時空を超える少年
ある日健が、自分の部屋部屋で珍しく一人で寝ようとしていた時の話だった
「…何か…布団の中にいるぞ(一人合点)ああ、きっと誰か俺に惚れた恥ずかしがり屋さんが抱いて欲しいって忍んで来たんだな…ハニー?ンなまどろっこしい事しなくても俺はいつでもOKだぜ?出てこいよ」
もごもご
「仕方ねえな…じゃひっぺがして無理矢理出すぞ」
ひっぺがし!!
じー(寒いなあと言いたげな視線)
中から出てきたのは、
「…ガキ?しかも…何で裸!?」
じー(寒いからはやく布団よこせと言いたげな視線)
ばたっ
「おい健?さっきの件だが…」
入ってきた忌田は素裸の少年及び、半裸の(寝ようとしてたから)健を見て絶句した
「いや忌田これは…」
「(わなわな)健…てめえ…遂にガキ!しかもこんな小さなガキ!にまで手ェ出しやがったのか!!クソ外道!!」
「違うっ!!」
健は何とか忌田に必死の説得をした。
「本当!知らねー間にこのガキがフトン中に入ってたんだよ!」
「連れ込んだんじゃなくてか?」
「ああ!てか俺、こんなガキにキョーミねえから」
とりあえずシャツを着させて忌田は少年の前にしゃがみ尋ねた。
「坊主、名前は?」
「…紫苑」
「どっから来た?」
「都」
「…父さん母さんは?」
「仕事。暗殺にいった」
「暗殺だってさ♪子連れ狼、拝一刀の子かなあ?ははは」
「笑い事じゃねえ!どうも親は裏の人間みてえだが…」
じー(腹減った)
「は?ああ飯か…この時間ここらは店開いてねえな、くそ…」
「忌田ぁ小麦粉とか卵とかならあるぜぇ?」
「あー仕方ねえ、シキシキ作ってやるから待ってろ」
「わー忌田母さんみてえ!!素敵ぃ♪あ、俺も食う♪」
「何で俺が(泣)」
かくして忌田さんの手料理を腹一杯食べた紫苑と健さまだったが…
「一応聞くが…健!!おまえの落胤じゃあねえよな」
「違う!!身に覚えは有り余る程あるが、俺の子じゃねえ…な?ガキ」
じー(誰がお前の子だ畜生、といいたげな目)
「何だか今めちゃムカつく意志疎通が成り立ったぞ」
「何でもいい、裏世界…しかもバラシ屋かなんかのガキじゃ後始末が面倒だ。親が引き取りに来るまで、健、お前が面倒見とけ」
「何で俺が」
「お前の布団にいたんだ。それにたまには世話する方の立場にもなってみろ」
「ブー!美人なナオンちゃんかうまそーな野郎だったらともかく。全然食欲わかないガキの世話ぁ?やだー!!」
「駄目。決定だ。ちゃんと面倒みるんだぞ」
じー(しきしきまた作って欲しいという眼差し)
「…また俺も見に来るから」
「ちゃんと来いよ?ちぇ〜何で俺がこんなガキと」
じー(こっちのセリフだという眼)
「んだよ〜!このガキー」
「小さい子をいじめるな!いい大人が!」
「うわ腹立つなあ、何だよ忌田このガキばっか構って!ブー!」
「当たり前だろが!大人になれよ!」
「ふーんだ!…ガキ連れてじゃ賭場にも行けねえしな」
じー(賭場って何)
「てめえの親父も裏の人間なら博打くらいすんだろ」
じー(博打ダメだからあの男、興味ないんだって)
「…そうだ、神保のオッサンとこに置いてこ。ガキはたくさんいるから一匹くらい増えても分かんねえだろ。そうと決まりゃさ、行くぜ」
じー(腹減った)
二人は教会についたが。
「なんでえ、おっさんゴミ拾いか?留守じゃんかよ」
じー(腹が減ったので落ちてるレンガでも美味そうに見えるといいだけな目)
「ちぇ、まだ居酒屋も開いてないしな。ユウたんとこでも行くか♪」
じー(ユウたん?)
