芸術家の奥様の苦悩

天界にて。 今日も一生懸命働く碧奥様ですが…なんだか元気がなかったり

「どうしたんですか碧さん。元気ないみたいだけど」
「あ…木座神さん…はい…いや、なんでもないんです」
「碧さん。悩みがあるなら話してくれないか…幸い健もいない事だし」
「そうね…忌田さん。実は…夫がスランプなんです」
「スランプ?」
「描いても描いても納得がいかないみたいで…しまいには絵筆が握れなくなっちゃったんです」
「そりゃ大変だな…で旦那さんは?」
「せめて休んでくれればいいんですけど、そうしてると余計不安みたいで、昼の仕事に加えて夜の土木作業まで始めてしまって…体壊さないか心配で心配で…」
「律儀な旦那も気苦労が絶えないなあ」
「私、絵の事はさっぱりわからないから何も出来ないんです。忌田さん、木座さん…私どうしましょう」
「画家のスランプか…。それは確かに困った…」
「そうなんです。私、絵のことって、本当に分からないもので…」
「あ、あのオレ…実は絵葉書の通信講座やってんすけどっ!!」
「…木座神…」
「お気持ちは嬉しいのだけど…」
「うん(泣)いえ、違い過ぎますよね…洋画と絵葉書じゃ…(泣)」
「そうだ。あの議員先生、絵をやったことがあると言ってたな…相談してみるか」
「是非お願いします」
「けど忌田さん、オレ、あの人…怖いです(泣)」
「俺もだよ(泣)だが、女好きらしいからなあの先生。下手すりゃ碧さんが危険だ。俺逹も同行しよう。木座、腹くくって行くぞ」
「は、はい!!頑張ります!!」
変質者扱いの先生だが、割と快く同行してくれた。

でアパート
「ラバさんは?」
「ええ仕事です…こっちへ」
こっちも何も、一間しかないアパートなんでアトリエとかそーゆー気の効いたもんじゃなかった

「すげえ!!油絵だ」
「いやそんな事に感動されても…」
「碧さん。普通の人間は油絵なんてあんまり関わりあわねえもんだから、意外と感激するんだよ。木座、お前のやってる絵はがきは水彩か?」
「え、はい忌田さん。つってもはじめたばっかなんですけどね…天界で描いてたらどっかの生物が落書きして邪魔するし(泣)」
「…あの子はそういう子だから勘弁してやってくれよ」
「はい…しかしこの絵、ほんとにスランプなんですか?オレにはそう見えないんですけど。どうです忌田さん?」
「俺も絵はさっぱりだが、いい絵だと思うがな」
「私もそう思うんですが…どうしました近藤先生?」
「…荒れてるな」
「何が?」
「心がだ」
「何だか達人ぽい台詞…」
「俺は絵は噛っただけだが、仕事柄展覧会やらにはよく呼ばれるんでな。目はそれなりに肥えてる…だから感じるんだが…」
「奥さん。おたくの旦那、最近何かあったんじゃ?かなり荒んでるみたいだ…」
「え…と言いましても…。別にこれといって。あ、けど…」
「何かあったんですかラバさん?」
「まさかうちの健が…?(汗)」
「いいえ。二、三日前かしら。うちの人、仕事から帰るといつもはすぐにアトリエにこもってしまうのに…その日はしばらく何か考えこんでた様子で…」
「せ、先生あんた何もしてないよな…?」
「人を何だと思ってる。そんな節操なしにみえるのか」
みえるよ…木座と忌田は腹ん中でそうつっこんだ。

