ドサ健お料理地獄
その日ユウはヤサで、徹夜麻雀やってた哲にもっていこうと手料理を作ろうとしていた。 天界にて。 大会当日。 参加者たちの反応もまちまちだった。 後は 「よおしてめえら。じゃ第一回ドサ健お料理地獄を始めるぜ!!」 お料理タイム。 「って訳で飯の炊き方はこう何だ」 「センセ?料理ってよ。途中経過見てたらワクワクしねえか」 「ふーん、ユウさんは…やっぱすごいな、憧れるよ」 「ぴぴー!!時間切れだぜ。うし、では審査タイムだ。よろしくなセンセ」 うし次だ…うげ…春木だよ」 「あーあ春木残念っ、さてお次は!おおドテ子ぉ♪」 ちなみに参加者席では 「はい…あーん」 「さて。お次は誰だ?!ん、力石似の兄さん!印南だっ!」 「次は小龍だあっ!!」 木座神が出したのは湯豆腐だった 「じゃお次タミミミっ!」 「ふー旨かった…さ次…お…神保のオッサン!?」 で休憩室 「さあ再開だ!次の料理人は、哲ぅうっ!!」 …じゃり… 「なっ?」 がばっ、 哲は思い切り良く脱いだ…そして会場は黄色い悲鳴に包まれた…何故なら黒シャツの中身は
裸エプロンだったからだ 「哲…」 「てっつぅ!!もうお前を食うぞ!!!」 がばちょ。 「…暑苦しい…」 何だか料理漫画な展開になった所で先生帰還 「ユウさん…何だかあの二人すごくいい雰囲気だけど大丈夫かい?」 ぶちゅうっ
と。
「ユウたーん」
くそガキ中年現る。
「げ…」
「お?ユウたん、何だ?飯作る準備?」
ぶすっとしてユウは答える。
「…ああ。作るつもりだったが…止め。お前が来たからな」
恒例の帝王だだこね祭が始まった。
「何でだよ、作ってくれよ。俺ユウたんの手料理食いてえ」
「哲ならともかくてめえには作る気ねえよっ!帰って忌田に作ってもらえ!」
「けちー!あ…(ニヤ)いいこと思いついた♪」
そう言い健はヤサを出た。
仕事中の忌田に健は言った
「忌田、料理大会開くぜ」
「…はあ?」
「だから料理大会だよ。ジュクやノガミやらの玄人やらそれ以外の奴集めて料理作らせんのさ」
「ば…馬鹿野郎。またそうやって訳分かんねえ事を…」
「あ、お前も参加な」
「だから勝手に決めるな!!!」
「でも賞品聞いたら絶対参加したくなるぜ」
「…賞品?」
「ノガミのドサ健の名にかけて『何でも一つだけ言う事を聞く』んだ」
「何でも?じゃ何か?今後一切馬鹿な事せずに真面目に近代化に取り組めってったら…」
「ああ、やるぜ」
「…」
「よし開催決定だな…審査員は誰にすっかな…そだセンセにしよう。国民の血税でうまいもん食ってるからきっと舌肥えてるしな」
かくして大会は公布され、賞品目当てに多くの参加者が集まった
審査員の近藤先生は食う前からげんなりしていた。料理対決にエントリーした(させられた)のがユウ、哲、忌田。そして小龍。何故か印南。あとノガミ四天王と木座神。ドテ子に他多数の魑魅魍魎の類だったからである、げんなりしない方がおかしい。
「さあ楽しみだな、な?センセ?」
一人楽しそうな健
「そりゃお前はな」
忙しい中を無理矢理連れてこられた先生は冷たかった
「つれねえな。ちゃんと終わったらサービスすっからよ…ちなみに今回の賞品は知ってるよな。センセなら俺に何頼む?」
「政治資金」
近藤は間髪入れずに答えた
「つまんねえ回答。何か他にねェのかよ」
「…じゃあな、『二度と小龍を食おうとするな』」
「おっ?ラブラブだな?じゃあセンセは食ってもいいんだな」
「別に。所詮お前とは体だけの関係だからな」
やはり先生は冷たかった
「健の野郎、勝手に…まあいい!優勝して愛ヤツとの関係断って哲とリリカってやる!」
「参加者もユウさんの手料理食べれるのかな」
