タオ的魔法鏡編 大陸では共産党と国民党が過酷な同胞同士の戦いを続けていた頃。 部屋にいた近藤は背中を向けてベッドの上に座っていた。 チキチキ… 「?何の音だ?」 さて一方ご主人さまも… ぶくぶく コンクリで固められ海に沈む元部下を、冷たく一瞥すると小龍は部屋へと戻っていった。 そして船室の小龍は そんな折 鏡に映ったのは最愛の奴隷君が、どっかの無精ひげといちゃついてる姿だった で健と激しく情を交わしていた近藤は 近藤は気がつくといつか見たことのあるような、狭い部屋の一画にいた。 とりあえず二人して溜りまくった欲望を解消すべく貪りあった後、近藤は当然すぎる疑問を口にした 「ひ…ひいい…失敗しちまった…」 そして生き霊になって毎夜小龍の元に通えるようになった近藤も。 そして、今夜も近藤の生き霊を待ち望む小龍のもとに現れたのは。 道士は困った末に健の玄人の殺気に負けて答えた。 ぱち 「しつけーな…あ、そうだセンセで試してやろ。そりゃ」 先生をいじくりまくりマいた後で ボワン 「…どこだここ?…ひっ!!ドサ健っ!」 「…つまり夢だな」 ぽうん。 現れた彼はやはり少し驚いていた 「あ…ラバ…」 「フクロウが…あんたに負けた…って」 フクロウの想いが、そしてラバの想いがそれぞれの意識に流れこむ。 「…フクロウ…お前、俺を…まさかそんな」 「あ!」 健はポツンと一人座って考えた 「邪悪な気が漂っていますね、アナタ」 ぼむ。 「ん?何だ?オレどーしたんだ」 「何だったんだアレ」 「ぎ…ぎやああああ!!」 がちゃん …という音がして破片が飛び散った。 で例の道士 まあでも大陸での国共二党の内戦も沈静化したので、小龍は生身の近藤んトコにまためでたく通えるようになっそうな。
小龍と近藤のいちゃつき話の筈がラバとフクロウの純愛話になったいわくつきの代物
つまり小龍にとっては大きなビジネスチャンスなので彼はしばらく大陸の方に行きっぱなしになっていた。
「ならセンセもずいぶん淋しがってンだろな♪」
勝手な理屈をつけて近藤の所へ押し掛けた健だったが、近藤はそんなものでは済まなかった
「よう先生♪」
「健…か…」
「寂しがってると思って来たぜえ♪」
ゆっくりと振り向く近藤。
片手には血糊のついたカッター。腕といい胸といい無数の紅い傷が刻まれていた
「もう…いたぶられたくってよ…我慢できねえんだ…」
生気のない笑みを浮かべて近藤は笑った。
「おい!!」
健は近藤の手からカッターをふんだくった
「…何しやがる」
「そりゃこっちの台詞だ!!死ぬぞ」
「いっそ死にてえよ…どうしようもない疲労感と倦怠感から抜け出せねえのに眠れねえしマトモに飯も喉を通らねえ…」
(すげえ片思いの発露だな)
健は少し感心したが、何だか恐かった。
近藤は虚ろな瞳で続ける。
「昼は仕事があるからまだ気が紛れるんだが、夜になるとたまらねえんだ…だから誰でもいいから抱かれてやってんだが…駄目なんだ。最後の空腹が埋まらねえ…餓鬼道に堕ちるってきっとこんな感じなんだろうな…はは…」
「センセ目がイッちゃってるよ…じゃ何か?龍龍が行ってからずっとマトモに飲まず食わず眠らずで昼は仕事、夜はエッチかよ…幾ら何でも死ぬぜ?」
「分かってるが…無理なんだ…なあ健、抱いてくれよ…お前なら少しは埋まるかもしれねえ。気ィ失うくれェ激しくしてくれ」
珍しく据え膳に躊躇う健だった