「何かその原因に心当たりは?」
「いえ…」
「そうか…どう思う忌田?」
「当人に聞くしかねえだろ」
「…なんだ木座?不思議そうな顔して」
「いや…先生でもそんなまともな受け答え出来るんだなと。まさか碧さんを狙ってんじゃ」
「馬鹿言え。俺は善良な市民の皆様には優しいんだ…だから奥さん」
「はい」
「次の選挙には保守党と近藤祥二!近藤祥二をよろしくお願いしますね!?」
「ええ、はい…」
「抜け目ないなあ」
「オレも選挙権あったらまともに接して貰えるんかな」
「あの先生?どうして先生は絵がわかるんですか?自分でもお描きに」
「まあ、昔かじってた程度ですよ。今でもたまに気が向いたら描きますがね」
「…それって春画…?」
「木座神、後で覚悟しろよ…いや、主に静物画だよ。花とか、な」
「へ、変態議員が花!!?」
「失礼だぞ木座…先生はリリカルな面もあるん…だ?」
「忌田…何故自信もって言い切らない…」
「いや…その…」
「二人とも後で絶対しゃぶりつくしてやるからな(ぬらり)」

「(この人も主人に近付けたら危ないわ)えっと…ともかく主人が来ない事には埒があかないわね」
「あの天ぼけアーティストでもスランプになるんですね」
「失敬な。主人は割と繊細なのよ」
「すんません…でもだったらなんで」
「確かに不都合だらけの生活だけど、二人とも若いし健康だし…そんじょそこらの苦難には負けないつもりなのに…」
「経済面の不安は男のプライド傷つけるんですよ…女一人食わせらんないのかってね」
「そんなの…」
「私が一枚買いましょうか?」
「いえ折角ですけど…」
「私が買うと何か不都合が?」
「主人は本当に自分の絵を欲しがってる人にしか、絵を売らない主義なんです…そういう人を見分けるのも敏感で…」
「そうですか。やっぱり芸術家というやつは違う。金の為なら身売りする人間もいるというのに…ククク」
「(やばい)碧さんよけりゃ他の絵も見せてもらえないか?特に…旦那さん自身が気に入ってる絵を」
「これなんかは主人の気に入りなんです」
「…摩周湖か…」
「綺麗な水の色だな」
「こちらは…人?の集団か?」
「…主人が特攻隊にいた時の仲間だそうです…もうこの世にはいない方々…」
「…ご主人は、主に何を描いてらっしゃるんで?風景?人物?」
「いえ割となんでも。でも人の方が好きみたい」
「あ…裸婦画がこんなところに」
「え…それは!?」
「…奥さん?」
「…モデルを雇う余裕がなくて…し、仕方なく私を…」
「えと…ごめんなさい!別にみようとして見た訳じゃ(赤面)」
「…いい絵だ。だが…」
「先生、どうしたんだ?」
「みな、暗い表情だな…」
「私こんな陰鬱な顔してたかしら?」
「絵画では被写体に描き手のイメージや意思が投影されるからな…旦那さんの目には奥さんがこう映っているということですよ」
「私こんな暗い女に見え…」
「そうではなくラバさんの心に暗さがあるって事か」
「ああ多分な」
「あの旦那さん、確かに明るい人じゃねえけど、暗い人でもなさそうなのにな」
「…あ」
「どうしました奥さん」
「今日は…」
「何か特別な日なんですか?奥さん」
「結婚記念日…です。そういえば」
「旦那さん、責任感強そうだからな。気にしてるんじゃないだろうか」
「…まだ画家として認められない事を?私はそんなの全然…」
「不安なのかなラバさん…」
「そんな…」
「まあ心当たりがあるなら上出来ですよ」
「今までは結婚記念日には何かしてるのかい?」
「絵を…くれるんです一枚。花だったり風景だったり色々ですけど」
「愛ですね」
「やだあ木座神さんたら(ばしい!!)」
「(ぽそ)いざ画家として成功したら、うん千万の動産か」
「何かおっしゃいまして先生?」
「いや別に」
「まあならスランプの原因はそれだろう。プレゼントにする絵がうまく描けないんだろう」
「そんな事でスランプにならなくても」
「それだけ愛されてるんですよ。幸せですね奥さん」
「変態代議士が愛とか言ってる…悪夢だ」
「クク、木座神、明日は仕事になんねえかもな…」
「…オレなにも言ってません…信じて下さい…」
「ともかく。スランプの原因は分かったが、対処の仕様が…。先生どうだ?」
「絵はインスピレーションだからな。何か心動かすようなこれといったものと、出会いがないと…」
「インスピレーション…か…うち裏街道だからな。そういう事には関係が」
「俺も政治屋だからな、もっと索漠としたもんしかねえよ」
「弱ったな…回りにいるのも玄人だらけだしよ。後は神保さんに神の道でも説いてもらうか…」
「健でも呼んでみたらどうだ」
「あんな性獣やめて下さい」
「エロスは感性の中でも比重が大きいんですよ?だから芸術家にはゲイか異常性欲者が多いんです、ククク」
この人かなりアブナイ…てか変態くさい。碧の勘がそう告げていた(笑)そして更に。