「ああ。俺の第三夫人だ。エロくてガタイいい男前で、可愛いんだぜえ♪」
じー(男で第三夫人…)
「よっし、じゃ行くか!」
健さまは子供に言うべきでない事をいろいろ言ったが、紫苑は慣れているので全然平気だった
「ところでお前のお袋は美人?」
じー(もう死んでるし顔知らない)
「…そうか…親父は?」
(それも死んでる)
「ん?さっき親父はバラシ屋とか言ってなかったか」
(あれは保護者…拾われた)
少年は一言も喋らないのに、何故か会話が成り立つ二人だった…多分健の直感が超人レベルだからであろう
「神保のオッサンみてえなもんか?」
(その人が誰か知らないけど、こっちのは悪い人、ネクラだしホモだし変態だし)
「そんなの普通じゃん」
爽やかに鬼畜な目の前の中年を見て紫苑少年は、この世には変態はたくさんいるんだなと思った
「ユウたん♪」
「また犯りに来やがったのか健」
「もっちろぉん」
じー(こいつが第三夫人か)
「健…間違いなくいるとは思ってたが、ついに連れてきやがったか…隠し子を!!」
「違う!!…何でみんな同じ事言うんだよ!?何か寝ようとしたらフトン中に入ってたんだよ!保護者がみつかるまで世話しなきゃなんなくなってよ」
「連れこんだんじゃなくてか?」
「忌田と同じことゆーなよ!」
「日頃の行いが悪すぎんだ」
ユウは血色の悪い少年にじっと見入った。
「坊主変なことされなかったか?」
(別に)
「お、おい健!何か頭ん中に直接声が響いた気が!!」
「ああこいつこーゆー話し方なんだ」
「お前つくづく変なのと縁があるな…まあ…お前もたまには子守される側でなくする側に回れ」
「だから何で忌田と同じ事…」
(腹減った)
「何だ健?飯も食わせてねえのか」
「さっき食わせた!!」
(もう減った)
「どんだけ食うんだお前は!!」
「育ち盛りなんだよ…酒のつまみしかねえが食えよ」
もくもくもく
「おお、食ってると可愛いじゃねえか」
「…そうか?ユウたんガキ好きなんだな」
「だってよ。子供って見てるだけで和むじゃねえか。純心で、屈託がなくて」
「そーかあ?こいつ見てる限りそうは思えねえよ」
「んなことねーよなあ?こんな可愛いのに仕方ねえ野郎だなあ?よしよし(ナデナデ)」
「あー!!ずりぃ!ユウたんに頭撫でられて!ユウたんんなガキよか俺をかまえー♪(抱きつき)」
「あほか…しかし…じゃあこいつの親は誰なんだろうな」
紫苑に枝豆を与えつつユウは問う
「さあ?バラシ屋らしいが…」
「バラシ…!?またえれェ親だなそりゃ」
「こいつがそう言ってたぜ、な?」
こくり
「…名前は」
「しおん」
「そうじゃなくて親父の」
「きみはる」
「きみはる…知ってるか健」
「筋者にもワタリはつくが…聞いた事ねえよ」
「仕事は…ヤクザか?」
ぷるぷる
「人殺し」
「…そうか…」
「ちなみによお前のオヤジ、男前か?!」
「健てめえって奴ぁ!!ほかにねえのか!?」
(よく分からない)
「じゃあどんな面してんだ?背格好は?」
(マッチョで…爬虫類系…色素薄め)
「何だ何だ近藤センセ系か?でもって躰はユウたん系?!」
「てか俺は別にマッチョじゃねえよ!!」
(ホモで趣味はストーキングと覗き)
「え中身キザかよ」
「いやむしろお前じゃねえのか、覗きってあたり」
「そうかー…是非会いてえなあ(そして子守してやった礼に食いてえなあ)」
「…また教育上良くねえ事考えてんだろ」
「おおすげえユウたん!俺と以心伝心だ!夫婦みてえだな」