「なあセンセ俺は今すぐにでも犯してやるがよ…。そんなに苦しいならいっそ会いにいっちゃどうなんだよ?てかもう小龍の船に乗っけて貰って、一生奴隷くんライフ楽しんじまえば?代議士辞めてさ」
「一生あいつと一緒か…昼も夜も…ふふ」
「わあ…意識とんでるな、これ」
センセは虚ろな瞳のまま続けた
「そうもいかねえんだ…俺は阿佐田と約束したんだいつかデケエ事するってよ…あいつがそれを…そして俺みたく屑以下の男を信じてくれてる限り、てめえだけの快楽に溺れる訳にゃいかねえ…」
哲への熱い思いを初めて聞いた健
「そっか…センセは龍龍一筋だと思ってたが哲もラブなのか…分かった。疲れて熟睡出来るよに、腹減って仕方なくなるくらい激しく抱いてやるさ」
「頼むよ」
「しっかしセンセにここまで思われて龍龍も幸せだな」
「この不始末命をもって償え」
「いっいやああ!!」
「お頭最近荒れてるな…」
「あれだよ。眼鏡の…ほら、あの先生がいないから…」
「けど今が稼ぎ時だからな」
「このヤマ終わるまでおれ生き延びれるのかなあ…」
「近藤…くそ…早くお前の白い肌を…淫らな目を…直に感じたい…」
激しい攻めの禁断症状に苦しんでいた。
この仕事中に始末した部下は指に余った。その他の人間に至っては数えるのも面倒な位虐殺してきた。しかしその犠牲者達をどんなに無残に殺したとしても彼の欲望は満たされなかった
「近藤…はやくお前をいたぶりてえ…その肌に傷をつけ、身動き出来なくなるよう縛り上げて、お前が淫らに許しを乞う声を聞きてえ…」
もう商売なんて捨てて日本に行こうか…いや仮にも自分は密輸船団の頭だ、それは出来ない。部下を食わせるのが最低の義務だ。ならば近藤をひっさらってこの船に乗せてしまおうか…
「が…あいつはうんというまい…」
多分黒シャツの事を持ち出して…
「くそ…どうすれば!」
「お頭…妙な奴が船着き場うろついてたんで…とっ捕まえてきたんすが…ほら、入れ!」
小龍の目に飛込んできたのは怪しい装束に身を包んだ小男。
「何だ貴様は」
「殺すな…道士じゃ儂ゃあ…色々使えるぞい?」
「道士?…ほう、何が出来るんだ?」
小龍は冷たい眼差しで問う
「何でも。ヌシの欲望を消す事だって何だって」
「消す?フン…そんな必要はない。俺の欲望を満たせ、そしたら生かしといてやる」
怪しい道士は頷いた
「よしじゃあな…」
「いや言葉は不要。さっそく叶えて遣わそう…但し、お代はちと高くつくぞい」
「ちッ生臭道士め。ほらよ」
小龍は札束を投げた
「ほっほっほ、よかろう。では…」
道士は鏡を取りだし、しばらく眺めていたが
「もうすぐお前さんが今一番欲するものが映し出される…見なされ」
「こ…んどう!!何?!健健と…くそ!!」
「この男の生き霊をここに呼び出す事も出来るが?」
「何?本当かそいつは…」
「ひひ、本当だとも。生き霊といえど生身と大差ない…話すことも、触れることも出来よう」
「やってみろ。ブラフだったら殺す」
「ひひ安心しんさい」
「ふ…すげ…あ…イク…」
「なんかすげえ感度だな…これでフィニッシュだぜ」
「あ…」
近藤は短く叫び体が痙攣する…とそのまま動かなくなった
「?…センセ?どうした」
突いても何しても動かない
「心臓は動いてるし…疲れ果てて寝ちまったのかな」
健はそういう事にした
「どこだここは?」
「近藤…か?」
振り替えるとそこには愛しい御主人様の姿が!
「小…龍?どうしてお前が…」
「近藤!ちゃんと足はあるな」
小龍は近藤(生き霊)にむしゃぶりついた。
これは夢か?