「呼んだか?ハニーたちぃ♪」
「きゃあ!」
「健?!」
「帝王どうやって…」
「人ん家の屋根裏から何ヌボッと現れやがる!!この糞玄人が!」
「へぶしっ!!碧ちん痛えよお(泣)」
先生は固まっていた(笑)

「美人の人妻が…」
「(恥)…お言葉ですけど、代議士がそんな変態臭い発言するのもどうかと思いますわ」
「…私、なんか変態臭い発言しました?」
「したよ!!」
怖いので口パクでツッコむ二人
「なんか難しい話だからよく分かんねえけどつまりラバりんに恍惚の境地って奴を見せてやりゃいーんだろ♪お安いご用さ」
「てめえ、タマ蹴潰されてえのか、ああ!?」
風水麻雀の香織さん並に凄い形相の碧。
「忌田…碧ちんがいじめる…」
「お前が馬鹿なこというからだ。すまん碧さん(てか俺も怖い)」
「あら…ごめんなさい。取り乱してしまって。でも芸術家と玄人、共通点はあるかも」
「健、お前が不調の時…んなもんねえか…ツキが落ちてる時ゃどうする?」
「あ?先生も国士ブンブン出るんだから分かるだろ?力で引き寄せるさ」
「力、か…」
「無理矢理でもラバさんの想像力を刺激しろってことですかね…」
「あ!俺いーこと思い付いた♪」
「またエロネタだったら承知しねーぞ、この下衆!!」
「すんません、この子エロネタしか知らないんですよ」
「どういう教育なさってるんですか」
「すいません」
「い…忌田さんのせいじゃないです」
「そういえばそうね…すいません」
「で健?何するんだ?怒らないから言ってみ」
「でもエロネタなら殺すぞ(爽やかな笑顔で)」
「結婚記念日だろ?いつもより綺麗な碧ちんを見せりゃいいのさ」

一同絶句

「なんで驚くんだ」
「健さんがまともな発言した…」
「とりあえず俺がやってるランジェリーショップの激烈セク…モガっ」
「それ以上言うなっ!!あ、アイデアは悪くないだろう?碧さん」
「私も協力しますよ奥さん…だから一度S…いや何でも…ククク」
「虐げられたいのか変態議員っ?!(泣)」
「何でこんな変態ばっかなんだよ…まあ…宜しくお願いします」

かくして一同上野に繰り出す

「やっぱセクシーだよな。碧ちんいい腰してっからそこ強調してさ」
「いや人妻ならではの抑圧されたエロスをもっとだな…」
「忌田さん、あの二人に任せて平気なんですか?」
「確かに女慣れしてるからな…」
「私、何されちゃうのかしら」
「しかし、ラバさんの好みとかはどうなんですか?」
「…あの御仁は言わないだろう、そういうことは。碧さんどうだ?」
「ええ、全く話題になった事すら…」
「かあいそー。碧ちん折角だから、すっげえ刺激的なカッコでラバりんドキドキさせよーぜ♪」
「あの人…喜ぶかしら?」
「男なら誰しもときめくはずです。で、私が推すのはやはり…」
近藤は顎をしゃくった。一同その先を見ると。

「…ちゃ、チャイナ専門店?!」
「やっぱ龍龍から離れらんねーのなセンセ♪」
「何を言う」
近藤は

くい

と眼鏡を上げた

「チャイナは男の…特にM男のロマンなんだ。何故なら中国女というのは昔からドラゴンレイディと言って支配、君臨する存在としてだなあ…」
延々とチャイナのロマンを語る先生と聞かされる健

