「いらないこ」の家出
木座が天界に出勤すると
「こんにちは木座神さん」
「碧さん?なんでここに」
「それがね。うちの人ばかり働かせるのもなんだからここで雇ってもらったの」
「うちで?」
「ええ、健さんがぐちゃぐちゃ言ったけど忌田さんが秘書みたいな仕事してくれって言って下さったから」
「秘書…」
何だか釈然としない木座
(忌田さん…あなたの秘書ってオレじゃないんですか)
それでも、自分がとやかく言う筋合いのものではないので黙って木座は一日、碧さんと働いた
「いやあ碧ちんて働きモンで有能だよな♪」
「…」
「てか木座、お前もういらねーよ」
「み、碧さん?あのうちの帝王セクハラとか大丈夫ですか?正直キツイんじゃ?」
「心配してくれてありがとう。けど忌田さんに…あの、口じゃ言えない例の必殺キックも教えて頂いたし…」
「…そ、そうですか。ハハ…」
「はい木座残念〜ばいば〜い♪」
「う…く…(泣)」
泣いて天界を走り去る木座。
(忌田さん…あなたにはもうオレは要らない子なんですね!もう…わーん!!)
「木座神さん…、どうしましょう…」
「いーじゃん、いーじゃん。萌えキャラばっかの職場サイコー♪」
「健さん貴方ちっとも仕事してないじゃない…木座神さんほども」
「俺総帥だしい」
そんなこんなしてると忌母さんが外回りから帰ってきた。
「おう忌田、今月から人件費安くなるぜ」
「は?」
「あの…木座神さんが泣きながら出ていってしまって…」
「こら健、また木座をいじめたんだろう」
「いじめてねえもーん♪ヘタレをヘタレって言っただけだもん」
碧さんから理由を説明され納得する忌田
「すいません私が…」
「いやあんたのせいじゃない…そうか…そんな事気にして…」
「いいじゃん、別にいらないし」
健を無視して、忌田はコートをまた羽織った
「探しに行く」
で木座。
泣きながら町を彷徨っていると
「やあ君はこの間の娘だね」
毛唐が嬉しそうに声をかけてきた
「オレは男だよ、糞毛唐…」
「おおよく見ればそうだね。では女装は趣味かな?いや、泣き顔が可憐だね」
「ファッキン毛唐め…(泣)」
そして腐れ毛唐は突然札束を懐から取り出した。
「どうだね今夜?センチになってるようだから…私が大いに慰めてあげよう。いや、その貧相な体と捨て犬のような目ソソるね…こないだのピアニスト?もマニアックでなかなか良かったが」
(は…春木食ったの?!てかオレ春木と同レベルのマニアックさなの?)
ともかく振り切って逃げようとした木座だが
「逃さないよ(ハアハア)今宵は私とスリリングなプレイを楽しもうではないか」
「ぎゃあああ!!(泣)助けてぇ!!」
木座が泣き叫んでいると
「木座神…」
「げ…変態代議士(泣)」
余計ややこしい人が来た
「おお祥二くん、知り合いかね」
「一面識はね」
代議士は泣きじゃくる木座をねっとりとした視線で眺めると
「ミスターゴールドマン、こんなヘタレより、今夜は俺を可愛がってくれるんじゃないんですか」
と淫美に微笑んだ
「ふふ…どうしたのかね今日は。君からおねだりするなんて」
「クク…そんな時もありますよ」
なんだか自分から注意は逸れたらしい…と木座が判断した時だった。
舌舐めずりしながら近藤は言った。
「ミスターゴールドマン。たまには…3Pというのはいかがで?」
「な…なにいい?!!」
「ほう」
「二人がかりで私がお相手しましょう…ククク…もちろん貴方はこちらの木座神も抱けばよろしい…いかがです?」
「変態…に磨きがかかりやがったー?!チクショー!(泣)」
「素敵なプランだね…よし、では良いホテルがあるのだよ。そこで…フフ」
「リリカル、オレをリリカルに帰してええ!!(泣泣)」
だがやって来たロールスロイスに拉致され、車内に引きずり込まれた木座。
中はすげえ豪勢だったが木座はそれどころではなかった
「ふふ…怯えた子猫のような表情が実にいい…是非すぐに…」
「クククク…もっと怯えさせた方が楽しいですよ」
近藤はクソ毛唐に口付けた
「ここで始める気かね?気の早い子だ」
「ええ私はせっかちなんですよ」
「いやいやいやあっ!!オレ降りるうっ!!」
だがロックは開かない。