そう思いつつ近藤は懐かしい御主人の腕の中で幸せを噛み締めていた。
「これは…夢なのか」
小龍は近藤の首筋に紅痣を刻み付けると答えた
「痛ェだろ?…これは現実さ」
「現実…なの…か?」
「近藤…腕や胸の傷これは誰かがつけたんじゃねえな…てめえで切ったのか」
「小龍…お前がいなくて…体がうずいて…死にそうだった」
「オレはここだ、近藤。愛してる…オレがなぶってやる…もうてめえ自身でいたぶらなくてもいい」
「そうしてくれ…」
かくして存っ分にSMな関係を満喫した小龍は
「どうした?」
「(がたがた)お…お頭…い…命ばかりはお助け…(泣)」
「おいお前(肩に手)」
「はいっ!!(がたがた)」
「…失敗は誰にもある事だ(爽やかに)次気ィつけろよ」
「は…はあ…」
すっかり優しくなっていた。
「ふう…潮風が爽やかだな…青い空、白い雲、生きてるって素晴らしいなあ(爽やかな笑い)」
「どうしよう…お頭が変だ…」
「おーい先生」
「健か、今夜はもうリザーブかかってるから俺はダメだぜ」
「何だ?すげえさっぱりした面してんなあ。龍龍にでも会ったみてえだ」
「ふふ…」
しかし天の邪鬼な健は駄目と言われるとやりたくなる仕方のない男だった
「いーじゃんやろーよー」
「放…無理だって言ってンだろ?」
「いーってばァ」
「だからやめ…」
二人があまりにぐんずほぐれつしていた為、その晩も近藤を呼び出そうとしていた道士の手元が狂った
「ん?あれ?龍龍?」
「なんで健健!?お前が来るーっ?!!!!」
お頭絶叫。
「龍龍!?何で龍龍がここにいるんだ」
「そりゃこっちの台詞だ!!」
「へえ…もしかしてこれってテレポートって奴か?」
「…いいから帰れ」
「どうやって?」
「う…おい道士何とかしろ」
「しばし待たれよ…な、なんつー重い魂…これはちと時間がかかる…」
「早くしろ!」
「何かわかんねーけど時間かかんの?だったら龍龍やろーぜえ♪」
「ええい!抱きつくなっ…!くそ道士まだなのかっ?!」
「なあもしかして、こうやって先生と会ってたのか?」
「ああ畜生そうだよ。だから何だ!?」
「いいなあ…俺にもやり方おせーて」
「あの…この方知り合いですか?」
「龍龍の恋人さ♪」
「嘘を言うな!!」
「だからおせーてよ、な?教えてくんねえなら(玄人の目)」
「ひい…悪霊かなんかですかあんた」
道士はしぶしぶ鏡を一枚健に分けてやり、それに呪を施した。
「これで欲するものの生き霊を呼び出すことが出来る。元に戻す時は鏡を伏せればよいようにしておいた…これで満足か?」
「へへ、センキュ♪」
「…気違いに刃物もたせるよーなもんだぞ…まあ、これで気が済んだろ?帰れさっさと」
「嫌」
「嫌って何だ!?」
「なあなあオッサン、霊体ってどんな事出来んだ?」
「…聞いてどうなさるのじゃ」
「そりゃ勿論世界へーわの為に使うのさ(にやにや)」
「教えるな!!教えたら殺す」
「教えないならたたってやるぜ(ニヤリ)」
「まあ生きてる者に出来ることなら何でも…。あと霊体ならではなのは、傷をつけても跡が残らないことと…刺激や、こちらの感情が直接伝わりやすい」
「へーえ?(ニヤニヤ)激しいプレイもOKなんだな。それに感度よくなるんだぁ…じゃ龍龍もセンセと楽しみまくったんだ。俺とも楽しもうぜ」
「だああどこ触ってる!?はやく、はやく追い返せ!!」
道士は呪文を唱えた
「てけれっつのぱあー!!」
ぼむ
ようやく健は消えた
「…あー…戻って来たあ」
「おう健…死んだと思ってたぜ」
「またまたぁ、生霊になってまで龍龍と楽しんでた癖にィ」
「何故それを…」
健はどこから取り出したのか古い鏡を差し出した
「これ、さ」
「お前…その鏡を!お前が持ってると絶対ロクな事がない!こっちによこせ」
