お母さんズの苦悩(味覚の壊れた子どもたち)
「なあ忌田…俺思ってるんだけどさ。毎回俺ら、健にうまい手料理食わせてるけど…もしかしてあいつ、味覚ねえんじゃ」
「う…思ってけど口には出さなかった事を…」
「確認してみるか?」
「…ああ」
そして二人は、あんこと豆板醤で味つけした鍋(金魚の死体とゴキのぶつ切りモロモロ入り)を健に出してみた
「(もっさもっさ)おー♪すげえうめえじゃあん!!」
大満足な健をみて涙目になる二人。
そこへ哲登場
「哲ぅ!?」
「お?哲も食うか?ユウたんと忌田の手料理だぜ?」
「食う…(ぱく)」
「止めろぉ!!」
「うまいな、さすがユウさんだ」
天使のような笑顔で微笑む哲に何も言えないユウと忌田だった
哲といい、健といい、想い人たちの味覚のなさにゲンナリしたお母さんズ。
「誰か…味分かって手料理に飢えてる奴に食ってもらいたいなあ」
「同感だ。誰か…あ。」
「変態代議士!」×2
その日先生が疲れて帰宅すると、何故か部屋に電気が
(泥棒か?)
そっと覗くと誰やらが台所で何かしている。
ぷんと鼻をつく芳ばしい匂い
…訳は分からないが泥棒ではないらしい。
がちゃ
「お帰り」
そこにいたのは割烹着の極道とエプロン姿の男前
「…おまえら何の用だ?」
「疲れてるだろう先生、ご飯出来てるぜ」
二人は近藤の問いには答えずに、笑顔でそう言った
当惑する先生をよそに夕飯の準備を進める二人。
「すまんユウジ、小皿取ってくれるか」
「おう、味噌汁の味どうだ?」
「ああ、ちょうどいい」
「…お前ら…何で」
「あんたいつも外食か店屋もんばっかだろ。たまには手料理を食いたいんじゃねえかってな」
「…(だからって野郎二人は…。しかも筋者と大男…異世界だ…)」
「出来たぜ」
「これは…豚カツ?」
「あったかいうちに食ってくれ」
二人の温かい視線に促され近藤は箸を握るしかなかった
「…うまい…」
当惑した顔ながらも口にする先生。
彼の舌の確かさはお料理地獄で確認済み。しかも金にならないおためごかしは言わない性格なのも確認済みなので、事実うまかったのだろう。
箸を動かす先生の姿に二人は
(なんて腕をふるった甲斐があるんだ)
と感動していた
味噌汁までキッチリ平らげて
「…ごちそさん、うまかったよ」
と、ちょっと困った笑顔で言った先生の姿はなんだか少し可愛かった
ご飯の後片付けを終えた後。
「じゃあ俺たちはこれで」
「また食いたくなったら、呼んでくれ」
「やっぱり味の分かる奴に食べて貰えるのは嬉しいからな」
「…あ、ああ…しかし阿佐田や健にはいつもこんな手料理を?」
「ん…まあ、な」
「そうか…」
何だか感慨深げな先生。
二人のおかんが帰った後。
センセは呟いた
「はあ…うまかったな。俺も料理上手で優しい嫁さんが欲しいな…」
「呼んだか」
その声に振り向くと若妻ルックに豚の頭(切り立てホヤホヤ)を抱えた小龍が立っていた
「不運が…」
呟きかけた近藤の口に豚の頭を押し込み、小龍は爽やかに笑った。
「やっぱり豚は生だろう!それにこれくらいボリュームがないとな♪」
「…もごぁ…(泣)」
この時ばかりは健と哲の立場を本気で羨ましく思う先生だった。
帰り道
「さて…健には食いモンあてがってきたが…」
「腹一杯でもう寝てるだろ」
「ところで。人間の脳の構造では、満腹中枢と性欲を司る部分はリンクしてるんだとさ」
「どーゆー事だ?」
「つまり満腹になると性欲も満たされるんだ」
「ほう。そうなんだ…」
天界
「忌っ田あー!!(抱きつき)飯うまかったぜー!!だから犯ろ!!」
「…こいつにゃ人類の常識は通用しねえみたいだな」
忌田を残し立ち去るユウ。
すると丁度哲が雀荘から出てきた
「お、ユウさん」
「あれからずっと打ってたのか?」
「ああ。半日何も食ってねえから腹減ったよ」
「何か作ってやるよ」
「ユウさんの手料理か…」
哲は嬉しそうな顔になったが、そこで玄人の目になった
「料理より…ユウさんの方が食いてえな…」
「哲…?(泣)」
ちなみに人間の性欲は空腹になるとより鋭敏に、かつ暴力的に発動されるそうです(飢餓感により、生命の危機を感じて子孫を残そうとするからだそうです)
「付き合って…くれるよな?」
人外の奴ら、絶対味覚ないと思います。そして近藤はグルメな筈