隣でチャックを下ろす音が嫌でも耳に入る
「助けて忌田さん!!オレもう家出なんてしませんからぁっ!!」
『人には居場所というものが必ず用意されているのよ…』
何かママの言葉が空から聞こえる。
「ここはオレの居場所じゃねーよう!(泣)」
「さあ仔猫ちゃんおいで…フフ」
そん時。
パシュンパシュン…
という銃声とともに車体がぐらついた。
「どうしたんだ?!」
運転手「た、タイヤがパンクして…は、ハンドルがきれません!」
ビルの一角で
「近藤…浮気は許さないぜ」
ライフルをもつ小龍がいた。
「ちっ、すぐに代わりの車を用意…」
言ったところで、窓ガラスに銃弾がたて続けに打ち込まれた
「?」
「ひいっ!!」
長い悲鳴を上げる間もなく、金男の顔面に蹴が入れられ、近藤と…何を間違えたのか木座も別の車に引き込まれた
で
「貴様、いい加減にしろよ!!」
「フフ…相変わらず嫉妬深いな」
「あんな腐れ毛唐のどこがいいんだ」
「腐れ毛唐だからいいんじゃねえか」
「あの…オレお邪魔みたいだから帰りますね」
逃げ去ろうとした木座だが、鬼畜プリンスはそんなに甘くなかった
「てめえ、気がつきゃいつも俺の近藤の側にいやがる…狙ってやがるのか!」
「違う違う違うー!!(泣)」
「小龍そいつは見当違いだ」
「何にせよ目障りだ。おとなしくおっ死にな(チャキ)」
「いやーあ!!(泣)オレなんもしてないのにい!!」
「落ち着け小龍。弾がもったいねえだろ?それより…車ん中じゃどんなプレイを…?クク」
「色々あるぜ。しかしやっぱりこのヘタレは邪魔だ。外出やがれ!!」
「ちょ…今走行中!!」
車のドアが開かれ、木座は叫びながら蹴り出された。
ボチャーン…。
運良く落ちたのは、
河。
「う…が…足つった!助けてえ(泣)」
木座が助けを求めると、天使が降臨した…筋肉質な天使だが
「おい大丈夫か?」
「げほげほ…ユ…ユウジ?」
「木座!?こんなトコでなに溺れてんだ」
「う…うわあああああん!!」
木座に抱きつかれ困惑するユウ
「恐かったよう…オレ…オレ何も悪くないのに…」
「ま…まあ待て。とりあえず俺のヤサ来い」
そしてユウのヤサ。
「ひっく…ひっく…(泣)」
「そんな泣くな…何があったか知らねえが、ほらズクズクじゃねえか。これ着てろよ…ちゃんと洗濯してあるから」
「うええん…(泣)」
「落ち着いたら、話してみろよ。な?俺でよけりゃ聞くから」
服を洗ってもらい手料理までご馳走になりながら、木座はあらいざらいを話した
「…そりゃ災難だったな」
「オレ…忌田さんに要らないって言われたならどうなったっていいと思ったけど…やっぱりやだよう」
「そりゃ…変態外人に掘られて変態代議士に食われて鬼畜に射殺はやだよな」
「なあユウジ…オレどうしよう」
「俺もそうだから、こんなこと言える身分じゃねえんだが…突っ走りすぎると周りがみえなくなるタイプだろ、お前。本当に必要じゃなくなっちまったのか…確かめてみろよ、忌田本人に」
「え…それは…」
おし黙る木座。
「どうした?」
「こええよ…(泣)オレ、ヘタレだから無茶苦茶怖いんだよ!まじで必要ない、って言われたらオレ…どうしていいか(泣)」
中途半端なだけに、ヘタレの心情もよく分かってしまうユウだった。
だがユウは優しかった
「忌田はそんな事言う奴じゃねえよ!」
「ユウジ(泣)ごめん…お前すげえいい奴だよ(泣)帝王の愛人にしとくにゃ勿体ねえ…」
「…ありがとよ」
「オレ行くよ!忌田さんの愛を確かめに」
で天界
「碧ちん。残業代と特別手当て出すから俺としっぽり…(どぐわ)」
「しません」
「…(不満そうに)だって金欲しーんだろ?じゃいいじゃん。気持ち良く金稼げ…ごぶうっ」
「やめなさい。しかし碧さん、なんで今になってパートなんて…」
「…欲しいものがあるんです」
で木座。
上野を歩いているとラバが働いていた
「(相変わらずキツそうな仕事だな)やあラバさん」
「…木座神さんか」
「大変そうだね」
「いや」
「碧さんも働いてるんだからもちっと楽な仕事にしたら…」
木座が言うとラバは眉をひそめた
「碧が働いてる?」
「え!?知らないの…」