「馬鹿、誰でも分かるぜ、下半身思考男」
「まあじゃあ折角心が通じ合ったトコでやろうぜ」
「ダホ、子供がいるだろが」
もう「誰がやるか」とは言っても無駄なので言わないユウ
「別にいいじゃねえか、な?」
(別に慣れてるし)
「ほら、こいつもそう言ってる事だしよ」
「坊主…可哀相な環境で育てられたんだな」
(でもこんな男臭そうな二人のむにゃむにゃは初めてだからあんま良くないかも)
「だろ?ほら、この坊主もそう言ってるしよ」
「えー!?慣れろガキ」
(んな無茶な)
「スルメやるから」
もくもく(じゃ慣れる)
「お、俺はやだぞ!こんな年端もいかねえ子供の前で!」
「これもキョーイクだ!大学入るまでキスシーン見せてもらえなくて、間違った嗜好性でずんどこ行ってる奴とかいるし。小さい時からちゃんと教えとかねえとな」
「誰のことだ!?とにかく子づれじゃ…」
「もう当人了解済みだからいーって♪ユっウた〜ん♪」
「うわあっ!(健覆いかぶさる)や、やめっ!」
「あーユウたんの肌スベスベー♪」
(何かきみはるはねちこくて湿っぽいけどこっちは明るいくて妙にハイだ)
「あ…やめ…んなトコ…はダメだから」
「そう言うなって…」
「バカが…ガキの前で」
「イケナイ方が感じっだろ?」
もくもく(枝豆美味い)
「やめ…ろ…てめ…これ虐待だぜ(性的虐待の中には性行為を見せる事も含まれる)」
「玄人がンな事言うなよ」
もくもく(スルメ旨い)
「マジ…やめ…」
「またまたあ♪こんなに感じてるじゃねえか」
もくもく
「(どぐわっ)いい加減にしろ!!」
やはり玄人とは言え近代人なユウたんは、モダニティモラルに溢れていた
「痛…ひでえユウたん…今日は感度悪ィ?」
そして近代人とはいえ…健はどっぷり前近代的思考の中で生きていた(笑)
「すまんな坊主、今みたことトラウマにならなきゃいいが…」
もくもく(いつものこと)
「なあユウたんこいつある意味ユウたんよりこっちの方面慣れっ子みてえだぜ、だからさー続き〜!」
「坊主。よっっっぽどひでえ環境で育ったんだな、気の毒に…(泣)健!この子をみろ!ロクに口もきけなくなるくらい精神的虐待受けてたんだろうぜ」
「違うと思うぞー?」
(何か食べられたら毎日わりと楽しい)
「ユウたんてガキに甘いよな」
「てめえが鬼畜なんだよ」
「賭場じゃ誰もガキだからって手加減なんかしちゃくれねェぜ」
「…」
少し悪い事を言ったかと沈黙するユウ
(ユウたん優しいからこの手のネタに弱いんだよな…俺がこの位で傷つくかっつーの。さ、このまま一押し…)
「健…」
「おうユウた…」
「そうだな、裏世界で生きようって奴に甘さは禁物だな、よし坊主、賭場行くぜ。世間の厳しさ教えてやる…そして強くなれ!!一人で生きてけるようにな」
「…えー(予想外の展開)」
だがアニメでも分かる様に、ユウたんは優しいと同時にそれが人の為と思えば厳しくもなれるのだった
そして二人と一ぴきは賭場に繰り出した。
「ぶー!やらせてくれてもいいじゃんかー」
「(無視)いいか坊主、ここは食うか食われるかの闇の世界だ。ここにいるのは主人と奴隷と敵だけだ」
「ユウたんってば恋の奴隷だもんな♪」
「あほ!ほら坊主あそこで打ってる奥の二人、ありゃあコンビ打ちだ。グルなんだよ。残りの二人はカモられてる」
(目つきで分かる)
「お?!お前通しに気づいたか?この坊主すげえ勘してやがる!」
「念話出来るんだからそれくらい分かんだろ?」
「さて、坊主…麻雀は打てるか」
(それ食えるの?)
