人魚姫

昔昔ある所に人魚の王国がありました。
彼らは海の底という地の利を生かして、地上人には出来ないヤバい仕事…密売からテロ支援まで幅広くこなしていました。
ちなみに彼らのうち、一番ヤバいけど一番美しい人魚姫は小龍と言いまして、時々上まで上がっては死の商人業をこなしていました

そんなある嵐の日の事…
とある豪華客船が処女航海で、造船業やら政府のお偉いさんやら各界の著名人を乗せてやってきました。
庶民の敵です。
そして小龍たちには絶好のカモです。難破するのも待たずに彼等は楔を船に打ち込み襲撃にかかりました。
当然の様に沈む船。中では阿鼻叫喚地獄な光景が繰り広げられている筈。人魚姫はそれを想像しほくそ笑みました
「ははは(爽やかな笑い)クソ金持ちどもめ、海の藻屑になりやがれ」
人魚姫は美人ですが性格と口は最悪です
「おい野郎ども、金目のものは逃すなよ。クソ女どもが身につけてる宝石まで残さず引き剥がせ」
彼らはこうして難破船から金目のものを奪い取っては地上に転売して巨利を得ているのです…だから人魚の王国はあんなに美しいんですね
「はーあ、さて…そろそろ引き上げるとするかな」
もがき苦しむ人々を全く意に介さずに引き上げようとしたその時。人魚姫の目に一人の男が目に留まりました。そして…人魚姫は彼に運命を感じました。それが運命の恋…などという麗しいものでなかったのは言うまでもありません
「…うわ…いたぶりてえ…」
思い立ったら即行動、姫は行動派でした
スーツに丸眼鏡の男の顔を引き寄せ姫は言いました。
「お前名前は?」
「…こ、近藤だ」
「そうか近藤。ハハッ今日はいい日だぜ」
姫は得意のロープさばきで政界の若きプリンス?近藤をひっくくりました。
「な、何をするつもりだ?!」
「ちょっとしたお遊戯さ!」
姫は激しく爽やかに微笑みました。

姫は身動き出来ないプリンスを拉致り、近くの浜辺へ運びました
「また人魚姫の悪いクセが出たよ…」
「おとなしく溺死させてやりゃいいのによ」
仲間の人魚の呟きがプリンスの恐怖を誘います
「ちょ…俺は一体何されるんだ?」
「お遊戯だって言ったろ?」
姫は爽やかながらも凄味のある笑みを浮かべ反論を封じました。
で浜辺
「夜の浜辺ってのもちょっとしたロマンだよな」
「ななな…何が?」
姫は答えずにプリンスの上着を剥ぎ取りました。水に濡れたシャツがすごくエッチで柄にもなくドキドキします
「予想どおりいたぶりがいのありそうな体だぜ」
ようやく状況の読めたプリンスは当然すぎる疑問を口にしました
「お前人魚だろ?どうやってするつもりだ!?」
「やり方はいくらでもあるさ」
にこやかに姫は鞭を鳴らしました。恐怖に耐えられず小刻に震え出すプリンス
「怖いか?いい顔だ…」
姫の周囲の臣下たちには手をあわせるもの、十字を切るものが多数です
「さあ楽しい夜の始まりだぜ?王子さん」
あらわになった近藤の胸に指をつたわせ姫は残酷に微笑みました
プリンスはあまりの恐怖に逃げたくても足がすくんで動きませんでした。

「は…ははは…」
虚ろな瞳で生気のない笑い声を立てるプリンス
「ふふ…もうイッちまったのかよ」
「人魚姫、これ以上やったら…」
「まだまだ夜は…」
だが夜通し楽しんだ結果出る朝日に姫は舌打ちしました
「まあいい…今日はこれまでにしといてやる」
姫は恐怖でおかしくなったプリンスにキスするとその場を後にしました。
その後発見されたプリンスは難破にあってかろうじて命をとりとめた為の強度のショック、PTSDと診断され、どう見ても難破じゃつかないだろう傷やら何やらもうやむやのうちにされました。だって大事故だったからです そして当人もあれは夢だと思い込むようにし、職場復帰しました

しかし海の底では人魚姫が攻めの衝動にうずうずしていました
「あんな玩具は二度と手に入るモンじゃねえ…もっぺんいたぶりてえ…」
そして遂に姫は怪しげな魔術師の所へ向いました
怪しい魔術師ってか風水師に小龍姫はいいました。 「おい、オレを地上に上がれるよう人間の体にしろ」
「それは気の乱れを生じさせますから…」
止めようとする風水師に姫は銃をつきつけました
「いいからやれ。死にたいか?」
「やや、やります…けど副作用は覚悟して下さいよ…オンアビラウンケンソワカっ、はっ!!…出来ました…」
ぱくぱく
「はい…ですから気の流れを乱した代償で口が効けなくなるんですよ」
とんとん(風水師の肩を叩く)
「はい?」
どばきいっ!!(すさまじい勢いで殴り倒す)
(口が利けなきゃ言葉で屈辱を与えるプレイが出来ねえじゃねえか)
しかし打たれ強い姫は諦めませんでした。
裏ルートで偽造戸籍を取得すると、企業や官庁は一定数の障害者の雇用が義務つけられているのを利用し、なんとプリンスの秘書になりすましたのです(もちろん風水師から取得した麗しい足が映えるミニスカ姿で)