「近代化と、リリカル化かー俺はやるぜ…」
「ヒロポン一生分頂くぜ。ひひ」
「近藤から手をひいてもらうぞ何がなんでも」
なんかふくざつ。
「うちとダーリンの挙式費用まきあげたんで!!」
など濃い面子そろってます。
「おい健!?質問」
「はい忌田」
「第一回って何だ!?」
「楽しかったらまたやる」
「俺も質問」
「何だセンセ?」
「お料理地獄って何だ?」
「だって俺ドサ健だから」
「俺…何食わせられんだ(泣)」
「泣いてるセンセも素敵だぜ?じゃあルール発表と審査方法な。制限時間三時間以内に各自いっちばん得意な手料理を作れ♪でもって、まずセンセに百点満点で採点してもらう。で、こっから大切だぜ!ただ料理の巧い奴が勝ってもつまんねーからな、演出重視だ!俺にはそれぞれ一番効果的と思えるカッコと仕草で食べさしてくれよな♪ハニーたちぃ♪ブフー!!最終的にこの二人採点の総合で優勝決めるかんな!みんながんばれよっわーいっ」
「健…それって…」
近藤先生はツッコミを入れた
「ノーパンシャブシャブとかと原理は同じじゃあねえのか」
「ノーパンシャブシャブ…また懐かしい言葉だな。何でだ?」
「食事じゃなくて食うシチュエーションを性的に楽しませんだろ?じゃあ裸エプロンとかメイドとかで食わせたら点高くなんだろうがよ」
「先生のえっちい。接待でノーパンのねーちゃんにあーん、とかされたんだろ…いいなそれ…」
「ノーコメントだ…まあ一応審査員として言っとくが、俺は舌は肥えてるぜ?不味いもん食わせやがったら即失格だ、いいな」
「よし!!じゃあ始め!!」
「なあユウさん…」
「ん?何だ哲」
「米って…洗剤で洗ったら駄目なんだっけ?」
何だかいきなり多難な雀聖
「…哲あのな(泣)」
説明に時間をくうユウさんを尻目に他のヤツラはズンドコ準備を進める。
「なかなかいい食材が手に入ったぜ」
小龍が掲げる麻袋の中では何かが激しくうごめいている。
「ひひ、札幌ラーメン食わしてやっから待ってな、う…ゴフゴフッ」
「帝王の奴の忌田さんいじめをすっぱり止めさせてやるっ!あがっ、ダシ汁が全部こぼれたー!!(泣)」
「…よし、煮付け味付けはこんなもんだな、落とし蓋は…」
「温泉卵…芸術…」
何か地獄絵図のような光景。それを見て近藤はブルーに、健はすっげえ嬉し気になった。
ユウさんはそれでも優しく始めチョロチョロ中パッパまで親切に説明してやった
「哲…ところで今まで料理した事あんのか」
「ないよ(あっさり)」
「そうか…」
「俺は帰りたくなるよ」
「そういや三時間あるんだよな…犯らねえ?腹減ったら飯が美味くなるぜ」
「健健!!近藤を食ってんじゃねえ!!」
小龍はツッコミながら、すごい音を立てる『何か』を調理していた。その音は実に近藤の食欲を減退させた
「て、哲ぅ(嬉)」
ラブッてるうちに時間切れになりますよ、そこの二人。
「うちの得意料理ようけあるけどなー今回はお好み焼きや!こってりソースが絶品やで♪」
「ヒロポンがありゃあ、絶対味覚が冴えわたるんだ、ひひ。今話題の鶏でダシ取ったぜ」
「いやーんミミちゃん、どうかしらこのトリュフもりつけ〜」
「素敵ぃさすがタミイちゃん」
「…あさりのすまし汁完成だ、あとは…」
何だかうまそうな料理とそうでないのとが見た目に二極分化していた。
「…ところでどれから食うんだ」
「それは籤引きさ…(ごそごそ)よし一番はハブな」
「(何だか珍獣大集合みたいなのが来たぞ…俺も爬虫類系だから人のこた言えねえが)料理は?」
「…温泉卵…うめえ」
「それは『料理』なのか…いや料理だが…(ぱく)…温泉卵だな…」
あまりに普通に温泉卵だったので先生はコメントに困った。