「じゃああの二人がいないうちに選びましょうか」
「私チャイナなんて着た事ないんですけど…こんなに足がでるなんて恥ずかしいわ」
「しかし健に味方する訳じゃねえが、インスピレーションを刺激するなら普段よりちょっと強烈な方がいいかもしれないな」
「普段…かなり地味な格好してますし」
「これなんかどうですか」
「まあ綺麗な淡い紫。デザインも上品ね」
「これぞ乙女色!!」
「乙女色?」
店員が近付いてきた。

「いかがですか?よろしければ試着なさってみては?」
「はい…じゃあちょっと着てみることにします」
「絶対似合いますよ、碧さん」
「健達はまだ何かわめいてるな…」

うるさい人々を余所目に試着する碧
「どう…かしら」
「すげえ似合います!!」
「確かに。これなら旦那さんも見なおすよ」
「やだ…(赤面)」
和やかな会話に見えるが、実は店員はこの一団の正体を訝しんでいた。まあ玄人に筋者に美人妻だから当然だが

「じゃあこれにしま…」
言い掛けて値札を見て絶句する碧
「う…うちの月収だわ」
いきなし現実味が出た彼女にの台詞に、忌田と木座はなんだか涙した。
が、

ばさっ

「即金だ。釣りはいらねえよ」
「健さん…」
「碧ちん?これは俺が出してやるよ、そん代わり」
健は嬉しそうに笑った
「下着は俺らに選ばせろよ」
どうやらこやつらはさっきから、下着について大熱論をやらかしていたようだった

不本意ながら健の経営?するランジェリーショップへ赴く一行。
健とムッツリ代議士はやたら嬉しそうだったが。

「着いたぜ♪」
「ど…どわあ!(赤面)」
ど派手でサイケな店頭に、飾ってあるのはおよそ人間が身に付けるものとは思えない代物だった。

「全部俺の趣味な♪洋物の直輸入からオーダーメイドまで色々あんぜ♪」
「健、お前経営者の才能あるぜ、ククク…」
金縛り状態で真っ赤になる極道とヘタレだった。

「け…お前…これ店として成立って…(泣)」
「けっこう繁盛してんだぜ」
「畜生!!リリカルはこの世にないのかよ」
「布地…布地がほとんどねえ」
「まさか私にこれを着ろと?」
笑顔がひきつる碧
「勿論♪ただにすっから、好きなだけ持ってってくれよ」
怒りが爆発しようとした碧に近藤が話し掛けた

「奥さん、怒る前に下着美学を理解して下さい」
「美学だあ!?」
「下着というのは体に密着したものではありますが、人類の生存に必要不可欠なものではない。だが下着は進化し続けた…何故か!?それは永遠のエロスの象徴だからですよ、フフ。人間は意外性を…女性に対する男の感情としては神秘性を重視するもの。あなたのような清楚な人妻が服を脱いで…そして驚くばかりの大胆さを持っている事にそのエロスが現れるんですよ」
「はあ…」
「さすがインテリだ。スケベ心に理論を付加してやがる」
「碧さんが押された…ある意味すげえ」
「つまり見て楽しい脱がして楽しい、俺は嬉しい♪ってこったろ?」
「健、お前ほんとに本質掴むのうまいな」
「まあともかく中入ろうぜ♪」
「健、また寄せてもらうぞ、ここ」
「センセのスケベー♪クラブの姉ちゃんにプレゼントかよ」
「まあ、な…フフ」
「忌田さんオレ入るの嫌…(泣)」
「俺も嫌だよ…!!(泣)」
「こんな変態二人、しかもこんな店に置き去りにしないで下さい」
碧の抗議も変態二人には通じなかった

「さすがに二人いると対抗出来ないわ」
「最悪のタッグだ」
「つー訳で碧ちん、ビキニとか好き?」
「やっぱ人妻はレースだろう?しかも黒な…ククク」
「ラメもあるぜ?あ、ちょいと昔ならTバックとかよ」
「こら健、それに先生、それはセクハラだぞ」
「なんで?」
「フフ、ただの好意だぜ?男を悩殺する格好は、やはり男に聞くに限るからな」 なんて大騒ぎしているうちに、木座はとんでもないものを見つけてしまった