さてプリンスの秘書としての地位をちゃっかりゲットした姫に、プリンスは何だか封印した記憶がうずくのを感じていました。
「君、前に会ったことあったかな」
姫は爽やかに笑っているだけでした。その笑顔に何だか恐怖と心なしか快楽を感じてプリンスは戸惑いました。
そしてその日仕事が終わった後、宿にしたホテルの部屋に入りプリンスはベッドに寝転がりました。何だか釈然としません。
「何か…何か忘れているような気がする」
そしてふと横をみると壁に何やら小さく書いてありました

逃がさねえぜ…ばい人魚姫

「!?」
慌てて立ち上がろうとするプリンスでしたがいきなり照明が落ちました
「停電か?」
ユラリ。プリンスの目前に黒い影が現れます。
「だっ誰だ?!」
ゆっくり歩み寄る影の正体がやがて町のネオンの灯りで露となりました。
「な。何だ君か…」
秘書の姿をそこに見留め近藤は大きく息をつきました。
「どこから入った?今日はもう仕事は…ちょっ」
無言でのしかかる秘書、もとい姫の目を見てプリンスは何かを思いだそうとしていた。

深い闇色の瞳。秘書嬢の美しい瞳に宿った残虐な色にプリンスは全てを思い出しました
「お…おまえは…」
続きは唇で塞がれました。あまりの驚愕に為すがままにスーツを剥がれるプリンスと黙々と作業を遂行する姫
「…答えろよ…おまえはあの時の…」
だが姫は答えないでミニスカ姿のままのしかかります
「…女に押し倒されるのは趣味じゃねえが…」
姫はニヤリと笑いチラとスカートをめくりあげた…そこには声と引き替えにした美脚の付け根に当然のようにあるブツがついていました
「っ!男、だったのか…?!」
姫は笑ってプリンスのズボンに手を差し入れました。
「お…おい待ってくれ!お前は俺を…どうしたいんだ?!それにさっきから喋らないのは何で…」
姫は魔術師のことを想いだし胸クソが悪くなりました。
それが当然プレイにも影響します。肌をきつく吸われ、姫の美しい氷のような瞳に射すくめられプリンスは言葉を失いました。
「答えろ…」
ですが答えたくても姫は声を発する事が出来ないのです。せっかく玩具に屈辱を与える言葉をたくさん用意していたのに…そう思うと姫はたまらなく不愉快になり、それを行動でプリンスにぶつけてやりました…ちなみに詳細は申しませんが、相っ当タチの悪い八つ当りだった事は確かです。ついでに例のブツも存分に使う事が出来、それには大満足しました

翌日…息も絶え絶えになっているプリンスに姫は紙を見せました。そこには
オレを首にしたり、余計な事を喋ったりしたら殺す
と書いてあり、プリンスは泣く泣くそれに従いました。
かくしてしばらくは(姫にとっては)幸福な日々が続きました(ちなみにプリンスの調教は順調に行なわれました)がある日

「俺は結婚するぜ」
プリンスは資産家令嬢との結婚を決めてしまいました
「相手方から申し込まれた縁談だ、この話に乗れば俺はもっと高みを目指せる。振れば俺はもう政界には戻れなくなる」
「…」
睨む姫にプリンスはためらいがちに言いました。
「だが…お前との関係を終わらすつもりはねえ…お前を体が忘れてくれねえ…お前にずっといたぶられ続けてえんだ」
プリンスの告白には満足した姫でしたが、この縁談は面白い筈がありません

そうこうしているうちに、婚約披露パーティーが豪華客船上で開かれました
(また船を沈めてやるとするか、くく)
邪悪な意図の元にデッキに出た姫は海上に見慣れた顔を認めました
「姫ー!!あっしです」
(何の用だ?)
部下でした
「姫…あの風水師の術にゃもいっこ重大な副作用があったんです!!それは…姫はこの恋が成就しないと水の泡になって消えてしまうんです」
(何いっ!?)
美しい顔をしかめる姫
「解決法は一つ。この短剣であのプリンスを殺す事です…そうすりゃ姫はまた人魚に戻って楽しく密輸稼業が出来ますぜ」
そう言う部下の顔には、あの立派なお髭がありませんでした…きっとあの風水師に短剣を貰う際に
「気の流れが…」
とか言われて剃られたんでしょう。なんでお頭思いの部下なんでしょうか。ともかく短剣を受け取り、姫は中へ入りました
プリンスが船室で休憩してると姫が入ってきました。
「…お前…」
即座に姫はプリンスの喉に短刀をつきつけ紙をかざしました。

ここで死ぬかオレと畜生道の愛に生きるか、今すぐ決めろ

「…」
プリンスは乾いた唇を舐めながら悩みまくりましたが、どのみち死んだら元も子もないしいたぶられるのは好き(調教の結果)です。なんでこう返答しました
「堕ちてやるよ…お前と二人ならどこへだって」
姫は満足そうに刃物を床に落とすと深いキスをしました。どれだか長いことそうして堕落の快感にひたっていた事でしょう
「…どこへ連れて行ってくれんだ?」
プリンスの問いに
「決まってる…」
姫は声で答えました
人魚姫の声を聞きプリンスは驚きました
「お前…声が…」
それは愛の奇跡だったのか、それとも龍脈が通じたのかは分かりません
姫は甘い声で答えました。
「地獄だよ…海底よりも深い煉獄さ」
「そいつあ…楽しみだ…お前と二人きりでどこまでも堕ちてみてえ…」
こうして二人はともに畜生道へと旅立ちました。
      めでたしめでたし