「ハーブー!!さ、どうやって俺に食わせてくれんだ?ドキドキしちゃうぞ」
「…呑む…」
「丸呑み?」
「うめえ」
温泉卵は丸呑みするには熱すぎて向かないんじゃないか、という観客の思いを余所に、灼熱博打打ちは本気で丸呑みした
「…うめえ?」
「おお、のどごし悪くねェな…センセもするか?」
「しねえよ!!」
「美味いのに…よしよし、美味かったしお前可愛いから点は大サービスだ…ちなみにお前の望みはなんだ?」
「卵…うめえ」
「…玄人なら博打で稼ぎゃ好きなだけ卵くれえ食えんだろうが」
先生はツッコんだがハブ君にはハブ君の美意識があるのだった。
「私が〜ありったけの情熱を込めて作りましたこの料理をば♪さあ召しあがれ〜」
春木がリズムに乗り皿の上の白布を取る。
「こ…れは?」
「んーエクセレント!なハーモニカのフレンチソテー♪食べれば音が鳴る鳴る♪」
「食えるか!!…失格!」
「ん〜ホワーイ?人生ミステーリアス!」
「うし、うちの自信作!!関西風お好み焼きや!!ソースとマヨネーズをたっぷりつけて食ってな」
「お好み焼きか…ちなみに俺は元大阪府議会議員だからな。関西料理にはうるさいぞ(ぱく)」
「どや?センセ」
「美味い。微妙な所をキチンと押さえた焼き加減にキャベツや肉の分量もいい。ソースの味がやたら濃いのも庶民の味として悪くない…が」
「何やねん」
「マヨネーズをやたらとかけるのは頂けんな。せっかくの特濃ソースの味がマヨネーズで分散してしまい味の焦点がぼやける」
「おおさすが議員センセだな。何か難しい事言ってるぞ」
「何やて?関西ではな!!ソースとマヨネーズはぶちゅぶちゅかけまくるのが本道やねん!!エセ関西人がえらっそーな事言わんといてや」
「エセ…」
「おー!?ドテ子がセンセの審査に喧嘩売ったぞ!?まさか失格にしたりするのか」
「…確かにうさんくさい関西弁は喋ってたが、ありゃ商売柄仕方ねえんだよ…別にこの程度で怒る程子供じゃねえさ、心配すんな」
「おーエロ中年のお手つきの割に意外とまっとうやな」
「…いいからさっさと健に食わせてやれ」
「おう、見さらせやエロ中年!!」
ばっ(服を脱ぐ)
「ビキニだあっ!!(嬉)ぽろりん巨乳に眩しい太もも!!そして細い腰っ!!うわ、お好み焼きよりむしろお前を食い…ぐおっ…」
「うわ…(恥)」
「ドテ子…」
哲とユウが目のやり場に困っていた
「あーん」
さすが女の子(笑)ドテ子は目的の為なら手段を選ばなかった
「センセもあーんする?その代わり点数は高こしてな」
「俺はロリコンじゃねえからな。遠慮する…」
とか言いつつ巨乳は好きなセンセだが、さすがに『ご主人さま』からの殺気の入りまくった目で睨まれてはうんとは言えないのであった
「食べるのが恐ろしいんだが…」
「まあ食ってみてくれよ、ひひ」
印南がさし出したラーメンはあつあつの湯気を立てた出来たてで、意外にも見る限り非常に美味そうだった。ビクつきながらも箸を口に運ぶ近藤。
「ん…あっさりかつコクのある塩バターラーメンだな。鳥ガラスープが絶妙だ。素人には難しい麺の茹で方も完璧…チャーシューもいいものを使っている…が何だろう」
「どうしたセンセ?」
「いや、料理は生命の源な筈だが…このラーメンはメメントモリ、死を思わせるような味が…」
「いいな!早く食わしてくれ♪」
「おっと…健ちゃん。あんたのはこれだぜ」
「ん二杯食わしてくれんのか」
「ひひ、このうち一つは代議士先生と同じやつだが、もう一つは食った瞬間口も内臓もただれちまう酸が入ってる。食うまでどっちかわからない、名付けて玄人サバイバルラーメンだ、ひひ」