「…なんで…店の奥に…ラバさんがいるんだ!?」
「なに?!し…しかも」
「女連れ?!まさかそんな…み、碧さんに気付かせるな木座!」
「は、はい…って、へぎゃん!」
木座は押し飛ばされた。

「どうして…うちの人がここに…しかも」
「おっ?ラバりんだっ!ヒョーしかも女連れぇ♪すみに置けねーなあ〜」
「ほう…あれがご主人。なかなか…クク(ヌラリ)」
碧の顔は蒼白になった
「碧さん、これは何かの間違いですよ!!」
「あああの生真面目な旦那が…」
だが碧はつかつかとラバに歩み寄った

「あなた」
「碧?」
ばつの悪そうなラバに一同はこれから起きる惨劇に二人は怯え、二人は胸を踊らせた

「…見つかってしまったか」
…の割にあっさりとしたラバ

「なんでこんな所に?」
「…今日は結婚記念日だろう」
「ええ」
「その…いつもは絵を描いているんだがスランプでな。どう頑張っても描けない。で相談してみたらプレゼントに別のものをと言われてここを紹介されたんだ…だが…高いなあ下着は。それで仕事を増やしてみたんだが」
「…あの旦那にそんな爛れた事を教えたのはもしかして…」
「あ、俺だ」
「さっさと言え!!」
「とりあえず事情は分かったが…そっちの女性は?」
「いや、俺は女性の下着に関しては一向に分からんのでな。困ってた所、助言してくれると…」
ラバの横にいた女性が振り返る。
一同は、またまた絶句した。

「し、小龍!!」
蒼白になる近藤に
(覚悟しろよ)
小龍はそう目で告げていた。

「み、密輸プリンス…(泣)」
「勘だけど…あの人女じゃないわね…」
「何を言ってるんだ碧。綺麗なご婦人じゃないか」
だがラバ以外の皆は状況を知っていた

「しかし世の女性は、こんな布地の少ないものを身につけていたんだな。さっぱり知らなかった」
「世の普通の女性は、こんな破廉恥な下着はつけません(泣)」
「あなたがこんなお店に来てまで私にプレゼントを買ってくれようとするなんて…ピントはずれてても嬉しいわ。結婚記念日だからって贈り物はいらない。あなたが元気でいてくれればそれでいいのよ」
「碧…」
「なんだか『二つの贈り物』みたいで美しいですね忌田さん」
「プレゼントが健の趣味の下着でなけりゃな…」
「よく考えりゃ結婚記念日だから、碧ちんからもプレゼントがいるよな?これどう?」
「なんだこの透ける下着は…女性用にしてはサイズが」
「勿論ラバりん用♪褌でもいーよな、ケツがいいしよ(揉みっ)」
「(恥)髭乙女…どこ触って」
「…忌田さん、この生物の生皮剥いでいいわよね?(にっこり)」

健を睨み殺さん勢いの碧を何とかなだめる忌田と木座。
健は続けて言う。
「碧ちんはラバりんにどんな格好して欲しい?」
「…え?」
「やっぱさ、こんだけ男前だから、萌える服とか下着とか着せてみてえよな♪?」
「…主人はいつものままで十分魅力的よ」
「碧…」

「愛だ!愛がここにいい!!変態まみれん中で…美しすぎるっ!」
「確かに心洗われるな…だが少々疲れたんだが…(泣)」

「晴れの日ですよ奥さん!やはりここは夫婦揃って着かざ…」
「近藤…熱心だな?」
「し、市民の皆様へのサービスこそ公僕の仕事だ…(汗)」
「碧。俺は確かにあんまりちゃんとした格好でうろついてないが…やっぱりもっと…」
「もっとセクシーにいこうぜ♪碧ちんだってチャイナ買ったんだしよ」
「何が萌えるかな。やはり基本はスーツか?いや日本男児の基本、着物もありか…」
「近藤、それ以上口動かすとお前の痴態写真ブン屋に流すぞ」
「えっと…私は…貴方が画家として成功した時の姿をみたい…。受賞式の風景をちょっと早めに見てみたいの」
「碧…」
「いい話だちくしょう…(泣)」
「受賞式つったらやっぱスーツか…クク」
「わーい似合うだろなラバりーん♪」
「ありがとう、碧…。受賞式、か。だが俺は、式にスーツで臨むつもりはない」
「え?」
「芸術も自己限界との闘いだ…だから俺は、式に出る時はあえて…」
「?」
「少し心得のある剣道の装いでいく!!」
「やっぱ芸術家わかんねーよ!!」