「是非詳細を教えてくれ」
戸惑ったが木座神はラバの真摯な瞳に、碧が天界で働いてることを言うしかなかった。
「俺が…不甲斐ないから…碧、すまない!!」
「そうとも限らないんじゃ。あの…良かったら確かめに行きましょう」
「どこに?何をだ?!」
「大好きな人の…本当の気持ち、を…」
「本当の気持ち?」
木座神はゆっくりうなずいた。
「行きましょう天界に」
天界
「欲しいもの?」
「ええ。うちの人、昼は昼で肉体労働、夜は夜で絵を描いて…寝る時間もロクにないのに、最近は更に絵を描くのに没頭しているの」
「分かった♪欲求不満なんだ。だから俺ごぶうっ!!」
「忌田さん、この生物、窓から蹴りだしてもいいかしら」
「わーいSMだあ」
「健、黙ってなさい。それであんたの欲しいもんてのは…」
「だから…」
「碧」
「忌田さん!(泣)」
「碧!お前…やっぱりここで働いて…」
「黙っててごめんなさい、貴方」
「どうして…やはり俺の給料じゃ苦しいから…」
「違うのよ。あなた」
見つめ合う二人。
一方
「木座、心配したぞ…」
「忌田さん…オレ…(泣)」
「話は後でゆっくり聞こう。ラバさん、碧さんは何か買いたいものがあるそうだ…あんたのために」
「何?!俺の為に?それは一体…」
ラバの台詞に碧は答えた
「赤ちゃんよ」
「はい!?」
驚く一同…てか一番驚愕したのはラバだった
「え?碧。まさか子供が…?」
「ガキが欲しいんだったらぶっ通しでやりまくりゃいーだけじゃねえか」
「(無視)まだ出来てないわ…でもやっぱり欲しくない?」
「ああまあそりゃ…でもなんで今」
「だからその時の為に貯金しておこうと思って」
「なんだよー俺を無視するなよー」
「あなた…どうかしら…幸せな家庭を持ちたいの。画家として成功したあなたの姿、子供と一緒に見たいのよ」
「碧…」
「こちらでの仕事やりがいがあるし、出来れば続けたい…あなたさえよければ」
横ではヘタレが号泣し
(家族ってこういうもんだよな…先生に聞かせてやりてえ)
とか忌さんは思っていた。
で一匹。家族の有難みを知らない上に、理解できない輩は
「えー!!ガキなんかいたら邪魔じゃん」
とか言っていた…が無視された
「そうだったのか。すまんお前の気持ちも知らないで自分の事ばかり考えていた」
「すんません!!オレも自分の事しか考えてませんでした(泣)忌田さん、碧さん桜庭さんごめんなさい」
「木座…碧さんがいてくれるのは有りがたいがよ…お前もいてくれた方がいいんだ。ほら、健の世話は何人で見ても手に余るからな」
「はいっ!!オレこれからも頑張りますっ!!」
「俺がガキみてえじゃん」
「無精髭の胡散臭い面して、てめえが一番ガキなんだよ!」
「そっかなあ?」
(すげえそうだよ)
一同皆つっこんだ。ラバ以外。
「碧さん、一番厄介なタイプの育児だと思って予行演習てことで…力貸してくれ(泣)迷惑かけるが」
「勿論。しつけは厳しくするつもりでいますし」
「わあお♪碧ちんと鬼畜プレイー♪ひゃほーい♪」
「それと木座。食われる危険なしに、あいつの相手出来るお前みてえな人材がどれだけ貴重か…自信をもて!!」
「え、ええと…はい!頑張りますう!!」
そこでラバはしみじみと言った。
「大変だな…」
「まあ…(泣)うん…」
「その細い体でよくこの髭乙女を産んで…育てあげれたものだ」
(ミスター天ヴォケぇぇ!!)
ポン。
「やっぱ忌田、俺のオフクロだあ♪ひゃほーい」
かくしてラバの勘違いがより深まり、碧さんの就職が決まり木座の自尊心が満足された所で、てんやわんやが終った
「これで碧ちんとしっぽりしまくりー」
「しっぽりとは何だ?」
「ラバりんもうちで働こうぜ♪夫婦丼でしっぽり…」
「夫婦丼?」
「うちの人にそん爛れた事教えないで」
「なんだよー、プレイの幅が広くねえと飽きるだろ?」
「プレイ?」
「…この旦那、子作り出来んのか?」
一同の一抹の不安を残しつつ、木座のはじめての家出は幕を閉じた
「てか、外は怖いから、もう家出しねーよう(泣)」
そして、家出を乗り越えてもやっぱり木座はヘタレのまんまだったという
天界の外は危険がいっぱいです
中も危険が一杯です