「おお!玄人にうってつけ♪よし、俺の運をみりゃれ♪」
「やめろ!健!!」
皆の制止もきかず帝王は一気に杯をあおる。
「はーうめーっ!!」
「な、なんて野郎だ全然躊躇なく!」
「さすが印南にドサ健」
忌田ショックで脱魂状態。
妙にテンション高い健の前にいつものカッコの小龍が現れた
「…チャイナドレスじゃねえの?」
不満そうな健
「ふふ…これで優勝してキッチリ近藤と別れてもらうぜ…これがサービスだ!!」
ばっ…
「おおっ!京劇だあっ!!」
豪勢な衣裳に身を包む小龍
「…てめ…女装が板について来たな…」
複雑な表情で言う近藤に小龍は自信満々に答えた
「元が美形だからそこらの女より遥に似合うだろ?」
「すげェ…なんて脱がしがいがありそなカッコだ…大満足」
さっそく抱き締めようとする健に小龍は蹴りをかました
「…まあいいや後で…で、料理は?」
「それも自信作だぜ」
小龍が取り?出したのは猿だった(生存)
「料理?」
「猿の脳みそだ」
「生きてねえ…か?」
「馬鹿、そのまま食うんだよ」
小龍はフリフリの袖で猿の頭蓋骨をカパと外した…会場がどよめく
「うぅ…!?」
あからさまに表情が変わる近藤
「さ、めちゃ新鮮だぜ?何せまだ生きてるからな。薬味はこれ…」
箸を付けるのが嫌そうな近藤に小龍は機嫌を損ねた
「何だ?てめえの為にわざわざとって来たんだぜ…それとも何か?そんなに健と別れるのが嫌なのか?奴に抱かれたいのかよ」
「そういう話じゃなく…」
「このクソ淫売が!!」
「…てめえ…そもそも最初に健に俺を抱かせたのはてめえじゃねえか!!」
「あいつがこんにてめえに執着するとは思わなかったんだ…だから今度こそきっぱり別れさせてやる」
「痴話喧嘩してねえで早く食えよーセンセ」
無理にスプーンで猿(生存)の脳味噌をすくわせようとする小龍だったが。
「む、無理だ!ししっ、失格!(泣)」
「てめえ近藤、オレの手料理を…後でいたぶりつくしてやる!」
「そっちのがましだ(泣)」
「なんだつまんねー食わして欲しかったのに。んじゃあ次!木座神〜?」
「湯豆腐ー!?」
「…ようやく胃休めになりそうだな」
さっきの猿の脳みそがかなり胃に来ていた(食べてないけど)先生は少しほっとした
「やっぱ冬は湯豆腐だな…これで熱燗が付いてるともっといいがよ。昆布だしのいいかおり…」
と言い掛けて先生は絶句した
「…昆布?違うっ!これは…・これ、ラベンダーの香りがするぞ!おい!!」
「こ…昆布だし全部こぼしちまったんだよ!だから代わりにラベンダーのポプリを…きっ、北の国からの情緒を味わって食ってくれ」
「無理を抜かすな…食べられるのかこのツユで…」
「全然大丈夫だ(と思う)」
近藤はおそるおそるツユに豆腐を浸し、口にいれた
「う…と、トイレの芳香剤の香りが口ん中いっぱいに!さー最悪っ!!」
「で、俺にはどーやって食わしてくれんだ?」
「てめえに食わせるなんて不本意この上ないが!忌田さんのためだ!オレの男体盛りで…!(泣)」
木座神は服脱ぎかけたが
「萎え萎え〜!てめえの男体盛なんて1ミリも萌えねえよ。ノーせんきゅー♪」
「うわこんな節操なしに拒否された?!(泣)」
登場した双子のゴージャス巨乳姉妹に先生は興奮した
「はアい先生。鹿肉のポワトリーヌ、トリュフ添えですわ」
「美人だな…」
嬉しそうに呟く近藤が面白いのでタミミミの性別の事は黙っている健
「うふふお上手、さ召し上がれ」
「(ぱく)これは…上品な甘さのソースと火加減の丁度いい鹿肉が絶妙なコントラストを醸し出している…しかもこのトリュフ…フランス直産で非常に薫り高い逸品だ」
「ふふふ、さすが先生は舌が肥えていらっしゃるわン」