何だかよく分かんないまま、剣道着とか着てみるラバさん。
訳は分かんないが、元々男前なんで、それでもみんな割と萌えた

「和服似合うな♪剥きてえ」
「ンな事したらてめえの生爪剥ぐからな」
「楽しそうなプレイだな…是非俺にもやってくれよ奥さん…クク」

「しかし碧さんがチャイナ…ラバさんが剣道着…」
「訳わかんねーよ…(泣)」
「萌え萌えだからいーじゃんいーじゃん♪」
「ああ…夫婦で攻められてえ…ククク」
「近藤?今夜は特にすげえぞ…(爽笑)」

一方
「貴方、素敵よ…」
「その、なんだ…碧お前も…(恥)」
「ラバりん可愛い〜!食…」
「いい加減にしろよ、エロマニアが!てめえイ●ポにしちまうぞ!!ゴルア!!」
「どうやってえ♪やるならやってみろよ。出来る訳ないもんね♪」
「まあいい。オレは近藤とお話があるからこれで去るぞ。いいな(爽やかに殺気まみれ)」
「恐いがぞくぞくすっぜ…」
「あーセンセ下着…行っちまった」
「俺たちも帰るぞ」 「えー!!俺、碧ちんとラバりんとしっぽりー」
「馬鹿(小声で)結婚記念日だから邪魔すんな…じゃあラバさん碧さん…ごゆっくり」
「ええ…」
「碧、たまにはなにかうまいもの食わないか」
「そんな…いいわよ」
「お前へのプレゼント用に稼いだ金がそっくり残ったからな。たまには贅沢しても罰はあたらんさ」
「あなた…珍しくなんてまともな」
「あの皆さんのおかげだな」
「それは…どうかしら」

そして帰ってからもやっぱ不満そうな健様。
「ちぇ〜うまそうだったのにあー」
「特別な日なんだ、今日くらいはそっとしといてあげなさい」
「お、そーだ!じゃ俺もお前やユウたんと結婚記念日やろう!そーしよう♪」
「…は?」
「たっのしいな〜♪」
ヤンチャ中年には毎日が祭日。

という訳で
「結婚してもないのにいつが記念日なんだ!?」
というツッコミもきかず忌田さんをがっつんがっつん…した健は、四の五の言った木座を天界の二階から釣り下げ、次はユウたん

「ユウたーん♪結婚記念日しよーぜ♪」
「…は?」
「二人の出会いを祝おうよう」
「俺とお前の出会いって…凌辱じゃねえか(泣)」
「じゃあ、初心に帰ってまた鬼畜プレイで!♪」
「嫌じゃああ!!」

ってわけで

これでもか、

ってほどいじられまくったユウたんだった。

数日後、オカンズ二人は居酒屋で
「結婚記念日なんて最悪だ…」
と独身ながらボヤきまくったとゆー。

ちなみに暫くして、上野の役所には
「あの…同性の方との結婚届けは受理出来ないんですが」
「なんで」
「いえ…法律がそうなってまして…というか一度にお二方との結婚は重婚に…」
「だって二人とも俺のだもん。金なら払うからさ」
「いえ…それにお名前はちゃんと、漢字で書いて頂かないと困るんですが」
と、窓口を困らせる中年がいたという


あの時代に結婚記念日なんて洒落た事を考えるダンナがいたかどうかという事はさておき。ラバさんは、きっと碧さんをたくさん描いてそうだなと思いませんか?…キュビズムとかで描かれてないといいんですがね