「だろうな…じゃまず役から」
紫苑に基礎から麻雀を教えるユウたん
(よく分かんない)
「出来たらピーナツやるからな」
(じゃあ頑張る)
ユウは子供の扱いが巧かった
「…ユウたーん…俺ヒマー!!」
「うるせェ、一人で打っとけ」
「ちっ…あのガキばっかり可愛がってさ」
ぶつくさ言いつつもさすがは帝王、着々と札束の山を築き始めた
「よし、覚えたな、エラいぞ」
もくもく(ピーナツ旨い)
「よしよし、可愛いなあ」
厳しくも子供に甘いユウに、遂に大きな子供(笑)がキレた
「俺も構えよっ!!」
「なんでてめえはそんなに大人げねーんだ!あほたれ!!ちったあ大人になれよ!」
「何でまた忌田とおんなじような事言うんだよっ、俺のハーレムの奴らは何かやたらと説教したがるんだよな」
「誰がいつハーレム入ったよ?!お前の行動ツッコミ所が多すぎなんだよ!」
「ユウたん二人の愛のために俺たちもっと語り合わなきゃなあ」
「ああもう知らん!坊主、じゃサイコロ振ってみっか?自分が出したい目を出すにはだな…」
「ユウたんユウたん!俺一出すぜっ!うりゃ!!おおーどうだ?!これでもかってくれえの一だぜ♪」
もくもく(面白い…何か大人げない所きみはるに似てる)
「お前のオヤジもこうなのか?可哀想にな(泣)」
「ん?ユウさん…とドサ健?それに子供…?」
「哲?」×2
(知らない人が来た)
「何だこの子…健の子か?」
「…やっぱそう思うよな普通」
「…ああそうだ!!」
「…そうなんだ…誰との子だ?」
普通に哲に納得されて悔しいので、健は嫌がらせのように叫んだ
「ユウたんとの子だっ!!」
「まさか…ユウさん、色っぽいと思ってたけど実は女、だったのか?」
「ちががががー!!(泣)哲ぅ可愛い天ボケにも程があるぞう!俺のどこが女にみえるー?!」
「え…いやすごく貧乳でガタイがいい和田アキ子系の美人かなって…違ったかい?」
(見方がズレてるとゆーより何かがおかしい)
「あはは♪そこが哲の可愛いとこだ♪ユウたーん、なあ!俺たちの愛の結晶も出来たことだしもっと愛しあおーぜ!おら構えー♪」
「懐くな!髭生やした大の男がっ!!」
ユウは哲に事の次第を手短に説明した
「なんだ…ユウさんの子どころか健の子でもないのか」
「たりめーだ!そもそもこの坊主いくつに見えるよ!?こいつが生まれた頃にゃ俺は花巻で百姓してたさ…ああ…あの頃の俺はまだ清い体してたな…(泣)」
「俺のハレムの一員なのがンなに厭か?」
「ユウさん…やっぱ健の公式な愛人に…(沈痛そうな顔)」
「違う!!俺はこいつとはただの肉体関係だ!!」
ユウはもうそーゆー事は隠さなかった(笑)
「何だ(ほっとした表情)」
哲ももうそれは気にしなかった
(この人もユウたんと仲良しなのに妬かないの?)
「は?哲も俺ハレムの一員だぜ?何で妬くんだよ」
「坊主に馬鹿な事吹き込むな」
(ハーレムってどんな人入れるもの?)
「とにかく俺が確保しときてえって思う可愛い奴らだな。色んな萌えキャラがそろってんだぜ、ウラヤマシイだろ」
(可愛い?萌えキャラ?)
「ああ。そこのユウたんはよ、ガタイよくて男前だけどよ、エロくてベッドん中じゃ可愛いんだぜ♪んであっちの哲は、切れもんでスゴ腕玄人だが天ボケセクシー美青年だろ?あと昨日お前に飯つくってくれた忌田」
(しきしき、おいしい)
「強面で渋いけど中身乙女ではにかみ屋なんだ。最高だろ俺のハーレム!外にもSで鬼畜爽やか美青年とかMの丸眼鏡の色っぽい代議士センセとか拡大中だ♪」
(腐り具合がきみはる並み。けど外向的?)