「フランス料理と言えば日本人の口にはすこしくどく感じられる場合が多いが、これは素材の味をうまく生かした和風…素晴らしい!!」
「おおー、本日一番の大絶賛だ、すげーぞタミミミお前等料理も上手いんだな」
「うふふ光栄ですわ」
「しかも料理したのがこんな美人…健?お前のレコか(小指を立てる)」
「ちげーよ(だって男だしな)」
「なら…よけりゃ俺のレコに。手当ては弾むぜ」
「いっやーん!!先生ったらぁん…冗談ばっかりぃん」
「冗談じゃねえさ、何なら二人まとめて…」
「本当に二人で、でいいの?」
「やめろ近藤!!」
ついに耐えかねてご主人さまが口を挟んだ
「そいつらは男だ」
「…男!?」
信じられない表情の近藤に小龍は行動で示した
「見ろ(がばあっ)」
めくりあげたスカートの中には見慣れた『ブツ』があった…
「いやああんっ!!ひっどおい!!健さまぁん、密輸プリンスがセクハラしますわぁん」
「はっはっはっ、まあ許してやれよ、な?」
「お…オカマ…」
非常にショックを受ける先生に双子は追い打ちをかけた
「折角二人がかりで先生を思いつく限りまあいろいろと弄ぼうと思ったのにぃん、ね?タミちゃん」
「ええミミちゃん」
「近藤はオレのだ!!手ェ出すなオカマども」
タミミミ二人に健が美味しく料理を食べさせて貰っている間、気の毒に先生は硬直したまんまだった
「久しぶりじゃな健」
そう言い神保は微笑んだ。
「おっさん、あんたも参加してくれたのか!」
「教会の子供らの生活を少しでも楽にしてやりたくての、あさましいとは思うたが参加させてもろうた」
「おっさん…やっぱんたはすげえよ」
「(何か贅沢してるだけに肩身狭い)神保さん、だったか。料理の方は出来てるか」
「むろん、これじゃ」
差し出されたのは天丼…に近いがちがった。
「これは?」
「野草を天ぷらにして揚げたものじゃ。それからこれ」
もう一品は菜っぱ?の味噌あえもどき。
「最近は皆捨てよるがの、大根の葉を刻んで胡麻と味噌であえた。米以外全部ほとんど元手はかかっとらんよ。手を加えればゴミも立派な料理になる」
「何か…これは子育て保父さん奮闘記か何かの企画か?」
「懐かしいぜ、おっさんよく作ってくれたよな、俺らには何よりのご馳走だったぜ」
一堂しみじみと感慨深く近藤を見守る。雰囲気的にかなり食べにくかったが料理を口に運び近藤少し驚いた。
「これが…元手ゼロの味か?いや、十二分にプロにも通用する味だ。またすごい技もあったものだ」
「さすが俺の師匠だぜ」
「ワシは特に演出は用意しとらん、ただ健お前が食べるのをここでこうして見ているからの…」
殺気だっていた場が一気に和んだ。神保さんの料理を食べ、心に深く染み渡るものを感じた先生は、これからはちゃんと福祉問題を取り上げようと深く反省した
「さて、旨いもんを食い過ぎたんで少し腹休めに休憩だ」
「個人的にゃあ神保さんに優勝させてやりてえが…」
「オイ先生?審査と博打に私情持ち込むのはナシだぜ。それにこっからが優勝候補なんだからさ」
「優勝候補?ンなもんいるのか」
「俺のハレムの住人達だ!!(自信満々)」
「…何であんな立派な人に育てられておきながらお前みたいなのが育つんだろうな」
「(聞いてない)忌田は料理上手だし、作ってくれねェけどユウたんも絶対料理うめえしな!!…哲はどうだろう…」
「阿佐田?…さあ…」
「ところでセンセ料理は?」
「俺が料理?出来る訳ねェだろ」
「やっぱな…さて、腹減らす為に(肩に手をかける)ヤらね?」
「(払い除ける)ヤらねえよ」
「何で小龍が本命なんだよー!?俺と初めてヤった時にゃ『すげ…こんなの初めて』って言ってくれたじゃねえか」