「やーだよ♪これで遊びまくり、いじりまくり♪くっくくったまんねー。じゃなセンセ♪」
「ちょっ…やばい!やばすぎるぞこれは!!」
日本の安全に危機を感じた近藤は初めて<公共の福祉の為>という理由から健を追った
「う…(がく)」
「成功♪」
近藤の脱殻と霊体の両方を人目に付かないように引きずると健はさっそく試食にかかり、道士の言った事は嘘でなかったと実感した
「へへ、いつもより益々いいぜ?」
「ひ…あ…ああん…」
「なんか俺のLOVEがダイレクトに伝わってるらしいから言葉にならねえくらいだろ?しかも(噛みっ)…たしかに跡がつかねえ…こりゃいいや」
「さーてお次は誰を呼び出そうかなっ♪ふんふーん♪久しぶりにフクちゃんよぼっと」
「はろ〜♪」
「な…ここはどこだあ!?」
フクロウの問いに健はあっさり答えた
「ノガミだよ」
「オレは函館にいた筈…」
「俺が会いたかったから」
健は彼なりに仕組みを説明したが勿論通じる筈もなかった
「…んーまあそれでもいーや」
「クソ…オレは夢でまでこいつに付きまとわれンのかよ…どうせ夢なら…ラ…ラバに(恥)」
「乙女なフクちゃんに免じて会わせてやろっか」
「え…ゆ、夢の中とはいえ…ラバに…?」
「ああ。目のきれーなおっとこ前連れてきちゃる♪待ってな」
健は鏡に向かって念じた。
「髭の女性…それに…」
彼の目に喜びの色が浮かぶ
「フクロウ!!」
「ラバ!!」
抱きつきたい衝動と…そして嬉しくてたまらない心中をフクロウは何とか押し隠した
「…俺は…家で絵を描いていた筈…これは一体…」
「こ、こいつがいうにはこれは夢、らしい…」
「そうか…夢か」
ラバさんは普通に納得してしまった。
口ごもりうつむくフクロウ。
「か〜乙女ぇ♪かあいいぜフクちゃん」
「夢とはいえ久しぶりにだなフクロウ…。すまん、約束の絵まだうまく描けなくてな」
「オレとの約束…ちゃんと…?」
「勿論だ」
「ラバ…(泣)」
「何だ?何故泣くんだ?碧の事なら元気だ…ただまだ俺は画家としてハンチクもハンチクだから食わせるのが精一杯。新しい服の一つも買ってやれないんだ…申し訳ない。いつかきっと苦労させないよう…」
「いや…その違うんだ」
「?」
「オレは…」
健はあまりに二人が熱々なので嫌がらせをしたくてたまらなくなった
「なあなあフクちゃん?」
「うるさい黙れ」
「しかし、フクロウが夢に出てくるのは納得だが何故髭の女性が俺の夢に?夢には深層願望が現れるというし、俺はそんなにこの女性を気に掛けていたのか」
ラバはその澄んだ目で健をじっと見つめた
「そうさ♪ラバりん俺のこと愛しちゃってるから、こんな夢みるんだ♪」
「…そうだった、のか?」
「ええ?!ち、違う!違う筈だ、ラバっこれはトラウマかなんかだ…でなけりゃ…嫌だ…そんな悲しい真実っ」
だがラバはその澄んだ瞳を真っすぐ健に向けた
「まさか…俺があんたをそんなに気にしていたなんて…自分でも初めて知った」
「まあ夢なんだし、だったらエッチしよーぜ♪」
「いや…もしそうだとしても俺は碧を裏切る事は出来ん!!」
余りに男前に天惚けカマすラバ
「くっ…俺がこんな浮気症な男だったなんて…恥ずかしくて碧に顔向け出来ない」
「ラバちーん…完全に自分の世界に入っちまってるよ」
「すまないフクロウ…いっそ俺を殴ってくれ」
「お前のその言葉を聞けただけで十分だ…碧をお前に任せて本当によかった。ラバ…けど…オレは…」
「?何だフクロウ?」
「夢にまでお前を見てるオレは…滑稽だな…」
「フクロウ?何故そんなに哀しそうな顔をする?」
「…馬鹿な自分に愛想が尽きたから、さ…(泣)」
やっぱり二人はラヴラヴだったが、でもやっぱりフクロウの片思いだった。
ラバはフクロウの事をあくまで良きライバルとしてしか見ていないのだ…そしてそこ以上に進む勇気も…
