおい派になったる!!」
「えー!?」
だが、行動力に溢れまくった彼女は、一人で爆走してしまった

そして暫くして、代議士先生が天界にやって来た
「おいお前等のトコのあの関西娘、ありゃ何だ!?」
「ドテ子がなんかしたのか?」
「こないだ街頭演説してたらあの娘が来て、俺と小龍の事をブチまけようとしてな。慌てて摘み出したが…なんかやおい撲滅とか叫んでてよ」
「…でドテ子は」
「小龍が沈めるとか騒いでたから鎮めるの大変だったんだぜ。今は落ち着かせて、うちにおいてある。引き取りに来いよ」
「すいませんご迷惑おかけして…ちょっと色々ありまして」
「?」
忌田は哲との一件を手短に話した

「…阿佐田がか」
「ああ。ンでアンチやおいがどうとか言い出して」
「そりゃ…厄介だな」
近藤は、その場にいた哲に話し掛けた
「阿佐田、あの娘の事だが…」
「何度もいうけど、オレはユウさん一筋だから」
「二股でもいいって言ったんだろう。据え膳食わぬは男の恥だ。付き合え」

「センセって男としてひでーよな」
「あの乙女な関西娘は割といい感じだが…二股はダメだ!!それは乙女への冒涜だ」
「だが好きでもなんでもない人間と同情で付き合えとは言えないだろう」
「ユウたんとまとめて可愛いがってやりゃいーじゃんな」
「そういう事言わないの」
「俺ならそーすっぜ。そしたら二人ともハッピーだしよ」

「オレは付合わねえよ」
「あの娘が気に食わねえのか?可愛いじゃねえか(乳もデカいし)」
「ドテ子は好きだよ」

「(後ろで)おおー」

「生きるのに一生懸命だし、すげえ前向きだし。好きだよ…友達としてな」
「だったらいいじゃねえか」
「オレが好きなのはユウさんなんだ」
「…」
「ドテ子は表世界で生きる人間だから、オレなんかと付き合わない方がいい。だけどユウさんは…オレと同じ世界にいる。だからオレはユウさんと一緒にいたい」

「ありゃ無理だな。さっさと関西娘を諦めさせた方がいい。健、お前が口説いちゃどうだ」
「おう」
「おうじゃない!!未来ある青少年を堕落させんな」
「口説くだけじゃん」
「それが悪いわ!!…仕方ない(木座を振返って)今から俺がする事は男としてやるべき事じゃねえ…だが見下げてくれるなよ」
「忌田さん」
「(聞いてない)俺ドテ子慰めるー♪下半身で…こぶばっ!!」
「…玉潰か…」
「すまん健、だがドテ子の為だ…木座ドテ子を慰めてきてくれ」
「いえっさー!!」

涙をぼろぼろこぼすドテ子に歩み寄る木座
「(なんだか今日のこいつ乙女だ)え…とドテ子…その、元気出せよ。オレだっていっつも忌田さんにつれなくされても…」
泣いた顔を上げるドテ子

「うわ可愛い…食いてえ…ぐは!!」
「いいから大人しくしなさい」

「ヘタレ…」
ドテ子は健気に微笑んで言った
「あのな…」
「なんだよ…」
ちょっとどきどきしながら近寄る木座に

「やおい撲滅やゆーたろがあっ!!」
ドテ子は渾身の蹴を叩き込みKOした

「やっぱりあいつじゃ無理だな」
近藤は冷たく言った

「忌田さぁん…乙女だと…失恋した乙女だと思ったのに…」
泣きじゃくる木座。
そんなこんなしてる間に
「お前らみんなで何してんだ」
「あ、ユ…」
「こっちこい!!」
一同に路地裏に引きずり込まれるユウ

「何なんだ一体!?」
「おい男前…何にも言わずに阿佐田と別れろ」
「…は!?何言ってんだ変態代議士!?大体俺は別に哲とは何も…」
「うるさい、お前さえ別れりゃ何もかもうまくおさまるんだ」
「ちょ…」
混乱するユウに、忌田が手短に事態を説明した