「(思い出すと恥ずかしい)うるせえ!お前とは体だけの付合いだ!」
「よし」
「何だよ」
「じゃこの大会の優勝者賭けようぜ」
「は!?俺もお前も審査役だろ?賭けになるかよ」
「(ニヤリ)何が起こるか分かんねェのが博打さ。センセが勝ったらもう二度と小龍に手ェ出さねえし、嫌がるセンセにちょっかい出さねえよ」
「(唇を嘗める)じゃお前が勝ったら」
「無論センセは俺のもんな…あんたの分は相当いいぜ?」
「…受けてやろう…方法は互いに優勝者の名前を書いて封をする。優勝者が決まった時点で開封だ。互いに相手の書いた奴の名は見えない」
「いいぜ」
健は勝負師の目をして笑った。その瞬間、近藤は何だかヤな予感がした
「阿佐田…」
「近藤。とりあえず食べてみてくれよ」
照れ臭そうな哲に先生は和みまくり、健は大興奮。そして哲が差し出したのは
「おーオムライス!!」×2
審査員二人とも無茶苦茶嬉しそう!しかしこの後恐るべき展開が二人を待ち受けていた。
「阿佐田…さっそく食わせて貰うぜ」
とりあえず見た目は普通のオムライス。難しい筈のふんわりした卵の皮の部分も、彼の器用な手つきか、それともユウの手が密かに加わっているのか完璧に仕上がっているように…見えた
「うまそうだな」
との健の台詞はオムライスへなのか、エプロン姿の哲へなのか。ともかくオムライスへスプーンを刺した時点で、何だか不可思議な感触はした
不自然極まりない感触に近藤は思わず哲に尋ねた。
「阿佐田、これ中に入ってるのは一体…」
「え、飯とアサリとドングリ(殻つき)だけど」
「え…ええええっ〜??!!」
「へえ、海の幸山の幸をフンダンに使ったオムライスんだな♪」
「いやあ(照れ)」
ちなみにアサリの砂抜き、ドングリのアク抜き全然してません。
「く、食うんだよ…な、これ」
期待に満ちた哲の眼差しを受け、男同士の友情と信頼にかけて、近藤はスプーン上の異物を口に入れた!
「…!!!!っ」
大自然の脅威が近藤の口の中に吹き荒れた。玄人が生きる自然の理を身をもって近藤は体感した。
「阿佐田…」
「どうだ?」
「飯は…」
うまく炊けている、そう言って近藤はお花を摘みにひた走った。
「なんだ先生感激で泣いてたぜ、さあどーやって食わせてくれる?哲」
「え…と」
少し恥ずかしそうに哲は言った。
「オレの望みは他でもない。お前がユウさんとはっきり別れてくれりゃそれで…で恥ずかしいけど…このカッコで勝ちにいくぜ!!」
そして自分の為に踏み外してはならない人の道を外れた最愛の人をユウは涙なしには見る事が出来なかった
飛び付こうとする健をユウや忌田が必死にとめるが
「いいぜ、抱き締めるくらいなら。その分の点数はもらうけど」
「なにいぃぃ?!」
「哲ー!!!(喜)」
「こっ、こんなの哲じゃないようっ!俺の哲はもっとリリカルで…」
ユウは泣きながら絶叫しまくった。
「だってユウさん…健と別れたいのにあいつがしつこく付きまとうって言ってたじゃないか…だから…だからオレ…ユウさんを守りたかったんだ」
裸エプロンだが考えは男前な哲に
「哲…俺は…俺は自分が汚されるよりお前がこんなカッコする方が辛ェよ」
「ぶー…ユウたんもいっつも気持ち良さそうに抱かれてんじゃん」
「ユウさん」
「てめ…健!!哲をここまで追い詰めやがって!!」
「…俺のせいかよ」
「哲、俺の業は俺が濯ぐ!健!優勝は俺が頂く…とりあえず哲服着ろ」
「待てユウジ!!てめえの気持ちは分からんでもねェが、近代化の為に優勝は俺が貰う!!次は俺の料理だっ!!」
「ん?何だか場が沸いてるな…何かあったのか」
「ああセンセ、哲がはだ…」
「行くぞ健!これが俺の料理だ!!」