「健、さっきから何一人で喋ってんだ?」
紫苑の念会話は哲に届いていなかった。
「なあガキ。お前のオヤジよ、どこ行ったか心当たりはねえのか?会って味見してーんだが」
(何か…別れた時、密輸プリンスがどう、とかゆってた)
「なに?!龍龍かのことかっ?!」
「この坊主…あの中国人とも知り合いなのか?一体どんだけ不幸なんだ…」
「ユウたん、人の境遇不幸不幸言うなよ、ある意味失礼だぜ」
めずらしくまっとうな発言をする健
「…確かにな…だが…やっぱてめえと関わった時点で不幸決定だ!!」
「ユウさん…なんか嫌な事あったのか」
時を同じくして港の波止場では。二人の男が対峙していた。
一人はバンダナ美青年。
そしてもう一人はグラサン以外コート、スーツ、靴全てを白一色に統一した大柄な男。
白ずくめの男が口を開いた。
「なぜ俺の仕事の邪魔をする」
「お前がどこぞの政治家に頼まれて消そうとしてる男はな。オレの気に入りの玩具なんだよ、消されてたまるか」
「あくまで邪魔するつもりだな。じゃあお前にも死んでもらう」
男は、スラリと日本刀を抜き、青年の前にかざす。
「フン。お前に大地の神のついたオレがやれるか」
また賭場
「ところでユウさん…こいつをいつまでも賭場に置いとく訳にもいかないだろ?確かに生き抜く力は身につくだろうけど、あんまガキの内から足突っ込む世界じゃねえよ」
「そうか?俺もガキの内から足突っ込んでるぜ」
「そう、こんな大人になっちまう」
「全くだな、最悪だ、人間の屑になっちまうよな」
「ユウたん…もしかして俺の事嫌い?」
「ああ」
「俺も愛してるぜ♪」
(やっぱ公春と似てる)
「はっ…おいガキ?俺の野性の勘がなんかヤバい雰囲気を感じてる…」
「…本当だ…」
「おい?俺は分かんねえぞ」
(文明人なんだね…そういや公春がなんか港がどうとか…)
「まさか…お前の親父のターゲットって…行くぜユウたん、哲」
波止場では小龍の部下が公春をとりまき、睨みをきかせていた。
「フン、ザコどもが」
「近藤に手を出す奴は誰であろうと許さねえ。まあ金で片つけてやらないこともねえ。依頼主にはいくら貰った?」
「…俺は一度引き受けた仕事は完遂する。いくら積まれても止めるつもりはない」
「そうか…」
小龍は指を鳴らした。
ダダダダ
…辺りに響く銃の乱射音。
止むことのない銃撃の中、小龍は眉をひそめた。
「さがれ!」
小龍が叫ぶと同時に、うめき声をあげ何人かの部下が倒れた。
続いてあちこちで悲鳴があがる。
「な…?」
煙がおさまり、小龍の眼に飛び込んで来たのは、倒れ伏した部下たちの姿と、朱く染まった日本刀を握る男の姿だった。
港の陰
「…おい…今の…見たか?」
「ああユウさん、確かに見た。あの白い奴、刀で弾を弾きやがった」
さすが玄人なのでみんな目はいい
「ガキ?もしかしてアレが保護者の“きみはる”か」
こくり
「おいおい…人殺しどころの騒ぎじゃねえぞ」
「美味そうだな…今までにないタイプだ」
「んな事言ってる場合か!!」
「でも何で小龍と…」
(人殺し…近藤とかいう人…邪魔する密輸プリンス…)
「何っ!?先生を…お前の親父がかよ」
(そう、暗殺)
「それはひでえ、まだ俺あのセンセに枯れるまでシャブリ尽くしてもらう約束果たして貰ってねえんだよ」
「何の話だ」
不思議そうな哲の疑問をユウが遮った
「四の五の言ってる場合じゃねえぞ、お前ら」
健は紫苑をひっさげ、ユウの制止もきかず公春の前に踊り出た。
「おーい!!そこのポントウもってるお兄さーん!」
振り向く公春の眼が紫苑を捕らえた。
「お前…どこ行ってたんだ?!」
(寒かったから適当にあったかそうな所)
