青髭

昔昔あるところにとてもお金持ちな伯爵が住んでいました。
ただその伯爵には黒い噂があって、今まで何回も結婚しているのにいつもすぐに奥方がいなくなってしまうというのです。
ある貴族の娘が彼から求婚されましたが…

「駄目駄目!!危ないからやめなさい!!お兄ちゃん(ユウ)は許さねえよ」
「だってユウさん…じゃなくてお兄さま。オレ(哲)いっぺん結婚したい」
「お兄ちゃんが嫌いになったのか!?」
「ううん、そんな事ァないけど…向うは病気たいだし、くたばるまで我慢して遺産がっぽり手に入れてそしてから兄さまと幸せに暮らせばいいじゃないか」
「すまんな俺が貧乏で(泣)」
妹思いのお兄さまは必死で止めましたが結局娘は財産目当てで嫁に行く事に決めました

青髭の館
「ひひひ…ようこそ哲っちゃん…じゃなくて花嫁」
(うわあ…予想通りすげえ化け物くさい)
「まあ夫婦ってことで…よろしく頼むぜ、ひひ」
「印南…じゃない、伯爵…めちゃめちゃ顔蒼いが大丈夫か?」
「ひひ、これからのラブラブ新婚ライフを考えりゃこんなの…がふっ!!」
「寝てた方がよかないか?」
「俺は玄人だぜ?ちょっと打ってくらあ。そうだ、この屋敷のもんは勿論自由に使ってくれていいが…一番奥の部屋は開けんじゃねえぜ?ひひ」
そして伯爵は賭場にくりだして行きました。

(金持ちなのは博打で稼いでたのか)
娘はちょっぴり同じ博打打として夫を尊敬しましたが
「あんだけ死にそうな顔してたらオレすぐに未亡人だな♪」
娘はワクワクしながら部屋を回る事にしました。
いろんな部屋にはいろんなものがありました
景徳鎮の雀牌はやたらといい音がしたり、象牙の雀牌はとても手触りがよかったりしました…何故か麻雀関係ばかりでしたが。

で最後の部屋
「…なんだかすげえヤバい臭いがする…」
玄人の勘がヤバいと告げていましたが、娘は好奇心に負けてしまいました
娘が部屋の扉を開けるとそこには。
「…うわっ」
ありとあらゆる健康器具と、トレーニング器具、通販で買ったらしい筋力アップのグッズが所狭しと立ち並んでおりました。
「すげえ…ジムみてえだ。何故かプロテインまで…ここまでするんだったら薬やめりゃいいのに…」
青髭ってば実はマッチョ志望だったのです。
「ひひひひひ…見ちまったようだな
後ろからの邪悪な笑いに振り向くと旦那様が立っていました
「…どうしてヒロポン辞めねえんだ?」
「あれ辞めるとガンが使えねえんだ…だが健康な体には憧れてるのさ」
「何でまた…」
「この為にさ!!」
がばあっ…旦那様は新妻を押し倒しました
「な…何しやがる…」
「俺はこんな体だから女房貰って床入りしても血ィ吐いちまってな…」
「だから毎回嫁に逃げられてたのか…そりゃそうだよ」
「ひひ…だがバレちまったからには血ィ吐いたって我慢して初夜をしてもらうぜ?」
「ちょ…ヤだよ!!」
「なんせこれでも夫婦だからな…ひひ…ごふごふ…」
青髭は血を吐きながらも新妻を離しませんでした

どぐわしゃっ

頭蓋骨が砕けるような音がして、青髭はその場に崩れ伏しました。
「ユウ…じゃない、兄さん!」
「大丈夫だったか?この…死神に何もされてないか?」
「うん…あ。何か痙攣してる…兄さんこいつさ…」
「ああ聞いてた。これも玄人の業だな…博打に生きるか、健康な身でカタギんなって家庭築くか。二つに一つだぜ」
血を額から流し更に吐血しながら青髭はいった。
「ひひ、確に…博打打ちながら家庭もとうとした俺が馬鹿だったのかもな…でも俺だって賭場で始終薄気味悪がられてちゃ人恋しくもなるんだよ…」
「青髭…」「さあ哲…俺と家に帰ろう?兄さんが一生面倒見てあげるから」
「哲っちゃん…ほんの短い間だったが新婚出来て嬉しかったぜ…」
流血し吐血する青髭を見ながら新妻は答えました
「兄さま…オレ、家には帰らねえ」
「哲っちゃん…」
「哲!!まさか俺よりそいつのが…」
「青髭…これからも一緒にいてやるよ、そん代わり兄さまも一緒な」
「哲っちゃん…」
青髭は涙しました。吐血流血してるので何が何だか分からない状況ですが。
「皆して博打で食っていこう!」

そしてその後。
三人の強すぎる玄人の暮らすこの館をいつしか人々は
「博打御殿」
と呼ぶようになったとのことです。

めでたしめでたし。