「こいつは!」
近藤は並べられた料理をみて作り手とのギャップに驚いていた。
「お前は確か近代化を目指しているんだったよな?さばの味噌煮に、あさりのおすまし、あとふかした小芋に酢のもの…っ?!これは懐かしい…まさに日本の食卓!」
「自信作だ、食べてみてくれ」
「…む、何だかすげえ苦労してるありがたいお袋の味が!温かい、美味いな(泣)ショウガでさばの臭みが消えて絶妙ないい味になっている、汁物も味のバランスがうまくとれている…どこで習ったんだ?!」
「聞くな(泣)」
「いー匂いだぁ!!じゃ俺にどーやって食わしてくれる?」
ちゃんと考えてある、と割烹着の忌田は言って卓袱台の上に料理を並べた
「わーい飯ぃ!」
さっそく食らい付こうとする健に忌田は言った
「こらっ、ちゃんと席につきなさい…きちんと正座するんだよ…手を合わせて何て言うの?」
「え…いただきます」
「はいおあがんなさい」
「…日本のお母さんの食卓風景か…こいつは虚をつかれた」
妙に感心する先生となんだか純な笑顔でご飯を楽しむ健。そう、親のない彼には今までこんな時間はなかったのだった…
「ご馳走様」
「はい御粗末さま」
「おかあ…じゃない忌田…」
「…何だよ…」
さすがに裏世界を生きる男として恥ずかしかった忌田に健は微笑んだ
「うまかったよ」
哲の質問にユウは答えた
「大丈夫…だから信じて待っててくれ」
「さあラストだぜ!ゆっうた〜んっ♪だなっ。料理はなんだあっ?」
「見ろ!俺のはこれだ!」
じゃん。
「鍋焼きうどんだー!」
「ほう、葱や海老の天ぷら、かまぼこと…具だくさんで美味そうだ!ん…いいダシが出てるな、手うちうどんの太さと固さもちょうどいい!…が」
「な?どうしたってんだ?」
「惜しい…いかんせん煮込みが少し足りない!」
「あ!!」
哲とらぶっていたため時間がほんの少し足りなかったようだ。
「く…こうなりゃ演出で点稼ぐしか!」
「ユウさん」
「どんな食べ方さしてくれんのかなーワクワクするぜ♪」
「ええい、ままよ!哲!!今だけ許してくれ!健…てめえには…俺が…くっ、口移しで食わしてやるうっっ!!!(泣)」
会場がどよめいた。
「ユウさん…オレが言うのも何だけど、それって裸エプロンよりよっぽど身を汚してんじゃ…」
「すまん哲(泣)だがこれが俺なりのてめえの始末の付け方なんだ!!」
「口移しがかよ…(小声)なあ健、まさかあのガタイのいい下駄の男もお前の…」
「第三夫人だ!!(自信満々)」
「…お前の趣味が分からん…てか無いのか」
「色々いた方がハレムも楽しいじゃねえか?てかユウたんあったかくて優しくて(思い切りが悪いくて優柔不断とも言う)しかもキスが可愛いんだぜ…さ、はやくユウたぁん。その口と唇で俺の欲求を満足させてくれよ」
「ンな卑猥な言い方するなよ…(これもこいつと別れる為だ)行くぜ!!」
…何だかすさまじく激しい音が会場に鳴り響いた
満場が沈黙する中、その口移し…てか濃厚なキスは際限なく続いた。
ユウが口移し、ってか長いキスをやっとのことで終えて、健から離れようとした。と。
「ユウたん、俺残さず全部食べないと気すまねーんだ♪口ん中にまだうどんの味残ってんぜ♪」
健は逃げようとあがくユウを捕まえ、舌を入れ激しいキスで再び責め始めた。
「…ん…んんっ…」
顔を紅潮させながらユウは必死に快楽と闘った(笑)
えんえんと続くキスに一堂がゲンナリした頃
「長い!もう止めなさい!!」
忌田母さんの怒りの鉄槌。
踵おとしを何とか避け健は長すぎるキスをやっと終えた。
酸欠と快楽の余韻と精神的ダメージでフラフラなユウを尻目に健と近藤は封筒を取り出す。