「上野公園で待ってろと言ったろ!で、なんだその男は」
「こいつを拾ったもんだ。なあ俺と愛育くまねえか?」
「はあ?」
「おい、お前がこの子の保護者か!かわいそうに、この坊主口きけねーほど傷ついてひたすら腹減らしてたぞ!」
「…餌やってくれたのか」
「…え?あ、ああ。酒のつまみだが」
「俺のお袋(忌田)の手料理食いまくりやがった!」
「…礼を言う」
「へ?」
何だか調子が狂うユウたちだった。
「少し待ってろ、今こいつの始末をつける」
白い服に赤い斑点を染み付け、公春は小龍に対峙した
「ち…相手は化け物だったか…」
呟く小龍
「おい待て、まさか殺す気…」
言い掛けたユウに公春は答えた
「刺客に他にする事があると思うか?」
「子供の前で人殺しか!?」
(それも慣れてるし)
「可哀相に…坊主…本当にひでえ親持ったんだな…」
ユウは紫苑を抱き締めた
「あ…またユウたんそいつばっか…お前。近藤センセとそこの小龍はどっちも俺のハーレムの一員だ、勝手に殺るんじゃねえよ!!お前もハーレム入れてやっから♪」
「ハーレム?フン、数ばかり揃えるのは能がない。極上が一人いれば十分…ふふふ」
「そーいやお前の愛人めちゃイケてるみたいだな。坊主にきいた」
「馬鹿言ってんじゃねえっ!!…おい殺し屋、とりあえず刀しまえ…坊主、父ちゃんになんとか言ってやれ」
「腹減った」
なんかてんやわんやしている所へ哲が来て言った
「…今、近藤って…言ったよな…近藤を狙ってやがるのか、てめえ」
公春の前に哲が歩み出た。
「や、やめろ哲っ!」
あわてて飛び出すユウ。
「…邪魔するのかお前も。ならば容赦…」
と、公春の動きが止まった。
「ぼ、坊や…お前キューティクルななかなか…いい髪してるな?おい」
「何だ?白スーツの動きが変だぞ?」
(きみはる髪フェチ。キレーな黒髪の男が好み)
「てっててっ、哲の貞操がっ危ねえっ!!畜生!!殺し屋でホモなんてどんだけ駄目親父なんだてめえは!!」
絶叫するユウに
「確かに国会議員だから色々恨まれる筋はあるだろうが…あいつはオレの友達なんだ!!死なせる訳にはいかねえ!!」
近藤が聞いたら、純粋に感涙にむせんでくれそうな台詞を吐く哲
「ただの友達扱いか…じゃセンセとの仲は俺のが深いよな」
なんかボケる健
(腹減った)
「枝毛が一本もなさそうないい髪だ…個人的には長髪のが好みだが…はっ!!何考えてる俺!?」
公春が悩んでいると
「おいお前が殺ろうとしてるセンセも髪サラサラだぞ」
「なぬ?!」
ゴソゴソ。
近藤の写真取り出す。
「この写真だとよく分からん…」
「何だそのチンケなブレ写真は!オレの近藤はもっと艶っぽいぞ!見ろ!」
小龍は遠景近景、様々な角度から写した近藤の生写真を取り出した。
「見ろこの波止場の近藤!色白いだろ、髪きれいだろ!」
「た…確かに!サラサラだ前髪…眼つきも何かエロいな…」
「そうだ!触れば分かるが肌はキメ細かくてな、おまけに…」
「坊主。俺には何か小龍もお前のオヤジもバカにしかみえねーんだが…」
(そのものだよ)
公春と小龍の馬鹿会話に当然のように健も参戦
「お?萌話なら俺も混ぜろっ!!そうセンセめちゃ淫乱なんだよ…こないだもさ」
「何…てめ…健健!?俺の許可なく近藤とヤりやがったのか!?」
「許可とか役所みたいな事言うなよー。センセ歓迎してくれたぜ(国会議事堂に押し掛けて駄々こねたから仕方なくっぽかったけどな)」
「畜生あの野郎…まだ自分の状況が分かってねえのか…浮気するなってあれ程…」
「あの方もそうなのだ(泣)いつもいつも若い男やらと…まあ寝るのは商売だからそれは仕方ないんだが」
「何?あんたの愛人は男娼かなんかなのか?いくら払ったら抱けるんだ?」