(よし、じゃあ俺が恋の天使になってやろ♪喜ぶぜフクちゃんてば)
そして何を意図したのか…フクロウを抱き寄せた
「ぎゃああ!!なっ何をする!!」
「フクちゃんら〜ぶ♪なあ俺と激しく愛し合おうぜ♪」
「…やめろ髭の乙女!フクロウは嫌がってる!」
「いーじゃん、フクちゃんてば、らバりんに碧ちゃん渡したから今フリーだろ?何も問題ねえじゃんか」
「問題ありまくりだ!!離せけだもの」
「いっいじゃーん…だってフクちゃん博打に負けて俺のモンになったろ?」
「な…」
フクロウの表情が凍り付く
信じられないという瞳のラバに健は答えた
「ああ完膚ねえまでにな」
「フクロウ…」
健の言葉が信じられずにフクロウをみつめるラバ。
たまらずフクロウは目をそむけ
「ああ…負けたさ…」
辛そうに吐き捨てた。
「な?本当だったろ?だからフクちゃんは俺が好きにするんだ♪さあキスしよーぜっ」
「…フクロウが負ける筈がない。」
ラバは呟いた
「ラバ…確かにオレは負け…」
「これは俺の夢なんだろう?だったら俺はお前がこんな髭の女性に負ける様なハンチクだと思ってるって事だ」
「いや…信じられないかもしれないがこいつは実はノガミのドサ健なんだ」
ラバは哀しげに首を振った
「こんな妄想をフクロウが口にする筈ない」
「おーいラバりん?別に俺はただの、超男前♪ってことでいいけどよ。ラバりんにとっちゃあフクちゃんてば…博打で最強じゃないならもうどーでもいい奴になっちゃう訳?」
フクロウの顔色が変わった。
聞きたくない。
ラバの答えを聞きたくない。
「…それは…」
「やめろっ!」
「フクロウ?」
「…頼む、ラバ…それ以上…言わないでくれ…」
フクロウの頬を涙がつたった。
「フクロウ…何故泣く」
ラバがとまどったように問う
「いくら夢とはいえ…お前はどんな状況でも泣きだすような…」
「違うんだ…オレはお前が思ってる程すげえ男じゃねえんだ」
「フクロウ…」
答えに詰まりラバはフクロウの手を取った。その瞬間、二人の霊体から二人の精神が一瞬にして感応した
驚きに目を見はるラバ。少しの沈黙の後複雑な表情でラバは顔を上げた
。その顔に戸惑いは隠せなかったが、かといって不愉快そうにも見受けられなかった。
「ラ、ラバ…」
一方初めてラバの本心を知ったフクロウは。
「ラバ…お前…オレの事…本当に…」
切れ切れにしか口に出来ないフクロウ
「フクロウ…お前、俺の事…」
口籠もるラバ
「何だよ、ぶーぶー、二人だけで分かり合っちゃってさ。俺だけハミゴかよ?」
愛の天使になろうと思っておきながらガキみたいな健をおいてフクロウが先に口をひらいた
「親友…なんだよな?敵同士でなきゃ相手を認め合えない友…お前はオレの事をそう…ありがとよ。けど俺は…お前みたいに純粋な気持ちで…みれなくて…」
「フクロウ、俺は!」
「すまんラバ。俺はこんな汚れきった目でしかお前を見れないんだ…どうしても」
「つまんねーよー!俺も混ぜろぉ?」
邪魔者が何か言ったが二人には聞こえない。
「いや…そうは思わない。俺みたくハンチクな俺の事をそこまで気に掛けてくれて…嬉しいよ」
「ラバ…どうせ夢の中なのに、覚めれば消えちまうような微かな思いなのに…そう言ってくれてありがとよ」
「ホントだな…夢なのに本当にお前と心が通い合った気がしたよ。今度こそ約束の絵が描けそうだ…この感情を絵に出来るまでの技量が俺にあればのナシだがな」
「あるさ…お前なら」
「フクロウ…有難う」
突然ラバが叫んだ。
「どうしたんだ?」
「いや…俺はどれくらい眠ってしまったか…五時になったら碧が買い物から帰ってくる…」
「ん?今もう五時前だぜえ?」
「そうか、ありがとう髭乙女」
「ラバりんもう帰るのか?ま、いつでも呼び出せるから俺はいいけどよ」
「じゃあなフクロウ…必ずいい絵を仕上げて…お前に渡しに行く」