「ここに、既に優勝と俺が読んだ奴の名前が書いてある」
「俺もだ♪」
「よしじゃあ点数を出すぜ」
かくして大会優勝者が今が決まろうとしていた。
審査中
…先生が頑張って集計表に色々書き込んでいる横で健は紙飛行機とばして空に投げていた
「センセ?まだ出来ねえのか」
「てか何でてめえはもう終わってんだよ?見せてみろ」
それは近藤の審査が味覚面の事なので論理的に色々考えなければならないが、健のは『直感』で点が付くものだからだった「まだ見せねーぜ、センセが終わってからな」
「…(書き書き)終わったぜ」
「よし、じゃあもう変更無しだ、いいな」
「ああ」
そうやって受け取った健の審査の紙を見て近藤は愕然とした
「何でこんなにハブの点が高いんだあっ!!」
「だって可愛いじゃん」
慌てて全員分の審査用紙を見ると非常に予想外(てか無茶苦茶な)点がついていた
「…」
絶句する近藤に健は追い打ちをかけた
「さ、後はこれを足すだけだな…今更だがセンセ?負けたらあんたは俺のモン、だからな」
近藤はこの博打を甘く見ていた。
感性は他人が推し量る事は出来ないものだから、この博打は相手の手が読める分健におもいっくそ有利だったのだ(しかも話持ちかけたのは健だし)
(不味い…めちゃまずいよ俺…)
蒼白になる近藤をよそに健は声を張り上げた
「優勝者は…お?」
健が不思議そうな表情になるのをみて近藤はおそるおそる尋ねた。
「いやあ賭けってのぁ最後まで分かんねえもんだな♪」
「は?だっ、誰になったんだ一体!!」
「じゃ発表!今大会の優勝者は〜印南っ!!!」
「えええええーー?????!!!!!」
「ちょっ、どーゆーことだ?!」
点数表をあらためる近藤と、後ろからのぞきみる健。
「あー桁いっこ間違えた♪まっいっか。まあそゆことで。死神くんにはヒロポン一年分プレゼント♪」
「ひひ、ありがたく頂くぜ」
「俺ら…何のために…(泣)」
放心する一堂に健はつけ加えた。
「先生、二人とも外しちまったなあ、はは♪あ。お前らまだ帰んなよ。優勝者以外にもいくつか賞用意してんだ」
「…賞?」
「審査員特別賞だあっ!!さセンセ行けェ」
「は?…おい特別賞って…」
「まあ何か気に入った奴に賞あげてくれよ、誰でもいいし何あげてもからさ」
「は…ああ…じゃあな…神保さん、賞品は…じゃ米一俵で」
「有り難い事じゃ。あんたに神のご加護がありますように」
「そりゃどうも…」
「そして阿佐田」
「オレ?」
近藤が食わされたのは何とも言い難い物体だったが、それでも近藤は友情を優先させた
「敢闘賞をやろう」
そして近藤は『今日の料理特別版、初めての料理』を取り出した。こないだどっかの出版社から陳情を受けた時に向う忘れていった代物だったが
「ありがとう近藤。もっと巧くなったら是非食ってくれよ」
「ああ…ありがとよ」
哲の爽やかな笑顔に近藤はさっき食わされた物体Xも消化されていくように感じた
「あとハブ…たまご50Pな…それから」
「あ!そーだ♪」
近藤先生の受賞式に突然健が割り込んだ。
「ちょっと待てよ」
何か紙に書きつける健。
「おーい!!忌田、ユウたーん。これ帝王専属料理人のしょーめーしょなっ♪これからは俺の気が向いた時に、俺の食いたいもんを作るように!♪」
「あほーっ!!(泣)」
「あー美味かったし楽しかった♪またやろうなっ!」
「嫌だー!!!」
ブーイング大合唱の中、第一回お料理地獄は幕を閉じた。
終
リレー小説の中でもお気に入りの代物。って雀聖の裸エプロンが一番の見物だとおもいます。この話をリレーしていた頃から、健のジャリガキ化とユウたんいじめがとまらなくなりました。ちなみに近藤って絶対舌肥えてるよね?