「そんな安いものじゃない!!」(実質はそうなんだけど)
「お前…本っ当に爛れた環境で育ったんだな…」
「うう…俺の気持ちを知りながらっ!ちくしょー!大好きだー!!」
「俺のハーレムメンバー!!みんなして、愛してるぜー!♪」
海に向かって叫ぶバカものども。
ユウは余りに子供の教育上よくない光景なので、紫苑がたまらなく気の毒になった
「なあ坊主、あんな親父じゃなくうちの子にならないか?確かに俺も玄人なんて汚ねェ仕事だが、あいつらよりはマシな自信がある」
「ユウさん…だけどさ、一人で子育ては大変だぜ?」
「…だから…哲(赤面)よけりゃお前と二人で…」
「ユウさん…それってプロポーズ…オレがユウさんの…」
「そう、お前が俺の(嫁)…」
「旦那だな!?」
「ええっ!?」
「共稼ぎなのに家事の出来ない旦那でごめんな。その代わり頑張って博打で稼ぐから…毎晩ユウさんの手料理が食いたいな(照れ)」
紫苑はこいつらも駄目な大人だと思いつつ、手料理が付くならこの二人の『子供』になってもいいかなと思った
「そういや」
はっ、と正気にかえり哲は公春に言った。
「で、お前まだ近藤をやるつもりなのか?!」
「仕事は完璧にこなすのが俺のモットー。だが…美髪の持ち主をバラすのはそれいじょうに俺の主義に反する…」
「じゃあ!」
「殺すのはなしだ!むしろ犯る!!」
「何い?許さんぞ!オレの近藤を!」
「犯ってやるさ…これでもかってくらいの視姦プレイで!!」
(やっぱネクラホモ)
「ハハハ、じゃあ今度のプレイ見せつけてやろう。近藤も見られた方が萌えそうだしな」
「…俺も参加したい」
「うるせえ健!!させるか、黙って見てろ」
「見るのもいいけど見てるとヤりたくなるから最初から参加した方がいい」
駄々をこねる健
「…ところで健、小龍、さっきから近藤の名前が出てるが何で知り合いなんだ?」
「え…哲…それは聞いちゃいけない事…」
ユウが止めたが遅かった
「近藤は俺の(セックス)友達だ」
「金男島で俺の船に招待して(M調教してブッ壊して)以来の深い深い仲だ!」
「そうか…あいつも玄人の世界とはまだ切れてねえんだな…」
「(冷汗)も、もう帰ろう哲!おいそこの白いの!もうゆっても無駄だろうが、くれぐれも坊主を泣かせるな!!」
「いや、こいつは泣かないぞ?」
そうしてユウたんは紫苑を飼い主…じゃなくて保護者に引き渡した
「坊主…つらい事があったらいつでも来るんだぞ」
(腹減ったら行く)
「おい保護者!飯はちゃんと食わせてやれ!」
「言っても無駄だと思うが、こいつはいくら食っても腹一杯にならないんだ」
(だから飯)
「分かった食わせてやるから」
「おい健、拾得者として何か言え」
「別に何も…ただ子育てユウたんが可愛かったから、又たまには来て可愛いユウたんを見せてくれよ。それと!!今度こそあんたの愛人をヤらせてくれよな!!」
「するかっ!!」
かくして、なんだか分からないままながらも、なぜか丸く?おさまったのでした。
これ以来更に健様の行動はますます子供じみていくのだった。ちゃんちゃん。
多分、三番目くらいに行ったリレー小説 しおん…死んだ魚のような目をした無口無表情極まる少年。とりあえずいつも腹をすかせている。念で会話が出来る。運動能力は超人並 と、ある作品の登場人物ですが、こうやって出張することもあったりして。
一応キャラ解説
きみはる…しおんの飼い主てか、保護者。職業暗殺者。ネクラで変態でホモ。きれいな黒髪フェチ
ともかく、「こいつらが出てたら分からないだろー」という理由でオクラ入りされていたけれども、そういえば、健がガキ化した記念すべき小説なので、引っ張り出してきました