「待っている、ラバ…今日は夢でも会えて嬉しかった」
「俺もだ…またなフクロウ」
「じゃあ帰すぜお二人さん。よっと」
健は鏡を裏返した。
「よく考えりゃ食ってから帰せばよかった。霊体だから犯った事にゃなんねーしな」
ンな事ないと思います
「しっかしこの鏡がありゃどんないい事でも出来るよな」
健が楽しそうに鏡を抱えて歩いていると後ろから声をかけてきた輩がいた
振り向いた先には例の風水師が。
「…うーん」
「どうされた?」
「何か…木座神と一緒で顔はいいんだけどさあ萌えねーのな…」
「萌えないで下さい!!あなたその鏡…それをもっていると危険です。ん?いや、持ってる本人の方が邪悪で危険なのか?とにかく!それは手放した方が人類の為です!」
「ふーん…人類の為ねえ…」
鼻をほじりながら健は気が無さそうに言った
「だから?」
「だからって…アナタ人類や世界平和や人々の安全に役立とうとは思わないんですか!?」
「ない。俺が楽しけりゃそれでいいさ。だから鏡は俺の物」
「くう…なんて邪悪な気…こうなったら歪んだ気の流れを正す為にももう一つ邪悪な気を呼び出すしかないでしょう」
「尋小中退の俺に分かるように言えよ」
「もう一つの邪悪な気…むっ!感じる!!よし、ここに召喚します!どえりゃあああっ」
「おーすげえすげえ。すげえインチキくせえ」
召喚されたのは…最近原作の面影もない雀聖だった
「うわああ」
風水師は絶叫した。なんせ一度こっぴどい目に会って夜逃げせざるをえなくなった張本人だからである
「てめえ…こないだの…」
「いや…その…むむ、まあ毒を以て毒を制するのは漢方の基本。あとは気の流れにまかせるべしと古人も説いておられるし…さよなら!!」
風水師はすごい勢いで逃げ去った
「さあ…ところで健、邪悪とかなんとか言われてたけどまた何かしたのか」
「いや、いつも通りさ…この鏡でいい事はしたけどな♪」
「鏡!?」
健の説明を聞き、哲は言った
「ユウさんを呼び出したいな」
「だよなー」
「いつもよりもっと感じやすいユウさんにオレの全てを教えてやりたい…貸してくれよ」
「否。俺がやるから」
「貸せよ、ちょっとくらい!!」
「やーだね!!」
二人の邪悪な思念が鏡に伝わり、ヤサに独りでいたユウはなんだかすさまじい殺気を二人分感じた
「ん?何だ?哲…と健?ちょ…これは一体…」
ユウの上に二つの黒い影が覆いかぶさった。
ユウは叫んだ。なんせ二人が同時に彼のヤサに出現したのだ
「な…ななな…何が起こったんだ?」
もちろん彼は生霊がどうとかなんて話は知ろう筈がないが
「ユウたんは俺が先に喰うんだ」
「誰が渡すか!!」
ギラリと目を光らせた二匹の獣は口々に言いながらユウをひん剥き始めた
「な…ちょ…や…ああ…そんなもう…二人、がかり(泣)」
「ユウさん色っぽい…やっぱりオレだけのもんだよ」
「ユウたんは俺のオフクロなんだぜ?」
「は…あ…んん…もうやぁ…堪忍して…っ」
もう場は混乱を極めた。その衝撃で鏡が倒れ…。
そして…二人のケダモノどもは消えた
「…夢?」
にしてはひん剥かれた服は元の儘だったりした
「?」
「むむ…鏡が割れた?」
「どういう事だクソ道士」
「いや、あの不精髭に渡した鏡が割れた模様でして…」
「いい様だ。畜生健の野郎、俺の近藤(の霊体)に好き勝手しやがって…まあいい。これで問題はねえだろ?はやく近藤を呼び出して…」
「いえ。割れた事に問題がありまして…」
「問題?」
「ここにある鏡とあの男に渡した鏡は対で造られた、いわば双子の鏡。片方が割れて呪力を失えば…もう片方も…」
「なんだとっ!!この…」
「こ、これは私の責任じゃな…!」
「ええい、くそっ!!健健の奴っ!」
めでたくもあり、めでたくもなし。
この二人は設定上会わせるわけには行かないのでこんな事になりました