「…ドテ子が!?」
「俺は阿佐田にだけはキレイなまんまでいて欲しいんだよ。だからお前よりあの小娘のがマシだ!!」
シャウトするセンセの目はマジで恐かった

「…どうしよう。俺、じゃあ哲と別れ…」
「落着けユウジ!!お前がどうこうしようが哲にゃ関係ねえ。それ位で哲がドテ子とどうこうなる位ならお前は泥沼にハマっちゃいない筈だ!!」
「…確かに。俺がもし哲をふったとしても話がこじれるだけだろうな」
「なんだよみんなして俺をハブにしてさ…」
「お前が入ると益々泥沼になンだよ」

みんなで大騒ぎした挙句…
「失恋には新しい恋で、だ」
「誰だ?」
「ドテ子に惚れてるダンチを呼んでくる」

そしてユウさん達一同の前に連れてこられたダンチ
「ぶー…こんな美味くなさそうなリーゼント嬉しくねえ」
「な、何なんすかユウさん?なんでノガミの一同と…」
「(肩を掴んで目を見据え)いいから聞け…お前…ドテ子の事愛してんだろ!?」
「は…(赤面)何言ってンすかユウさん、オレがそんな…」
「言葉濁してんじゃねえ!!愛してんなら認めろ!!」
「いや…そんな…そりゃちょっとは…」
「なら行け!!愛する女の為に!!」

ともかくも錯乱するダンチに、ドテ子が哲にフラれたという話をして
「だからお前…惚れてんなら慰めろ」
という強引な展開に持っていった

「しかし、そこまであっさりドテ子を振るなんて…哲さん他に好きな人とかいるんスかね」
「煩い」
かくしてミッションスタート

「ドテ子…」
「なんやねんリーゼント」
「その…元気出せよ」
「ダホ、あんたなんかにうちみたいな可憐な乙女の失恋の傷なんてわからへんわ」
「…分かるよ」
「?」
「惚れた女が傷ついてんの見て…辛くねえ男なんているかよ」
「リーゼント…それ」
「ああ畜生、好きだよ、お前の事!!ずっと好きだったよ!!…その態度のデカいトコも我儘なトコもソバカスも…みんなみんな好きだよ…だから…だから泣くなよ。元気出してくれよ」

「なんか…甘酸っぱいっスね忌田さん」
「おお…最近こういう爽やかな恋愛見てなかったからなんか…新鮮だ」
「ホント泥沼だかンな俺の周り」
「どっかの誰かのせいでな」
そのどっかの誰かは展開がつまんないので、地面にへたくそな絵を落書きしていた

ともかく盛り上がったいい雰囲気。
一同の見守る中ドテ子はちょっと俯き、そして顔を上げて笑った
「リーゼント…」
「ドテ子…」

「まとまる…のか?」
「えー、俺のがいい男じゃーん」
「シッ、静かにしろ」
そしてドテ子は笑顔のまま言った

「リーゼント、寝言は寝てからほざきぃ」
「…へ?」
「あんたリーゼントの分際で何抜かしとんねん。うちみたいな絶世の美少女があんたみたいなのと付き合う訳ないやん…そやそや、ダーリンやてホンマはそう思とるに違いないわ。つーか思てなくてもかまへん!!力でゲットしたる」
「え…ええっ!?」
「そうと決まれば行動や!!」

ドテ子は走り去った
…恋する乙女の思考回路は全世界を自分を中心に回すくらいお手のモノだったのだ

そして見事立ち直ったドテ子と引換えに、完膚なき迄に玉砕したダンチをみんな(健以外)総出で酒に付き合い(費用は近藤持ち)慰めた。
だが、ダンチのクレーターより大きい心の傷はなかなか癒えなかったという

で、今回ひたすら出番のなかった健様は
「ちぇ…俺も失恋してやる」
とスネていたという

更に、今回の元凶の哲は…
「なあ信?ユウさんとの新居にいい家知らねえか?キッチンと寝室が充実してる奴な」
「シシ…業が深ェな哲」
ドテ子の事なんてまったく気にしてなかった
ドテ子ちゃん…考え直せ!!


珍しくダンチが出てきた話。更に、健様が出張ってない話
うちのドテ子は、健様とお似合いだと思います…彼女さえ納得するなら、ですが。いうなれば、悪ガキな弟と世話焼きお姉ちゃんカプゆー事で…健様のほうが十数歳年上ですが